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第4章 帝国編

救出作戦4

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ヨシユキはああ言っていたけれど、ゴブリンなどの人型魔物と意思疎通が出来る人間では忌避感の壁は厚い

もしかしたら一生消えないトラウマを抱えてしまうかもしれないと思う

俺も覚えている。怒りに支配されていたけれどあの日の事は忘れてはいない

俺の場合はミリィを、大切な人を奪われた怒りがあったからまだ耐えられたし後悔もしなかった

今回はそうではない、助けたい人はいるけれどヨシユキが絶対にしなきゃならない訳ではない。俺とレオンの2人だけでも充分なんだけど

けれどヨシユキの覚悟は本物だった。たった1人の妹だもんな、後悔はしたくないんだろう

躊躇して大切な人を奪われるなら自ら手を汚すか

守りきれなかった俺は何も言えない。その気持ちは痛いほど分かるから

けど、出来る事ならヨシユキには人殺しにはなって欲しくないな。・・これは俺の我儘だと分かってるんだけどもね

海斗達は震えるヨシユキの肩を軽く叩き落ち着かせる

「取り敢えず魔法を使うのはどう?まだましだと思うし加減しやすいでしょ」

「あ、そ、そうだね」

緊張し過ぎて手が震え思考が追いついてないようだ。レオンと見合わせ先行で帝国兵を倒していく

地図を見ながら出来るだけ安全マージンをとって無力化し地面に埋めていく


隠遁の術

面白さで入れていたけれど地面の中も潜れるんだね。今のところヨシユキも上手く加減出来てるみたいで一安心した。レオンもいい感じにフォローしてるし

まぁそれでも慎重に、それでもって確実に倒して埋めていった

数十分後

砦の中や壁には埋められた帝国兵で埋め尽くされていた。

「何か異様な光景ですね」

空間の術で上に避難していたメア達が降りてきて周りの光景にそう呟いた

「あー、夢中でしていたけど冷静になってみると自分でも引いてる」

ま、気がついたとしても脱出出来る奴は1人もいないだろう。理には適ってるはずなんだ、見た目がアレなだけで

「で、これからどうする?逃した帝国兵達は帝都に向かって行ってるはずだ。下手すりゃ戦争になってしまうぞ」

そうなんだよね、レオンの言う事は最もなんだけど仕方ないじゃない。やっちまったもんは

「多分兵を集めて攻めてくるには1ヶ月は掛かるかと思います。ですがその前に僕が兄様に掛け合ってみます、可能性は低いですが・・

けどもし駄目でも王国から目を逸らせて少しは時間を稼いでみせます。」

アッシュは真っ直ぐこちらを見つめてきており、その眼は覚悟を決めているようだ

「お前、そんな事すればどうなるのか分かってるのか?」

ヨシユキが念のため確認してくるがアッシュはしっかりと頷いた

自分の行動でどうなるのか分かっているのか・・

何で小さい子供がこんな思いをしなきゃならないんだよ!


「多分、僕は兄様に処刑されてしまうと思います。出来うる限り海斗殿達の事とは分からないよう証言してみますが、起こった場所が場所だけに難しいと思います。

ですが、時間を稼ぐ事は出来ます!その時間を使って王国側に伝えていただいて準備を万全にしてください。それまでは持たせてみせます」

カタカタと震えながら、それでも力強い言葉でアッシュは海斗達に提案してきた

妹のリナは泣きながらアッシュに抱きついている

「海斗・・」

「海斗さん・・俺」

「「海斗さん!」」


「うん、みなまで言わなくても大丈夫だよ」

此処まできたならしゃーない、喧嘩売るのがこっちからだったって事だし

アルフさん怒るかなぁ?・・いや、あの人は喜びそうだな、戦闘狂だし

「アッシュ、帝都を、お前の兄を倒そう!俺達が手伝うよ」

俺の提案にアッシュは驚く

「そ、それは不可能です」

まぁ、この人数じゃあ現実的じゃないよな

「大丈夫!アッシュも見ただろ?俺達は意外と強いんだ」

周りを見渡してアッシュの不安を取り除こうとするが

「いえ、それでも不可能です。帝都にはこの砦よりも強い帝国兵が1万常駐しており、兄直属の精衛部隊が100人。

それだけなら何とかなると思うのですが兄の側近には2人、化け物がいます。」

2人?

「1人はドレックと言う人物です。王国の方ならご存知だと思いますが、昔騎士団に入って頭角を表し始めたばかりのアルフ殿と引き分けた事のある人物です。」

あー、そう言えばアルフさんがそんな事言ってたね。それは厄介過ぎる

「もう1人は最近入ったばかりの人物でしたがあり得ない程の強さで兄の側近となりました。ドレックと模擬戦をし手も足も出ないほど一方的に倒したのです」

マジか・・て事はアルフさんよりも強い可能性があるのか

そんな奴がこの世界にいるのかよ

「その人物は教会から派遣されてきたのですが兄は教会と何か取り引きをしていたようでした。その過程で護衛と言う名目で派遣されたようです。

兄は教会という大義名分とその人物の戦力によって各国に一気に戦争を仕掛けようとしていました」

たった1人の人物で戦争を仕掛け勝てる自信があるなんてよっぽどだぞ

しかも教会が絡んでるのかよ。厄介だな

「その人の名前はタケダ・ノブヒロ、自身を『剣聖』と名乗っています」

「「「はぁ!?」」」

俺とヨシユキ、スミレは同時に声を上げる

「あー、海斗さん。多分じゃなくても」

「・・同郷だよな」

そりゃ強い可能性は大いにあるわな

ヨシユキもスミレも条件が揃えばアルフさんを倒す事も可能だろう

それに『剣聖』なんてお誂え向きじゃないか!

まーた日本人だよ。トラブルの先に何で居るんだよ

チート持ちだからか?

面倒臭い

教会から派遣って言うのも気になるけど、日本人が1人だけなら何とかなるかもしれない。こっちは3人いるんだし

それならば!

「ま、何とかしてみるしかないよね。名付けて!

『電光石火!将を射んと欲すれば将ごとひっくるめて射ってしまおう』」

こうスドンとね!
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