上 下
125 / 130
第5章 教会編

ひと段落

しおりを挟む
「よう、中々早かったじゃないか」


「どうしてアンタがアタイ達よりも早く此処にいるんだい!?」


帰ってきたリディア達はボロボロの状態で明らかに疲弊しきっていた

いやぁ、ちょいとやり過ぎた感が否めない
スミレが手伝ってくれたおかげでかなりリアルに出来たけども失敗だった

スミレさんが暴走しそうになるんだもん
止めるのに必死で二重に疲れたよ

海斗の苦笑いを余所にグレンの対応は素っ気なく

「何故と言われてもな、お前より早く納品して戻ってきたからに決まっているだろ」

「そんな・・馬鹿な話があってたまるもんか!大体いつ戻ってきたんだい、明らかにアタイ達より遅く出た筈なのに!」


「確かに遅く出たのは間違いないが、昨日の昼頃には帰ってきたぞ。」

グレンの答えに納得のいかないリディアがプルコ商会の商人を見る

「はい、確かに昨日のお昼頃グレンさんは納品書を持ってこの街に帰られました。
いやぁこんなにも早いとは思いもしませんでしたよ!
これからも是非ご贔屓にさせて頂きたい」

プルコ商会の商人がグレンを褒め称える光景を唖然と見ていたリディア


「な、な、何かの間違いだ!そうだ、何か不正を行ったに決まっている!」

「そんな事する訳ないだろう、至極真面目に配達しただけなのだが?」

「いいや、不正以外あり得ない!アンタ達の馬車は使えないように前日までに壊したし、次の街で下剤まで用意してたんだ
なのに昼にこの街を出た挙句次の街にも寄らずジーナの街にその日の夕方に着いたって?
そんなの不正してなきゃ物理的に不可能じゃないか!そうだろ?アルバさん!」


リディアがプルコ商会の代表であるアルバに問いただした、しかし



「いいえ、グレンさんは不正を行なっておりませんよ、それは私が保証いたします」


おー、アルバさんがリディアの意見をピシャリと切り捨てたよ

「な!?何で・・何でだい?」

「簡単な事です、私もグレンさん達と一緒にジーナまで乗せてもらったのですから」

「は?」

「それにしても、まさかこの対決で暁月組がそのような不正を行なっていたとは思いもしませんでした
荷物を預かるという信用が大事な商売でそのような事をなさる方にはこの先任せられそうにはありませんね」

あーあ、まさか自分から墓穴を掘りにいくとは思ってもなかったよ。


アルバの冷たい言葉と、周りの商人達の視線に気付き血の気が引いていくリディア


「グレン・・アンタ一体・・・どんな手品を使ったんだい」


「手品って程の事じゃないけどな」


そう言いグレンが海斗の肩を叩く、海斗は保存から車をリリースしてリディアの目の前に置いた


リディアは見た事も無い乗り物が現れ今までにないくらい狼狽し目を見開いている


「こ、こ、こ、これ、は」


「これは車って言う名前で馬の要らない別の動力で動く乗り物だよ
ちなみに速度は馬車とは比べ物にならない程速いね
だからグレンは街に寄る必要がなかったんだ」


「そ、そんな乗り物どうやって手に入れたって言うんだい?」


「俺がグレン達の為に造ったんだけど」


「なっ!?」


「いやー、当日まで隠しておいて正解だったよ。壊されずにすんだし」

「ぐっ、だがグレンは馬車で街を出たと聞いたよ!」

「それは護衛達の報告かな?幻でも見たんじゃない?」

実際にはリディアが出ていった後、俺が護衛2人を写真で保存してからグレン達を出発させて、護衛には幻術で作った馬車を追いかけて貰った

「2人揃ってそんな事ある訳ないじゃないか!」

「そんな事言われてもねぇ、起きた事は事実だから」

「くそっ」

リディアが四つん這い状態で地面をおもいっきり叩く

「さて、勝負の結果は言わなくても分かるよな?」

グレンがリディアに最終通知を言い渡すと

「ま、待ってくれ!何かの間違いなんだ!もう一度、もう一度勝負をしてもらえれば」

「そう言われましてもこの乗り物に勝てる見込みはあるんですか?」

アルバさんの一言に顔を顰める

「それ・・は」

「あぁ、今度はこの車を動かせなくさせるつもりですか?」

「うっ!?」

「いくら対決をしても暁月組の信用は取り返しのつかない所まで落ちてますので」

「そんな!?」

「この先この街、いえ、この国で貴女方を雇う商会は無いと心得て下さい」

「そん・・な」

がっくりと項垂れ力尽きたリディアは部下に支えられてその場を後にした


その日の夜


海斗達はアジトで祝勝会をあげていた

「海斗、今回は助かった」

グレンが改めて海斗にお礼を言う

「いいよ、それで暁月組はどうなったの?」

「あぁ、アイツらはこの街から出ていくそうだ。配達業は出来ないから別の仕事をするとは思うが、世間の目は厳しいだろうな」

それはそうかも、この国の商人達に暁月組の事が広まるのは時間の問題だし

どんな職業にしても大変だろうな、もしかしたら別の国に行った方が早いのかもしれない

「海斗、あの車なんだが・・」

グレンは俺が持ってきた車の性能に非常に驚いていた

馬車より速く、揺れも少ないし大型マジックボックス付き

荷物も人も安全に速く運べるのはグレン達の利点となり引っ張りだこになる事請け合いだろうね

車の価値を分かったからこそ、貰っていいのか躊躇しているんだろう

「勿論グレン達の為に造ったんだから使って貰わないと困るよ
取り敢えず3台置いていくから、故障したり困った事があれば学園都市のマツキヨ商会に連絡してくれれば良いよ」

「何から何までありがとな」

「どう致しまして」

グレンと2人話し合っているとレオンが話に入って来た

「海斗、街の出禁も解除できてグレンの手助け出来たのはいいが、何か用事があったんじゃなかったのか?」


・・・・・・


「忘れてた」


グレンとレオンが同時にズッコケる


「いやぁ、色々あったからさ。言い出せなくてズルズル引き延ばしていたらスッカリ」

「おいおい・・」

「俺が巻き込んじまったからな、すまんかった」

「いいよ、ヨシユキの貞操も守られた事だし」

「ははっ、それで?何かあったのか?」

本題を言う為に座り直し、グレンと真剣に向き合う

「ミリィの夢が叶うかもしれないんだ」

海斗の言葉に驚くグレン、徐に海斗の両肩を掴み

「それは本当か!」

「確証は無いけど多分」

グレンは肩から手を離しひと息つく

「そうか、意外と早く見つかりそうだな」

「・・すまん、話が見えないんだが?」

置いてきぼりのレオンは疑問を浮かべ、結局分からなかったので直接海斗に聞いてみる事にした

「ミリィには小さい頃、生き別れた妹が居るらしく、何処に連れて行かれたかは分からなかったみたいなんだ
妹の手掛かりは金の髪とこの腕輪、同じ物を妹も持っているという事だけ
だからミリィは世界を周る夢を持ったみたいなんだ」


「成る程な・・・!?もしかしてあの司祭か!」

「そう、あの司祭はミリィの腕輪について聞いてきた。て事は司祭の近くに妹の事を知っている人がいる筈なんだ。
もしかしたら妹本人の可能性もある」

海斗の説明に納得するレオン

「で、グレンに聞きたいんだけど、もし妹に会ったら此処に連れて来てもいいかな?ミリィが住んでた時の話やお墓参りをさせてあげたいと思うんだけど」

「勿論、構わないぞ」

海斗の質問に笑顔で答えるグレン

「ミリィが死んだ時の事は包み隠さず伝えるつもりだ。それで責められても受け入れるつもりだよ」


「アレは海斗のせいじゃ無いと言っただろう!あれは誰にも予想出来なかったんだ」

グレンは語気を少し強める

「海斗、俺はこの件に関しては部外者だが、今まで話を聞いている限りではどうしようもなかったんだろう?」

「でも、あの時俺がゴンズを殺しておけば」

「アイツは腐っても貴族だ、後で不正が分かったとしてもお前は今頃犯罪者扱いになって、国に追われていたんだぞ
あの時はあれが最善だった。その後の事を予想出来る人間はいない
もし、妹が何か言ってくるのならここに連れて来い。俺達が妹を説得してやるよ。
それでも何か言ってくるのなら俺達も同罪だ、一緒に謝るしか無い」


「グレン、ありがとう」

「おう」

「しょうがない、そん時は俺達も付き合うぞ」

「レオンはとばっちりじゃん、でもありがとう」


その夜はレオンとグレン3人で遅くまで飲み明かした









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

令嬢キャスリーンの困惑 【完結】

あくの
ファンタジー
「あなたは平民になるの」 そんなことを実の母親に言われながら育ったミドルトン公爵令嬢キャスリーン。 14歳で一年早く貴族の子女が通う『学院』に入学し、従兄のエイドリアンや第二王子ジェリーらとともに貴族社会の大人達の意図を砕くべく行動を開始する羽目になったのだが…。 すこし鈍くて気持ちを表明するのに一拍必要なキャスリーンはちゃんと自分の希望をかなえられるのか?!

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

処理中です...