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第1章 最初の街

カレーの魅力

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海斗が捕まってから数時間後、陽も落ちてき空がオレンジ色に染め上げられたころ、アジトに子供達や大人が増えてきた。

仕事に出ていた者や、まだ小さい子供達の面倒を見ていた者、
各々がその役割を果たして夕食や寝床の準備を始める。

海斗は最初に捕まった部屋から動く事は出来ず、ただ座っているだけなのだが、やはりお腹は空いてくる。

外からスープの匂いが部屋の中に充満してくると食欲を刺激しお腹がぐぅとなってしまい苦笑いをしてしまう。

流石にお腹空いたけど、こんなに大人数だと食費もバカにならないだろう。

自分の分は自分で賄わないと出してはくれないだろうなと思い、写真の保存から食材を出そうと思ったのだが、

いきなり出したら警戒度を上げられてしまうだろう。

折角緊張感も少し下がってきたのに、ここで振り出しに戻るのはいただけない。

変幻で姿は変えてるし写真の保存は初めて見せるから襲撃時の人物と同一とは思わないだろう。

「ちょっといいかな?」

海斗の問いかけに見張りの人達が耳を傾けた。

「流石にお腹空いてきたんだけど、ご飯を食べても良いかな?」

「ん?お前身体検査した時何も持ってなかっただろ?バッグの中も空だっだぞ」

確かにバッグの中は何も入れてなかったね。

「空間の中に収納してるんだよ。だから先に聞いてから取り出そうと思って」

見張りの人達がビックリして、1人が部屋を飛び出していった。

暫くするともう1人連れて帰ってきた。最初に尋問をしてきた男の人だ

「君、時空間系のスキルを持ってるんだって?」

時空間のスキルとかあるんだ!この世界のスキルをもっと調べないといけないな。

「まぁ、似たようなものですね。で、取り出してもいいですか?」

「なら一つずつ目の前に取り出してくれ。下手な真似はするなよ」

見張りの人達は壁際に寄って警戒をしている。

何が起きても直ぐに対処できるように武器を握りしめていた。

どちらにせよ降り出しに戻ってしまったと苦笑いしてしまう。

尋問をしていた男と海斗を捕まえたミリィが近くにいて、海斗が出す食材を確認する事になった。

後ろ手で縛られていた縄を前に縛り直して、テーブルに1個づつ食材の名前を言いながら出していく。

鍋や包丁、まな板は向こうが用意してきたのでコンロや調味料などはこっちで出す。

人参、玉ねぎ、肉は贅沢に牛の塊肉を出した。
そしてカレールー。ルーは市販の中辛、トマトで煮込んだカレールーにした。

「ここで君に包丁を持たすわけにはいかない。ミリィに料理をさせる」

「それでいいですよ」

海斗が料理の手順を教えてミリィが作っていく。

ミリィも毎日料理を作っているのか手際がいい。

指示を出しながら何気にふと思った事を口に出した

「そういえば、同世代近くの女の子に手料理作ってもらうの初めてだなぁ」

ミリィは急に顔を真っ赤にして包丁を向けてくる。

その横で男が腹を抱えて笑っていた

「はははっ、ミリィ!よかったな。お前の夢が1つ叶ったじゃないか」

「う、うるさいよ!グレン。そ、それ以上言うなら今日はご飯抜きだよ」

グレンは両手を上げて降参の形をとる。

流石に包丁を向けられている状態でこれ以上つつくとシャレにならなさそうな気がしてきたからだ。

ミリィは顔を真っ赤にさせながら料理を再開する。

後はご飯はやっぱり土鍋じゃないと!

と、力説して炊いてもらった。今は火から下ろして蒸している状態だ。


ミリィは不思議な料理を作りながらアレコレと海斗に質問していた。


土鍋はお焦げが付くのでカレーと相まってワクワクしている。


カレールーを入れコトコトと煮ていると、カレーのいい匂いが部屋の中に充満してきて、部屋のいたるところからお腹の音が聞こえてきた。


「な、なんだこの食欲を刺激してくる匂いは!?」

「ヤバイ!どうしようもなく腹がへってきた!」

「何という匂いの暴力・・腹減ってきた・・・」

外にも匂いが漏れていたようで、小さな子供達がドアの隙間からこちらを覗いていた。

「ねー、兄ちゃん達この匂いなにー?」

「凄く美味しそうな匂いがするー」

「ミリ姉、それ何ー?」

ワラワラと集まってきた子供達を宥めながらグレンがこちらを見てきた。

「なあ、それは一体何を作ったんだ?初めて見る料理なんだが?」

「カレーっていう俺の故郷の料理なんですよ。色んなスパイスで作るスープですね」

ちょうど良いタイミングで出来上がったのでカレーを小皿に入れ一口味見する。

うん、美味い!異世界でいつものように故郷の料理が食べれるって幸せだよね

ミリィも味見をしてもらうと、ビックリした表情で海斗をみた。なのでサムズアップして答える

「すまないんだが、それを少し貰ってもいいだろうか?」

グレンが子供を抑えきれなかったらしい。
子供の食欲は時に大人の想像を超えてくるものらしい。

今回作ったのは頑張っても3人前だ。一口だけでも小さい子達には回らないだろう。

海斗は大きく溜息をついてミリィの方をみる。

「大きな鍋はある?後は人手を用意してくれる?」

グレンは驚き、ミリィは目を見開いた後、破顔して部屋を出ていった。

その間に必要な材料を足していく。

「い、いいのか?」

グレンは少し罪悪感があるのか申し訳なさそうに聞いてくる

「まあ、子供には何の責任も無いですし、いっぱい食べて喜んでもらえればいいですよ」

「・・すまない。ありがとう」

それから3人女性がやってきてミリィ指導のもと、テキパキと料理を作っていく。

土鍋もズラリと並べてご飯を一斉に炊いた。

まさか米一袋全部使う事になるとは思っても見なかったよ

皿を用意してもらい、ご飯とカレーを半々に入れて全員に行き渡る。

大人達はカレーの色に戸惑いを隠せなかったが、子供達は美味しそうな匂いの前には逆らえず一口食べると、後はもう一心不乱に食べていた。

「なにこれ!?ウマー!」

「泥みたいな色なのに美味しい!」

「こんなに汚い色いのに何でこんなに美味しいの?」

酷い言われようである。

だけどどこの世界でもカレーの魅力には勝てないもんなんだね。

子供も大人もいい笑顔で食べている。

ま、子供達の笑顔を見れたから提供した甲斐はあったかなと眺めて自分のカレーを平らげた。
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