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第4章 帝国編

10ゴールドの依頼

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「何で冒険者は依頼を出しても受けてくれないの!?」

海斗達が冒険者ギルドの中へと入ると届かないカウンターに爪先立ちで必死にしがみ付き訴えている少年が見えた

「そうは言ってもね、ボクの依頼を受けてくれる人はいないと思うよ」

受付の人が少年に説明していたが、少年は涙を流しながら必死の訴えは続く


どうしたんだろうか?

少年はカウンターから離れて直接周りにいる冒険者達一人一人にお願いしながら回っているが、迷惑そうに冷たく突き放されている

少年は涙を浮かべ、突き放されても諦めずに回っており、とうとう海斗達の所までやって来た

「お願いします。お姉ちゃんを・・ヒック・・お姉ちゃんを助けて下さい」

レオンの膝に縋り付きお願いしてくる少年の必死さにただ事ではないと思い、話を聞く事にした


何でも2日前に白いローブで身を包んだ大人3人が少年のお姉ちゃんを連れ去って行ったそう

少年は追いかけようとしたが街の外に置いてあった馬車に乗り込まれ帝国側へと走り去り去ってしまい、子供の力では追いつく事が出来なかったそうだ

「そいつぁ十中八九帝国の人間だろうよ!そんなトラブルは願い下げだ」

話を聞いていた冒険者が海斗達に捕捉説明をしてくる

偶に帝国の偵察隊が此方に侵入し、情報を持ち帰る為に人を攫っていくのだそう

そして帝国に連れ去られた人達が帰って来た事は一度も無く、途中で奪い返えそうにもそれが原因で攻め込まれる可能性があるので抗議も出来ない

「そんな!?嫌だよ・・姉ちゃん・・うわぁぁぁぁ」

その場で泣き崩れてしまい気まずい空気が流れる

海斗は少年の肩に手を置くと少年が此方を見上げ

「君の名前は?」

「・・ミック」

「ミック、お姉ちゃんの名前を言えるかな?」

「お姉ちゃんの名前はアリス・・です」

すかさず地図を開き縮尺を最大にし、名前を入力する

3つピンが刺さり2つはこの街の中、1つは帝国側へと移動していた

このピンがお姉ちゃんで間違いなさそうだね。今から追いかければ砦の所で取り戻せるかもしれない

けれど

海斗は振り返りレオン達を見る

「皆んな・・ゴメン、アルフさん達にあれだけ言われたのに」

申し訳なさそうに伝えていると

「まあ、それでこそ海斗だぜ!海斗が受けなきゃ俺が受けてたところだ」

「はい、こんな話を聞いて黙ってられません」

「海斗さん、受けよう!」

「兄妹を持つ身としては見捨てられません!」

良かった、いい仲間を持ったよ

「ミック、君の依頼を受けるよ」

少年は驚きギルド内はざわつく

「な、何を勝手に受けてるんですか!貴方達が帝国に乗り込んだせいでこの街が被害にあったらどう責任をとるつもりですか!」

ギルドの受付の人が此方に向かって大声で叫ぶ

他の冒険者達はギルド職員の説明で自分達も危険に晒される事に気付き剣呑な雰囲気に飲まれていく

少年は自分のポケットを探り海斗達に手を差し出してきた。手の平には120ゴールド

「僕の出せる全財産です。足りなければ一生懸命働いて返していきます。お姉・・ちゃんを・・助けて」

ボロボロのお金はミックが頑張って貯めたお金なのだろう

海斗はその中から10ゴールドを受け取り

「確かに受け取ったよ。これで充分過ぎる」

ズシリと重い10ゴールドを見つめて少年を立たせ

「絶対にお姉ちゃんを連れ戻して来るからな、任せろ!」

ニコリと笑うとミックも袖で涙を拭き取り「うん」と大きく頷いた

少年と共に冒険者ギルドを出ようとすると

「待て!」

他の冒険者から呼び止められる

「お前ら本気で帝国に行くつもりなのか?」

「そうだけど?」

「止めろ!この街を、国を戦争に巻き込ませるつもりなのか!その子には悪いが行かせるわけにはいかねぇ」

ガタガタと冒険者達が立ち上がり武器に手を置いていく

ドン!!!!

一際大きな音と共に冒険者達とギルド職員は身をすくみ音の出た中心、海斗を見る

海斗はNFAの双銃02を取り出して最大で1発、上に向かって撃ち抜いた。

天井の一部が吹き飛びその威力に全員圧倒される

「この国にも街にも帝国兵は来させるつもりはない。信用してくれと言っても無理だと思うけど、それでも文句があるなら来い!俺が相手してやる

今非常に多少気が立ってるからな!手加減は一切する気は無い・・それでもいいなら」


撃ち抜かれた天井を見上げ後退りする冒険者達を一瞥し、誰も向かってくる事が無いと判断して外に出た

「海斗がキレたのは珍しいな」

レオンが此方を見ながら珍しいモノを見る目をしている

「彼等の言い分も分からない訳じゃない。だけどミックの前で言ったのだけは許せなかったんだ」

「そりゃそうだな」

レオンはミックの頭を撫でて心配ないと伝えている

ミックを家に帰して宿屋を引き払い街を出る

「今から行っても追い付く頃にはアリスは砦の中だと思う」

「そうか、まぁ何とかなるだろ」

え?いいの?そんなに軽い気持ちで

「いざとなったら砦を吹っ飛ばしてやりゃいいさ!そしたら帝国も伝達しようが無くなるんじゃないか?」

おいおい、何物騒な事を言い出すんだよ

どこぞの破壊神じゃあるまいし

そんな簡単に出来るわけが・・

・・・うん、出来そうだな

東堂兄妹だけでも充分に可能ですね。あれ?それ考えると結構行けそうな気がしてきたぞ

いやいやいや、先ずは隠密行動で救い出すのが一番良いに決まってる

これもフラグなんだろうか?

やだなぁ

嫌な予感がビシビシ感じるよ
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