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7 荒野その7
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6 再び修行の場へ。
修行の場で全滅しかけてから五日が経った。
「マスター。遂にマスターの剣が出来たぞ!」
地上で訓練をしていたら、俺の元にキンカとキリが駆け付けた。キンカは剣を、キリは鞘を持っていた。
「ありがとう、キンカ。それは、凄そう、というか、やけにゴージャスな剣だね」
キンカが持って来た剣は、ピカピカの金色だった。更に、刀身にはいくつもの宝石がつけられている。
「ああ。これは宝石刀剣ハンドレッドジェム。強力な魔剣だ」
「そんな凄いものを俺にくれるのか」
流石は生み出すのに五日程かかった剣だ。
「さあ、マスター。試しに振ってみてくれ」
「ああ、わかった」
キンカから剣を受け取り、振る。すると、振った剣からビームが飛んだ。
三日月形の光が、一直線に飛ぶ。そして、20メートルぐらい先のところで空中で消えた。
俺は当然のように驚く。
「い、今の光は?」
「ビームだ」
「説明詳しく」
「宝石の力が発揮されて、ビーム攻撃になるのだ。ちなみに剣が空振りにならず敵に当たったら、そのビームの力は飛ばずに刀身の強化に使われ、切れ味が上がる」
「ダメだ、説明されてもわからない」
つまり、この剣はビーム兵器なのか?
「マスター。これが剣の鞘となります。光影樹の幹から作った特別な鞘です。これで魔剣の力を封印し、安全に持ち運ぶことができます」
「あ、ありがとう」
なんだか凄そうな鞘を、キリから受け取る。
「ハンドレッドジェムは魔剣であるが故に、普通の鞘にしまっていても自然とそれを壊してしまう。鞘はどうしてもキリが作れる、特別なものが必要だったんだ」
「俺、そんな強すぎる剣を望んでたわけじゃないけど。でも、ありがとう。これが二人の気持ちなんだね」
何日もの間俺のためにこれらを作ってくれていたんだ。普通にうれしい。
「そうだ、マスター。できればいっぱいほめてほしい」
「マスター、私達、一生懸命頑張りました♪」
キンカとキリにそう言われる。
「うん。キンカ、キリ、ありがとう」
俺はそう言って、剣を鞘にしまって背中にしょってから、二人の頭をなでた。
「ふふふ」
「幸せです」
キンカとキリはうれしそうにしている。良かった。けど、この程度で皆からの気持ちに応えられているとは思えない。
俺はもっと、皆のことを大事にして、皆との時間を過ごさないといけないな。
魔剣は面白かった。
何度も振れば、その分ビームが出る。ビームが出るだけで、凄く楽しい。たくさん剣を振って、ビームが出まくるのを見て楽しむ。
おっと、いけないいけない。つい夢中になってしまった。
「なあキンカ。このビームはエネルギー切れとかあるのか?」
「いや、ない。そのビームは無限に出る。ただ私の力が足りなかったせいで、その出力、大きさのものしか出ない。今より更にレベルが上がったら、また新しい剣を作ってマスターに贈ろうと思う」
「それでも凄い威力だよ。あ、でも、まだ威力を計ってはいないかも」
「でしたら、今的を用意しましょう。まず一つ置きますね」
キリはそう言うと、数秒で目の前に木の的を用意した。そして、的から遠ざかる。
「さあ、マスター。的を狙ってみてください」
「ありがとうキリ。それじゃあ、いくよ」
そう言って俺は一度気分を落ち着けた後、俺から離れた所にある的を狙って剣を振った。
ビームが的に当たる。そしてビームは消え、的は特に壊れないままその場に残った。
俺は黙って的に近づく。
すると、よく見れば的にうっすらとビーム跡のような傷が残っているのを発見した。
「ほんの少し、的は傷ついている。威力は、高くはなさそうだな」
「うぐうっ」
キンカがくやしそうにうめいた。
「し、しかし、今私が用意した的はかなり本気で生み出したものです。その防御力は高く、ひとえにビームの攻撃力が低かったとは言い切れません」
キリが慌てて言う。そうか、堅めの的だったのか。それでも、ビームが強いという印象はもてないが。けど、次にもろい的を用意されても、威力を試す実感は小さいだろうなあ。
「なるほど。キリの言いたいことはわかった。でも要するに、このビームで調子にのってはいけないということだよな」
「それは、おそらくそうとは思いますが」
「マスター、次は的を、直に剣で斬ってみてくれ!」
キリがうなずいた時、キンカが新たな剣の可能性を示した。
「その剣の斬撃はビームの力で強化もされる。その的も、剣自体の切れ味にはかなわないはずだ!」
「キンカ、必死ですわ」
スイホがぽつりともらした言葉は、聞かなかったことにする。
「わかった。確かに俺はまだ、この剣の切れ味を確認してはいなかった。では、いくぞ!」
俺はもう一度気分を落ち着かせて、剣で的を斬った。
すると光り輝く斬撃が、的を見事に両断した。
キンカを見ると、物凄くうれしそうにしていた。
「うん。凄い威力だ。キンカ。改めてありがとう。こんなすごい剣をもらえて、俺は幸せ者だ」
「ああ、その言葉、ありがとうございます。マスター。私も作ったかいがあった」
キンカが喜んでくれて、俺もうれしい。
しかし、こんなにも強い剣をもらっておいて、俺は宝の持ち腐れにしてしまわないだろうか。少し不安だ。
お昼ごはんを食べていると、ダイヤモンドワイバーンが帰って来た。
それを見て、俺達はすっごく喜ぶ。
「おかえり、ダイヤモンドワイバーン!」
「ギヤアアーン!」
「帰ってきたということは、修行の場のモンスターがリセットされたということだな?」
ヒイコがそう訊いた。
「ギヤアアーン!」
「マスター。ダイヤモンドワイバーンは、そうだと言っている」
ドキがそう言った。
「ああ、わかった。それでは、皆。昼ごはんを食べ終えたら、すぐに全員で修行の場に行くぞ!」
「イエスマスター!」
「ワン!」
「ギヤアアーン!」
「マスター、私はまだマスターの鎧を作る仕事が残っている。それを早く終わらせてしまいたいのだが」
「マスター、実は私も、地下への階段を小屋で隠してしまいたいと考えているのです。今手をつけても、よろしいですか?」
「わかった。キンカ、キリ、君達には君達にしかできないことを頼む。留守番、任せたよ」
こうして俺達は、今日もキンカとキリを置いて、修行の場に二回目のお世話になりに行くのだった。
長い道を走って、修行の場に到着する。
そこには確かに、最初に見た時と同じ、人型土人形の姿がちらほら見える。
ようし。それじゃあもう一度、土人形達と勝負だ。
俺達は以前よりも少しレベルが上がっている。今回はレベル51だと思われる、あの鳥型土人形を安全に倒しきりたいと思う。
「よし、皆。早速モンスターを倒しまくれ!」
「イエスマスター!」
皆が土人形に殺到する。俺は後ろで、即座に増援を召喚だ。
「フレイムピラージャイアント、召喚!」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それが炎の巨人に変わる。
「フレイムピラージャイアント、皆と一緒に土人形を倒せ!」
フレイムピラージャイアントは俺に手を上げて返事をすると、すぐに土人形達の元へと向かった。
そしてすぐに皆は人型土人形を百体倒し終え、次の剣盾装備土人形をお出迎えする。
その敵をフレイムピラージャイアントが拳で押しつぶすと、新たに剣盾装備土人形が複数体現れ始めた。やはりここら辺は簡単すぎる程に敵を倒せるな。こうも強い弱いがハッキリしていると、やはりレベル差というものはかなり重要に思える。
「あ、そうだ。マスター、マスターも敵を倒しますかー?」
「え?」
急にスイホにそう言われ、虚をつかれる。
「確かに、こいつらはマスターの良い相手になりそうだな」
「マスター、ご決断を」
ヒイコとドキにもそう言われ、俺はその気になって、キンカからもらったばかりの剣を引き抜いた。
「よし、わかった。折角だ、レベルが下とはいえモンスターを相手に、俺の実力がどこまで通用するか確かめておこう。皆、悪いが少しの間手出し無用で、俺の戦いを見守ってくれ!」
「イエスマスター!」
それじゃあ、初めての実戦スタートだ!
「うりゃあー!」
俺は走りながら剣を振って、まずはビームで土人形をけん制する。
すると、ビームはたった一発で土人形の一体を両断した。
ビームを受けた土人形は呆気なく崩れ落ちる。
「う、うそっ」
そう思いながらも、どんどん剣を振るう。
すると、土人形達は全てあっけなく倒れていくのだった。
「いいですよマスター、その調子ー!」
「マスター、がんばれ」
「良い感じですよ、マスター!」
美少女三人からの応援もあり、俺はだんだん楽しくなってきた。
気分は無双系のゲーム、それもリアルでだ。一撃で敵が倒れる。超面白い。
夢中になって、百体の土人形をビームで倒す。すると今度は、大型四足獣土人形が現れた。
すぐさま今までと同じように、土人形に向かって剣を振る。すると、このビームでも土人形は一撃でやられ、また新たな土人形がどんどん現れた。
凄い。この剣、ひょっとしたらかなり強いんじゃないか。ビームがキリの生み出した的を壊せなかったというイメージが、みるみる内に塗り替わっていく。
おっと、けど今優先すべきは、更なる仲間の召喚だ。再召喚までに必要な時間は一分。百体の敵を一体一秒使って倒していても、もうとっくに一分は過ぎている。早く召喚しなきゃ。
「スイボツジャイアント召喚!」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それがスイボツジャイアントに変わる。
「スイボツジャイアント、あの前戦った鳥モンスターが出てくるまで、待機しててくれ!」
そう言ってから、俺はすぐまた四足獣土人形を倒すことに専念する。
剣を振るだけで敵が倒れる。まだまだ楽しめるぞこれ。皆には悪いが、もっとこの気持ちを味わわせてもらおう。
そして、四足獣土人形があと三体となり、もう新たな土人形が現れないことを確認したところで、また新たなクリーチャーを召喚する。
「フォレストジャイアントを召喚!」
すかさず残りの四足獣土人形を倒しきる。そして次に現れた双頭獣土人形にビームを放って、それが土人形をかなり傷つけた程度で消えたのを見てから、俺は一気に緊張した。
しまった、とうとう土人形がビームに耐えられるレベルにまで強くなった。おそらく、ビームはレベル21までのクリーチャーなら瞬殺で、レベル31以上のクリーチャーには有効打程度にしかならないんだ。
そう思っている内に、土人形が俺に向かって迫る。
「うわあ!」
「がんばれマスター!」
「マスターなら、勝てる」
「マスター、訓練の成果を今出すんだ!」
皆は応援に力を入れていて、俺を助けようという意思はない様子。こ、こうなったら俺一人であの土人形を倒さないと!
土人形のとびかかりを、かろうじて回避する。何回もウッドルフにとびかかってもらったおかげで、ギリギリ回避することができた。緊張と恐れが無ければ、もっと上手くかわせただろう。
だが、その直後にくりだされた二本の尻尾攻撃に、俺は反応できなかった。予想外だったのと、かなり速い攻撃だったため、体が動かなかったのだ。
俺は防御することなく、尻尾攻撃を受ける。しかし予想した痛みは、全く感じなかった。
土人形の攻撃を、9枚ある内1枚のターゲットが防いでいたからだ。しかも攻撃を受け止めたターゲットは、壊れなかった。
「え?」
俺が驚いている内に、土人形の二つある口が迫る。しかしその両方の口攻撃を、またもやターゲットが守ってくれた。しかも、ターゲットはなぜか、壊れない。まだ9枚のままだ。
「こ、これはもしかして、相手のパワーが低すぎて、ターゲットが壊れないっていう現象?」
「イエスマスター。その通りです」
久しぶりにとっ君の声を聞いた。
「そ、そうか。そういうことなら、俺はもう恐れない!」
俺は力強く踏み込んで、剣で直に攻撃する。
すると、あっさり土人形は両断され、残った体はボロボロと崩れ落ち、消滅した。
「つ、強い。神様からもらった特殊能力。レベルが上がれば上がる程、レベル下の相手からの攻撃を全てターゲットが受け止めてくれるのか」
「マスター、次の敵が現れますわー!」
スイホの声を聞いて、はっとする。
「わ、わかった。けど、俺はもう戦いはやめておこうか、いや、まだアースジャイアントとメタルギアジャイアントを召喚していない。それまでの間、皆俺の戦闘の練習相手になってもらおう。もう少しだけ、戦うぞ!」
俺は覚悟を決めて、駆け出した。新たに現れた四足獣土人形達も、俺や皆めがけて走る。
皆は、回避したり、ケガなく攻撃を受け止めたりしている。そんな中、俺は慎重に回避重視で動きながら、剣で斬って土人形を倒しまくった。
ターゲットがあれば、守りは万全。でも、それでは俺の訓練にはならない。できるだけ敵の攻撃を回避しながら、相手を倒していく。
そうしながら、俺は途中でアースジャイアントとメタルギアジャイアントを召喚した。そして、そろそろ土人形が復活してこなくなったことを確かめると、鳥型土人形が現れる前に、更なる準備をするため、一旦全員で修行の場から離れ、そこでじっと次の召喚を待った。
そして更に五分後、俺はこの場に、ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、スプラッシュドラゴン、ジュレイドラゴン、サガンドラゴンも召喚する。
これで本番への戦闘準備を整えた。ドラゴン5人、ジャイアント5人、美少女3人、更にダイヤモンドワイバーン1人の総勢14人。ウッドルフだけ俺を乗せて、待機してもらう。
前の時は、ドラゴン2人、ジャイアント5人、美少女5人、ウッドルフ、ダイヤモンドワイバーン、イルフィンの15人だった。戦力としては、きっと今回の方が強いはずだ。
「よし。皆、準備は整った。もう全力で敵を攻撃して、早く鳥型土人形を迎え撃とう!」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
俺が既に結構多くの土人形を倒していたから、皆が攻撃を始めると、すぐに大きな鳥型土人形が現れた。
その姿を見て、前回やられたことを思い出し、不安におそわれる。今の戦力で本当に大丈夫だろうか。いや、きっといけるはずだ。チャンスカードも8枚フルに使える。戦況を見ながら使おう。
俺の目の前で、皆と土人形との戦いが始まった。
まず皆が近づきながら、土人形に向けて属性攻撃を浴びせる。
それだけで、土人形は爆砕した。
「レベルアップしました」
うん。とっ君からも土人形を倒したという証言を得る。
あれ。
なんか、簡単すぎない?
「マスター、無事リベンジを果たしましたー!」
スイホが言う。あ、うん。なんだか、拍子抜けしたな。
「折角なので、更に戦闘を続けるぞ!」
ヒイコが言う。えっ、それはちょっとまずくない?
「大丈夫、皆。もしまた前みたいに調子にのってピンチになったら」
「きっと大丈夫。この戦力なら次の中ボスも倒せる!」
ドキが言う。そ、そうかな。いや、そうかも。さっきは超簡単に倒せたんだ。まだチャンスカードもあるし、いけるか?
「ワン!」
ウッドルフが、心配するな。とでも言うように声をかけてきた。うん。そうだな。それじゃあ、挑戦してみよう。でも、やるなら全力でだ。
「わかった。けど皆。やるからには全力でやろう。最大召喚数の30人で挑むんだ。そうじゃなければ、俺は安心できない」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
皆から了承をもらう。なので、俺は一度召喚をリセットし、今から一時間待つ。
留守番してくれていたキンカとキリには、後で謝ろう。
「スイホを残して、召喚終了!」
「イエスマスター。またのご利用をお待ちしております」
目の前で皆も消える。ウッドルフも消える。ありがとう、皆。そして、これからもよろしく。いや、これからが本番だ。
今の俺のレベルは、49か。前回はさっきの鳥型人形を倒す時、レベルは41で、相手とのレベル差は十あった。これから俺達は、レベル61の敵を呼び出そうとしていて、そのレベル差は12だけど。
きびしいけど、30対1で挑んで、更にチャンスカードも8枚全部使えば、きっと勝てると思う。
今修行の場には、新しい鳥型土人形が大量に生み出ている。スイホはそいつらを見て言った。
「マスター、皆の召喚を待っている間、あの敵を99体倒していていいですか!」
「わかった。それじゃあ頼む、スイホ。でも、無理はするなよ」
「イエスマスター!」
早速スイホが戦い始めた。
それと同時に、土人形達が空を飛んでスイホをおそう。すると、すぐにスイホがこちらに逃げてきた。
「ちっ。あいつら、数がいるからって調子にのっていますわ」
「どうやら、スイホだけじゃあの敵全員を相手にするのは無理そうだね」
「イエスマスター。仕方ありません。ここから倒していきます」
そう言ってスイホは、俺の目の前で水をとばして土人形を倒していく。土人形達は修業の場の外には来ないから、一方的な戦いとなった。
けど、一撃で敵を倒すことはできなかった。なので、時間をかけて一体ずつ倒していく。
スイホが99体敵を倒す頃には、一時間経っているかもしれない。そう見当をつけて、じっと待つ。
そして、スイホが土人形を倒していると。
「レベルが上がりました。レベルが上がりました」
俺のレベルが、51になった。
これで少しは、レベル61の土人形に勝てる可能性が上がっただろう。少し自信がつく。
更にスイホは攻撃を続け、やがて土人形が最後の一体になった頃、俺は召喚を試した。
「キリ、召喚」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それがキリになった。
よし、一時間経ったみたいだな。
「キリ、ごめんね。留守番させていたのに、こうして呼び出しちゃって」
「マスター、そのようなお気づかいは無用です。私はマスターの駒。いかようにもお使いになられてください」
「そう言われると助かるけど、同時に困るから、そういう認識はNGで」
その一分後、キンカも召喚して、今回の召喚を謝る。
それから27分かけて、俺の理想とする大戦力を整えた。
ドラゴン十人、ジャイアント十人、美少女五人、ダイヤモンドワイバーン、更に初召喚となるファイアワイバーン、ロックワイバーン、ウッドワイバーン、ウォーターワイバーン。合計30人召喚する。
5コストのクリーチャーはドラゴン、ジャイアント、美少女の三種類だけなので、残る五人は各属性の4コストワイバーンにしてみた。きっとこれだけ集めれば、61レベルの相手にも勝てると思う。
「よし、皆。これが今の俺が集められるギリギリの戦力だ。皆、いけるな?」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
皆やる気がみなぎっているようだ。俺はうなずいた。
「それじゃあ、頼むぞ。皆、攻撃開始だ!」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
こうして、30人のクリーチャーは修業の場に入っていった。
最後の一体残っていた土人形が、皆の属性攻撃を浴びてあっけなく消し飛ぶ。そしてすぐに、皆の前に一体の巨大な土人形が現れた。
鳥の頭と翼を持った、人型の土人形。両手には一本ずつ槍を持っている。そして、ジャイアント達よりも頭一つ分大きい。
そんな土人形を、皆が取り囲んだ。ジャイアント十人が壁となり、他の皆が空中から属性攻撃を放つ。
土人形はジャイアント達のパンチと属性攻撃を浴びながら、二本の槍でまずアースジャイアントの一人を攻撃した。
「あ、あっさりジャイアントにダメージを与えている」
約十秒後。俺は目の前で、アースジャイアントがやられて光になる光景を見届けた。
十秒で一人倒すのか。それじゃあ最悪の場合、五分で皆やられるな。
切り札を出し惜しみしている場合ではない。すぐにチャンスカードを使用する。
「俺はチャンスカードを8枚使用する。メタルギアジャイアント、フレイムピラージャイアント、スイボツジャイアント、フォレストジャイアント、ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、ジュレイドラゴン、スプラッシュドラゴンを強化!」
そう言うと、今言った皆が光った。光の戦士となった8人が、ここぞとばかりに猛攻を加える。
そしてもう、俺にはやることがない。また見守ることしかできない。あの強さと大きさのモンスターが相手では、俺の実力では手も足も出ないだろう。ジャイアントだって十秒でやられているのだ。
だから俺は、必死に皆を見守った。お願いだ、勝ってくれ皆。そして俺は、皆が帰ってくる姿を見たい。
戦況は、一分後から変わっていった。
パワーアップしていた8人の光が消え、皆の強化状態が解除されたのだ。そして、それを機に一人、また一人とやられていく。その後一分で、ジャイアント6人が倒された。
だが今土人形は、体のあちこちにヒビが入っていた。きっともう少しで勝てる。皆、もう少しだ。
土人形が八人目のジャイアントを倒し終えた時、皆の攻撃が苛烈になった。すると、土人形の動きが止まり、苦しむ。
次の瞬間、土人形は爆砕した。
「レベルアップしました」
そのとっ君の声を聞いて、更に俺は安心した。ジャイアント8人がやられたのは悲しいけど、他の皆は無事だ。俺はそれを、素直に喜ぶ。
まだ修行の場にはモンスターが現れるけど、そいつらにおそわれるより前に皆が俺の元まで飛んでくる。
やっぱり敵は強かった。けど、勝てて良かった。皆の努力が、報われて良かった。
でも、もし次があればその時は全員が戻ってくる姿が見たいな。
「よくやった、皆!」
「イエスマスター!」
「ギヤアアーン!」
俺は生き残った皆を見て、自分達が強くなったことを実感した。
おまけ。ターゲットブレイクルール(仮)
0ー1 デッキを40枚用意します。内9枚はターゲット、31枚がメインデッキです。
0ー2 デッキは自分から見て真ん中手前に置きます。ターゲットは自分から見てデッキより右上に、縦3、横3枚ずつ、9枚並べます。
1ー1 ゲーム開始時、自分、対戦相手と共に自分のデッキからカードを引いて手札を6枚にします。
1ー2 手札のカードをデッキの左、ステージに出し、召喚します。この時、召喚できるまでは5コストまでです。(5コストカードは1枚、1コストカードは5枚まで召喚できる)
1ー3 ステージにあるカード(クリーチャー)を1枚以上選んで、それ以外の召喚したカードをデッキより左上(場)に移動させます。ステージに残ったカードは全てタップし、そこで相手のターゲットを1枚選択します。この行為を、攻撃と呼びます。ただし、この時自分のステージにカードがない場合、自分の攻撃は行われません。
1ー4 互いに選んだターゲットを表向きにします。この相手ターゲットのパワーと、自分ステージにあるカードの合計パワーを見比べて、ステージ側のパワー数値が相手以上なら攻撃成功となります。ただし、ターゲットのパワーの方が高かった場合、攻撃失敗となります。
1ー5 攻撃成功した場合、そのターゲットは破壊され、チャンスカードとなります。チャンスカードはデッキのすぐ右(チャンスゾーン)に置かれます。チャンスカードを使う時は、チャンスカードを更に右(チャンス使用ゾーン)に置きます。また、攻撃失敗した場合、ターゲットは破壊されず、表向きのまま残ります。
1ー6 攻撃を終えてタップ状態となったカードは、全てデッキより左上(場)に移動させます。その後、次の攻撃を行うカードを場から選び、ステージに移動させてから新たに攻撃を行います。もちろん表向きとなったターゲットを攻撃することも可能です。
1ー7 好きなだけ攻撃を繰り返します。ただし、タップ状態の場のカードはステージに移動させることができません。
1ー8 攻撃が互いに終わったら、次のターンとなります。デッキからカードを引いて手札を6枚にし、(手札が6枚以上ならドローできない)その後場のカードを全てアンタップします。そうしたら、1ー2に戻ります。
2ー1 先に相手のターゲットが全て無くなるか、相手のデッキが無くなったら自分の勝ちです。
2ー2 相手と同時に勝利条件を満たした場合、決着タイムとなります。自分の手札、もしくはデッキの一番上のカードを一枚、相手と見せ合い、どちらかのカードのパワーが上であれば、その方が勝ちとなります。引き分けなら、更に繰り返します。お互いに出せるカードが無くなった時は引き分けですが、先に勝利条件を相手より多く満たしても勝ちとなります。
2ー3 カードの効果にはそれぞれ発動タイミングがあります。ターンの開始時、攻撃時、ターン終了時。それぞれの効果のタイミングで使ってください。また、効果によっては、攻撃の成功判定を逆転させるような効果もあります。
2ー4 手札や場でカードが破壊された時、破壊されたカードはデッキのすぐ下側、破壊ゾーンに置かれます。
修行の場で全滅しかけてから五日が経った。
「マスター。遂にマスターの剣が出来たぞ!」
地上で訓練をしていたら、俺の元にキンカとキリが駆け付けた。キンカは剣を、キリは鞘を持っていた。
「ありがとう、キンカ。それは、凄そう、というか、やけにゴージャスな剣だね」
キンカが持って来た剣は、ピカピカの金色だった。更に、刀身にはいくつもの宝石がつけられている。
「ああ。これは宝石刀剣ハンドレッドジェム。強力な魔剣だ」
「そんな凄いものを俺にくれるのか」
流石は生み出すのに五日程かかった剣だ。
「さあ、マスター。試しに振ってみてくれ」
「ああ、わかった」
キンカから剣を受け取り、振る。すると、振った剣からビームが飛んだ。
三日月形の光が、一直線に飛ぶ。そして、20メートルぐらい先のところで空中で消えた。
俺は当然のように驚く。
「い、今の光は?」
「ビームだ」
「説明詳しく」
「宝石の力が発揮されて、ビーム攻撃になるのだ。ちなみに剣が空振りにならず敵に当たったら、そのビームの力は飛ばずに刀身の強化に使われ、切れ味が上がる」
「ダメだ、説明されてもわからない」
つまり、この剣はビーム兵器なのか?
「マスター。これが剣の鞘となります。光影樹の幹から作った特別な鞘です。これで魔剣の力を封印し、安全に持ち運ぶことができます」
「あ、ありがとう」
なんだか凄そうな鞘を、キリから受け取る。
「ハンドレッドジェムは魔剣であるが故に、普通の鞘にしまっていても自然とそれを壊してしまう。鞘はどうしてもキリが作れる、特別なものが必要だったんだ」
「俺、そんな強すぎる剣を望んでたわけじゃないけど。でも、ありがとう。これが二人の気持ちなんだね」
何日もの間俺のためにこれらを作ってくれていたんだ。普通にうれしい。
「そうだ、マスター。できればいっぱいほめてほしい」
「マスター、私達、一生懸命頑張りました♪」
キンカとキリにそう言われる。
「うん。キンカ、キリ、ありがとう」
俺はそう言って、剣を鞘にしまって背中にしょってから、二人の頭をなでた。
「ふふふ」
「幸せです」
キンカとキリはうれしそうにしている。良かった。けど、この程度で皆からの気持ちに応えられているとは思えない。
俺はもっと、皆のことを大事にして、皆との時間を過ごさないといけないな。
魔剣は面白かった。
何度も振れば、その分ビームが出る。ビームが出るだけで、凄く楽しい。たくさん剣を振って、ビームが出まくるのを見て楽しむ。
おっと、いけないいけない。つい夢中になってしまった。
「なあキンカ。このビームはエネルギー切れとかあるのか?」
「いや、ない。そのビームは無限に出る。ただ私の力が足りなかったせいで、その出力、大きさのものしか出ない。今より更にレベルが上がったら、また新しい剣を作ってマスターに贈ろうと思う」
「それでも凄い威力だよ。あ、でも、まだ威力を計ってはいないかも」
「でしたら、今的を用意しましょう。まず一つ置きますね」
キリはそう言うと、数秒で目の前に木の的を用意した。そして、的から遠ざかる。
「さあ、マスター。的を狙ってみてください」
「ありがとうキリ。それじゃあ、いくよ」
そう言って俺は一度気分を落ち着けた後、俺から離れた所にある的を狙って剣を振った。
ビームが的に当たる。そしてビームは消え、的は特に壊れないままその場に残った。
俺は黙って的に近づく。
すると、よく見れば的にうっすらとビーム跡のような傷が残っているのを発見した。
「ほんの少し、的は傷ついている。威力は、高くはなさそうだな」
「うぐうっ」
キンカがくやしそうにうめいた。
「し、しかし、今私が用意した的はかなり本気で生み出したものです。その防御力は高く、ひとえにビームの攻撃力が低かったとは言い切れません」
キリが慌てて言う。そうか、堅めの的だったのか。それでも、ビームが強いという印象はもてないが。けど、次にもろい的を用意されても、威力を試す実感は小さいだろうなあ。
「なるほど。キリの言いたいことはわかった。でも要するに、このビームで調子にのってはいけないということだよな」
「それは、おそらくそうとは思いますが」
「マスター、次は的を、直に剣で斬ってみてくれ!」
キリがうなずいた時、キンカが新たな剣の可能性を示した。
「その剣の斬撃はビームの力で強化もされる。その的も、剣自体の切れ味にはかなわないはずだ!」
「キンカ、必死ですわ」
スイホがぽつりともらした言葉は、聞かなかったことにする。
「わかった。確かに俺はまだ、この剣の切れ味を確認してはいなかった。では、いくぞ!」
俺はもう一度気分を落ち着かせて、剣で的を斬った。
すると光り輝く斬撃が、的を見事に両断した。
キンカを見ると、物凄くうれしそうにしていた。
「うん。凄い威力だ。キンカ。改めてありがとう。こんなすごい剣をもらえて、俺は幸せ者だ」
「ああ、その言葉、ありがとうございます。マスター。私も作ったかいがあった」
キンカが喜んでくれて、俺もうれしい。
しかし、こんなにも強い剣をもらっておいて、俺は宝の持ち腐れにしてしまわないだろうか。少し不安だ。
お昼ごはんを食べていると、ダイヤモンドワイバーンが帰って来た。
それを見て、俺達はすっごく喜ぶ。
「おかえり、ダイヤモンドワイバーン!」
「ギヤアアーン!」
「帰ってきたということは、修行の場のモンスターがリセットされたということだな?」
ヒイコがそう訊いた。
「ギヤアアーン!」
「マスター。ダイヤモンドワイバーンは、そうだと言っている」
ドキがそう言った。
「ああ、わかった。それでは、皆。昼ごはんを食べ終えたら、すぐに全員で修行の場に行くぞ!」
「イエスマスター!」
「ワン!」
「ギヤアアーン!」
「マスター、私はまだマスターの鎧を作る仕事が残っている。それを早く終わらせてしまいたいのだが」
「マスター、実は私も、地下への階段を小屋で隠してしまいたいと考えているのです。今手をつけても、よろしいですか?」
「わかった。キンカ、キリ、君達には君達にしかできないことを頼む。留守番、任せたよ」
こうして俺達は、今日もキンカとキリを置いて、修行の場に二回目のお世話になりに行くのだった。
長い道を走って、修行の場に到着する。
そこには確かに、最初に見た時と同じ、人型土人形の姿がちらほら見える。
ようし。それじゃあもう一度、土人形達と勝負だ。
俺達は以前よりも少しレベルが上がっている。今回はレベル51だと思われる、あの鳥型土人形を安全に倒しきりたいと思う。
「よし、皆。早速モンスターを倒しまくれ!」
「イエスマスター!」
皆が土人形に殺到する。俺は後ろで、即座に増援を召喚だ。
「フレイムピラージャイアント、召喚!」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それが炎の巨人に変わる。
「フレイムピラージャイアント、皆と一緒に土人形を倒せ!」
フレイムピラージャイアントは俺に手を上げて返事をすると、すぐに土人形達の元へと向かった。
そしてすぐに皆は人型土人形を百体倒し終え、次の剣盾装備土人形をお出迎えする。
その敵をフレイムピラージャイアントが拳で押しつぶすと、新たに剣盾装備土人形が複数体現れ始めた。やはりここら辺は簡単すぎる程に敵を倒せるな。こうも強い弱いがハッキリしていると、やはりレベル差というものはかなり重要に思える。
「あ、そうだ。マスター、マスターも敵を倒しますかー?」
「え?」
急にスイホにそう言われ、虚をつかれる。
「確かに、こいつらはマスターの良い相手になりそうだな」
「マスター、ご決断を」
ヒイコとドキにもそう言われ、俺はその気になって、キンカからもらったばかりの剣を引き抜いた。
「よし、わかった。折角だ、レベルが下とはいえモンスターを相手に、俺の実力がどこまで通用するか確かめておこう。皆、悪いが少しの間手出し無用で、俺の戦いを見守ってくれ!」
「イエスマスター!」
それじゃあ、初めての実戦スタートだ!
「うりゃあー!」
俺は走りながら剣を振って、まずはビームで土人形をけん制する。
すると、ビームはたった一発で土人形の一体を両断した。
ビームを受けた土人形は呆気なく崩れ落ちる。
「う、うそっ」
そう思いながらも、どんどん剣を振るう。
すると、土人形達は全てあっけなく倒れていくのだった。
「いいですよマスター、その調子ー!」
「マスター、がんばれ」
「良い感じですよ、マスター!」
美少女三人からの応援もあり、俺はだんだん楽しくなってきた。
気分は無双系のゲーム、それもリアルでだ。一撃で敵が倒れる。超面白い。
夢中になって、百体の土人形をビームで倒す。すると今度は、大型四足獣土人形が現れた。
すぐさま今までと同じように、土人形に向かって剣を振る。すると、このビームでも土人形は一撃でやられ、また新たな土人形がどんどん現れた。
凄い。この剣、ひょっとしたらかなり強いんじゃないか。ビームがキリの生み出した的を壊せなかったというイメージが、みるみる内に塗り替わっていく。
おっと、けど今優先すべきは、更なる仲間の召喚だ。再召喚までに必要な時間は一分。百体の敵を一体一秒使って倒していても、もうとっくに一分は過ぎている。早く召喚しなきゃ。
「スイボツジャイアント召喚!」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それがスイボツジャイアントに変わる。
「スイボツジャイアント、あの前戦った鳥モンスターが出てくるまで、待機しててくれ!」
そう言ってから、俺はすぐまた四足獣土人形を倒すことに専念する。
剣を振るだけで敵が倒れる。まだまだ楽しめるぞこれ。皆には悪いが、もっとこの気持ちを味わわせてもらおう。
そして、四足獣土人形があと三体となり、もう新たな土人形が現れないことを確認したところで、また新たなクリーチャーを召喚する。
「フォレストジャイアントを召喚!」
すかさず残りの四足獣土人形を倒しきる。そして次に現れた双頭獣土人形にビームを放って、それが土人形をかなり傷つけた程度で消えたのを見てから、俺は一気に緊張した。
しまった、とうとう土人形がビームに耐えられるレベルにまで強くなった。おそらく、ビームはレベル21までのクリーチャーなら瞬殺で、レベル31以上のクリーチャーには有効打程度にしかならないんだ。
そう思っている内に、土人形が俺に向かって迫る。
「うわあ!」
「がんばれマスター!」
「マスターなら、勝てる」
「マスター、訓練の成果を今出すんだ!」
皆は応援に力を入れていて、俺を助けようという意思はない様子。こ、こうなったら俺一人であの土人形を倒さないと!
土人形のとびかかりを、かろうじて回避する。何回もウッドルフにとびかかってもらったおかげで、ギリギリ回避することができた。緊張と恐れが無ければ、もっと上手くかわせただろう。
だが、その直後にくりだされた二本の尻尾攻撃に、俺は反応できなかった。予想外だったのと、かなり速い攻撃だったため、体が動かなかったのだ。
俺は防御することなく、尻尾攻撃を受ける。しかし予想した痛みは、全く感じなかった。
土人形の攻撃を、9枚ある内1枚のターゲットが防いでいたからだ。しかも攻撃を受け止めたターゲットは、壊れなかった。
「え?」
俺が驚いている内に、土人形の二つある口が迫る。しかしその両方の口攻撃を、またもやターゲットが守ってくれた。しかも、ターゲットはなぜか、壊れない。まだ9枚のままだ。
「こ、これはもしかして、相手のパワーが低すぎて、ターゲットが壊れないっていう現象?」
「イエスマスター。その通りです」
久しぶりにとっ君の声を聞いた。
「そ、そうか。そういうことなら、俺はもう恐れない!」
俺は力強く踏み込んで、剣で直に攻撃する。
すると、あっさり土人形は両断され、残った体はボロボロと崩れ落ち、消滅した。
「つ、強い。神様からもらった特殊能力。レベルが上がれば上がる程、レベル下の相手からの攻撃を全てターゲットが受け止めてくれるのか」
「マスター、次の敵が現れますわー!」
スイホの声を聞いて、はっとする。
「わ、わかった。けど、俺はもう戦いはやめておこうか、いや、まだアースジャイアントとメタルギアジャイアントを召喚していない。それまでの間、皆俺の戦闘の練習相手になってもらおう。もう少しだけ、戦うぞ!」
俺は覚悟を決めて、駆け出した。新たに現れた四足獣土人形達も、俺や皆めがけて走る。
皆は、回避したり、ケガなく攻撃を受け止めたりしている。そんな中、俺は慎重に回避重視で動きながら、剣で斬って土人形を倒しまくった。
ターゲットがあれば、守りは万全。でも、それでは俺の訓練にはならない。できるだけ敵の攻撃を回避しながら、相手を倒していく。
そうしながら、俺は途中でアースジャイアントとメタルギアジャイアントを召喚した。そして、そろそろ土人形が復活してこなくなったことを確かめると、鳥型土人形が現れる前に、更なる準備をするため、一旦全員で修行の場から離れ、そこでじっと次の召喚を待った。
そして更に五分後、俺はこの場に、ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、スプラッシュドラゴン、ジュレイドラゴン、サガンドラゴンも召喚する。
これで本番への戦闘準備を整えた。ドラゴン5人、ジャイアント5人、美少女3人、更にダイヤモンドワイバーン1人の総勢14人。ウッドルフだけ俺を乗せて、待機してもらう。
前の時は、ドラゴン2人、ジャイアント5人、美少女5人、ウッドルフ、ダイヤモンドワイバーン、イルフィンの15人だった。戦力としては、きっと今回の方が強いはずだ。
「よし。皆、準備は整った。もう全力で敵を攻撃して、早く鳥型土人形を迎え撃とう!」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
俺が既に結構多くの土人形を倒していたから、皆が攻撃を始めると、すぐに大きな鳥型土人形が現れた。
その姿を見て、前回やられたことを思い出し、不安におそわれる。今の戦力で本当に大丈夫だろうか。いや、きっといけるはずだ。チャンスカードも8枚フルに使える。戦況を見ながら使おう。
俺の目の前で、皆と土人形との戦いが始まった。
まず皆が近づきながら、土人形に向けて属性攻撃を浴びせる。
それだけで、土人形は爆砕した。
「レベルアップしました」
うん。とっ君からも土人形を倒したという証言を得る。
あれ。
なんか、簡単すぎない?
「マスター、無事リベンジを果たしましたー!」
スイホが言う。あ、うん。なんだか、拍子抜けしたな。
「折角なので、更に戦闘を続けるぞ!」
ヒイコが言う。えっ、それはちょっとまずくない?
「大丈夫、皆。もしまた前みたいに調子にのってピンチになったら」
「きっと大丈夫。この戦力なら次の中ボスも倒せる!」
ドキが言う。そ、そうかな。いや、そうかも。さっきは超簡単に倒せたんだ。まだチャンスカードもあるし、いけるか?
「ワン!」
ウッドルフが、心配するな。とでも言うように声をかけてきた。うん。そうだな。それじゃあ、挑戦してみよう。でも、やるなら全力でだ。
「わかった。けど皆。やるからには全力でやろう。最大召喚数の30人で挑むんだ。そうじゃなければ、俺は安心できない」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
皆から了承をもらう。なので、俺は一度召喚をリセットし、今から一時間待つ。
留守番してくれていたキンカとキリには、後で謝ろう。
「スイホを残して、召喚終了!」
「イエスマスター。またのご利用をお待ちしております」
目の前で皆も消える。ウッドルフも消える。ありがとう、皆。そして、これからもよろしく。いや、これからが本番だ。
今の俺のレベルは、49か。前回はさっきの鳥型人形を倒す時、レベルは41で、相手とのレベル差は十あった。これから俺達は、レベル61の敵を呼び出そうとしていて、そのレベル差は12だけど。
きびしいけど、30対1で挑んで、更にチャンスカードも8枚全部使えば、きっと勝てると思う。
今修行の場には、新しい鳥型土人形が大量に生み出ている。スイホはそいつらを見て言った。
「マスター、皆の召喚を待っている間、あの敵を99体倒していていいですか!」
「わかった。それじゃあ頼む、スイホ。でも、無理はするなよ」
「イエスマスター!」
早速スイホが戦い始めた。
それと同時に、土人形達が空を飛んでスイホをおそう。すると、すぐにスイホがこちらに逃げてきた。
「ちっ。あいつら、数がいるからって調子にのっていますわ」
「どうやら、スイホだけじゃあの敵全員を相手にするのは無理そうだね」
「イエスマスター。仕方ありません。ここから倒していきます」
そう言ってスイホは、俺の目の前で水をとばして土人形を倒していく。土人形達は修業の場の外には来ないから、一方的な戦いとなった。
けど、一撃で敵を倒すことはできなかった。なので、時間をかけて一体ずつ倒していく。
スイホが99体敵を倒す頃には、一時間経っているかもしれない。そう見当をつけて、じっと待つ。
そして、スイホが土人形を倒していると。
「レベルが上がりました。レベルが上がりました」
俺のレベルが、51になった。
これで少しは、レベル61の土人形に勝てる可能性が上がっただろう。少し自信がつく。
更にスイホは攻撃を続け、やがて土人形が最後の一体になった頃、俺は召喚を試した。
「キリ、召喚」
俺の目の前に一枚のカードが現れ、それがキリになった。
よし、一時間経ったみたいだな。
「キリ、ごめんね。留守番させていたのに、こうして呼び出しちゃって」
「マスター、そのようなお気づかいは無用です。私はマスターの駒。いかようにもお使いになられてください」
「そう言われると助かるけど、同時に困るから、そういう認識はNGで」
その一分後、キンカも召喚して、今回の召喚を謝る。
それから27分かけて、俺の理想とする大戦力を整えた。
ドラゴン十人、ジャイアント十人、美少女五人、ダイヤモンドワイバーン、更に初召喚となるファイアワイバーン、ロックワイバーン、ウッドワイバーン、ウォーターワイバーン。合計30人召喚する。
5コストのクリーチャーはドラゴン、ジャイアント、美少女の三種類だけなので、残る五人は各属性の4コストワイバーンにしてみた。きっとこれだけ集めれば、61レベルの相手にも勝てると思う。
「よし、皆。これが今の俺が集められるギリギリの戦力だ。皆、いけるな?」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
皆やる気がみなぎっているようだ。俺はうなずいた。
「それじゃあ、頼むぞ。皆、攻撃開始だ!」
「イエスマスター!」
「ガオオオーン!」
こうして、30人のクリーチャーは修業の場に入っていった。
最後の一体残っていた土人形が、皆の属性攻撃を浴びてあっけなく消し飛ぶ。そしてすぐに、皆の前に一体の巨大な土人形が現れた。
鳥の頭と翼を持った、人型の土人形。両手には一本ずつ槍を持っている。そして、ジャイアント達よりも頭一つ分大きい。
そんな土人形を、皆が取り囲んだ。ジャイアント十人が壁となり、他の皆が空中から属性攻撃を放つ。
土人形はジャイアント達のパンチと属性攻撃を浴びながら、二本の槍でまずアースジャイアントの一人を攻撃した。
「あ、あっさりジャイアントにダメージを与えている」
約十秒後。俺は目の前で、アースジャイアントがやられて光になる光景を見届けた。
十秒で一人倒すのか。それじゃあ最悪の場合、五分で皆やられるな。
切り札を出し惜しみしている場合ではない。すぐにチャンスカードを使用する。
「俺はチャンスカードを8枚使用する。メタルギアジャイアント、フレイムピラージャイアント、スイボツジャイアント、フォレストジャイアント、ヒロードラゴン、ゴールドラゴン、ジュレイドラゴン、スプラッシュドラゴンを強化!」
そう言うと、今言った皆が光った。光の戦士となった8人が、ここぞとばかりに猛攻を加える。
そしてもう、俺にはやることがない。また見守ることしかできない。あの強さと大きさのモンスターが相手では、俺の実力では手も足も出ないだろう。ジャイアントだって十秒でやられているのだ。
だから俺は、必死に皆を見守った。お願いだ、勝ってくれ皆。そして俺は、皆が帰ってくる姿を見たい。
戦況は、一分後から変わっていった。
パワーアップしていた8人の光が消え、皆の強化状態が解除されたのだ。そして、それを機に一人、また一人とやられていく。その後一分で、ジャイアント6人が倒された。
だが今土人形は、体のあちこちにヒビが入っていた。きっともう少しで勝てる。皆、もう少しだ。
土人形が八人目のジャイアントを倒し終えた時、皆の攻撃が苛烈になった。すると、土人形の動きが止まり、苦しむ。
次の瞬間、土人形は爆砕した。
「レベルアップしました」
そのとっ君の声を聞いて、更に俺は安心した。ジャイアント8人がやられたのは悲しいけど、他の皆は無事だ。俺はそれを、素直に喜ぶ。
まだ修行の場にはモンスターが現れるけど、そいつらにおそわれるより前に皆が俺の元まで飛んでくる。
やっぱり敵は強かった。けど、勝てて良かった。皆の努力が、報われて良かった。
でも、もし次があればその時は全員が戻ってくる姿が見たいな。
「よくやった、皆!」
「イエスマスター!」
「ギヤアアーン!」
俺は生き残った皆を見て、自分達が強くなったことを実感した。
おまけ。ターゲットブレイクルール(仮)
0ー1 デッキを40枚用意します。内9枚はターゲット、31枚がメインデッキです。
0ー2 デッキは自分から見て真ん中手前に置きます。ターゲットは自分から見てデッキより右上に、縦3、横3枚ずつ、9枚並べます。
1ー1 ゲーム開始時、自分、対戦相手と共に自分のデッキからカードを引いて手札を6枚にします。
1ー2 手札のカードをデッキの左、ステージに出し、召喚します。この時、召喚できるまでは5コストまでです。(5コストカードは1枚、1コストカードは5枚まで召喚できる)
1ー3 ステージにあるカード(クリーチャー)を1枚以上選んで、それ以外の召喚したカードをデッキより左上(場)に移動させます。ステージに残ったカードは全てタップし、そこで相手のターゲットを1枚選択します。この行為を、攻撃と呼びます。ただし、この時自分のステージにカードがない場合、自分の攻撃は行われません。
1ー4 互いに選んだターゲットを表向きにします。この相手ターゲットのパワーと、自分ステージにあるカードの合計パワーを見比べて、ステージ側のパワー数値が相手以上なら攻撃成功となります。ただし、ターゲットのパワーの方が高かった場合、攻撃失敗となります。
1ー5 攻撃成功した場合、そのターゲットは破壊され、チャンスカードとなります。チャンスカードはデッキのすぐ右(チャンスゾーン)に置かれます。チャンスカードを使う時は、チャンスカードを更に右(チャンス使用ゾーン)に置きます。また、攻撃失敗した場合、ターゲットは破壊されず、表向きのまま残ります。
1ー6 攻撃を終えてタップ状態となったカードは、全てデッキより左上(場)に移動させます。その後、次の攻撃を行うカードを場から選び、ステージに移動させてから新たに攻撃を行います。もちろん表向きとなったターゲットを攻撃することも可能です。
1ー7 好きなだけ攻撃を繰り返します。ただし、タップ状態の場のカードはステージに移動させることができません。
1ー8 攻撃が互いに終わったら、次のターンとなります。デッキからカードを引いて手札を6枚にし、(手札が6枚以上ならドローできない)その後場のカードを全てアンタップします。そうしたら、1ー2に戻ります。
2ー1 先に相手のターゲットが全て無くなるか、相手のデッキが無くなったら自分の勝ちです。
2ー2 相手と同時に勝利条件を満たした場合、決着タイムとなります。自分の手札、もしくはデッキの一番上のカードを一枚、相手と見せ合い、どちらかのカードのパワーが上であれば、その方が勝ちとなります。引き分けなら、更に繰り返します。お互いに出せるカードが無くなった時は引き分けですが、先に勝利条件を相手より多く満たしても勝ちとなります。
2ー3 カードの効果にはそれぞれ発動タイミングがあります。ターンの開始時、攻撃時、ターン終了時。それぞれの効果のタイミングで使ってください。また、効果によっては、攻撃の成功判定を逆転させるような効果もあります。
2ー4 手札や場でカードが破壊された時、破壊されたカードはデッキのすぐ下側、破壊ゾーンに置かれます。
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