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第1章 最初の街

別れ、悲しみ、怒り

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一週間、長いようで短い日々だった

けどこの日を海斗は一生忘れる事はないだろう。

出会い、別れ、そして日本にいた時には感じ得なかった感情

その全てが海斗の心に刻まれた


街を出るまでは、何時もの通り路銀を稼ぐ為に魔物討伐の日々を過ごしていた。

ゴンズの屋敷に隠してあったお金はガッツリと回収してるのだが、有るに越した事はないので討伐はしている。

そして、アジトにも足しげく通っている。

ちなみに変幻は早目に解いている。
かなりビックリされたが追求はされなかった。
事情が事情だったしね。


アジトの前に来ると、子供達に駆け寄られて嬉しいのだが、食べ物の人扱いされていた。

まあ、いつも夕食を作ったりお菓子をあげているので何も言えない

今回も飴をあげて喜んでいる子供達を見てから中に入る。

「こんにちは」

「海斗さん!こんにちは」

アニに出迎えられて台所に立つとミリィが夕食の準備をしていた。

「今日は何を作るつもりなの?」

「きょうはデミグラスソースのオムライスかな」

「やっぱり知らない料理ね。何処かで料理人とかしてたの?」

バイトで厨房に入ってた事もあるし、共働きの両親の代わりに一通りの家事はしてたからなぁ

しみじみ思い出しながらそうだねと、答えつつ肩を並べて料理を始める。

「なんか新婚の夫婦みたい」

アニの一言に顔を真っ赤にしたミリィが、アニを追っかけ始めた。

包丁は置いていこうね。凶器だよ

オムライスは子供達も大人達にも好評をいただいた。

帰る時、ミリィから呼び止められる。

あの日見つかって刃を突き付けられた、空き民家の屋根の上に2人座って夜空を見上げている。

「ねぇ、本当に私が付いて行ってもいいの?」

色んな気持ちが絡み合って不安定になっているのか、ミリィの心は揺れてる。

「もちろんだよ。一緒に旅をして一緒に色んな景色や物を観たいと思っているよ。
1人で見る景色より共感できる思い出があると幸せは倍になるよね。それにミリィの夢の手伝いをさせてよ」

「海斗は不思議な人だね」

「えー、いい事言ったつもりだったんだけどなー」

ふふっと笑われて、釣られて海斗も笑いだす。

こんな時間が続けば良いなと、満天の星空の下、遅くまで語らいながら過ごした。







次の日、出発まで残り2日となり旅の準備を進める為に、朝から街で買い物をしていた。

保存の中にある程度の物は入っているし、ミリィには喋っても良いだろう。

後は野宿をする可能性が高いので虫除けや、ナイフ、火の魔道具と水の魔道具を購入する。
火の魔道具は火起こしに使え、水の魔道具と合わせるとお湯を作る事が可能になる。
魔法が使えない人にとって必須のアイテムだ。

しかし、今日は街がざわついている感じがしている。何かあったのだろうか?

買い物を続けていると1人の男が凄い勢いで走っていた。
ミリィの救出の時に一緒にいたダンだ。

「おーい、ダン。どうしたの?」

手を上げてダンに声をかけると驚き、悲痛の顔を浮かべてこっちに近づいてきた。

何だろう。物凄く変な気持ちがする。

ダンはゆっくりと海斗の両肩に手を置いて、目に涙をながしながら口を開く

「いいか・・落ち着いて聞いてくれーーー」

ダンの言葉を最後まで聞くこともなく走り出す。
頭は真っ白だった。

ただただ全速で走る。途中で転けてしまうがそんな事は構わない。早くアジトに向かう事意外は考えられなかった。

アジトに着くと家の外には子供達が居ない。いつもなら寄ってくるはずなのに。

重い足取りで扉を開ける。中には泣いてる声が聞こえてくる。

声のする奥へと歩いていく。すれ違う皆んなが海斗に気付きそして泣いている。

奥の部屋、扉を開けて中に入ると、目に飛び込んでくるのは目を閉じた女性。

金の長い髪が美しく、大人の雰囲気を見せながら幼い夢を持ち続けた人。

これから一緒に旅をしようと約束して満天の星空の下色んな夢を語り合った人。

いつの間にかこんなにも好きになってしまった女性

いつまでも、そしてこれからも目を冷ます事がない。
眠るように横たわっている。

周りには子供達が置いたのだろうか。花が沢山添えられていた。

「ミ・・リ・・」

近寄り頬に触れる。物凄く冷たい

人の体温を感じさせない女性は海斗の返事に答えない。

頭の追いつかない状態で、力が入らなくなり崩れ落ちてしまう。

「海斗・・」

グレンが海斗の肩に手を置き、事の説明をした。

朝、アニとミリィ達はアジトの皆んなの洗濯物を洗いに出かけていた。

その帰り道、目の前にフードを深く被った太めの男が立ち塞がってきた。

「み、見つけたぞ!き、貴様達のせいでワシの人生は終わりだ!そんな事が!ゆっ、許せると思って!たまるものかーー!」

走り出した時フードが揺れて顔が明らかになる。

ゴンズだ。

どうやってか分からないが捕まっていた所から脱走したのだろう。

手にはナイフを持っていた。

そして、女性陣の中で一番小さなアニに向かってナイフを突き出した。

誰もが動けない中、ミリィだけが動きアニを突き飛ばす。

ドンと言う音が聞こえ、周りが静かになるとミリィが、ゆっくりと倒れた。

胸にナイフが刺さっており、少しずつ服を赤く染め上げていく。

女性達の叫び声に周りの人達が出てくるとゴンズは慌て、躓きながらヨタヨタと逃げて行った。

グレンが話し終えると、アニが寄ってきた。

目には涙を流して少し過呼吸気味だ。

「かいっ・・と、さん、ヒック・・ご、めんな・・さい。

私・・のヒック・・力じゃダメ・・だったの」

海斗はアニの頭を撫でてあげると、抱きついて泣き始めた。

「ミリ姉が、ごめんて・・一緒に・・行きたかったって・・」

海斗の中で何かが、弾けた

「グレン、ゴンズは?」

グレンは苦虫を噛み潰したような表情になる

「今、捜索中だが、見つかってない」

海斗は立ち上がりアジトの外へ歩き出した。

「海斗、探すのか?」

「・・ああ」

申し訳ないが1人で探したいと答えて家を出る。
地図でゴンズと検索に入れる。

トッ!

街の端っこにピンが刺さった。どうやら街はまだ出ていないようだ。

SCを起動して走り出す。屋根を超え壁を走り、一直線に向かって行く。

自分の中にドス黒く、ドロドロになった気持ちがドンドンと散り積もっていく。

ピンが刺さった場所に到着する。隣の家の屋根から地図で確認すると、建物の中でピンが移動している。

SCからNFAに切り替えて双銃を構える。

威力は最大限にして全弾打ち込んだ。

「なっなっなんだ!?」

崩れた家の中からワラワラと5人ほど出てきた。
その中の1人にピンがついている。

屋根の上から見下ろし、銃を構える。

「貴様!?その武器は!奴等の仲間なのか!?」

ああ、そうか。あの時は顔を隠していたか

まぁ今はそんな事はどうでも良い。コイツが、コイツがミリィを・・

「ここを嗅ぎ付けてくるとはな。クククッ、あの女はくたばったか?」

は?コイツ今何て言った?

「あのクソアマのせいで計画が狂いまくったんだ!死んだんだろ?胸に刺してやったからな!
しかし、他の女どもが騒ぎやがって!お陰であのチビを拐えなかったじゃないか!」

銃を握りしめる手が強くなる

「もういい・・・黙れ」

ゴンズの前に武装した護衛が出てきて武器を構える

ドン!ドン!

大きな音と共に2人の護衛の頭の上から消し飛んでいった

「ひっ!?ひぃぃ!!?」

ゴンズは腰を抜かして後ずさる。残りの護衛がたじろいでいるうちに屋根から降りて残りの護衛も撃ち抜いた。

壊れた家、身体の一部が消し飛んだ護衛の遺体が4つ

ゴンズは恐怖に陥り、四つん這いになってその場から逃げ出していく。

ドン!

「え?う、うぎゃぁぁぁあ!!?」

ゴンズの太ももが一部抉れ血が噴き出した。

双銃からビームサーベルに切り替える。

「ひっ!?」

あの時の事を思い出したのか震えだす。

今度は気絶せず叫び声を上げてきた。煩いな

ゴンズの右手を斬り飛ばす。切り口は焼け焦げ出血は少ない。

ゴンズは痛みで地面を転がっている。
なので思いっきり横っ腹を蹴り上げた。


ゴンズは胃の中を吐き出して、なんとか逃げようと抉れた足を引きずりながら逃げようとする。
すぐさま反対側の足を斬りとばされ、地面に倒れ込んだ。


「ぐぁぁっ!?痛い痛い痛い!!

・・くそっ!そうだ!金をやろう!だからワシを逃せ!金があれば何でも欲しいままだ!
金があれば女もいくらだって手に入るぞ!あんな女よりいいおんーー」

「黙れ!」

左腕を肘から斬り飛ばした。そしてゴンズの頭を踏み付けて見下ろす。


「お前の事は!許す気も!命乞いを聞く気もない!絶望しながら死んでいけ」


「なっ!?何をする気だ!」

カシャ

ゴンズを写真に保存する。

そろそろ音を聞きつけて人がやってくるだろう。
SCに切り替えて街の外に出て少し移動した


空を見上げて大きく深呼吸をする。

そして、見える範囲のギリギリでをリリースした。


そこは上空1500m
たった17秒の死へのダイブ

ゴンズの血の気は引き、初めての浮遊感と、いきなり空中に投げ出された混乱も相まって、恐怖が込み上げてくる。

「あ!?あっあぁぁぁぁぁぁ嫌だーー!!?」

ゴンズに両手はない。足もない。そもそも回避すべき方法が無い。
為すすべも無くなったゴンズは迫り行く地面を見続けるしかない、その命の最後まで。



海斗は落下地点に立っている。

潰れ、塊となった残骸を見ても、胸に溢れたこの黒い気持ちは消えることはなかった。





ただ空を見上げ、一緒に居たかった女性の笑顔が浮かんで泣き続けるだけだった
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