剣士のはずの俺がサキュバスに転生してしまった

十 的

文字の大きさ
上 下
4 / 11

しおりを挟む
「ふう、倒せた。しかし、こいつの経験値は大量だな。これでレベルアップだ」
「わんわんー(セイネ、敵が宝箱を落としたよー)」
 巨大スイセンが落とした宝箱には、大きな種と玉が入っていた。
「何何、守りの種と、スキルオーブ光合成か。守りの種は食べたら防御力が上がって、オーブは使うと光合成が得られると。ロトルン、どっちかいる?」
「わんわん(どっちもセイネがもらっていいよー。俺は死体を食べるから。ぱく、うう、まずい)」
 そう言いながら巨大スイセンを食べるロトルン。じゃあ、俺は宝箱の中身を全部いただくか。
「まずは、種か。ぱく、うん、味はまあまあだな」
 けど、これで防御力が上がった。ああ、どれだけ上がったかステータスを確認しておけば良かったな。まあ、いいか。
「それじゃあ、次はオーブか。どうやって使うんだ?」
 そう思って手に取ると、オーブは突然光り始め、俺に力をもたらした。俺のスキルに、光合成が加わるのがわかる。
「おお、スキル光合成。光に当たっている間、体力、魔力、気合い力を回復。太陽の光なら更に回復、か。まあ、今の感じ回復量はめっちゃ少ない気がするし、あれば便利くらいのスキルかな」
「わんわん(ぱくぱく、うう、美味しくないよお。でも経験値いっぱいだし、ああ、人間が持ってたやつの味なら良いのに)」
「ロトルン、ゆっくり食べな」
 俺はひとまず、今回の戦闘で消耗したパワーを回復するため、できる限り日光浴した。

 それから更に進んで一晩過ごし、翌日になると、現れるモンスターが変わった。
 モンスターは、人食いバナナか、筋肉ゴリラのどちらかとなる。人食いバナナはツルの攻撃が痛そうだが、これまでの植物共より動きが遅い。ゴリラは、力任せのパワーファイターだ。
 それが、バナナ10、ゴリラ7くらいの頻度で現れる。まあ、こちらは経験値が欲しいわけだし、現れるのは問題ではない。こいつらの経験値多いし。
 でも、ゴリラ共は俺達の前に現れると、決まって俺だけを狙ってくる。それだけが、ひどくおぞましかった。
「ウホホー!(美人、最高、俺のもの!)」
「ウホホー!(触りたい、すりすりしたい、ごしごししたい!)」
「ええい野獣共が、絶対俺に触るんじゃねえ!」
 戦いに余裕がないため、いつもよりも清剣技が冴えわたる。
「わんわん!(ああダメだ、いくら攻撃しても止まらない。マヒがすぐに治っちゃう。こいつらやけに体力高いし、セイネ、がんばって!)」
 ロトルンも、俺ばかりを見ていて隙だらけなゴリラ共を攻撃するが、それを無視してゴリラ共は俺に迫る、迫る。ゴリラが二匹、ゴリラが三匹。これはもう、スリル満点だ。
「言われなくても、こいつらには絶対負けない!」
 基本は清剣技で戦うが、迫る数が多い時は鞭二本流で対抗する。とにかく手数重視の攻撃で、相手の動きを止めるのだ。そしてとどめはロトルン任せ。それしかない。
「ウホ、ウホ!(サキュバスちゃーんちゅっちゅー!)」
「サンレーザー!」
 とびついてくるゴリラを、尻尾の先から出すビームでふきとばす。必死な状態が続く中で、新たに生み出した戦闘スタイル。尻尾便利だぜ。助かった。
 でも、ゴリラは数がいる。一匹ふっとばしただけでは安心できない。くっ、一対一だったら清剣技で圧倒できるのに。これが自然のきびしさか。
「ウホウホー!(今ウホー!)」
「ウホウホー!(とびつくウホー!)」
「くるなくるなくるな、うわー!」
 焦る思いで両手鞭を振りまくり、とにかく相手の動きを阻害する。
「ウホウホー!(痛気持ち良いー!)」
「ウホウホー!(鞭最高ー!)」
「なんだこいつら、なんだこいつらー!」
 ゴリラはダメだ。俺の敵だ。
「わんわん!(セイネは俺が守る、爪技レベル3、壊爪連続攻撃ー!)」
 ロトルンが後ろからゴリラ共を爪のえじきにする。それでようやく、ゴリラ共は全滅した。
 やっと安心できる俺。
「はあ、はあ。ああ、心臓に悪い。ありがとう、ロトルン」
「わんわんー(えへへー。皆セイネに夢中で無防備だから、その分早く倒せるね)」
「ああ。まあ、嫌な危険を感じるかわりに、ここは良い狩場だな。もう何度もレベルアップしたし。ここでもう少し強くなろう、ロトルン」
「わんわんー(わかったー)」
 そう言って俺は、ゴリラ共が落とした宝箱の確認をして、ロトルンはその間にゴリラの死体を食べまくった。

 ゴリラバナナエリアに入って数日後、俺はメスゴリラにおそわれるようになった。
「ウホウホー!(あんたが彼を横取りした悪女ね、許さない!)」
「ウホウホー!(あんたなんか、ギッタギタのボッコボコにしてやるわ!)」
「俺は何もしてない、俺は何もしてない!」
 剣と鞭二本流を上手く使い分けて、戦う。このゴリラ達、最初から怒りモードだからメチャ強い。
「わんわん!(セイネ、任せて!)」
「ウホウホー!(あんたはあっちいってな!)」
 ドカッバキッ。
「わうーん!(いったあーい!)」
 しかもオスゴリラの時とは違って、ちゃんとロトルンにも対抗してくるから、今までよりも戦いが難しくなってる。
 これが、ゴリラか。これが、真の力なのか。おそるべしゴリラ。あなどれんゴリラ。
「清剣技、古威、連続剣舞!」
 せめて、ロトルンが作ってくれた隙を糸口にして、このピンチを乗り切る。
 幸い、ここのモンスター達は夜の間はおそってこない。なので日中だけしか戦闘がないというのがありがたいが、その戦闘が最初からハードすぎるというのが、やはりきつい。
せめて、ここでうんと強くなって、ゴリラなんて怖くないと言えるくらいレベルアップしたい。
「ウホ、ウホホー!(まさか私が、こんなビッチにー!)」
「ウホホ、ホー!(彼のかたきを、討てないなんてー!)」
 次から次へと倒れていくゴリラ。ふう、俺に清剣技があって助かった。
「ウホ、ウ!(仕方ない、ここは一時撤退よ!)」
「わおーん!(させない、連続攻撃ー!)」
 逃げ出そうとする最後のゴリラに、ロトルンが爪と牙での連続攻撃をくらわせる。するとゴリラの動きがマヒのせいで止まった。
「わんわん!(レベル4牙技、食いちぎり!)」
「ウホー!(キャー!)」
 ドサッ。最後のゴリラも倒れる。これで経験値ゲットだ。
「ふう。さて、と。これで一安心、といきたいところだけど」
「わんわん(まだだよ、セイネ。俺達、囲まれてる)」
「わかってる。数は5体か」
 気づけば、俺達の周囲に人食いバナナが迫っていた。もう少しで敵のツルが俺達に届きそうだ。
「俺は右から、ロトルンは左からね。時計回りに倒そう」
「わんわんわん?(了解、ところで時計って?)」
「倒しながら右を向いていくんだよ。それじゃあいくよ、スタート!」
 俺とロトルンは同時に人食いバナナへと迫る。すると、すぐに人食いバナナのツルや根っこが迫って来た。
 この敵とも、もう何回も戦っている。だから相手の戦法はわかりきっている。けど、俺は決して気を抜かず、鞭剣を剣モードにして間合いをつめる。油断は自分のためにはならないからだ。
 幸い、人食いバナナを倒せばバナナを手に入れられる。俺はそれで腹を満たすとしよう。

 それから何度も戦闘をくり返し、しばらく歩くと、森の中で階段を見つけた。
「わんわん(あそこからたくさんモンスターの気配を感じるけど、どうする?)」
「気になるし、入ってみよう。気をつけて進むよ、ロトルン」
「わん!(わかってる!)」
 俺とロトルンは、注意を払いながら階段を下りる。すると、辿り着いた先は、また森だった。見たところ、地下ではない。
「ここ、森だよな?」
「わんわん!(セイネ、気をつけて。何か来るよ!)」
 ロトルンの言う通り、すぐに各方位からモンスターが現れた。全員今までと同じゴリラだ。ゴリラはまたしても、目をハートマークにして俺だけにおそいかかってくる。
「うほー!(侵入者、かわいいー!)」
「うほー!(あいつは俺のものウホー!)」
 俺は素早く鞭剣を剣モードにする。
「ロトルン、今回も速攻だ!」
「わん!(任せて!)」
 俺とロトルンは息を合わせて、まず目の前につっこむ。
「幻狼遊撃拳、清剣技、双祇!」
「わんわん(牙技レベル2、刹那ハント!)」
「ウホウホー!(こいつら、強いー!)」
 まずは切り札速攻解禁で、瞬く間に数体敵を倒す。そしてすぐに別のゴリラに向かって走る。
 そうやって一度もゴリラに体を触られないまま、完全勝利を果たすのだ。
 数分後。
 最初の戦闘が始まってからもどんどんゴリラ達が集まってきたが、俺とロトルンはなんとか勝利した。
「ふう。結構数がいたな。おかげでレベルアップしたけど。ロトルン、平気か?」
「わんわん(うん。ゴリラを食べれば、すぐに回復するよ)」
「そうか。なら問題ないな。俺は、落ちた宝箱でも確認するか」
 ゴリラの死体の近くに数十個現れた宝箱の中身を一つ一つ確認していくと、大体は装備品だったが、中には中回復ポーションとか中気合い力薬とかがあった。特に中気合い力薬は、幻狼遊撃拳を使った分の気合い力を回復するのに、ありがたかった。早速飲む。
「ごくごくごく。うん、メロン味」
 バッグとかは持ってないから、持ち運ぶことはできないけど、まあ、今使えるわけだからありがたいかな。
「わんわん(セイネもゴリラとかアイテム食べれば?)」
「俺はやめておくよ。見た目からして、食べたくない」
「わんわん(そう。じゃあ、早く食べるね)」
「別に、ゆっくり食べてていいぞー」
 俺はロトルンの食事の間、しばらく休もうとすると、突然目の前に、一体の大ゴリラが現れた。驚く俺とロトルン。
「ウホウホウホホ(お前達、侵入者か)」
「敵!」
 にしては、敵意を感じないけど。なんだろう、こいつの視線もキモい。
「わんわん!(お前、おかしい、臭いしない!)」
 ロトルンも大ゴリラを睨む。しかし、大ゴリラは余裕そうに俺とロトルンを見る。
「ウホホウ(ほう、美女と犬か。どちらも俺の物になるにふさわしいな。特に女は。ウホホ、良いおっぱいだ)」
「わんー!(爪技レベル3、激爪!)」
 ロトルンがとびかかる。しかしロトルンの体は、大ゴリラをすりぬけた。俺は即座にそのカラクリに気づく。
「これは、立体映像か!」
「ウホホウホー、ウッホッホッホッホ、ウーホッホッホッホッホ!(その通り。二人の客よ、このままダンジョンマスターである俺がいる最下階まで来るといい。手厚く歓迎してやろう。ウッホッホッホッホッホ、ウーホッホッホッホッホ!)」
 大ゴリラの姿がここで消える。俺とロトルンは顔を見合わせた。
「わんー?(セイネ、どうする?)」
「そうだな。無視してここを去ってもいいが、あいつを倒すのも面白そうだ。ロトルンも賛成なら、奥へ進もう」
「わん!(わかった、俺もあいつ倒したい!)」
「よし、決まりだな。それじゃあ、ロトルン。食べ終わったら行くぞ」
「わん(うん。ちょっと待ってて)」
 どうやらここはダンジョンで、最後にはあの大ゴリラが待っているらしい。相手はちゃんと挨拶してきたのだから、こちらも会いに行ってやるのが礼儀だろう。そして速攻で倒してやる。

 このゴリラが統治するダンジョン地下一階には、外の森でも現れたゴリラが山ほどいた。
 地下二階から五階には、手足が長いゴリラ。六階から九階には、火を吹くゴリラ。十階十一階には、ダメージを受けると強くなるゴリラ。十二階十三階には、人食いバナナの木に乗って強化魔法を操るゴリラ。十四階には、メスゴリラの大群。
 そして地下十五階には、火を操るゴリラ、水を操るゴリラ、植物を操るゴリラ、光を操るゴリラ、闇を操るゴリラ、風を操るゴリラが一体ずついた。ちなみに、そいつらの特徴はすぐに分かった。全員額に、火や水を発生させて、わかりやすい見た目をしていたからだ。
 最後の地下十五階だけ、森の光景が広がっているわけではなくて、洞窟っぽい土がむきだしの一本道に、たくさんの松明の明かりと、奥にひたすらまっすぐ伸びる赤いじゅうたんがあった。じゅうたんの先以外に、道はない。
 六体のゴリラは、赤いじゅうたんの先をはばむように、一まとまりになってこちらを見ていた。
「ウホ、ウホホ(来たな、女。ついでに犬っころ)」
 火を操るゴリラが言った。
「ウホオ、ウホホホ(我らは六ゴリラ衆)」
 水を操るゴリラが言った。
「ウホホホホ(今までのゴリラとは一味も二味も違う)」
 植物を操るゴリラが言った。
「ウホー、ホホウ(そして、女を倒した誰かが、マスターに届ける前に先にあんなことやこんなことをしても良いということになっている)」
 光を操るゴリラが言った。
「ホホー、ウホホホホ(ゆえに、手加減はしない。そのたわわなおっぱいのため、我ら全力をもってお前達と戦う)」
 闇を操るゴリラが言った。
「ウホー、ホホお!(いざ、勝負!)」
 風を操るゴリラが言った。そして、六ゴリラは一斉にこちらに迫り、戦いが始まった。
 二対六だったけど、勝てた。
 今ここ。
「わんわん(もぐもぐ、こいつらおいしい)」
「落とした宝箱もすごいな。中炎の剣、中水の槍、中自然のグローブ、閃光の弓、闇の鞭、強風のハンマーか。よし、ここは鞭剣を捨てて中炎の剣を手に入れておこう。だって燃える剣とかかっこいいし。でも鞭はやっぱり、母さんのがあればそれで事足りるか」
「わんわん?(そのアイテムも食べていい?)」
「いいよ。どっちみちステータスが全回復するまで動きたくないし、しばらくはここで休んでいよう」
「わんわんー(りょうかーい。もぐもぐ)」
 その場で、俺は中炎の剣の重さや長さを振って確かめていると、じゅうたんの先から、一体の大ゴリラが走ってきた。
 あ。あのゴリラ、一階にいた時に立体映像で見たゴリラだ。
「ウホウホウホー!(お前ら、ボス前でのんきに休憩とかできると思うなー!)」
 ふむ、仕方ない。ここで戦闘か。
「やるぞ、ロトルン!」
「わんわん!(任せて!)」
「じゃあまずは、太陽魔法レベル7、サンレーザー!」
「ウホホー!(拳技レベル5、駆け殴りー!)」
 大ゴリラの拳が白く光って一直線につっこんでくる。ビームを正面からあびながら、速度を少しも落とさず、まずはロトルンを殴る。
「わん!(余裕で回避!)」
 大ゴリラは次に俺を狙う。
「俺も回避、ぐは!」
 大ゴリラの接近に合わせて横に飛ぼうとしたが、大ゴリラは俺の動きに合わせて動き、そのパンチを横っ腹にかすらせてきた。ちょっと痛いダメージが入る。
「わんー!(このー、牙技レベル2、刹那ハント!)」
 ロトルンは俺の横も駆け抜ける大ゴリラを追ってその背中にとびかかる。すると大ゴリラはこちらを振り返る間にかまれたが、簡単にロトルンを振り払い、ロトルンに狙いを定めた。
「ウホー!(拳技レベル6、サンドバッグ!)」
 大ゴリラがロトルンに素早く接近する。まずい、ロトルンが相手の動きについていけてない!
「サンレーザー、サンレーザー!」
 俺は空いている手と尻尾の先から、二本のビームを放つ。どちらも大ゴリラに当たり、体をよろめかせた。自然と敵の技もキャンセルされる。
「ウホウ!(ぐあっ!)」
「わんわん!(セイネ、ありがとう!)」
 ロトルンは急いで俺の近くまで戻ってくる。ちょっと、やばいかもしれない。あいつ強いぞ。並のゴリラじゃない。完全に、今まで戦ったどのモンスターよりも強い。
「ウホホッ!(ふん、こしゃくな。だがこれはどうだ、スキル獣王の鼓舞!)」
 大ゴリラはその場で自分の胸を叩き始める。すると、なぜか俺の力が少し弱まるのを感じた。
「わ、わん!(セイネ、なぜか力が出ない!)」
「こ、これはまさか、相手を弱体化させるスキル?」
「ウホホホホー!(その通り。そして同時に、俺のパワーが上がるのだ!)」
 大ゴリラはそう言って、今まで以上のスピードで近づいてくる。
「わんわん、わおーん!(弱体化なら俺だって。スキル威圧大、わおーん!)」
 ロトルンが吠えると、大ゴリラの勢いが少しそがれる。
「ウホホ!(ぐ、こしゃくな。拳技レベル2、二連打!)」
 大ゴリラは俺ではなく、ロトルンを狙った。よし、敵は俺を見ずに無防備で迫ってくる。今だ!
「スキル幻狼遊撃拳、清剣技断罪、はああっ!」
 俺の幻が走り、大ゴリラの体に攻撃を当てていく。
「ウホ、ウホホ、ウホッ!(ぐあ、ぐぐあ、このー!)」
 大ゴリラは俺の幻の一体目の攻撃を受け、二体目の攻撃も受けた後に、三体目の幻に右拳を当てて消滅させてくる。そして最後に迫る俺本体に、左拳をぶつけようとして、俺はとっさに、その拳に断罪を当てた。
 ぶつかりあう剣と拳。どうやら威力は同じくらいだ。けど、ちょっと俺の攻撃の方が強かったか。相手の姿勢が崩れる。
「わんわーん!(チャーンス、牙技レベル5、暴牙!)」
 そしてそこをすかさず、ロトルンがかみついた。
 がぶり。
 ロトルンの口が、大ゴリラの首を少しかみちぎる。
「ウホアー!(くっ、こんなやつらに!)」
「甘く見たのが運の尽きだな。ゴリラ大将。清剣技、古威!」
 俺はようしゃなく、敵の隙を燃える剣で貫きまくる。この攻撃は、相手が倒れるまでやめない!
「わんわんー!(更に爪技レベル4、爪舞!)」
 ロトルンも大ゴリラの後ろに回って、連続攻撃を入れ続ける。
「ウホー!(なめるな、拳技レベル6、サンドバッグ!)」
 大ゴリラは攻撃をくらいながらも俺めがけ拳を突き出しまくる。しかし、俺の古威は相手の隙を突きまくり、相手の呼吸を乱しまくる攻防一体の技。体勢を崩した相手の攻撃を回避することなど朝飯前だ。
「相手が悪かったな。お前はここで終わりだー!」
「わんわんわーん!(俺とセイネ、強い。お前、経験値!)」
「ウ、ウホ、ウホー!(こ、こんなバカな、この俺がー!)」
 ぐさぐさっ。俺の剣が大ゴリラの胸を突き刺し、ロトルンの爪が大ゴリラの首をへし折る。
「ウホッ(ぐはっ)」
 ひざからゆっくりくずれ落ちる大ゴリラ。そしてうつぶせになった体から大量の青白い光を出し、更に宝箱も落とした。
「やったー倒したぞー!」
「わんわーん!(大勝利ー!)」
「きっとこいつで最後だよな。いやー、倒せて良かったー。サンレーザー使いきった後は一瞬どうしようかと思ったぜ」
「わんわんわん!(俺、一人じゃこいつ倒せなかった。セイネのおかげ、セイネありがとう!)」
「俺もだよロトルン。よっしゃーレベルアップー。さて、それじゃあ宝箱の中身は何かなー?」
 俺は開いた宝箱の中身を見る。
 中にあったのは、ゴリラの守護像と、大ゴリラの証だった。
 静かに、宝箱を閉める。
「わんわん?(セイネ、中身はなんだったの?)」
「ん、あ、いや、あんまり、良いものじゃなかった。ロトルン、これは食べるのもやめよう。きっとお腹を壊すから」
「わんわん?(そう?)」
 ひとまず俺は、ロトルンが大ゴリラの死体を食べ終わるのを静かに待つのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...