14 / 14
14
しおりを挟む
俺の目の前には、強大な敵がいた。
ちょっとした家と同じくらい大きい巨人。そいつと一対一で戦うが、一向に勝機が見えない。
「(エレキ射出、痺れエレキ、エレキアタック、エレキ拡散ー!)ゴロッキュ、ゴロッキュ、ゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「ぬははは。そんな攻撃、全然効かないわ。お前では俺は倒せん!」
痛がる様子もなく、豪快に笑う巨人。そいつに対して俺は、まだ不敵に笑う余力を残していた。
「(ふっ。こうなったら、奥の手を使うしかないか!)ゴローキュー!」
俺は最後の手段とばかりに、体の奥に電気を溜め始める。そして勝利を見据えて、叫ぶ。
「(はあーっ、いくぜー!)ゴローキュウウウー!」
そこで、俺の夢が覚めた。
「(はっ)ロッキュ」
目の前には、カップが寝ている。
近くには、トルクヤもいる。
「(すやー。すやー)イモー、イモー」
「(ぐごー、ぐがー)ユバー、ユバー」
「(なんだ、夢か)ゴロッキュー」
俺はすぐに安心し、けれど直後に、閃く。
俺が夢の中で最後に使おうとしていた技。あれは、ギルドの試験で偶然できた、電気溜めなんじゃないか?
「(もしかしたら、俺にはまだ、すぐに強くなれる可能性が残っている?)ゴローキュー?」
そう思うと、体がうずうずしてくる。でも、今はダメだ。
ここは宿屋、集いの屋根のモンスター用個室だ。
そんなところで技を使うなんて、とんでもない。リシェスにまで迷惑がかかったら、俺はいたたまれなくなる。
だから、新技、奥の手の開発は、宿屋を出た後、いや、町を出てからだな。
正直、昨日のハヤイダーの時のような場合は、まあまた何もできなくなるんだろうが、それでも戦法が多いにこしたことはない。何より、あの電気溜めが使える技だと判明したら、俺は更に強くなれる。
もしかしたら、更にリシェスや皆を守れる力になるかもしれない。
俺はカップとトルクヤを見る。またこいつらがピンチになった時、少しでも力になりたい。そしてそれ以上に、誰も失いたくない。
俺達はまだ弱い。昨日そう実感させられたから、なおさらそう思う。
ふう。なんだか、目が覚めてしまったな。それじゃあもう、起きてるか。
そうだな。暇つぶしに、カップとトルクヤが起きない程度に、二人の匂いでも嗅いでるか。
くんくん。俺は今モンスターだからか、人だった時よりも鼻が利く。
カップは、ほのかに甘い香りがする。飴の香り、みたいな?
トルクヤは、少し鉄臭い。けど嫌な臭いじゃない。なんだか頼もしい匂いだ。
さあて、二人は何時まで俺に嗅がれ続けているかな?
「(くんくん、すうすう)ゴロッキュ、ゴロッキュ」
ゆっくりと二人の周りを嗅ぎまわる。
どうせだから、何周回れるかも数えてみるか。暇だし。
「ポット、カップ、トルクヤ。今日も張り切って依頼をこなそうー!」
「(おー!)ゴロキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー!)フユバー!」
今日も快晴。俺達は冒険者ギルドへ行く。
そしてリシェスは掲示板を見ると、やがて一枚の依頼書を手に取った。
「モンスターテイマーに依頼がある。けど、森での護衛?」
リシェスは取った依頼書を少しの間見つめてから、やがて元気に言った。
「ま、いいか。折角頼まれてるんだし、受けてみよう!」
「(おー!)ゴロキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー!)フユバー!」
そして俺達は、受付嬢から道を尋ねて、今日の依頼をこなしに行く。
どうやら今日の依頼主は、木工ギルドというところにいるらしい。
木工ギルド館は木材建築の、大きな建物だった。
冒険者ギルドよりも大きな造りだ。まあ、活気の方はイマイチらしいが。
リシェスは木工ギルドに入り、受付嬢に声をかける。
「ごめんください。依頼を受けにきました」
「はい。ありがとうございます。モンスターテイマーということは、ひょっとして護衛の依頼かしら?」
「はい。早速護衛が必要ですか?」
「はい。ぜひお願いします。今、護衛対象の一団をお呼びします。少々お待ちください」
受付嬢がそう言ってベルを鳴らす。駆けつけた新たな受付嬢に要件を伝えると、その子はすぐに奥へと戻った。
「皆、テーブル席の方に行ってよ」
「(ああ)ゴロッキュ」
「(ああ!)イモ!」
「(ああ)フユーバ」
俺達が受付カウンターから離れると、丁度新しいお客がギルド館に入って来た。俺達はそのまま黙って、テーブルの近くでじっとしている。
そうしていると、館内奥から何人もの男達がやって来た。
「よし、モンスターをつれているな。お前がモンスターテイマーか」
一人の男に、そう声をかけられる。
「はい。リシェスです。それで、こっちからポット、カップ、トルクヤ。よろしくお願いします!」
「(よろしく!)ゴロッキュ!」
「(よろしく!)イモ!」
「(お前達、なんか用か!)フユーバー!」
フユーバだけ、護衛対象とはりあおうとしている。ちょっとやめてほしい。
「回復師の格好もしているが、回復魔法も使えるのか?」
「はい。元は回復師だったんです。一応今でもそのつもりですけど。テイマーと、兼任っていうか」
「まあ、そっちの素性はなんでもいい。それじゃあ早速東門から出て、北東の森へ行ってもらう。その間、こいつらと連携して俺達を守ってほしい」
「よろしく」
そう言って、一人の男が前に出てきた。よく見ると、四人の男がちゃんと戦闘用の装備をしている。
そして後は、話しかけてきた男含め、六人。ということは、護衛対象は六人か?
「はい。よろしくお願いします。ですが、モンスターテイマーが募集されていたと思いますが、その、何か理由があるんでしょうか?」
「ああ? 依頼主に口をきくのか?」
今まで話をしていた男がそう言った。リシェスは慌てる。
「い、いえ、そんな気はないです。ただ、なぜモンスターテイマーを指名していたのかが気になって」
「気にするな。お前は言われた通りに護衛をすればいい。ちゃんとテイムモンスターの数だけ報酬も払う。それでいいだろ?」
「は、はい」
なんかこいつ、嫌なやつだな。
「(なんかこいつ、感じ悪い!)イモー!」
「(そうだそうだー。まさか、リシェスをいじめる気かー!)フユーバー!」
「あああん?」
相手の一睨みで、俺達モンスター勢はたじろぐ。
「(うぐ、こ、こわ!)ゴロッキュ!」
「(ひいー!)イモー!」
「(な、なんだ、やんのかこらー!)フユーバー!」
「あ、あの、せめて、お名前をお聞かせください。護衛対象なのですし」
リシェスがそう言うと、彼は言った。
「俺はキラーゼだ。一応言っておくが、俺達は皆戦える。護衛対象ではあるが、何かあっても問題ない。あまり心配はするな」
「は、はい」
なんか、ただの護衛依頼というわけじゃなさそうだ。
この依頼、上手くいくかなあ?
ちょっと、心配になってきた。
男達と俺達は、まっすぐ東門を通り、森の中の道を進む。
その時俺は、折角なので新技開発を試した。やるなら今だと思ったのだ。
「(エレキ射出をー、溜める!)ゴロゴロゴロッキュー!」
バチバチッ。俺の体内に、すぐに使えるエレキが溜まる。
よしよし。どうやら第一段階はクリアといったところか。それに俺はここで、新技としてエレキチャージを覚えたようだ。
「な、ポット、急にどうしたの?」
リシェスが驚く。だから、一応ここで言っておく。
「(新技の開発だ。もしかしたら俺は、今までよりも強くなれる。昨日は後れをとったから、今回はそうはいかないぜ!)ゴロゴロゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「(新技、凄い、ポット!)イモイモ!」
「(おお、頼もしいぜ、ポット!)フユーバー!」
「なんだか知らねえが、暴走だけはするなよ。俺達の護衛が敵になるなんてことがあったら、目も当てられねえ」
キラーゼにそう言われる。よし。だったら技の試しを、早く終わらせよう。そうすればただの奇行だって思われて、ひと段落するはずだ。
「(まずは、エレキ射出!)ゴロッキュー!」
試しに脇の茂みに向けて放ってみると、予想通り、エレキ射出は見るからに強化されて発射された。
やはり、エレキ射出を強化することができるのか。これと二回エレキ射出を使ったダメージ量の比較は今できないが、場合によっては使えるだろう。
そしてきっと、エレキアタックも痺れエレキも強化される。それを念頭においておこう。
「(続いて、エレキチャージ!)ゴロゴロッキュ!」
俺はもう一度体内にエレキを溜めて、その電力を口に集中させた。
そして、技を放つ。
「(鳴き声!)ゴロッキュー!」
鳴き声は、ダメか。強化されないか。
でも、エレキはまだ体内に残っている。ならば、次は、ええと!
そうだ、口にエレキを集中させられたんだから、他のところにも集中させられるはずだ。
例えば、頭、とか、尻尾、とか、足!
「(ここだあ!)ゴロッキュー!」
俺は四肢にエレキを集めた。
そして、ええと、キックとか!
そう思って一歩踏み出すと、次の瞬間、頭の中が真っ白になった。
というか、急に体が速く動いて、俺が茂みに突っ込んだのだ。
「(うわあ!)ゴロキュー!」
「(は、速い!)イモー!」
「(目、目で追えなかった!)フ、フユーバ!」
「ポット、大丈夫?」
リシェスが俺の方へ駆け寄る音がする。俺は慌ててリシェスの方へ戻った。
「(だ、大丈夫だ)ゴロキュー」
「ポット、まさか、敵?」
「(ううん、そうじゃない)ゴロキュー」
俺は顔を横に振る。その間も、キラーゼ達は先へ進んでいた。
「おい。何遊んでやがる。さっさと行くぞ」
「はーい!」
リシェスはすぐにキラーゼの近くへ戻る。俺も駆け寄る。
「ちっ。やっぱ冒険者は冒険者か」
キラーゼがそう呟くのが聞こえた。そしてすぐに、俺達以外の護衛の四人が、うなだれたり顔を横に振ったりする。
なんだろう。ひょっとして、俺達快く思われてない?
わざわざモンスターテイマーを指名したってのに、どういうことだ?
いや、今は新技、エレキチャージの力のことの方が優先か。
エレキチャージ。こいつはひょっとしたら、かなり使える。
おそらく、今の俺に起こった現象はこういうことだ。
エレキチャージによって俺の移動速度が強化され、雷のスピードで前方へ突っ込んだ。
これを上手く戦いで使えたら、きっと凄く有利な状況が簡単に作り出せる。
その練習を、したい。けど、もう俺の身勝手な行動は見られたばかりだしな。
これ以上リシェスが何か言われないように、今は大人しくしておくか。
きっとすぐに戦いの機会は訪れる。それまでガマンだ。
「(ポット今、すっごく速かった。ボクより速かった!)イモ、イモ!」
「(ああ、そうかもな。たぶんまっすぐしか進めないが、俺の新しい技だ)ゴロッキュー」
「(使えるのか、それ?)フユーバ?」
「(まだわからない。けど、すぐ実戦で試す。二人共、できれば俺に多くの練習チャンスをくれ)ゴロッキュゴロッキュゴロッキュ」
「(わかった!)イモ!」
「(カップがわかったんなら、俺もわかった)フユバ」
「(ありがとう、二人共)ゴロキュー」
さあ、出てこい。敵共!
それからすぐに、モンスターが出てきた。
葉っぱを額に乗せたキツネが三体、俺達の集団を側面から襲うようにして現れる。
だがそこには、俺達がいる。俺達は早速敵と相対する!
「コンー!(コンー!)」
「皆、ハギツネが出たわ。倒して!」
「(よし。早速試すぞ、エレキチャージ!)ゴロゴロゴロッキュー!」
俺はその場でエレキを溜める。その間にカップとトルクヤが相手に近づいた。
「(右のはボクがやるー!)イモー!」
「(俺は左だー!)フユーバー!」
「(じゃあ、俺は真ん中、いくぜ。エレキチャージ!)ゴロッキュ、ゴロキュー!」
エレキを足に蓄えて、思いっきり一歩を踏み出す。
すると次の瞬間、俺は真ん中のハギツネとぶつかっていた。
「(いたーい!)コーン!」
「(いってて。くそ、加減が難しいな)ゴロッキュー」
確かに接近するために移動したが、もっと直前で止まり、頭突きをくらわせるつもりだった。
それが結果は、正面衝突。攻撃にはなっているが、制御はまるで出来ていない。
「(このお、木の葉手裏剣!)コーン!」
俺とぶつかったハギツネは怒りをあらわにして、周囲に木の葉を出現。その葉っぱが一斉に俺に向かっておそってきた。
あれに当たれば、ダメージを受けてしまうだろう。俺はまたエレキチャージを使う。
「(エレキチャージ!)ゴロキュー!」
エレキを足にためて、斜め後ろへステップ。すると、軽く跳んだつもりなのに、一瞬でかなりハギツネから離れた。自然と、木の葉手裏剣も避ける。
「(な、速い!)コーン!」
「(今度はこっちからだ。エレキチャージ!)ゴローキュ、ゴロキュー!」
またもエレキ移動。今回はハギツネのすぐ横で止まろうとしたが、勢いがつきすぎてまたかなり離れてしまう。
「(き、消えた!)コ、コーン!」
けれど、ハギツネが俺を見失った。ええい、これはチャンスだ。ここでエレキ射出!
「(エレキ射出!)ゴーローキュー!」
「(ぎゃあー!)コーン!」
ハギツネは倒れる。練習相手としては、まあまあだった。
「(ポットも倒したね!)イモー!」
「(やったな。しかも、すげえ戦いだったぜ!)フユーバー!」
皆ももう倒し終えたみたいだ。俺達はリシェスの元へ戻る。
「皆、お疲れ様。怪我はない?」
「(ああ、平気だ)ゴロッキュー」
リシェスが俺達の様子を確かめた後、倒したハギツネを回収して、またキラーゼ達と共に歩き出す。
その後も何度かモンスターが出て来て、もう一組の護衛達と共闘しながら、俺は更にエレキチャージの練習をした。
エレキチャージを足に溜めての移動方法を、雷速と呼ぶことにした。
雷速はまだまだ制御が効かないが、防御型の俺が高速戦闘を行える強力な技だ。役に立つ機会は多いだろう。
そしてキラーゼ達は森の中で移動をやめ、皆で木を切り倒し始めた。
倒している木は普通の木より若干赤くて、ちょっと良い香りがする気がした。
そして俺達は周囲に散開して、敵が来ないか警戒中。護衛の仕事を続ける。
そんな時、リシェスのところに護衛の一人がやって来て、軽く挨拶してきた。
「よう、モンスターテイマー」
「あ、どうも。こっちは私達の持ち場ですよ?」
「ああ、気にしないでくれ。ちょっと君と話がしたかったんだ」
なんだ、ナンパなら追い返すぞ?
ちょっと警戒すると、男はすぐ言葉を続けた。
「俺の名前はナルフラ。元は冒険者だ。今は木工ギルド専属の護衛をやっている。ていっても、安月給だがな」
「え、木工ギルドには専属の護衛がいるんですか?」
「ああ。だが、この前一組やめたんだ。護衛中の油断が原因なんだが、ちょっとしたミスでケガをしてしまってな。そして木工ギルドの護衛対象が、あんな敵俺達なら簡単に倒せたって言い始めて、喧嘩になって、そのまま護衛が一組去っていったんだ。森に入るには護衛が必要っていうギルドの方針があって、一人二人までなら俺達一組でも護衛できるんだけど、それ以上の人数で行くとなると、必ず二、三組のパーティかやり手の護衛を雇うことになっているんだ。それで、新しい専属契約の護衛が見つかるまで、冒険者ギルドで護衛の依頼を募集していたっていうことなんだ」
なんだ、ナンパじゃなかったか。まだまだ気は抜けないけど、ちょっと安心。
「そうだったんですか。あれ、でも、依頼はモンスターテイマーにだけしてありましたよ?」
「キラーゼがそう決めたんだ。元々木工ギルドの連中は、冒険者は荒くれものばかりで、そもそも戦力として必要ないって考えが固定化してて、皆悪く思ってる。でも、モンスターテイマーはテイムモンスターに好かれてるだろ。そういう、性格が良いやつを期待して、募集をかけたんだろう。実際、モンスターが俺達を守っているのを見るのは奇妙だけど、安心するよ。テイムモンスターは大体大人しいみたいだし、俺達も護衛仲間として気楽に接することができる」
「それは、ありがとうございます」
「でも、キラーゼ達はやっぱりモンスターテイマーも見くびっているみたいだ。だから、キラーゼ達のことは気にしないでくれ。護衛はこれっきりでいい。俺達はまたゆっくり新しい専属護衛が来るのを待つさ」
「はい。では、それまでの間、私達がしっかり護衛を努めます。私が未熟なのは承知していますが、ポット達の頑張りは凄いって、思ってるし思われたいですから。この護衛依頼は今日だけかもしれないけど、きっちり最後まで果たしてみせます!」
「ああ、その気でいてくれ。それじゃあ俺は、もう持ち場に戻る。何か現れたら、すぐに呼んでくれよ」
「はい。ありがとうございます。ナルフラ!」
ふうむ。そういうことだったのか。冒険者嫌いの木工ギルド、か。
護衛対象が護衛を頼ってくれないんなら、そりゃやりづらくもなるだろう。次の専属護衛が見つかっても、彼らが上手くやれるかどうか。疑問だ。
まあ、それは俺達の考えることじゃないか。木工ギルドが考えることだ。
リシェスの言う通り、今は護衛依頼をちゃんとこなそう。そしてきっと、キラーゼ達とはこれっきりだ。
木工ギルドの職員が、何個かの木を切り倒した時のことだった。
「モンスターが出た。動きが速すぎる、とてもじゃないが太刀打ちできない!」
ナルフラ達が警戒している方から、そんな声が聞こえた。俺はすぐにそちらへと走る。
「皆、敵だよ。駆けつけて!」
リシェスが遅れて走り出す。この中で一番足が速いのはカップだ。頼む、先に飛んでいって敵の相手をしてくれ!
「(カップ、先に戦っていてくれ!)ゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「(わかってる、敵、倒すー!)イモー!」
「(うおお、敵どこだー!)フユーバー!」
「こっちだ、敵はこっちだー!」
伐採を中断している木工ギルド職員達を通り越す。するとその時丁度、高速移動する白い物体が、俺にかすりながら通り過ぎた。
「(きりさく!)イター!」
「(ぐわあ!)ゴロッキュー!」
「ポットー!」
ダメージは、あまりない。けど、今のはなんだ。まさかあれが、今回の敵か?
「(ぐああ!)フユーバー!」
「ぎゃー!」
後ろを振り向けば、トルクヤと木工ギルド職員の一人がダメージを受けていた。そして俺達から離れたところで、白いイタチのモンスターが一体、立ち止まって獰猛に笑っている。
「(へへ。今日はごちそうだぜ。獲物がいっぱいだあ)イター」
「あれはカゼイタチ。コイタチの速度特化変態モンスター!」
どうやらリシェスは相手のことを知っていたようだ。なるほど、速度特化か。あの速さ、確かに脅威だ。
「まずい。カゼイタチは速すぎる。普通に戦っても勝てない。ここは逃げるしかない!」
キラーゼが言う。すると、木工ギルド職員達が一斉に走り去ろうとする。
「皆さん、ダメ、落ち着いて、固まって!」
リシェスがそう叫ぶと同時に、立ち止まっていたカゼイタチが動き出した。
「(きりさき、きりさき、きりさきー!)イタ、イタ、イター!」
「うわー!」
「ぎゃー!」
「いてー!」
逃げようとした木工ギルド職員達が、皆カゼイタチの攻撃を受ける。
どうやら、足を狙われたらしい。皆傷の痛みによってか、立ち止まってしまった。
しかもこの場には、なぜかカゼイタチが二体もいた。
「(へっ。獲物は全部逃がさないぜ)イタイター」
「(そうだね、兄さん)イーター」
二体のカゼイタチが、仲良く並んで俺達を見ている。
「(それじゃあ、ゆっくり仕留めようか)イター」
「(そうだね。遊びには丁度いいや)イーター」
「く、これじゃあ、逃げられない」
キラーゼが傷口を押さえながら、口を歪ませる。
「(ポットー、あいつ、ボクより速いー!)イモー!」
遅れてカップが戻ってきた。そして、少し離れたところからナルフラ達も駆けつけてくる。
「(ああ、そうだな。けど、カップ。幸い今の俺には雷速がある。カップは俺をサポートしてくれ。まず一体、なんとかする。やるぞ!)ゴロッキュ、ゴロゴロッキュ、ゴロキュー!」
「(うん、わかった。まず一体、ポットと一緒に倒すー!)イッモイモー!」
カップはやる気だ。よし、そうでなきゃ。後は、俺がしっかりやるだけだ。
「(へっ。兄さん。あいつら俺達に挑む気だよ)イタイーター」
「(トロいやつらが束になっても、俺達の敵じゃないんだよ。まだわかんないのかねえ?)イーター」
確かに、カゼイタチは速い。そして護衛対象は皆負傷してしまった。これはまずい展開だ。
でも、俺達には仲間がいる。だから、これくらいのことでは負けない!
「小回復!」
リシェスが手近なギルド職員を回復した。傷がいえていく。
「あ、ありがとう」
「それが私の役目です。それより、次の方を!」
「(あ、あいつ、俺達が折角作った傷を消してるよ!)イタ、イタイタッチ!」
「(面倒だな。あいつから先にやるぞ)イタイーター」
カゼイタチ共が、そう言った。
野郎、リシェスに目をつけるとはいい度胸じゃねえか。
それじゃあ今度はこっちからいかせてもらうぜ!
「(エレキチャージ、雷速!)ゴロッキュー、ゴロキュー!」
足に思い切りエレキを溜めて、とびだす!
そしたら次の瞬間、カゼイタチ兄とぶつかっていた。
「(ぐあー!)イーター!」
「(え?)イタ?」
地面に転がるカゼイタチ兄。よし。俺はまたエレキチャージをして!
「(エレキチャージ!)ゴロッキュー!」
「(ボクはポットに合わせる、スタンプー!)イーモー!」
そして、立ち上がる前のカゼイタチ兄を、カップが攻撃してくれる!
「(連続、スタンプー!)イイイモー!」
「(ぐあー、ぎゃー!)イーター!」
よし。このタイミングで俺は、狙いを済ませて、エレキ射出だー!
「(エレキ射出ー!)ゴーローキュー!」
「(ぎゃああああ!)イタチー!」
この攻撃を受けたカゼイタチ兄は、動かなくなった。
よし、やれた。カップと俺が組めば、これくらい朝飯前だ!
「(兄さん、兄さんっ、うおー、兄さんー!)イータアアー!」
次の瞬間、カゼイタチ弟は超高速移動をしながら、俺とカップを交互に攻撃した。
「(よくも、よくも、よくも、よくもー!)
「(うわー!)イモー!」
「(エレキ拡散!)ゴロキュー!」
「(ギャー!)イター!」
哀れ、激高するイタチは急に止まれず、俺のエレキ拡散にぶちあたった。
俺はダメージにひるんで動けないでいるカゼイタチ弟を、ふみつけて動けないようにする。
素早さに特化したモンスターは、こうして油断と過信で、敗北した。
どれだけ自分に自信があっても、時と場合によっては負けるということだ。そのことは俺も、胸の内に留めておこう。
「(よくも、よくも、よくも、よくも、死ね死ね死ね、死ね!)イタ、イタイタイタ、イタイタイタイタ、イーター!」
カゼイタチ、ごめんな。
でも、生きるのは俺達だ!
「(エレキ射出、エレキ射出、エレキ射出!)ゴロキュ、ゴロキュ、ゴローキュー!」
「(ぎゃー!)イター!」
カゼイタチ弟も、こうして倒せた。
なんとかなった。
俺は一安心しつつも、新たに覚えた力、雷速に感謝した。
「ありがとう、リシェス。君とモンスター達のおかげで助かった。君達がいなければ、俺達はカゼイタチに殺されていただろう」
キラーゼがそう言って、握手を求めてくる。
リシェスはそれに応じた。
「はい。ですが、私達は護衛として、当然のことをしたまでです。それに、お礼ならこの子達に言ってください。私も、ただ見ているだけでしたから」
「そうか。ありがとう、モンスター達」
俺達に頭を下げるキラーゼ。それを見て俺は、思わずむずがゆくなった。
「(俺達は俺達のできることをやった。だから、それを評価してくれるなら、ありがとう)ゴロッキュ、ゴロキュー」
「(ポット、凄かった。だからボク達、凄い!)イモ、イーモー!」
「(俺、今回何もできなかった。ちくしょう)フユーバー」
「(トルクヤは昨日活躍してくれただろ。これでお互い様だな)ゴロッキュー」
「(そうだよ。ボク達皆、頑張った!)イーモー!」
「(そうか。そうだな。そうだー!)フユーバー!」
「君達さえよければ、これからも俺達の護衛をしてほしい。頼めるか?」
お、キラーゼがデレた。
「いいえ、私達はいずれ、村に帰ります。ですから、これでさよならにしましょう。じゃないときっと、未練になります」
けれどリシェスは、断った。
確かに。それが良いだろう。
「そうか。だが、これからは態度を改めよう。冒険者は頼りになる。いや、それは君がモンスターテイマーだからか」
「ありがとうございます。でも、私達よりも凄い冒険者は、まだまだいっぱいいますよ。それに、護衛はまだ終わっていません。帰るまでしっかり守りますからね。ポット達が!」
「ああ、任せよう」
そして、ナルフラ達からもお礼を言われた俺達は、その後も無事に護衛の依頼をやりとげた。
こうして俺達は、また少し強くなったのだった。
ちょっとした家と同じくらい大きい巨人。そいつと一対一で戦うが、一向に勝機が見えない。
「(エレキ射出、痺れエレキ、エレキアタック、エレキ拡散ー!)ゴロッキュ、ゴロッキュ、ゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「ぬははは。そんな攻撃、全然効かないわ。お前では俺は倒せん!」
痛がる様子もなく、豪快に笑う巨人。そいつに対して俺は、まだ不敵に笑う余力を残していた。
「(ふっ。こうなったら、奥の手を使うしかないか!)ゴローキュー!」
俺は最後の手段とばかりに、体の奥に電気を溜め始める。そして勝利を見据えて、叫ぶ。
「(はあーっ、いくぜー!)ゴローキュウウウー!」
そこで、俺の夢が覚めた。
「(はっ)ロッキュ」
目の前には、カップが寝ている。
近くには、トルクヤもいる。
「(すやー。すやー)イモー、イモー」
「(ぐごー、ぐがー)ユバー、ユバー」
「(なんだ、夢か)ゴロッキュー」
俺はすぐに安心し、けれど直後に、閃く。
俺が夢の中で最後に使おうとしていた技。あれは、ギルドの試験で偶然できた、電気溜めなんじゃないか?
「(もしかしたら、俺にはまだ、すぐに強くなれる可能性が残っている?)ゴローキュー?」
そう思うと、体がうずうずしてくる。でも、今はダメだ。
ここは宿屋、集いの屋根のモンスター用個室だ。
そんなところで技を使うなんて、とんでもない。リシェスにまで迷惑がかかったら、俺はいたたまれなくなる。
だから、新技、奥の手の開発は、宿屋を出た後、いや、町を出てからだな。
正直、昨日のハヤイダーの時のような場合は、まあまた何もできなくなるんだろうが、それでも戦法が多いにこしたことはない。何より、あの電気溜めが使える技だと判明したら、俺は更に強くなれる。
もしかしたら、更にリシェスや皆を守れる力になるかもしれない。
俺はカップとトルクヤを見る。またこいつらがピンチになった時、少しでも力になりたい。そしてそれ以上に、誰も失いたくない。
俺達はまだ弱い。昨日そう実感させられたから、なおさらそう思う。
ふう。なんだか、目が覚めてしまったな。それじゃあもう、起きてるか。
そうだな。暇つぶしに、カップとトルクヤが起きない程度に、二人の匂いでも嗅いでるか。
くんくん。俺は今モンスターだからか、人だった時よりも鼻が利く。
カップは、ほのかに甘い香りがする。飴の香り、みたいな?
トルクヤは、少し鉄臭い。けど嫌な臭いじゃない。なんだか頼もしい匂いだ。
さあて、二人は何時まで俺に嗅がれ続けているかな?
「(くんくん、すうすう)ゴロッキュ、ゴロッキュ」
ゆっくりと二人の周りを嗅ぎまわる。
どうせだから、何周回れるかも数えてみるか。暇だし。
「ポット、カップ、トルクヤ。今日も張り切って依頼をこなそうー!」
「(おー!)ゴロキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー!)フユバー!」
今日も快晴。俺達は冒険者ギルドへ行く。
そしてリシェスは掲示板を見ると、やがて一枚の依頼書を手に取った。
「モンスターテイマーに依頼がある。けど、森での護衛?」
リシェスは取った依頼書を少しの間見つめてから、やがて元気に言った。
「ま、いいか。折角頼まれてるんだし、受けてみよう!」
「(おー!)ゴロキュー!」
「(おー!)イモー!」
「(おー!)フユバー!」
そして俺達は、受付嬢から道を尋ねて、今日の依頼をこなしに行く。
どうやら今日の依頼主は、木工ギルドというところにいるらしい。
木工ギルド館は木材建築の、大きな建物だった。
冒険者ギルドよりも大きな造りだ。まあ、活気の方はイマイチらしいが。
リシェスは木工ギルドに入り、受付嬢に声をかける。
「ごめんください。依頼を受けにきました」
「はい。ありがとうございます。モンスターテイマーということは、ひょっとして護衛の依頼かしら?」
「はい。早速護衛が必要ですか?」
「はい。ぜひお願いします。今、護衛対象の一団をお呼びします。少々お待ちください」
受付嬢がそう言ってベルを鳴らす。駆けつけた新たな受付嬢に要件を伝えると、その子はすぐに奥へと戻った。
「皆、テーブル席の方に行ってよ」
「(ああ)ゴロッキュ」
「(ああ!)イモ!」
「(ああ)フユーバ」
俺達が受付カウンターから離れると、丁度新しいお客がギルド館に入って来た。俺達はそのまま黙って、テーブルの近くでじっとしている。
そうしていると、館内奥から何人もの男達がやって来た。
「よし、モンスターをつれているな。お前がモンスターテイマーか」
一人の男に、そう声をかけられる。
「はい。リシェスです。それで、こっちからポット、カップ、トルクヤ。よろしくお願いします!」
「(よろしく!)ゴロッキュ!」
「(よろしく!)イモ!」
「(お前達、なんか用か!)フユーバー!」
フユーバだけ、護衛対象とはりあおうとしている。ちょっとやめてほしい。
「回復師の格好もしているが、回復魔法も使えるのか?」
「はい。元は回復師だったんです。一応今でもそのつもりですけど。テイマーと、兼任っていうか」
「まあ、そっちの素性はなんでもいい。それじゃあ早速東門から出て、北東の森へ行ってもらう。その間、こいつらと連携して俺達を守ってほしい」
「よろしく」
そう言って、一人の男が前に出てきた。よく見ると、四人の男がちゃんと戦闘用の装備をしている。
そして後は、話しかけてきた男含め、六人。ということは、護衛対象は六人か?
「はい。よろしくお願いします。ですが、モンスターテイマーが募集されていたと思いますが、その、何か理由があるんでしょうか?」
「ああ? 依頼主に口をきくのか?」
今まで話をしていた男がそう言った。リシェスは慌てる。
「い、いえ、そんな気はないです。ただ、なぜモンスターテイマーを指名していたのかが気になって」
「気にするな。お前は言われた通りに護衛をすればいい。ちゃんとテイムモンスターの数だけ報酬も払う。それでいいだろ?」
「は、はい」
なんかこいつ、嫌なやつだな。
「(なんかこいつ、感じ悪い!)イモー!」
「(そうだそうだー。まさか、リシェスをいじめる気かー!)フユーバー!」
「あああん?」
相手の一睨みで、俺達モンスター勢はたじろぐ。
「(うぐ、こ、こわ!)ゴロッキュ!」
「(ひいー!)イモー!」
「(な、なんだ、やんのかこらー!)フユーバー!」
「あ、あの、せめて、お名前をお聞かせください。護衛対象なのですし」
リシェスがそう言うと、彼は言った。
「俺はキラーゼだ。一応言っておくが、俺達は皆戦える。護衛対象ではあるが、何かあっても問題ない。あまり心配はするな」
「は、はい」
なんか、ただの護衛依頼というわけじゃなさそうだ。
この依頼、上手くいくかなあ?
ちょっと、心配になってきた。
男達と俺達は、まっすぐ東門を通り、森の中の道を進む。
その時俺は、折角なので新技開発を試した。やるなら今だと思ったのだ。
「(エレキ射出をー、溜める!)ゴロゴロゴロッキュー!」
バチバチッ。俺の体内に、すぐに使えるエレキが溜まる。
よしよし。どうやら第一段階はクリアといったところか。それに俺はここで、新技としてエレキチャージを覚えたようだ。
「な、ポット、急にどうしたの?」
リシェスが驚く。だから、一応ここで言っておく。
「(新技の開発だ。もしかしたら俺は、今までよりも強くなれる。昨日は後れをとったから、今回はそうはいかないぜ!)ゴロゴロゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「(新技、凄い、ポット!)イモイモ!」
「(おお、頼もしいぜ、ポット!)フユーバー!」
「なんだか知らねえが、暴走だけはするなよ。俺達の護衛が敵になるなんてことがあったら、目も当てられねえ」
キラーゼにそう言われる。よし。だったら技の試しを、早く終わらせよう。そうすればただの奇行だって思われて、ひと段落するはずだ。
「(まずは、エレキ射出!)ゴロッキュー!」
試しに脇の茂みに向けて放ってみると、予想通り、エレキ射出は見るからに強化されて発射された。
やはり、エレキ射出を強化することができるのか。これと二回エレキ射出を使ったダメージ量の比較は今できないが、場合によっては使えるだろう。
そしてきっと、エレキアタックも痺れエレキも強化される。それを念頭においておこう。
「(続いて、エレキチャージ!)ゴロゴロッキュ!」
俺はもう一度体内にエレキを溜めて、その電力を口に集中させた。
そして、技を放つ。
「(鳴き声!)ゴロッキュー!」
鳴き声は、ダメか。強化されないか。
でも、エレキはまだ体内に残っている。ならば、次は、ええと!
そうだ、口にエレキを集中させられたんだから、他のところにも集中させられるはずだ。
例えば、頭、とか、尻尾、とか、足!
「(ここだあ!)ゴロッキュー!」
俺は四肢にエレキを集めた。
そして、ええと、キックとか!
そう思って一歩踏み出すと、次の瞬間、頭の中が真っ白になった。
というか、急に体が速く動いて、俺が茂みに突っ込んだのだ。
「(うわあ!)ゴロキュー!」
「(は、速い!)イモー!」
「(目、目で追えなかった!)フ、フユーバ!」
「ポット、大丈夫?」
リシェスが俺の方へ駆け寄る音がする。俺は慌ててリシェスの方へ戻った。
「(だ、大丈夫だ)ゴロキュー」
「ポット、まさか、敵?」
「(ううん、そうじゃない)ゴロキュー」
俺は顔を横に振る。その間も、キラーゼ達は先へ進んでいた。
「おい。何遊んでやがる。さっさと行くぞ」
「はーい!」
リシェスはすぐにキラーゼの近くへ戻る。俺も駆け寄る。
「ちっ。やっぱ冒険者は冒険者か」
キラーゼがそう呟くのが聞こえた。そしてすぐに、俺達以外の護衛の四人が、うなだれたり顔を横に振ったりする。
なんだろう。ひょっとして、俺達快く思われてない?
わざわざモンスターテイマーを指名したってのに、どういうことだ?
いや、今は新技、エレキチャージの力のことの方が優先か。
エレキチャージ。こいつはひょっとしたら、かなり使える。
おそらく、今の俺に起こった現象はこういうことだ。
エレキチャージによって俺の移動速度が強化され、雷のスピードで前方へ突っ込んだ。
これを上手く戦いで使えたら、きっと凄く有利な状況が簡単に作り出せる。
その練習を、したい。けど、もう俺の身勝手な行動は見られたばかりだしな。
これ以上リシェスが何か言われないように、今は大人しくしておくか。
きっとすぐに戦いの機会は訪れる。それまでガマンだ。
「(ポット今、すっごく速かった。ボクより速かった!)イモ、イモ!」
「(ああ、そうかもな。たぶんまっすぐしか進めないが、俺の新しい技だ)ゴロッキュー」
「(使えるのか、それ?)フユーバ?」
「(まだわからない。けど、すぐ実戦で試す。二人共、できれば俺に多くの練習チャンスをくれ)ゴロッキュゴロッキュゴロッキュ」
「(わかった!)イモ!」
「(カップがわかったんなら、俺もわかった)フユバ」
「(ありがとう、二人共)ゴロキュー」
さあ、出てこい。敵共!
それからすぐに、モンスターが出てきた。
葉っぱを額に乗せたキツネが三体、俺達の集団を側面から襲うようにして現れる。
だがそこには、俺達がいる。俺達は早速敵と相対する!
「コンー!(コンー!)」
「皆、ハギツネが出たわ。倒して!」
「(よし。早速試すぞ、エレキチャージ!)ゴロゴロゴロッキュー!」
俺はその場でエレキを溜める。その間にカップとトルクヤが相手に近づいた。
「(右のはボクがやるー!)イモー!」
「(俺は左だー!)フユーバー!」
「(じゃあ、俺は真ん中、いくぜ。エレキチャージ!)ゴロッキュ、ゴロキュー!」
エレキを足に蓄えて、思いっきり一歩を踏み出す。
すると次の瞬間、俺は真ん中のハギツネとぶつかっていた。
「(いたーい!)コーン!」
「(いってて。くそ、加減が難しいな)ゴロッキュー」
確かに接近するために移動したが、もっと直前で止まり、頭突きをくらわせるつもりだった。
それが結果は、正面衝突。攻撃にはなっているが、制御はまるで出来ていない。
「(このお、木の葉手裏剣!)コーン!」
俺とぶつかったハギツネは怒りをあらわにして、周囲に木の葉を出現。その葉っぱが一斉に俺に向かっておそってきた。
あれに当たれば、ダメージを受けてしまうだろう。俺はまたエレキチャージを使う。
「(エレキチャージ!)ゴロキュー!」
エレキを足にためて、斜め後ろへステップ。すると、軽く跳んだつもりなのに、一瞬でかなりハギツネから離れた。自然と、木の葉手裏剣も避ける。
「(な、速い!)コーン!」
「(今度はこっちからだ。エレキチャージ!)ゴローキュ、ゴロキュー!」
またもエレキ移動。今回はハギツネのすぐ横で止まろうとしたが、勢いがつきすぎてまたかなり離れてしまう。
「(き、消えた!)コ、コーン!」
けれど、ハギツネが俺を見失った。ええい、これはチャンスだ。ここでエレキ射出!
「(エレキ射出!)ゴーローキュー!」
「(ぎゃあー!)コーン!」
ハギツネは倒れる。練習相手としては、まあまあだった。
「(ポットも倒したね!)イモー!」
「(やったな。しかも、すげえ戦いだったぜ!)フユーバー!」
皆ももう倒し終えたみたいだ。俺達はリシェスの元へ戻る。
「皆、お疲れ様。怪我はない?」
「(ああ、平気だ)ゴロッキュー」
リシェスが俺達の様子を確かめた後、倒したハギツネを回収して、またキラーゼ達と共に歩き出す。
その後も何度かモンスターが出て来て、もう一組の護衛達と共闘しながら、俺は更にエレキチャージの練習をした。
エレキチャージを足に溜めての移動方法を、雷速と呼ぶことにした。
雷速はまだまだ制御が効かないが、防御型の俺が高速戦闘を行える強力な技だ。役に立つ機会は多いだろう。
そしてキラーゼ達は森の中で移動をやめ、皆で木を切り倒し始めた。
倒している木は普通の木より若干赤くて、ちょっと良い香りがする気がした。
そして俺達は周囲に散開して、敵が来ないか警戒中。護衛の仕事を続ける。
そんな時、リシェスのところに護衛の一人がやって来て、軽く挨拶してきた。
「よう、モンスターテイマー」
「あ、どうも。こっちは私達の持ち場ですよ?」
「ああ、気にしないでくれ。ちょっと君と話がしたかったんだ」
なんだ、ナンパなら追い返すぞ?
ちょっと警戒すると、男はすぐ言葉を続けた。
「俺の名前はナルフラ。元は冒険者だ。今は木工ギルド専属の護衛をやっている。ていっても、安月給だがな」
「え、木工ギルドには専属の護衛がいるんですか?」
「ああ。だが、この前一組やめたんだ。護衛中の油断が原因なんだが、ちょっとしたミスでケガをしてしまってな。そして木工ギルドの護衛対象が、あんな敵俺達なら簡単に倒せたって言い始めて、喧嘩になって、そのまま護衛が一組去っていったんだ。森に入るには護衛が必要っていうギルドの方針があって、一人二人までなら俺達一組でも護衛できるんだけど、それ以上の人数で行くとなると、必ず二、三組のパーティかやり手の護衛を雇うことになっているんだ。それで、新しい専属契約の護衛が見つかるまで、冒険者ギルドで護衛の依頼を募集していたっていうことなんだ」
なんだ、ナンパじゃなかったか。まだまだ気は抜けないけど、ちょっと安心。
「そうだったんですか。あれ、でも、依頼はモンスターテイマーにだけしてありましたよ?」
「キラーゼがそう決めたんだ。元々木工ギルドの連中は、冒険者は荒くれものばかりで、そもそも戦力として必要ないって考えが固定化してて、皆悪く思ってる。でも、モンスターテイマーはテイムモンスターに好かれてるだろ。そういう、性格が良いやつを期待して、募集をかけたんだろう。実際、モンスターが俺達を守っているのを見るのは奇妙だけど、安心するよ。テイムモンスターは大体大人しいみたいだし、俺達も護衛仲間として気楽に接することができる」
「それは、ありがとうございます」
「でも、キラーゼ達はやっぱりモンスターテイマーも見くびっているみたいだ。だから、キラーゼ達のことは気にしないでくれ。護衛はこれっきりでいい。俺達はまたゆっくり新しい専属護衛が来るのを待つさ」
「はい。では、それまでの間、私達がしっかり護衛を努めます。私が未熟なのは承知していますが、ポット達の頑張りは凄いって、思ってるし思われたいですから。この護衛依頼は今日だけかもしれないけど、きっちり最後まで果たしてみせます!」
「ああ、その気でいてくれ。それじゃあ俺は、もう持ち場に戻る。何か現れたら、すぐに呼んでくれよ」
「はい。ありがとうございます。ナルフラ!」
ふうむ。そういうことだったのか。冒険者嫌いの木工ギルド、か。
護衛対象が護衛を頼ってくれないんなら、そりゃやりづらくもなるだろう。次の専属護衛が見つかっても、彼らが上手くやれるかどうか。疑問だ。
まあ、それは俺達の考えることじゃないか。木工ギルドが考えることだ。
リシェスの言う通り、今は護衛依頼をちゃんとこなそう。そしてきっと、キラーゼ達とはこれっきりだ。
木工ギルドの職員が、何個かの木を切り倒した時のことだった。
「モンスターが出た。動きが速すぎる、とてもじゃないが太刀打ちできない!」
ナルフラ達が警戒している方から、そんな声が聞こえた。俺はすぐにそちらへと走る。
「皆、敵だよ。駆けつけて!」
リシェスが遅れて走り出す。この中で一番足が速いのはカップだ。頼む、先に飛んでいって敵の相手をしてくれ!
「(カップ、先に戦っていてくれ!)ゴロッキュ、ゴロッキュー!」
「(わかってる、敵、倒すー!)イモー!」
「(うおお、敵どこだー!)フユーバー!」
「こっちだ、敵はこっちだー!」
伐採を中断している木工ギルド職員達を通り越す。するとその時丁度、高速移動する白い物体が、俺にかすりながら通り過ぎた。
「(きりさく!)イター!」
「(ぐわあ!)ゴロッキュー!」
「ポットー!」
ダメージは、あまりない。けど、今のはなんだ。まさかあれが、今回の敵か?
「(ぐああ!)フユーバー!」
「ぎゃー!」
後ろを振り向けば、トルクヤと木工ギルド職員の一人がダメージを受けていた。そして俺達から離れたところで、白いイタチのモンスターが一体、立ち止まって獰猛に笑っている。
「(へへ。今日はごちそうだぜ。獲物がいっぱいだあ)イター」
「あれはカゼイタチ。コイタチの速度特化変態モンスター!」
どうやらリシェスは相手のことを知っていたようだ。なるほど、速度特化か。あの速さ、確かに脅威だ。
「まずい。カゼイタチは速すぎる。普通に戦っても勝てない。ここは逃げるしかない!」
キラーゼが言う。すると、木工ギルド職員達が一斉に走り去ろうとする。
「皆さん、ダメ、落ち着いて、固まって!」
リシェスがそう叫ぶと同時に、立ち止まっていたカゼイタチが動き出した。
「(きりさき、きりさき、きりさきー!)イタ、イタ、イター!」
「うわー!」
「ぎゃー!」
「いてー!」
逃げようとした木工ギルド職員達が、皆カゼイタチの攻撃を受ける。
どうやら、足を狙われたらしい。皆傷の痛みによってか、立ち止まってしまった。
しかもこの場には、なぜかカゼイタチが二体もいた。
「(へっ。獲物は全部逃がさないぜ)イタイター」
「(そうだね、兄さん)イーター」
二体のカゼイタチが、仲良く並んで俺達を見ている。
「(それじゃあ、ゆっくり仕留めようか)イター」
「(そうだね。遊びには丁度いいや)イーター」
「く、これじゃあ、逃げられない」
キラーゼが傷口を押さえながら、口を歪ませる。
「(ポットー、あいつ、ボクより速いー!)イモー!」
遅れてカップが戻ってきた。そして、少し離れたところからナルフラ達も駆けつけてくる。
「(ああ、そうだな。けど、カップ。幸い今の俺には雷速がある。カップは俺をサポートしてくれ。まず一体、なんとかする。やるぞ!)ゴロッキュ、ゴロゴロッキュ、ゴロキュー!」
「(うん、わかった。まず一体、ポットと一緒に倒すー!)イッモイモー!」
カップはやる気だ。よし、そうでなきゃ。後は、俺がしっかりやるだけだ。
「(へっ。兄さん。あいつら俺達に挑む気だよ)イタイーター」
「(トロいやつらが束になっても、俺達の敵じゃないんだよ。まだわかんないのかねえ?)イーター」
確かに、カゼイタチは速い。そして護衛対象は皆負傷してしまった。これはまずい展開だ。
でも、俺達には仲間がいる。だから、これくらいのことでは負けない!
「小回復!」
リシェスが手近なギルド職員を回復した。傷がいえていく。
「あ、ありがとう」
「それが私の役目です。それより、次の方を!」
「(あ、あいつ、俺達が折角作った傷を消してるよ!)イタ、イタイタッチ!」
「(面倒だな。あいつから先にやるぞ)イタイーター」
カゼイタチ共が、そう言った。
野郎、リシェスに目をつけるとはいい度胸じゃねえか。
それじゃあ今度はこっちからいかせてもらうぜ!
「(エレキチャージ、雷速!)ゴロッキュー、ゴロキュー!」
足に思い切りエレキを溜めて、とびだす!
そしたら次の瞬間、カゼイタチ兄とぶつかっていた。
「(ぐあー!)イーター!」
「(え?)イタ?」
地面に転がるカゼイタチ兄。よし。俺はまたエレキチャージをして!
「(エレキチャージ!)ゴロッキュー!」
「(ボクはポットに合わせる、スタンプー!)イーモー!」
そして、立ち上がる前のカゼイタチ兄を、カップが攻撃してくれる!
「(連続、スタンプー!)イイイモー!」
「(ぐあー、ぎゃー!)イーター!」
よし。このタイミングで俺は、狙いを済ませて、エレキ射出だー!
「(エレキ射出ー!)ゴーローキュー!」
「(ぎゃああああ!)イタチー!」
この攻撃を受けたカゼイタチ兄は、動かなくなった。
よし、やれた。カップと俺が組めば、これくらい朝飯前だ!
「(兄さん、兄さんっ、うおー、兄さんー!)イータアアー!」
次の瞬間、カゼイタチ弟は超高速移動をしながら、俺とカップを交互に攻撃した。
「(よくも、よくも、よくも、よくもー!)
「(うわー!)イモー!」
「(エレキ拡散!)ゴロキュー!」
「(ギャー!)イター!」
哀れ、激高するイタチは急に止まれず、俺のエレキ拡散にぶちあたった。
俺はダメージにひるんで動けないでいるカゼイタチ弟を、ふみつけて動けないようにする。
素早さに特化したモンスターは、こうして油断と過信で、敗北した。
どれだけ自分に自信があっても、時と場合によっては負けるということだ。そのことは俺も、胸の内に留めておこう。
「(よくも、よくも、よくも、よくも、死ね死ね死ね、死ね!)イタ、イタイタイタ、イタイタイタイタ、イーター!」
カゼイタチ、ごめんな。
でも、生きるのは俺達だ!
「(エレキ射出、エレキ射出、エレキ射出!)ゴロキュ、ゴロキュ、ゴローキュー!」
「(ぎゃー!)イター!」
カゼイタチ弟も、こうして倒せた。
なんとかなった。
俺は一安心しつつも、新たに覚えた力、雷速に感謝した。
「ありがとう、リシェス。君とモンスター達のおかげで助かった。君達がいなければ、俺達はカゼイタチに殺されていただろう」
キラーゼがそう言って、握手を求めてくる。
リシェスはそれに応じた。
「はい。ですが、私達は護衛として、当然のことをしたまでです。それに、お礼ならこの子達に言ってください。私も、ただ見ているだけでしたから」
「そうか。ありがとう、モンスター達」
俺達に頭を下げるキラーゼ。それを見て俺は、思わずむずがゆくなった。
「(俺達は俺達のできることをやった。だから、それを評価してくれるなら、ありがとう)ゴロッキュ、ゴロキュー」
「(ポット、凄かった。だからボク達、凄い!)イモ、イーモー!」
「(俺、今回何もできなかった。ちくしょう)フユーバー」
「(トルクヤは昨日活躍してくれただろ。これでお互い様だな)ゴロッキュー」
「(そうだよ。ボク達皆、頑張った!)イーモー!」
「(そうか。そうだな。そうだー!)フユーバー!」
「君達さえよければ、これからも俺達の護衛をしてほしい。頼めるか?」
お、キラーゼがデレた。
「いいえ、私達はいずれ、村に帰ります。ですから、これでさよならにしましょう。じゃないときっと、未練になります」
けれどリシェスは、断った。
確かに。それが良いだろう。
「そうか。だが、これからは態度を改めよう。冒険者は頼りになる。いや、それは君がモンスターテイマーだからか」
「ありがとうございます。でも、私達よりも凄い冒険者は、まだまだいっぱいいますよ。それに、護衛はまだ終わっていません。帰るまでしっかり守りますからね。ポット達が!」
「ああ、任せよう」
そして、ナルフラ達からもお礼を言われた俺達は、その後も無事に護衛の依頼をやりとげた。
こうして俺達は、また少し強くなったのだった。
0
お気に入りに追加
27
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる