6 / 11
6
しおりを挟む仲間画面でロトルンの生死を確認しようとしたが、ロトルンの名前の隣には、詳細不明の文字。レベルや体力等が、わからなくなっていた。
これはまさか、俺達が離れ離れになってしまったから?
考えても、正解を知ることはできない。なので今考えることを変え、今度は自分が今無理矢理装備させられた物の正体を探る。
「ステータス表示」
ええと、武器最弱の剣に、装飾品無能の腕輪。これは、この最低野郎共に無理矢理装備させられた物だよな。なになに。
最弱の剣は、装備した者のレベルを1にする。更に経験値は得られない。
無能の腕輪は、装備した者の全てのスキル、魔法、技を封じる。
ほー。それが今俺に装備されていると。
だから今の俺はレベルが1になって魔法も技も使えないと。
俺、やばくね?
「どうだい、サキュバスちゃん。今の気分は?」
歩きながら槍男が俺に言う。こいつ、俺が現状を理解したのを気づいてて言ってるな。
「最低の気分だよ。ところで、女の子に俺を運ばせてていいの?」
「バカ言え。男がサキュバスに触ったら万が一という場合もあるだろう。サキュバスは女が、インキュバスは男が運ぶものなんだよ」
斧男が言う。へえ。そういうとこも考えてるんだ。
そして話ができたついでに、言ってみる。正直やっても無駄だとは思うが、説得だ。もし話し合いで解放されるのなら、それにこしたことはない。
「君達さあ、そういう生き方で良いと思ってるわけ?」
「お前達女モンスターは高く売れるんだ。大人しく私達の金になれ」
「お金にもさあ、良い金と悪い金があると思うんだよ。絶対さあ、皆に恥じない、立派な仕事をした方が良いよ。皆強いんだしさ、もうこんなことやめたら?」
「金持ちから大金せしめた方が、はるかに楽だ。他の仕事なんてしてらんないね」
女の一人がそう言うと、他の皆もうなずいたりする。この人達、大分心が屈折している。シャーリやミンティアの心の清らかさがもうなつかしくなってきた。
「そう言わずさ。もっと違うことした方が、人生楽しいよ。なんか、運命の出会いとかもあったりしてさ。サキュバスを探してばっかりじゃ人生もったいないって」
「ぐふふふふ。それよりさ、サキュバスちゃん。もっと楽しいこと話してよ。逃がしてくれるかわりに、いっぱいご奉仕してくれるとかさ。ほら、君達の得意分野じゃん。ぐふふふふ」
「ふざけんなよ。死んでも言わねえから」
「ほう、珍しいサキュバスだ。そういえばお前は、村に来てヴァンパイアを倒した後、そのまま去ったそうだな。結局、何が目的だったんだ?」
槍男が言う。
「目的って、ごはんだよ。人のごはん。モンスターと戦ってばっかりだと、温かいごはんなんて全然ありつけないんだよ。だからヴァンパイア倒したお礼に、ごはん分けてもらったの」
本当はヴァンパイアいなくても食べさせてもらってたけど、そこは言わないでおく。
「モンスターが、人のごはんを狙う、はっ。笑える」
俺をかついでいる女が俺の言葉に反応する。
「へえ、それだけかよ。つつましいサキュバスもいるもんだな。本来ならサキュバスはどんな欲しい物も男に貢がせるはずなんだが。まあけど、そのおかげで俺達はお前にありつけたんだ。本当、良いやつだぜ。がっはっは!」
斧男が言う。くっ、つまりこいつらにとって俺は、金儲けの道具ってわけか。最悪だ。
「安心しろ、お前を所望の貴族様は飼ってるペットに毎日エサを与えているらしい、ちゃんとしたやつだ。温かいかどうかは知らないが、食うには困らないはずだぜ」
槍男が言う。ペットって、何を飼っているんだ。犬とかネコとかなら同列にされてムカッとするが、万が一、俺みたいに捕まったのが他にもいるなら、ちょっと、かわいそうに思う。
「そう、なら、少しは安心できるかな」
でも、口では別の事を言った。本当どうにかして、会話だけでこの場を切り抜けられないかね?
「だが、貴族に引き渡すまでの間にお前に与える物は何もない。その間飼い主にどうこびるか考えてろ」
「むっ」
決めた。絶対に俺はこんなやつらに屈しないぞ。元から屈する気なんてないけど、どうにかしてこの状況を打破してやる。
おかげで、会話を続けようという気も失せてしまった。俺は、この先に必ずあるであろうチャンスを絶対に逃すまいと決心しながら、大人しくこいつらに運ばれてやった。
それから五日は経った。その間本当に俺は、何も与えられず、荷物同然の扱いを受けた。途中何回か隠密魔法をかけられたが、それによって何かが起きるということはなかった。いやむしろ、何も起こらないための隠密魔法か。
森の中を歩きとおした八人組は、道中で馬車を得る。そこで俺を馬車の中に放り込んで、そのまま監禁され、ただ運ばれた。
お、お腹が減るう。水をくれえ。って言っても、頼んでも何もくれないし、しかも狭い馬車の中なので一緒に乗った女達がたびたび俺の体をけってくるが、本当非道なやつらだ。
一応、俺には奥の手、地脈ネットワークを使ってダンジョンへ瞬間移動。という最終手段がある。レニアが教えてくれたやつだ。まあ、それもちゃんと使えるかはわかんないけど、これは本当の最後の手段として残しておく。使うにしても、こいつらとダンジョンとの距離を出来る限り離しておきたい。
そして、長時間馬車の中で放置されっぱなしだった俺は、とうとう、馬車から降りることとなった。この時に、ひとまず縄はとかれる。
「どれどれ、むほほー、これはこれは。確かに待ちに待ったサキュバスだ。よくやったぞお前ら!」
突然馬車の中に光が差し込むと、初めて聞く声がした。逆光のせいで見づらいが、八人組の誰かじゃないな。
「ほら、立って歩け。ここがお前の新しい家だ」
女にそう言われ、俺の足の枷が外される。なんとかして立ち上がると、すぐ近くには俺を捕まえた八人組と、まるまる太ったひげのおっさんがいた。特におっさんの方は、ずっと俺をいやらしい目で見てくる。ただただ不快だ。
「ほら、早く馬車を出ろ。明るいところでお前を見たい」
おっさんにそう言われ、仕方なく馬車から出る。その際におっさんに腕や胸を触られ、鳥肌がたった。思わずどなる。
「な、何するんだ!」
「何、いいではないか、いいではないか。どうせお前はもう、俺のものなんだ。俺がお前をどうしようと、俺の自由だろう?」
俺は一瞬絶望を味わう。こ、こいつが、俺を買う貴族?
「触るな、気持ち悪い!」
「ほう、冷たいサキュバスだな。早く俺の機嫌をとった方が良いぞ。だがこの美貌と色気は合格だ。とにかく、お前は今は牢屋に入れておく。今夜を楽しみにするがいい。ぐっふっふ」
「!」
今夜って、つまり今夜?
こんなやつの物にされかけてるのに、何をどう楽しみにしておけというんだ。こんなの絶対嫌だ。絶対絶対ありえない。
最悪だぞ、この流れ。早くダンジョンに瞬間移動しないと。いや、待て。ここは人目につく。もっとタイミングを選んだ方が良いか?
「それではカーネイ様、約束の報酬を」
「うむ。では屋敷に戻ろう。おい、タイナー。サキュバスのことは任せたぞ」
「はっ。かしこまりました」
「それじゃあなー、サキュバスちゃん」
「報酬、報酬♪」
「ぐふふふふ、ぐふふふふ」
ここで八人組は目の前に見える屋敷へと向かい、俺は執事と思わしき男、タイナーに縄付きの首輪をはめられ、引っ張られて屋敷とは別の場所へと誘導される。こんな犬同然の扱い納得できないし、さっき牢屋へ入れておくとか言われたから、更に良い気分にはなれない。
つれていかれた所は屋敷の裏で、そこに小さな小屋があった。
小屋の中には地下への階段のみ。そこを通ると、狭い通路と、左右にいくつも牢がある最低な場所に辿り着く。俺は暗闇でも周囲が見えるけど、執事は小屋の中に置かれていたカンテラを使った。
そして牢屋の手前から、一人ずつ女の子が入れられていた。
一人は、緑髪の女。俺と同じように、手錠と腕輪、剣をつけられてる。あれ、絶対俺のと同じ最弱セットだな。
反対側の牢屋を見れば、そこには紫色の髪の女の子。
そしてもう一つの牢には、赤い髪の女の子。額には宝石がついているが、今問題にするべき点はそこじゃないな。
ここに囚われている皆、腕輪に剣装備だ。これはやはり、俺と同じようにここにつれてこられた子達というわけか。本当、人さらいなんて許せん。ああいや、モンスターさらいも許せん。
「お前はしばらくここにいろ」
タイナーにそう言われ、赤い髪の子の正面の牢屋に入れられる。そこでしっかり格子を施錠され、タイナーはさっさと去っていった。
俺はタイナーの足音が消えるのを待ってから、まずは正面の牢屋にいる女の子に話しかける。
「やあ、こんにちは。俺はヘロン。君も、つかまってここにつれてこられたの?」
赤い髪の子は何も反応せず、ずっと座ったまま動かない。視線もずっと下を向いたままだ。
「俺、大オオカミのロトルンと旅をしててさ。今までずっと戦ってたんだ。なんでも、強くなって進化できたら、バトルプリンセスっていうのになれるらしくて。たぶんもう少しでなれたと思うんだけど、ちょっと運悪く捕まっちゃった。アハハ、はー」
「今日は良い日。あいつに呼ばれなくて済むんだから」
誰かがしゃべった。正面の子じゃない。緑の髪の女の子か、紫色の髪の女の子の声だ。いや、もしかしたら奥の牢屋に、まだ誰かいるのかもしれないが、聞こえた方から察するに、あの二人のどちらかだ。
「お前ら、べらべらしゃべるんじゃねえ。それができねえなら、私が気配だけで殺してやる」
物騒な声が聞こえた。どうも、かなり苛立っているようだ。
「それができるなら、そうしてほしいですわ」
「なんだと、このお」
それっきり、誰もしゃべらなくなった。この静寂。これじゃあ、八人組に運ばれている間と同じだ。できれば、ここで何か明るい話をしたり、ここから脱出できそうな情報を得たりしたかったんだけど。
でも、それも仕方ないのかもしれない。皆、ここで捕まって、こんな所に閉じ込められて、疲弊してしまっているのだ。望みも希望もない。だから、心が何も感じないようにしている。
こんなの、最低だ。おのれ、セクハラおっさんめ。ええと、確か、カーネイだったか。
口約束はできない。けれど、自分の心に誓う。
俺は、こんな所から絶対に逃げ出してやる。そして、他の子達も解放してやる。女の子が、こんな所に閉じ込められてて良いはずがない。絶対ここの女の子達全員に、笑顔をもたらしてやる。
もう少し、ここにいよう。せめてここの地名さえわかれば、心置きなくダンジョンへの瞬間移動が試せて、その後この子達を救うために戻ってこられるんだが。
残念なことに、今は話ができそうな相手がいない。けど今夜がくれば、俺になんらかの接触がある。それをチャンスに変えてやるんだ。その時に、できるだけ情報を得てやる。
今は、時がくるまで静かにしていよう。大丈夫、俺ならやれる。その時が来たら、憶えていろ、カーネイめ。あと俺を捕まえたやつらも。
あとロトルンも、無事に生きててくれよ。
牢屋に入れられてから、随分長い時間が経った。
「ほら、飯だ」
誰かがやって来て、そう言う。少ししたら、男が目の前の牢屋に、パンを一つ投げ入れた。パンが赤い髪の子の前で転がる。
「お前は、牢屋から出ろ」
そして男はそう言って、俺のところの格子を開けた。
「あのー、私にごはんはないんですかー?」
できるだけねこなで声で言いながら、牢屋を出る。すると、男は鼻で笑った。
「お前に今日の飯は無いんだとよ。よほど嫌われてるらしいな」
なるほど。ほうほう。カーネイめ、更に嫌いになったわ。まあ、今はパンをあんな雑に目の前に放られずに済んで良かったと思っておこう。
「そんなー、私、がっかりー」
こんな時だけ私という俺。でもここは、どんなことをしてでも相手の警戒心をなくさないといけない。じゃないと、聞き出せるものも聞き出せない可能性がある。がんばるんだ、俺。
「はっ。だがそのかわり、すぐにお楽しみが待ってるぞ。サキュバスにはごほうびだろう?」
「えー、ごほうびがあるんですかー。なんだろー楽しみー!」
「けっ。尻軽め。ついてこい」
「はーい」
男は俺の首輪の縄をひっぱる。く、むかつく。抵抗したいが、したらどうなるか。ここはがまんだ、がまん。
「あのー、ところでー、ここってどこなんですかー?」
「はあ、突然何を言い出すんだ、こいつ」
「ひょっとしたらあ、ここは知ってる村かなあって思ってー。前に来たことがある場所だったらー、なんだかなつかしいじゃない。もしかしたらあ、誰か知り合いとかいるかもー」
「はっ。知り合いね。あいにく、ここは村じゃねえよ。町だ。アトンサ町。お前は一生、このアトンサで暮らすんだ」
「アトンサ。へー、私知らなーい。遠くに来ちゃったんだー」
よし、町の名前は憶えたぞ。あと俺がヴァンパイアを倒した村は、確かセオーリ村って言ってたっけ。それもしっかり忘れないでおこう。
「あのー、ところでお兄さーん。この腕輪とかー、手錠とかー、外してもらえませんかー。きつくて痛いんですけどー」
「何言ってるんだこいつ。そんなことできるわけないだろう」
「おねがーい。もし外してくれたらあ、私、お兄さんのこと大好きになっちゃうかもお」
ここで、男が俺のことをチラチラ見始める。そして、強く言った。
「いけないいけない、しっかりしろ、俺。ここで下手をしたら、カーネイ様にどんな罰を受けるか。絶対誘惑にのっちゃいけない」
ちっ。誘惑作戦失敗か。ここでこの男をおそって逃亡、という手もあるかもしれないが、今の俺はレベル1。うかつなマネはできない。男の腰には剣もあるし、もう少しの間大人しくしていよう。
すぐに俺は、屋敷の中に通された。そこで俺は、ある部屋で、一人のメイドと出会う。
俺をつれてきた男は部屋の中、扉の前で待機した。これでこの部屋からの脱走もできそうにない。
「さあ、モンスター。こちらへ来なさい」
「はい」
俺はメイドに手招きされて、素直に近寄る。ここで猫なで声は、女性相手には、流石にどうかと思う。
するとメイドは、俺に女性用の帽子をかぶせた。
「これは瞬間着替えの帽子。モンスター、セット1装備と言いなさい」
「セット1装備」
メイドの命じるままに言うと、一瞬で俺の服装が白いウエディングドレスに変わった。けど手錠や腕輪、最弱の剣や首輪も変わらず装備されたままだ。
「今までの服はどこに?」
「瞬間着替えの帽子の中に封印されています。ですが、これはもういりません」
メイドは俺の頭から帽子をとる。そして帽子かけにかけて、それから俺を鏡台の前に座らせた。
「これからメイクをします。少しの間じっとしていてください」
「はい」
俺は目の前の鏡に映る美少女の姿があまりにきれいだったので、思わず見入る。はあ、こんな子を彼女にしてみたい。って、これ、今の俺なんだよな。なんか、おちこむ。
メイドが手早くメイクをほどこすと、鏡に映る美貌が更に磨かれたので、感嘆した。
「メイドさん、メイク上手ですね」
「終わりました。では、カーネイ様の部屋まで案内する。ついてきなさい」
「はい」
いよいよ、カーネイと再会か。男、メイドと共に三人で部屋を出ると、階段を上がり、二階の奥の部屋に行く。歩いた先に待っていたのは、二人の剣士と大きな扉。
そして、メイドが二人の剣士の間を横切り、大きな扉をノックしてから開けると、言った。
「カーネイ様。サキュバスをつれてきました」
「うむ。そいつを入れなさい。お前達は、いつも通り外にいろ」
「はい。ほら、サキュバス、部屋に入りなさい」
メイドに急かされ、部屋に入る。すると扉はすぐに閉められた。部屋は見た感じ広くて豪華で、真っ赤なじゅうたんに大きなベッド。壁には剣なんかが飾られていたりもした。
そしてカーネイはこの部屋に一人きりで、窓辺に立ってワイングラスを持っていた。赤くなっている顔が、盛大にゆるむ。
「おおお、なんと美しい。これがサキュバスの美貌。すばらしい。用意した衣装も似合っている。今夜からこいつは、俺のものだ。がっはっはっは」
カーネイはすぐに机にワイングラスを置いて、その場で着ていたバスローブを脱ぎ落した。すると、簡単にすっぽんぽんになる。
お、男の子(ちんちーん)が見えてる。モザイク、モザイク!
「さあ、サキュバス。こっちに来い。今夜は朝まで愛してやろう。大丈夫だ、この部屋は隔絶魔法の効果であらゆる声も振動ももらさない。だから何でもしたい放題だ。ぐふふふふ」
な、なんだと。おちつけ俺。相手は真正のクズ野郎。ここは、もう一芝居うつべきだ。
「あ、あのお、カーネイ様ー。そんなに私のことを、愛してくれるんですかー。それでは、私もカーネイ様も愛したいですー。ですからどうか、少しの間目をつぶっていただけませんかー。そうしたらー、あなたのその唇にー、ちゅってキスをあげちゃいますー」
おえー。おええー。俺、いつまで最低すっぽんぽん野郎を上目づかいで見てなきゃいけないんだ。
「むふふー、そうか。キスしてくれるか。それは良い。だが、キスは男からするものだろう。早くこっちへ来い。まずはキスで今夜のスタートを切ろうではないか」
そう言ってカーネイが俺に近寄る。ひいっ、男の子(ちんちーん)が近づいてくる。思わず一歩身を引く。
けどそんな俺の気をおかまいなしに、カーネイは俺の両腕をつかんで、強引にベッドまで誘導し、俺をベッドに押し倒し、その上におおいかぶさってきた。
「むちゅーっ」
カーネイの顔面が俺の顔に近づいてくる!
「んおー!」
考えるより先に体が動いた。全力のけりを、カーネイの股間にぶつける。
どストライクうー!
「んううっ!」
カーネイは両手で局部をおさえ、俺の横に転がった。うう、変なの足で触っちゃった。でも動揺している場合ではない。俺はすぐさま起き上がりつつ、両手でカーネイの首をしめる。
「死ねえ、変態すっぽんぽん野郎!」
「くうっ、くううっ」
クズは相変わらず股間をおさえてもだえている。これは、効いてるか?
数秒後。カーネイの片手が俺の手首をがしっとつかまえた。
「この、よくもやったな、サキュバスごときが。まずは、鞭でおしおきだ!」
「あれ、全然首しめ効いてないー!」
俺は焦って、両足でカーネイの顔面をけりまくる。
「ぐ、やめろ、うわあ!」
すると、カーネイは俺の手首を放した。俺はその隙にあわててベッドから転げ落ち、遠ざかる。
「よし、早く逃げなきゃ。ん、あれは?」
その時俺は、壁にかかっている二本の剣に目がいった。一本は金色で、もう一本は銀色。あの輝き、見た目からして、ひょっとしてかなりの強い武器?
もしかしてあの武器を使えば、カーネイなんて簡単に倒せる?
「このチャンス、逃してなるものか!」
俺は急いで立ち上がり、ダッシュし、両手を伸ばして金色の剣を手に取った。
壁から外して、急いでカーネイの元まで戻る。今カーネイは、ベッドの上で起き上がるところだった。
「な、そ、その剣は!」
「死ねカーネイ!」
ぐさっ。顔面に刺さった。これで顔面もモザイクになる。
「ぐおお、痛い、いたい!」
「まだ死なないのか、おらおらあ!」
ぐさっ、ぐさっ。首をほとんど貫通して、更に心臓まで突き刺す。そこでカーネイは、力なく倒れた。カーネイから青白い光が発せられ、それが俺の経験値になる。そしてベッドが真っ赤な血で染まる。
「はあ、はあ、はあ。初めて、人を殺したけど、ひとまず助かったー!」
俺はここでホッと一安心する。やっと気を落ち着かせられた。
「なんでもこの部屋は隔絶魔法とやらで、何しても外にはばれないらしいし、幸いカーネイ殺しはまだ誰にも気づかれていない。それにしてもこの剣、一体どんな性能なんだ?」
俺はステータス画面を見て、今持っている剣の性能を確かめる。
「ええと、万全の加護の剣。装備者にかかるあらゆるマイナス効果を打ち消す。?」
見ると、今の俺のレベルは53。まだ最弱の剣を装備しているにも関わらずだ。ということは。更に?
「闇魔法レベル1闇の矢」
試しに片手で魔法を使う。するとちゃんと闇の矢が現れ、壁に刺さり、穴を開けた。
うん。問題なくスキルも復活している模様。
「ひゃっほーう、俺の逆襲開始だー!」
こいつは良い。このままこの屋敷を脱出だ。
両手を手錠で拘束されたまま、万全の加護の剣を振り回し、カーネイの部屋をとびだした。
「な、なんだ、ぎゃー!」
「い、いったい何が、ぎゃー!」
扉が壊れたので異変に気づいた二人の首を、スパスパッと斬り落とす。そのまま部屋中を見て回り、異変に気づいてかけつけてくる剣士達も倒しながら、あの執事、タイナーの姿を探す。
タイナーは一階の食堂で、料理人と二人でワインとチーズを食べていた。俺は即座にタイナーに近づいて、剣をつきつける。
「な、いったい何が」
うろたえるタイナー。
「ひ、ひー!」
逃げようとする料理人。
「そこの料理人、逃げるな。魔法でしとめるぞ」
その一言で、料理人がぴたっと動かなくなる。そしてタイナーの顔は、一気に青白くなっていった。
「そ、それは、万全の加護の剣。では、カーネイ様は」
「俺が殺した。当然の報いだ。だが俺は、お前達を殺す気はない。俺と他に捕まっている女の子達をここから逃がしたら、お前らの命は助けてやる。さあ、どうする」
「わかりました。あなたと他の奴隷モンスター達を開放します。今、手錠の鍵を用意します」
「よし、行け。料理人、俺が遠ざかるからといって、下手なマネはするなよ」
俺は動き出したタイナーの後をつける。よし、事は順調に進んでいる。これであの牢屋にいる子達も、ここから逃げられそうだ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる