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「こんなに早く動かせるようになるのか?」
「箸はまだ無理」
「それだけ動かせればボコボコにできるよ!」
「…どうかな」
エリザのとこには確か義手の人がいたなと虎二は思い出しながら普の腕を見る。
特殊な職についている人、一般の人のと種類があると聞いたことがある。見比べたことがないから違いがよくわからないなと見ていれば手が目の前に来る。
「…」
触っていいらしい。自分が触り始めるとエリザが私も触ってもいい?と聞き触った。
「義手って思ってたよりかっこいいね」
「うん」
「整備は必要だが便利だな」
義手の話が終わって虎二とエリザはそれぞれの出来事を話してそろそろ帰るかと立ち上がったので普も玄関まで出ていくと伊藤とルートが帰ってきた。
おやすみと言い合いながら虎二たちはそれぞれの家に帰っていった。普は部屋へ戻り、伊藤とルートがリビングに入ると伊藤は夕飯の用意を始め、ルートは何か箱を冷蔵庫にいれると普のいる部屋へ向かった。
ノックをして入れば少し複雑そうな顔でこちらを見ている。2人と話をして何かあったのだろうかと聞けば義手を見てどう思うかと聞かれた。
「とてもかっこいいと思います。今の義手は生身の腕と変わらないぐらい細かな作業もできますから。慣れるのには時間がかかりますがね」
「…」
欲しい言葉とは違うらしい。
義手になってしまった腕を見て複雑ということなら義手にはできない事だろうか。
「義手では出来ないことがあるんですね?」
頷くけれど答えてくれない。言うか迷っているようだ。言いたいことがまとまっていなくてもいいですよと言っても迷っている。
しばらくして
「行動したことに後悔はない…」
「はい」
「この手は温かくない。温かさを感じることもできない」
「温かさや感触がないのは普さんにとってとても寂しくて怖い事なんですね…それなら」
ルートの両手が義手を包み込んだ。
「生身の手がやきもちを焼くぐらい触れることにします」
「やきもちを焼く頃には寂しくなくなる?」
「試してみましょう」
握りあったりしているうちに少し安心したような表情になったのでルートはとりあえず良かったと思いつつそういえば小さいホールケーキ作ってきたのでご飯のあとに食べてみてくださいと言い終わる頃にはワクワクしている普がいた。
ご飯できたよと呼ばれてリビングに行き夕飯を3人食べ始めると良貴が何を話していたんだいと聞かれてルートを見れば私に言ったように言えばいいんですよと優しい声で言われ話すことにした。
話し終わればにぎにぎしたかったなとポツリと言いつつ
「人の体温を感じることは今の義手もできないからね。寂しくて怖い気持ちはあっていい。生身の体と同じぐらい触れていればあまり気にならなくなるかもしれないね。毎日手でも繋ごうかな握り返すことで力の加減も覚えられるだろうし」
「力加減覚えられるの助かる」
そのうち手を繋いで楽しそうにしている2人を毎日見るようになるかもしれないなとルートは思った。
「わぁ」
箱から出てきたホールケーキを見て目がきらきらしている。それを見て良貴とルートもなんだか嬉しくなった。
普が小さい頃、大きなケーキを1人で食べてみたいと言ったことがあった。この頃の普は性別の悩みを持ち始めていて苦しんでいた。叶わない願いばかりじゃないことを教えるためリエンと虎二はケーキ屋さんで買ってきて普の前にさあ召し上がれと置いた。最初は嬉しそうに好きなように食べていたが小さな子のお腹にホールケーキが入る訳がなく普の性格上悪いことをしてしまったとごめんなさいと泣き出してしまった。
良貴とルートが仕事を終えて家に行ったときには泣いていて事情は2人から聞いた。どうにか慰めて残りのケーキを4人が楽しそうに食べきったがまた泣きそうだ。するとルートが普の近くに行き
「普さんにはあのホールケーキは大きかったんです。いつか僕が食べ切れるサイズのホールケーキを作ってあげます。待っていてくれますか?」
「…うん」
ぐすんとちょっと泣き始めていたが自分でも食べられるケーキと聞いてワクワクし始めどんなケーキにするかルートと話しているうちに眠ってしまった。
小さい頃のことは忘れているだろう。美味しいと幸せそうにホールケーキを左でフォークを持ち食べる普を見ながら良貴とルートは別のスイーツを食べる。これもルートが作ったものだ。
「色々作れるようになったんだな」
「家で作れるものはだいたい作れますよ。手に入らない材料のお菓子はアレンジして作ります」
「普が前にクッキー作ってた」
「普さん今度スイーツ作りしてみますか?」
「シンプルなスイーツなら作ってみたいかな。一番はルート兄の作ったやつが食べたい」
ルートが嬉しそうにしているとホールケーキを食べ終えた普が
「本にいつか願いを叶えるために小さなホールケーキを作ってくれるお兄さんがいるって書いてあったけどルート兄のことだったんだね。食べきることができたから僕の夢は叶ったんだね。ありがとうルート兄」
「次は大きいホールケーキを食べますか?作りますよ」
「エリザや虎二も呼ばないと食べきれないかな」
昔を思い出し良貴とルートは笑いながらみんなで食べるのもいいし、作るのもいいねと話は盛り上がった。
「箸はまだ無理」
「それだけ動かせればボコボコにできるよ!」
「…どうかな」
エリザのとこには確か義手の人がいたなと虎二は思い出しながら普の腕を見る。
特殊な職についている人、一般の人のと種類があると聞いたことがある。見比べたことがないから違いがよくわからないなと見ていれば手が目の前に来る。
「…」
触っていいらしい。自分が触り始めるとエリザが私も触ってもいい?と聞き触った。
「義手って思ってたよりかっこいいね」
「うん」
「整備は必要だが便利だな」
義手の話が終わって虎二とエリザはそれぞれの出来事を話してそろそろ帰るかと立ち上がったので普も玄関まで出ていくと伊藤とルートが帰ってきた。
おやすみと言い合いながら虎二たちはそれぞれの家に帰っていった。普は部屋へ戻り、伊藤とルートがリビングに入ると伊藤は夕飯の用意を始め、ルートは何か箱を冷蔵庫にいれると普のいる部屋へ向かった。
ノックをして入れば少し複雑そうな顔でこちらを見ている。2人と話をして何かあったのだろうかと聞けば義手を見てどう思うかと聞かれた。
「とてもかっこいいと思います。今の義手は生身の腕と変わらないぐらい細かな作業もできますから。慣れるのには時間がかかりますがね」
「…」
欲しい言葉とは違うらしい。
義手になってしまった腕を見て複雑ということなら義手にはできない事だろうか。
「義手では出来ないことがあるんですね?」
頷くけれど答えてくれない。言うか迷っているようだ。言いたいことがまとまっていなくてもいいですよと言っても迷っている。
しばらくして
「行動したことに後悔はない…」
「はい」
「この手は温かくない。温かさを感じることもできない」
「温かさや感触がないのは普さんにとってとても寂しくて怖い事なんですね…それなら」
ルートの両手が義手を包み込んだ。
「生身の手がやきもちを焼くぐらい触れることにします」
「やきもちを焼く頃には寂しくなくなる?」
「試してみましょう」
握りあったりしているうちに少し安心したような表情になったのでルートはとりあえず良かったと思いつつそういえば小さいホールケーキ作ってきたのでご飯のあとに食べてみてくださいと言い終わる頃にはワクワクしている普がいた。
ご飯できたよと呼ばれてリビングに行き夕飯を3人食べ始めると良貴が何を話していたんだいと聞かれてルートを見れば私に言ったように言えばいいんですよと優しい声で言われ話すことにした。
話し終わればにぎにぎしたかったなとポツリと言いつつ
「人の体温を感じることは今の義手もできないからね。寂しくて怖い気持ちはあっていい。生身の体と同じぐらい触れていればあまり気にならなくなるかもしれないね。毎日手でも繋ごうかな握り返すことで力の加減も覚えられるだろうし」
「力加減覚えられるの助かる」
そのうち手を繋いで楽しそうにしている2人を毎日見るようになるかもしれないなとルートは思った。
「わぁ」
箱から出てきたホールケーキを見て目がきらきらしている。それを見て良貴とルートもなんだか嬉しくなった。
普が小さい頃、大きなケーキを1人で食べてみたいと言ったことがあった。この頃の普は性別の悩みを持ち始めていて苦しんでいた。叶わない願いばかりじゃないことを教えるためリエンと虎二はケーキ屋さんで買ってきて普の前にさあ召し上がれと置いた。最初は嬉しそうに好きなように食べていたが小さな子のお腹にホールケーキが入る訳がなく普の性格上悪いことをしてしまったとごめんなさいと泣き出してしまった。
良貴とルートが仕事を終えて家に行ったときには泣いていて事情は2人から聞いた。どうにか慰めて残りのケーキを4人が楽しそうに食べきったがまた泣きそうだ。するとルートが普の近くに行き
「普さんにはあのホールケーキは大きかったんです。いつか僕が食べ切れるサイズのホールケーキを作ってあげます。待っていてくれますか?」
「…うん」
ぐすんとちょっと泣き始めていたが自分でも食べられるケーキと聞いてワクワクし始めどんなケーキにするかルートと話しているうちに眠ってしまった。
小さい頃のことは忘れているだろう。美味しいと幸せそうにホールケーキを左でフォークを持ち食べる普を見ながら良貴とルートは別のスイーツを食べる。これもルートが作ったものだ。
「色々作れるようになったんだな」
「家で作れるものはだいたい作れますよ。手に入らない材料のお菓子はアレンジして作ります」
「普が前にクッキー作ってた」
「普さん今度スイーツ作りしてみますか?」
「シンプルなスイーツなら作ってみたいかな。一番はルート兄の作ったやつが食べたい」
ルートが嬉しそうにしているとホールケーキを食べ終えた普が
「本にいつか願いを叶えるために小さなホールケーキを作ってくれるお兄さんがいるって書いてあったけどルート兄のことだったんだね。食べきることができたから僕の夢は叶ったんだね。ありがとうルート兄」
「次は大きいホールケーキを食べますか?作りますよ」
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