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第4章 帝国編

教会からの招待状

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落ち込む海斗にレオンが溜息をつきながら

「それとな、アルフさんからの報告なんだが・・」


「魔道具は教会に渡ったそうだ」


はい?

無いと思ったら今度は教会なの?教会に何の目的で渡ったのさ

「宝物庫を調べていた第3騎士団でも見つけられなくてな、アルフさんと王宮魔法師団長のダンブルさんで元皇帝のディエゴの所に向かったんだ
そこで一通り拷問も視野に入れて聞き出そうとしたんだが精神をやられたせいなのか、中々反応を示さなかったんだがな・・」

レオンは言い淀んでスミレを見る

「ん?スミレがどうかしたの?」

「いや・・なぁ」



「スミレが自白剤を創り出して吐かせたんだよ」

レオンの言葉を引き継いでヨシユキが答えた

「じ、自白剤!?何でそんな物騒な物作れるの?」


「えっと、リゼルグ酸ジエチルアミドとかチオペンタールは知ってましたのでそれをちょっと体内に入れてみたんです」

「・・そもそも論なんだけど習ったことあるの?」

「いえ、いつだったかお兄に私のケーキを食べられた事があって、また同じ様な事があれば試しーーってなんて事言わせるんですか!・・冗談ですよ?」


いや、てへっじゃないよ!めっちゃ怖いわ

ほら見ろ!ヨシユキなんて青い顔して震えてるじゃないか!

食べ物の恨みってこんなに恐ろしいものなのか!?

スミレさんマジ危険・・

「話が逸れたな。そのお陰で魔道具が教会に渡った事が分かり、その見返りとして剣聖ノブヒロが来たらしいんだ」

成る程ね、しかし一体何のために教会はそんな物を必要としたのだろうか?

行動制限と善悪の判断だろ?

うーむ、謎だ

「海斗君、ちょっといいかな?」

アルフさんがこちらにやって来る

「どうしたんですか?」

「今ね、教会の本部から司祭が来ているんだよ。皇帝に会わせろってさ」

え?またなんてタイムリーな・・

「皇帝が替わった事が分かったのかな?」

「いや、それは無いだろうね。教会の本部から此処まで2週間は掛かるはずだよ、何か用事があっての来訪だろうね」

そりゃそうか、今日起きた出来事を知る術は無い。

「取り敢えずアッシュにお願いして何しに来たのか聞いてみようか」

アッシュは海斗達が話し合っている間に気絶しているユイさんを寝室に連れて行くよう指示を出していた

「海斗さん、母上は無事なようです。何故か心労がたたったと言うことでした、今はリナが付き添ってくれています」

「うん、本当にごめんね」

「?」

マジで反省してます。申し訳ない気持ちでアッシュに司祭の目的や魔道具の事を聞いてもらおうと説明すると

「あの、海斗さん達も参加してもらえないでしょうか?」

「え?いいの?」

「はい、今の僕には外交できるだけの能力はありません。それに信頼出来る人が此処にはいないのです。なので皆さんに是非参加して助けて欲しいと思います」

そうだね、何かあった時に近くに居れば守りやすい

了解して城の中へと入って行く

漫画やアニメで見たまんまの玉座があったのだが、海斗達の攻撃で一部が崩れており、代わりの良さげな会議室を探し司祭を案内する

第3騎士団の兵に案内された司祭は深くお辞儀した後、顔を上げて驚いた表情を見せた

「こ、これはどうゆう事でしょうか?」

真ん中にアッシュ、その両側に海斗やバーンズ達が並んでおり直ぐに王国の重鎮だと気付いたからだ

「前皇帝のディエゴ・グラント様は将軍ドレック殿と共に亡くなられました。
国内でクーデターが起こりまして、剣聖ノブヒロ殿もその争いに巻き込まれ残念ながら・・
こちらにおられますはアッシュ・グラント様です。アッシュ様はディエゴ様の命を受けて我が王国へ救援を求めて来られ、我々が駆けつけクーデターを抑えることが出来ました
その後、アッシュ様が現皇帝となり協定を結び今此処に至るわけです」


おー、オワズさん凄いなぁ。よくもまぁ口が回るもんだ

元から考えていたのだろうか?

いくらアッシュの頼みとはいえ、バーンズさん達と繋がりのある俺達がクーデターに手を貸したなんて事がバレたら侵略とも捉えかねない
しかもノブヒロは教会から来ているのだ。確執が生まれる恐れがある

「ノブヒロ殿とドレック殿がクーデター如きで倒されるとは考えられませんな」

「まあ、人間誰しも思わぬ事が起きるものですからな」

オワズさんはこれ以上は何を言われても情報は出ませんよという無言の圧力を司祭にかける

司祭がバーンズ達を睨みながら海斗に視線が移ると目を見開いて止まる

あれ?もしかしてノブヒロと同郷だと気付いたか?

「貴方は初めて拝見しますね、お名前を伺っても?」

「・・天道 海斗です」

「テンドウ・・ノブヒロ殿と似たような語呂ですね」

「ええ、不思議な事もあるものですね」

しれっと流してみるが司祭は目を細めて海斗を見続けている

「そうですか・・所で海斗殿に1つ質問しても宜しいですか?」

ん?余計な事を口走らない様にしなきゃな

「その左腕に着けられている腕輪は貴方のですか?」

ドキリと思わず金の腕輪に触れる。何故今コレを聞くのだろうか?

ミリィは孤児の集まりで教会とは関係無いはず、何故俺の持ち物だと疑問に思ったんだろう?

何か知ってる可能性もある。出来るだけ嘘は良くないな

齟齬が出ると面倒事になる恐れもあるから当たり障りなくいこう

「えぇ、今は俺のです」

と言う事は前は違う人が?」

「っ!?、そうです。俺の大切な人の物ですね」

「その方は今は?」

「今はもう・・」

「そうですか、辛い事を聞いてしまいました」

そう言いながら司祭が頭を下げた

「いえ、お気遣いありがとうございます」


ちょっと気まずい雰囲気になった所でバーンズが口を開く

「ところで、司祭様は何用でお越しになられたのですか?」

「はい、今度新しく聖女が誕生いたしました。その就任式を行うべく各国に招待状を渡しに参りました」

聖女の就任式?思わずバーンズさんを見る

「成る程のぅ、しかし前までは通達だけじゃったのに何故今回は招待を?」

「今までは神聖魔法の強力な女性から任命しておりましたが、今回は正真正銘の聖女です。
神の遣わした聖女の為、各国へ大々的にお披露目しようとなったわけです。
ちなみに王国へも使者が行っておりますよ」

正真正銘の聖女?あっ!・・マジか

「アッシュ様にも是非出席して頂ければ幸いです。もし宜しければ海斗殿と一緒にどうでしょう?」

各国が集まるのならアッシュの名を広める為には絶好の機会だと思う
そこにアッシュだけを送り出すのは不安が残るし、司祭が良いと言うのであれば俺達が家臣として付いて行くのもいいかもな。魔道具の事もあるし

アッシュも来て欲しそうに海斗を見ているので了解の意を込めて頷く

「では就任式は各国から参加されますので今から2ヶ月後になります。よろしくお願い申し上げます。」

司祭は深々と頭を下げて帰っていった

「海斗殿、ワシ等を王国へ送ってもらえぬかの?陛下に今回の事も含めて話してみようと思うんじゃが」

バーンズさんはダンブルさんとザップを連れて戻るそうだ

アルフさんと第3騎士団、宰相のオワズさんは残って引き続き帝国の復興に協力してくれるそう

海斗はバーンズさん達を送った後、レオン達に会議室であった事を教える

「・・なぁ、海斗さん。まさかとはは思うけど」

「やっぱそう思う?」

「聖女って有りましたもんね」

「マジか、て事は海斗達と同じ・・」

「日本人・・ですよね?」

全員の考えが同じになり一緒のタイミングで溜息をついた

「聖女に剣聖かぁ、多分それだけじゃ無さそうだよね?」

ヨシユキが椅子にもたれかかりながら天井を見る

「剣聖を帝国に遣る位だからね、まだいそうな気はするよ」

「確実に1人は異世界言語を取った奴だよね。ノブヒロが普通に喋ってたし」

「・・面倒事にならなければいいがな」

「レオン止めて!そんなフラグ立てないでくれ!」

「海斗さん、もう遅いかも」

「まぁ海斗さんが行くなら避けて通れないと思いますよ。魔道具の件も振り出しですし」

「止めてあげてメア、海斗さんのライフはもうゼロよ!」



「「「「「はぁ~~~」」」」」


面倒臭い事になりそうな不安を感じる5人だった
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