剣士のはずの俺がサキュバスに転生してしまった

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 ガサガサガサ。正面からモンスター三体が現れた。鳥、カエル、アルマジロだ。
「ちゅん、ちゅちゅん!(この女の子、かっわいいぞー!)」
「げろげろげーろ!(待て、後ろにいる女の方がすっごいきれいだけろー!)」
「アル、アルアル!(こんな美人が二人もいるなんて、ラッキー!)」
「死ね、ゴミめ」
 ぐさっ。ウエンエスが鳥に槍をぶっ刺した。
「私を見て言わないのが気に入りませんわ」
 ざくっ。ハールンが剣でカエルを切り裂いた。
「その視線、むかつく。あの男を思い出す。許さない」
 ばっさり。イーミーが剣でアルマジロを貫いた。
 そのまま三人は一方的に敵を攻撃する。相手は目がハートマークになっていて本領を発揮できていないようだが、それを抜きにしても、この三人はかなり戦闘が上手くなっている。これは俺の出る幕はないな。
 皆のレベルも上がってるし、きっとあの水ダンジョンで何かあったのだろう。まあ、俺もいろいろあったから、三人にもいろんなことがあってもふしぎじゃない。
「ヘロン様、モンスターを倒し終えました」
 ウエンエスが言う。俺はうなずく。
「うん。それじゃあ出てきた宝箱の中のアイテムは、不要そうならモンスターと一緒に食べちゃって。ポーションとかがあったら俺の収納リングに入れておこう。それじゃあ、ハールンとイーミーが食べ終わるまで待機」
 どうやら収納リングには、収納できる限度があるようだ。なんでもかんでも運べるとまではいかないらしい。何を入れるかは、ちゃんと選ばなきゃいけないな。
「はっ、了解しました。あの、ところでヘロン様。私も、モンスターを食べてもよろしいでしょうか?」
「ウエンエスはこれ以上経験値は必要ないと思いますわ」
「ウエンエス、見張ってて」
 ハールンとイーミーはそう言って、すぐに二人そろって必死にモンスターを食べ始める。これは、よほどウエンエスとのレベル差を意識しているようだ。
「だって。ウエンエスは、俺と一緒に警戒してよう。あ、でも、お腹が空いてるなら食べてもいいけど」
「ヘロン様、お気遣いありがとうございます。しかし、私はまだ空腹ではありません。なので、このまま警戒をしています。あ、ヘロン様。あそこに果物があります。ヘロン様は果物がお好きなのですよね。私が取ります」
「お、ありがとう。別に果物が好きってわけじゃないけど、今はこれしかないんだよね。そういえばいつの間にかお腹空いたな」
 あ、ひょっとしたら収納リングの中に食べ物があるかもしれない。後で確認しておこう。
 この戦闘で得た物はポーションが一個だけ。後は骨すら経験値に変える。そうして二人の食事は、すぐに終わった。なので、また歩き出す。
 そして、数分と経たずにまた戦闘。まあ大した敵じゃないからいいか。どうやらこの辺りのモンスターは、俺が手出ししなくても皆が全部倒してしまえそうだ。
 そのまま順調に歩いていって、夜。
「ヘロン様。もう夜も遅いです。もちろん、お眠りになられますよね?」
 ふと、ハールンが言った。ふむ。確かにここら辺に俺達を脅かす強さのモンスターはいないみたいだし、人間の追手ももう撃退できるレベルになっているし、急いで移動する理由はないな。なら、今晩はぐっすり眠るか。
「ああ、まあ、寝れるなら、寝るけど」
「では、私がひざまくらをいたします。ヘロン様はどうぞ私の膝を楽しんでください」
「え、ひざまくら!」
 何それ、男の夢じゃん。やったー!
「むっ」
「むむっ」
 そこで、ウエンエスとイーミーが過敏に反応した。
「お待ちくださいヘロン様。ひざまくらなら、ぜひ私がいたします。ここは、私のひざまくらをお選びください」
「ヘロン様。私もひざまくらする」
「えーっと。皆ひざまくらやりたいの?」
「はい!」
 ハモった。何この状況。幸せ。
「ありがとう。でも、ひざまくらは一度に一人しかできないと思うから。そうだ、じゃんけんで決めよう。それでいいね?」
「じゃんけん、いいですよ。やりましょう」
 ウエンエスが言った。
「今度こそ負けませんわ」
 ハールンが言った。
「負けない」
 イーミーが言った。
 そして、今日二度目のじゃんけん勝負が始まった。
「じゃんけんぽん!」
 勝ったのはウエンエスだった。
「やったー、ふっ、お前らは二人で夜の見張りでもするがいい。私はヘロン様へのひざまくらで忙しいからな!」
「くう、またしても負けるだなんて。信じられませんわ」
「くやしい」
「いや、あの、ウエンエスも、俺が眠ったら夜の見張りとかしてくれていいから。ていうか、俺も見張り交代するから」
「そんな、いけませんヘロン様。ヘロン様はこのまま朝までぐっすりお休みになられるべきです。そしてひざまくらも朝までずっとするべきなのです。そうでないと勝った旨味が減ってしまいます」
 ウエンエスが力強く言う。旨味って。
「ウエンエスに賛同するのは嫌ですが、ヘロン様に夜の見張りなんてさせられるはずがありません。今晩は私とイーミーが二人交代で見張りしますわ。今晩はですが」
 ハールンが言う。
「夜のモンスターは、良い経験値。ウエンエスは今の内にあぐらをかいていればいい」
 イーミーが言う。俺はうなずいた。
「そう。じゃあ収納リングの中に入っていたテントを出すから、寝る人は中に入ろう。ウエンエスは、俺が寝たらもうひざまくらやめても良いからね」
 明るい内に収納リングの中身を確認したら、食料と一緒に見つけたのだ。本当にあの八人組と会えてラッキーだった。
「はい。ですがひざまくらだけは、ずっとやらせていただきます」
「じゃあ、テントを張ろう。収納リング、テントを出せー!」
 こうして俺達は、屋敷から脱出して初めてゆっくりした夜を過ごした。
 あと、収納リングの中に入っていた水と干し肉は、なんか、味が物足りなかった。

 翌日。
「む、これはダンジョンだな。ヘロン様、新しいダンジョンを見つけました」
 お昼頃、俺達は新しいダンジョンを見つけた。
「ああ、本当だ。地面に不自然な感じで階段がある。どうする、皆。入るか?」
 俺が皆に問うと、皆うなずいた。
「はい。強くなるチャンスはできるだけ逃したくありません」
 ウエンエスが言う。
「早くレベルアップしたいので、私もダンジョンに入りたいですわ」
 ハールンが言う。
「ダンジョン、入りたい」
 イーミーが言う。俺はうなずいた。
「よし、それじゃあ入ろう。けど、この前みたいに罠があるかもしれないから、皆、気をつけて進もう」
「はい!」
 こうして俺達は、新しいダンジョンに入っていった。
 新しいダンジョンは、鳥ダンジョンだった。
「ギャエーギャエー!(侵入者だ、侵入者だ!)」
「キューキュルキュルキュル!(美人が二人、美人が二人、捕まえた後いけないことをしまくってやろう!)」
 森になっているダンジョン地下一階に入った瞬間、近くにいた鳥モンスター達がそうさわぐ。
「なんだろう、その美人の中に、私が入っていない気がする」
 ウエンエスが槍を構えながら言った。
「同感ですわ。まあ、鳥なんかにモテたくなんかありませんけど」
 ハールンが剣を構えながら言った。
「モンスターいた。たくさん倒す」
 イーミーが剣を構えながら言った。
「きっとスキル魅了の力だよな。美人って。鳥でもこの姿の良さが解るんだ」
 俺はそう言いながら、剣を構えずのんびりしていた。
「皆。見たところ、ここのモンスターはそう強そうじゃない。だからいつも通り、俺は戦わなくてもいいかな?」
「任せてくださいヘロン様」
 俺の言葉に、ウエンエスがうなずく。
「ヘロン様のご助力がなくとも、簡単に倒してごらんにいれますわ」
 ハールンが言う。
「経験値、いっぱいかせぐ」
 イーミーが言う。
「それじゃあ、任せたよ。皆、ちゃんと後ろから見てるから、危なくなったらすぐ助けるからね」
 俺がそう言うのと同時に、たくさんの鳥モンスターが一斉におそってきた。
「キュルキュルキュル!(美人だ、美人だ!)」
「ギャエーエー!(美人は生け捕り、それ以外は経験値だー!)」
「お前達全員、この槍の餌食にしてやる!」
 ウエンエスがそう言うのと同時に、三人が鳥達へ向かって走り出した。

 数分後。皆はなかなか鳥達と良い勝負をして、無事勝利した。
 三人が確実に強くなっていたということもあったが、装備の力もすさまじかった。ウエンエスは強い槍を使いこなし、更に痛いダメージをくらったら瞬時に回復魔法で自身を回復していた。そのかいあって、最後まで余裕そうに戦っていた。
 ハールンは、幻狼遊撃拳と剣技の組み合わせをいきなり使い、気合い力を消費した後は、かなりつらそうに戦っていたが、毎日鍛えている清剣技の活躍もあり、そこそこ敵を倒せていた。もうハールンも、十分戦力の一端を担えている。
 イーミーを相手する鳥達は、魅了されていて全く本気の攻撃をしてこなかった。更にイーミーは斧男から奪った鎧の効果で、防御力と素早さ上昇の効果を得て、常に楽に接近できていた。彼女の清剣技も上達してきているし、今となっては頼もしいの一言に尽きる。
 というわけで、皆が敵を全滅させたのを見届けた俺は、もう大げさにほめた。
「やったね皆。全然苦戦しなかったじゃないか。確実に強くなっているよ。すごい!」
「いえ、私など未だヘロン様の足元にも及びません。これからも鋭意精進いたします」
 ウエンエスが照れながら言う。
「ヘロン様のおかげで、私も戦えるようになっています。これも全て、ヘロン様のおかげですわ」
 ハールンが顔を赤くして言う。
「強くなる。強くなって、ヘロン様の役に立つ」
 イーミーがやる気まんまんの顔で言う。
「よし。それじゃあハールン、イーミー。そろそろ二人に、次の清剣技を教えるよ。その名も、清剣技双祇。よく見てて」
「わかりましたわ」
「うん」
 俺は素早く双祇を使う。そしてもう一度二人を見た。
「これが双祇だ。この技も、戦いの中で体得してほしい。けど、また見て覚えたい時は言ってね。それじゃあ皆、今は倒した敵を食べて体力を回復して。俺は敵が落としたアイテムを確認するから」
「はい!」
 皆元気よく鳥達の死体を食べ始める。あんな物食べさせるのもどうかと思うが、まあ、皆普通に食べてるし、収納リングの中のポーションも少ないし、仕方ないか。
 さて、鳥達が落としたアイテムはどんな感じかな。できればポーションを多めに落としていてくれてるとうれしいんだけど。

 ポーションは結構あった。いろいろ種類があって、体力回復のポーションだけでも6個は拾えた。
 そして鳥達も食べ終わり、俺達は先に進む。宝箱があっても残しておけばダンジョンマスターになった時に利用できるかもしれないので、よほどの物が入ってない限り素通りする。
 そして地下一階には、鳥の他に虫もいた。
「リリリリリリリ(敵発見。きれい。つかまえてむしゃむしゃする)」
「リリリリリ(氷魔法レベル2氷の刃)」
 敵は青いコオロギで、氷魔法を使ってきた。しかし三人は魔法をあまり気にせず接近し、攻撃する。コオロギは魔法使いタイプで、接近戦はあまり強くなかった。
 コオロギは鳥以上に数がいたが、それでも皆の敵ではなかった。ウエンエスとハールンが気合い力を、イーミーが火魔法を使いながら、簡単に倒していく。
 ここも難なく突破して、俺達は次の階に向かった。

 地下四階からは、ダチョウっぽいのと巨大ハチが出た。手があるダチョウってちょっと怖いよね。
「ダチョー!(美人にやられたー!)」
「ブーン!(ここは撤退して仲間を呼ぶハチー!)」
 最後のダチョウが倒れ、最後のハチは逃げようとする。
「逃がしませんわ!」
「待てハールン。ヘロン様、ここはあのハチを追いかけてみませんか?」
 ウエンエスがそう言って俺を見た。
「え、その方が良いの?」
「実は、あのハチを以前見かけたことがあります。あいつの巣は美味しいですよ。ぜひヘロン様も一度食べてみてはいかがでしょう?」
「そうなんだ。じゃあハチも結構遠くへ逃げたみたいだし、折角だから追ってみよう。皆、走ろう!」
「はい!」
 ここで皆倒した死体に目もくれず、一匹残したハチを追う。まあ、この先もまだまだいっぱい敵はいそうだから、今回はちょっとの死体と宝箱くらい無視してもいいよね。
 少し走った先に、大きなハチの巣があった。人サイズあるハチがいっぱい住んでいる巣だから、家みたいにでかい。そこから、同じハチがたくさん出てきた。
「ブーン!(敵ハチ、敵ハチー!)」
「ブーン!(全員倒すハチー!)」
「皆、また数が結構いるよ。くれぐれも油断しないように!」
「はい、ヘロン様!」
 皆油断なくハチの群れに立ち向かう。
 そして数分後、皆がボロボロになった頃に、ハチの巣から、最後のハチが現れた。
「ビービービー!(お前達、よくも私の可愛い子供達を。許さない!)」
 しかもそのハチは、頭に冠をかぶっている。その強さはなかなかのもので、三人を翻弄していた。
「く、このハチ、強い!」
 ウエンエスも珍しく焦っている様子。これは、そろそろ俺の番かな?
「こんな時にこそ、ヘロン様から授かった切り札を使うべきですわ。幻狼遊撃拳、剣技レベル2二連斬り!」
 ここでハールンの幻が二人現れて、最後のハチに二連撃を決める。更にハールン自身も二連撃を使い、ハチに大きなダメージを与えた。
「ビービー!(く、こいつらまだこんな力を!)」
「今。火魔法レベル1火の矢!」
 イーミーが剣を片手で持ち、もう片方の手から火の矢を放つ。それがハチに当たり、よく燃えた。
「チャンス、槍技レベル2突き刺し!」
 ウエンエスも猛アタックする。すると、ハチはよろめき、更に皆の攻撃チャンスができた。
「くらいなさい、清剣技双祇!」
「清剣技双祇!」
「お前の弱点はここだあ!」
 ハールン、イーミー、ウエンエスの会心の一撃がハチを貫く。これでハチもかなりボロボロになった。
「ビー!(きゃあ、せめて一太刀ー!)」
 その時、ハチが脅威の動きを見せて皆に素早く反撃する。
 ここは、俺の出番に違いない!
「光の盾、闇の盾、光の盾!」
 ウエンエス、イーミーを光の盾で守り、ハールンを闇の盾で守る。するとハチの攻撃は完全に無力化された。
「はあ!」
「ですわ!」
「たあ!」
 その時、三人が同時にハチを攻撃する。すると、ハチは地面に落ち、動かなくなった。
「ビ、ビー(ごめんね、子供達。がくっ)」
 最後のハチからも青白い光がたくさん出て、三人にたくさん、俺の中にちょっぴり入る。よし、これで戦闘終了。今回は苦戦したかな。
「ふう、なんとかヘロン様のお力のおかげで倒せたな」
 ウエンエスが言う。
「そうですわね。あ、あら?」
 その時、ハールンの全身が光り輝いた。そして瞬く間に、姿がちょっと変わる。
「ハールン、どうしたの?」
 イーミーが訊く。ハールンは驚いた顔の次に、笑顔になった。
「まあ、これは進化ですわ。私、アタックヒーラーに進化しましたわ!」
「む。まさかハールンが進化するとは」
 ウエンエスが驚く。俺も、仲間のステータスを見て皆の現在のレベルを確かめる。
 俺、レベル60。ウエンエス、レベル48、ハールン、レベル40、イーミー、レベル39。ここで、ハールンが進化するとは。
「やりましたわ、やりましたわ!」
 ハールンがぴょんぴょんはねて喜ぶ。よほどうれしいようだ。
「ひょっとして、ハールンの種族は進化が早いのかな?」
 俺が言う。
「ハールンが進化したら、次は私の番?」
 イーミーが目を期待で輝かせる。
「いや、どうだろうな。私がまだだから、イーミーも当分先かもしれないぞ」
 ウエンエスが言う。
「そういう気分をおちこませるようなこと言うの、ダメ」
 イーミーがウエンエスを睨む。
「わ、私は私なりの考えを言ったまでだ!」
「これで更に強くなれましたわ。自分の力で剣技だって覚えましたわー!」
 ハールンはそこで俺を見て、期待する目をしながら言った。
「ヘロン様。私、とうとうアタックヒーラーになれましたわ。ですので、ほめてください!」
「あー、うん。おめでとうハールン」
 俺はハールンの頭をなでる。なでなで。
「うふ、うふふ、しあわせー」
 ハールンはとても喜んだ。
「なあ!」
「むうっ」
 そしてそこで、二人も俺に身を寄せる。
「ずるいぞハールン。ヘロン様、私もほめてください」
「私も。ヘロン様、頭なでて」
「ああ、はいはい。三人とも、よくあんなに強い敵を倒せたね。よくやったよくやった」
 なでなで。なでなで。ウエンエスとイーミーもなでる。
「うふふ。これは、すごい」
「ヘロン様の手、気持ち良い」
「な、ウエンエス、イーミー、何をしてるんですの。今は私とヘロン様だけの時間ですのよー!」
「そんなみにくいことを言うなハールン。ふふふ」
「ハールンだけ良い目には合わせないの」
「くうう、ヘロン様あ、もっと私を、私だけをなでてくださいー!」
「あー、はいはい。皆、本当よくがんばったねー」
 俺は一生懸命三人の頭をなでまくる。
 本当、腕二本だけじゃ足りないよ。でも、これだけ皆仲良しなんだし、俺がほとんど手出ししなくても強敵を倒せたんだし、これから先何があっても上手くやっていけるよね。
 とりあえず今は、がんばった皆をほめてやろう。

 数分後。
 ハールンとイーミーはハチの死体食べに移り、ウエンエスは俺を導いてハチの巣を崩していた。
「ヘロン様。まずこのハチの巣は、わずかに甘くてサクサクしているんですよ」
「え、そうなの?」
 俺は試しにハチの巣をもいで食べてみる。
「ぱく、さくさく。本当だ、甘くてサクサクだ」
 これは美味い。お菓子感覚でいけるぞ。というか完全にお菓子だ。
「それで、この巣の中心部分にはちみつが溜めてあって、それをこの巣と一緒に食べるのがとても美味しいのです」
「へえ、そうなんだ」
 俺とウエンエスは巣の中心部分まで行って、見つけたはちみつたっぷりの巣の場所をもぎとり、同時に食べる。
「ぱく、もぐもぐ。うっ」
 な、なんだこれ。甘すぎ、甘すぎる!
「もぐもぐ。どうですかヘロン様。感動する程美味でしょう!」
「う、うん。でも俺は、巣だけの方が好みかな」
 ちょっとこれは、いくらなんでも甘すぎでしょう?
「そう、なのですか?」
「うん。でも、この巣のことを教えてくれてありがとう。はい、この食べかけのはちみつ付き巣はあげるよ」
「ヘ、ヘロン様の食べかけ。ありがたくいただきます、ヘロン様!」
 俺はここで巣から出て、舌が甘さから回復するのを待つ。もう当分、甘いものはいいかな。さて、それじゃあ宝箱の中身でも確認しよう。
 俺はまず、最後のハチが落とした宝箱を確認した。すると、中には剣と紙が入っていた。
「えっと、装備してと。ビークイーンソード、おお、素早さ上昇小、クリティカル率上昇中、威圧小か。結構良いんじゃないか。あとこの紙は、ハチの証か」
 持ってるとわかる。このハチの証をハチに見せれば、ハチが仲間になりやすくなるらしい。一応これは、収納リングに入れておこう。
「ねえ、ハールン、イーミー」
「もぐもぐ。はい、なんでしょうヘロン様?」
「もぐもぐ。ヘロン様、何?」
「今、新しい剣を拾ったんだよ。で、どっちかが装備した方が良いかなあって」
「それでしたら、ぜひ進化したばかりの私が持つべきでしょう」
「私、もっと強くなりたい」
「じゃあ、二人でじゃんけんして」
「はい。じゃーんけーん」
 じゃんけんの結果、ハールンがビークイーンソードを装備した。
 その他の宝箱も確認して、いるいらないを分けた後。
 俺は、そういえばそろそろもう一個のアイテム内包ができるんじゃないかと思い、試してみた。
「アイテムできろー、むー!」
 すると。
 テーン。俺の中に、レインボーソードが生まれた。効果は経験値取得量増大と、剣でのダメージ上昇中。結構良いアイテムだと思う。
 そして、死体とアイテムを平らげたハールンとイーミー、ハチの巣とはちみつを大量に食べて満足したウエンエスを待った俺は、また四人でダンジョンの最奥を目指すのだった。

 その後もダチョウやキツツキ、ハチばかりが出てきたけど、地下十階からはトウモロコシを背に実らせるクモと大きなクジャクが現れるようになった。
「コーンコンコン!(くらえ、トウモロコシブレッドー!)」
「クエー!(美女よこせー!)」
 トウモロコシがトウモロコシの実を一気にとばしてきて、クジャクはそのまま突撃してくる。
 クジャクの攻撃は単調だったが、レベルが高い分素早く強くなっていて、トウモロコシにいたっては初めて見るタイプの攻撃方法なので、三人は苦戦した。
 ちょっとだけ。
「防御魔法レベル1シールド、補助魔法レベル1パワーアップ!」
 ハールンが魔法で皆を強くし。
「火魔法レベル2火の刃!」
 イーミーが魔法でとうもろこしを燃やしながら接近し。
「槍技レベル2突き刺し!」
 ウエンエスが鳥を相手どる。
 皆、戦っている内に連携が上手くなってきたみたいだ。敵の数は少し多いが、ちゃんと戦えている。
 この階でも、皆危なげなく勝つ。レベルも順調に上がっているみたいだ。
「あ、ヘロン様、このトウモロコシ美味しいですわ!」
「ヘロン様も、食べる?」
「ああ。じゃあ、少しもらおうかな」
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 そして、ダンジョン攻略中。
「ん、これ食べ物かと思ったら剣か」
 俺はトウモロコシみたいな剣、コーンナソードを詳しく調べる。なになに、効果は魔力上限増加中、不死系モンスター特攻小か。地味に強いな。
「ん。ヘロン様。それ剣なの?」
 そこで、イーミーが近づいてきた。
「うん。これ剣なんだって。イーミー、いる?」
「うん。欲しい」
 こうしてイーミーは、コーンナソードを手に入れた。
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