気づけばモンスター

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8俺はこれからも戦い続ける

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「(いっひっひ、やっぱりこいつら、そんなに強くねえなあ。良い経験値になるぜ)カータガーメー」
 あれがきっとカタガメだ。人くらいの大きさの、後ろ足二本で立つ亀。手足も甲羅も太くて大きくて、とても体力がありそうだ。
「く、おー!」
「貫け、強射!」
「(はたく、はたく!)ガメ、ガメ!」
 剣士と弓使いが放った攻撃を、カタガメは二本の前足で難なくいなす。あのモンスター、三対一でも平気な顔してるぞ!
「(たいあたりー!)カータガメー!」
「ぐうう!」
「この!」
 カタガメは剣士と弓使いを一度に狙うように、たいあたりをかましてくる。二人はそれをギリギリ避けて、その時相手の攻撃を警戒して少し後ずさった後衛の少女が、すぐに杖の先から土の塊を発射した。
「クレイショック!」
 土の魔法はカタガメに当たったが、あまり効いている様子がない。
「(ちょっとしか痛くなーい)ガーメー」
 あの感じ、やばそうだ。早く助けに入らなきゃ!
「中回復!」
「小回復!」
 駆けつけ様にミネスとリシェスが、剣士と弓使いを回復する。そしてその間に、俺とカップがもう接近する!
「(カップ、戦いになったら前のように、挟み撃ちで倒すぞ!)エッレキュー!」
「(オッケー、任せてポット!)イモイモー!」
 この中で一番素早さが速いのがカップのようだ。カップはこちらに気がついたカタガメの顔面に、一直線に飛んでいく。
「(スタンプ!)イモー!」
「(おっと)ガメ」
 野球の剛速球みたいな突進を、カタガメは頭を甲羅の中に隠すことで回避した。その後ろにカップがすっ飛んでいく。
 だが、これでいい。俺とカップは早くも挟み撃ちのフォーメーションとなった。悪くない流れだ。
「(エレキアタックー!)エーレーキュー!」
 俺の突進と共に、カタガメがまた顔を出した。カタガメは俺をしっかり見ていて、攻撃に備える体勢をとる。
 へっ、そのままくらいやがれ。俺とカップの挟み撃ちに勝てると思うなよ!
 このまま相手の腹にぶちあたる。どうだ、やったか!
「(しいーびいーれえーるうーう。っだが!)カーターガーメー、メエー!」
 次の瞬間、カタガメの前足が俺をつかんだ。
 え、ま、まずい、動けない。逃げられない!
「(パワーダウン毒!)ガーメー!」
 カタガメの口から、毒液が吐き出された。
 ドバッシャアアッ!
 うわ、痛い、臭い、ぬるっとする、ドロドロしてる!
 最悪なことに、頭から相手の攻撃をかぶってしまった!
「(後ろアタック!)イモー!」
「(ぐああっ!)ガアーメー!」
 その後すぐに、カタガメから解放される。俺は必死に距離をとってから、体をブルブル震わせ毒を払い落とす。
 うわ、なんだこれ。メチャクチャ気分悪いし、力も出ないぞ。
 ひょっとしてこの脱力感は、敵の毒の効果なのか!
「ミネス、俺達はもう皆毒をくらった。解毒はしたが、力がいつもの半分程しか出ない。エレキュウもあびたようだし、やはり持久戦になるぞ!」
「(ふへへ、あと一匹、いや三匹かあ)カタガーメー」
 カタガメが悪い笑顔をしながらカップと、リシェスとミネスを見る。
 あと三匹って、ひょっとして毒をまだ浴びてないやつの数か?
 そうか、この敵は毒技で相手を弱らせてから、戦うタイプなのか。どうも自分の戦い方に、相当自信があるらしい。今は七対一なのに、全然余裕を崩さない。
 うー、気分悪い。ひょっとしたらこれは、味方がこれだけいても、厳しい戦いになるぞ。
「解毒の光!」
 リシェスの声が聞こえて、俺の気分が幾分安らぐ。まだ体に少し力が入らないが、大分マシになった。
「(ありがとうリシェス!)エレキュー!」
「(ポット、大丈夫?)イモモー?」
「(ああ、まだ戦える。カップ、敵の毒には注意しろよ!)エレ、エレエレキュー!」
「(うん、ポットみたいにくらわない!)イモイモー!」
 俺みたいに、ね。うん、まあ、それでいいんだけどさあ。もうちょっと言い方が違った方が良い気がする。
「(毒霧!)ガーメ!」
 次の瞬間、カタガメがカップに向けて紫色の霧を噴いた。見るからにやばそうな攻撃だ。
「(毒は絶対くらわないー!)イモモー!」
 そうしてくれよ、カップ。俺はこの間に、攻撃だ!
「(くらえ、エレキ射出!)エーレーキュー!」
「強斬り!」
「強射!」
 味方二人の攻撃も命中する。これで、かなりのダメージを与えられたはずだが、どうだ。
「(ぐああ、この攻撃は、まずいー!)ガーメガー!」
 すぐにカタガメが、俺を睨みつける。どうやらあの攻撃の中で一番、俺の技が効いたらしい。
「(お前、許さん。お前は、真っ先に倒す!)カータガーメー!」
「(ふん、来るなら来い。俺達は、負けない!)エーレキュー!」
「(水射出!)ガメー!」
 って、いきなりその技はちょっと避けづらいぞ!
「(うわあー!)エレキュー!」
 まともにくらってしまう。く、威力が大きい。こんなの二、三発くらったらまともに立てなくなるぞ!
「ポット、小回復!」
 サンキューリシェス、これでマシになった!
「(甲羅隠れ、からの転がる!)カータガー、メー!」
 何、今度は甲羅だけになって転がってきやがった。まっすぐこっちに向かってくる!
 そう何度もくらってたまるか、こっちは全力で回避だ!
 ギリギリのところで甲羅を回避する。ふう、なんとかセーフ!
「(外したか、ならこのまま逃げる!)ガーメガーメー!」
 あっ、カタガメのやつ、このまま転がって逃げる気でいやがる。そうはさせるか、何か、何か手はないか!
 そうだ、新技があった!
 俺はここで、痺れエレキを使うぞ!
「(くらえー、痺れエレキ!)エレッキュー!」
「(ぐああ、な、なんだ、体があー!)カタガ、ガメガー!」
 よし、痺れエレキが効いて、カタガメは甲羅から足と頭を出して伸びている。これはチャンスだ!
「(今。後ろアタックー!)イモー!」
 丁度いいタイミングでカップが飛んできて、カタガメの頭に直撃。これで更にカタガメの動きが止まる。
「いいぞ、モンスター!」
「その調子だ!」
「クレイショック!」
 剣士が近づき、弓使いが矢を放ち、魔法使いが魔法を放つ。俺も、追撃だ!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
「(ぐあー!)ガメガー!」
 ここでカタガメが立ち上がる。そしてまた甲羅の中に隠れて、転がりだそうとした。
「(俺は死なん。俺は負けん。こんなところで、終われるかー、甲羅隠れ、転がるー!)カタガー、カタガー、ガメガー!」
「(スタンプ!)イモー!」
 カタガメが移動を始める前に、カップが強力な突進をおみまいして、カタガメを裏返しに転がすことに成功した。ナイスだカップ。これでカタガメは、しばらくは起き上がれない!
「強斬り!」
「強射!」
「クレイショック!」
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
 更に追い打ちをかける。するとカタガメは首をめぐらせて、一番近くにいた剣士を睨みつけた。
「(ええい、このまま死ねるかー、水射出水射出、水射出ー!)カタガメガー!」
 まるで最後の気力を振り絞るかのような、強力な連続攻撃。その全てが剣士に当たる!
「うわー!」
「ガナイー!」
 ミネスが叫んだ。でも今は、あのカタガメを倒す方が先だ!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
「(スタンプ!)イモー!」
 俺とカップの同時攻撃が、カタガメに直撃する。
「(うわあー!)カタガメー!」
 これで、カタガメは倒れた。
 はあ、はあ、やった。なんとか倒せたぞ。
 でも、今はとても、喜べる雰囲気じゃない。
 状況は、とっても悪い。なぜなら、カタガメの連続攻撃を受けたガナイという剣士が再び立ち上がらないからだ。
「(やったー、やったよポット、リシェス、あれ?)イモーイモモ、イモ?」
 カップも、今の空気の重さに気づいたようだ。
 今、この場は嫌なくらい静まり返っている。敵はもういなくなったというのに、オルツとガナイが全く立ち上がらない。
 もし、このままどちらも立ち上がらないままだったら。それは、勝利とは、言えないんだ。
「ガナイ、ガナイ!」
 ミネスがガナイの元へ駆けつける。そして呼吸を確認して、心臓の鼓動も確認する。
 そして、辛そうな表情になる。
「ダメ、息もしてない。心臓も、止まってる」
「そん、な。ガナイが、死んだ?」
 弓使いが、呆然とする。
「待って、ウソよ。ありえない」
 魔法使いの少女も、脱力する。
「中回復!」
 ミネスが魔法を使う。しかしそれでもガナイは動かない。
「こうなったら、お願い、神様。今だけ、私に蘇生魔法を使えるようにして。ガナイを、助けてください!」
 ミネスが祈る。そして、ガナイの前で膝をつく。
「回復魔法、蘇生」
 彼女がそう言って、その後。
 何も、起きなかった。
 ミネスの魔法は、失敗したのだ。
 これじゃあ、俺達の負けだ。
 危険なカタガメは倒せても、それで人が死んでしまったら、最悪なんだ。
 そう、最悪なんだ。
「(くそ、こうなったら!)エレ、キュー!」
 俺は、駆けだす。
「そんな、ガナイさん。あ、ポット、どうしたの!」
 すぐに、ガナイの元まで駆けつける。こうなったら、一か八か。俺の技に、賭けるんだ。
 エレキ射出。
 ひょっとしたら、電気ショックを利用すればガナイの心臓は再び動き出すかもしれない。可能性は百%じゃないが、0%でもないはずだ。
 頼む、神様。俺に、力をくれ。折角今エレキリスモンスターなんだ。なら、自慢のエレキパワーで、奇跡の一つでも起こさせてくれ!
「(いくぞ、エレキ射出!)エーレーキュー!」
 電撃が、ガナイの胸に当たる。よし、どうだ!
「(ポット?)イモー?」
「な、何するの、このエレキュウ、やめなさい!」
 ミネスが怒鳴るが、この際関係ない。ガナイの心臓に前足を当て、鼓動があるか確かめる。
 心臓は、まだ動いてない。なら、もう一度だ!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
「やめなさい、エレキュウ!」
「ポット、お願い、やめて!」
「何してるんだ、このモンスター!」
「ガナイに、ガナイに何してるんだ!」
「ガナイはもう死んでるのよ、なんでそんなことするの!」
 ガナイの心臓は、まだ動かない。まだだ、もう一度だ!
 頼む。これで、どうにかなってくれー!
「(エレキ射出!)エーレーキュー!」
「やめなさい、このモンスター!」
「ポット、どうしちゃったの、やめて!」
 ドクン、ドクン、ドクン。
 お、おお。これは!
 生き返った。ガナイが、生き返ったぞ!
「(おい、皆、ガナイが生き返ったぞ!)エレキュー、エレキュ、エレキュー!」
「(え、本当、凄い!)イモ、イモー!」
 次の瞬間、俺はミネスに杖でぶっ叩かれた。
 良いところに当たって、少しふきとぶ。いてて、結構効いたぜ。
 でも、今は泣き言なんて言ってる場合じゃない。なんとかして、回復魔法が使える二人にガナイの復活を知らせなければ!
「この、よくもガナイを。殺してやる、殺してやるわ!」
 ミネスは殺気だっている。この様子だと、俺からの説得は難しいだろう。
 なら、ここはカップに頼もう!
「(カップ。ミネスの肩や腕をゆすって、もう一度ガナイに意識を向けさせてくれ!)エレッキュ、エレッキュー!」
「(うん、わかった!)イモイモー!」
 カップは俺の言った通り、すぐにミネスの気を引く。そして、ガナイの上で激しく動いた。
「何、このカルイモまで!」
「ミネスさん。ひょっとしてポットとカップは、ガナイの何かに気づいているんじゃないですか?」
「え?」
「お願いします、私のモンスター達を、信じてください。きっと、二人は何かをミネスさんに伝えようとしてるんです!」
「(そうだ!)エレキュー!」
「(そうだ!)イモー!」
 俺とカップがうなずくと、ミネスは戸惑う。
「で、でも、ガナイは確かに、もう」
「(もう一度、心臓を確かめてくれ!)エレッキュー!」
「(早く、早く!)イモ、イモ!」
 俺がガナイの胸をぽんぽん叩く。すると、ミネスは怒りながらもうなずいた。
「っ、わかったわよ。リシェスに免じて、今一瞬だけ信じてあげる。でも、その後は、絶対許さないから」
 ああ、もう許さなくたってなんだっていい。まだガナイがまずい状態だっていうのは確かなんだ。せめて死体に電撃撃った分は、回復させてやらねえと!
 ミネスはもう一度、呼吸と心臓の鼓動を確認する。するとそこで、大きく驚いた。
「え、うそ。心臓が、動いてる?」
「何、本当か!」
「まさか、エレキュウが動かしたの?」
 ミネスの仲間も、驚く。やった、わかってくれた。これでガナイは、本当に助かるぞ!
「ちゅ、中回復、中回復!」
 ミネスの魔法で、どんどんガナイの傷が消えていく。良かった、今度はちゃんと効いてるように見える!
「っ、はあー。はあー、はあー」
 すぐにガナイは、生きるための呼吸をし始めた。
 やった。蘇生、成功だ。
 神様、ありがとう。これが奇跡ってやつか。
 いや、奇跡なら、もう何度も起こってるか。ここまでの戦いは、全部奇跡の連続みたいなものだ。本当、自分の幸運と神様には、何度感謝しても感謝しきれない程だろう。
「神様、ありがとうございます。そして、エレキュウ」
 ミネスは俺の方を見ると、深く頭を下げた。
「あなたを疑ってごめんなさい。あなたが、ガナイを助けてくれたのよね。いきなり電気を浴びせたりして、驚いたけど、あなたが、奇跡を呼んでくれたんでしょう。本当に、ありがとう」
「(何、良いってことよ)エッレッキュー」
 ガナイは生き返った。つまり、あとオルツも無事なら、この勝負、俺達の勝ちだ。
 全員で生きて帰って、全員でこの日の記憶を思い出に変えるんだ。
 それが、勝利者の特権なんだ。
「ありがとう、エレキュウ」
「ありがとう、エレキュウ」
 他のミネスの仲間も、俺に頭を下げてくれる。
 まったく、こそばゆいぜ。
「ありがとう、ポット!」
 突然、リシェスが俺に走り寄って、ギュッとだきしめてきた。
「(ボクもー!)イモー!」
 カップまでもが、俺にぴったりくっつく。
「(へへへ。リシェス。まだオルツの容態を確かめてないぞ。気を抜くのが早すぎる)エレ、エレエレキュー」
「ポット、いつもいつもありがとう。私達の命を、何度も救ってくれて。あなたは、本当に命の恩人よ!」
 ぐうー。
 ああ、安心したらなんだか、お腹が空いてきたなー。そういえば、お昼ごはんを食べそびれていたんだっけ。
 ぐうー。
 あ、カップのお腹も鳴った。
 はは、帰ったら、日常に戻るぞー。

 その後馬車は、皆で押して村に持って行った。カタガメはバッグ魔法で弓使いが収納。馬は骨だけになってたから、道の脇によけて放置。馬車の上には、オルツも乗せた。
 え、オルツはどうだったって?
 あいつ、ちゃんと虫の息があったよ。体中の骨が折れてたみたいだけどさ。無理して助けに来たんだから、無事で良かった。
「この元凶には、回復魔法は使わないでおきましょう」
「ええ。これを機に、たっぷり反省してもらいます」
 ミネスとリシェスの発言がちょっと怖かった。でも他の皆もうなずいてたし、ガナイに至っては死にかけたんだから、無理もない。このまま今回の件は、オルツの良い薬になってくれたら良いな。
 帰り道でも戦闘はあったが、全部いつも通りのちょっとしたものだった。今は人数も多いし、敵じゃなかったね。やっぱり、ミネス達を負かしたあのカタガメが、危険すぎるくらい強かったんだ。
 帰ったら、商人から多額の報酬をもらった。更に山分けするはずの報酬は、リシェスが全部独り占めすることになった。正確には、俺への報酬だそうだ。ガナイの命を救ったお礼は、かなりの高額だった。
 それと、戦力外のオルツ一人をその気にさせて雇った商人には、ギルドからある程度のペナルティーがあるらしい。何度も無闇に冒険者を危険な目にあわせるような事はさせない、というギルドの方針らしい。確かに、今回の件は俺達にも迷惑がかかった。この措置はありがたい。
 そしてこの日の夕方、俺達はギルドの料理屋スペースでミネス達にたくさんの夕ご飯をごちそうしてもらった。本当にもう、文字通りごちそうだった。
「そんな、ミネスさん、いいですって。報酬まで全部もらったんですし、ここまでしてもらわなくても」
「リシェス。私達がおごるごちそうよ。まさか、食べられないなんて言わないでしょうね?」
「い、いえ、ですが、こんなに豪華じゃなくても」
「命の恩人にはこれくらいしなきゃバチがあたるわ。まあといっても、本当の恩人はこのポットなんだけどねえ。ありがとうねー、ポットー!」
 リシェスはまだ困惑しているが、俺とカップは料理に真っ先にかぶりつくぞ。こんなに良い物を目の前に用意してもらったんだ。遠慮は不要と思い、がっつく。
「(もぐもぐ。うん、美味い。満足だ)エレキュー、エレキュー」
「やーん可愛いっ、強いし命の恩人だしモフモフなんだから、本当最高よ。ねえリシェス、やっぱりポット、私にちょうだい?」
「ダメ、それだけは絶対ダメです。いくらミネスさんの頼みでも、仲間はあげられません!」
「ミネスにやれないなら、俺にくれてもいいぞ。なんせ、命の恩人なんだからな!」
「ああ。俺にくれてもいいぞ」
「私も、ポットをくれたら永遠に可愛がってあげるわ。カップもくれていいわよ?」
 ミネスのパーティの皆が、そう言ってくれる。
 へへ。けど俺が最も守りたいのは、リシェスだ。そう簡単に他のやつのテイムモンスターになる気はないぜ。
 それにリシェスも、俺達のことをたくさん大事にしてくれる。
「ダメですダメです。ポットもカップも私の仲間なんですから。ね、ポット、カップ?」
「(もぐもぐ。ん、まあな)エレッキュ、エレッキュ」
「(もぐもぐ、これ美味しい、美味しい、どれも美味しいよー!)イモ、イモ、イモモー!」
 こんなに幸せな時間が過ごせるんだから、頑張ってカタガメを倒しに行って良かった。
 死闘を繰り広げた後の皆で囲むごちそう。なんか、良いな。こういうの。
 生きているから、美味しいものを美味しく食べられる。生きているから、幸せを大事にできる。この仲間と共に戦い続ける生活は、俺の心に生きる喜びとありがたみを、人だった時よりも強く感じさせてくれた。
 人間だった時は命の危険なんてめったになかったけど、今は守りたい少女がいるから、一日一日を強く濃く生きられる。
 そもそも俺は、弱いんだ。手が届く範囲にいる仲間の命しか守れない。いや、ちゃんと守れるかすら怪しい。
 だから、これからも皆と一緒に強くなって、皆と一緒に生きていこう。この力は、一人じゃないから得られる力だ。
 今、俺ってモンスター。でも、それでいい。
 この世界で見つけた幸せを守るために、俺はこれからも戦い続ける。
 さあ、明日も戦いが待っているぞ。

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