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一学期
奏君からのお手紙
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「莉子ちゃん、奏君からお手紙きてたわよ」
帰宅してすぐに、ニコニコしながらお母さんが、奏君からのお手紙を渡してくれた。
「ホント? ありがとうー!」
手紙を受け取り、お部屋で開ける。
もちろん、おやつも一緒にね!
最近は塾の宿題を言い訳に、帰宅してすぐ、ほとんど毎日お部屋にこもっちゃう。
お母さんは少し寂しそうだけど、少なくとももののけ妖花が何とかなるまでは、このままかな。
お母さん、ゴメンね。
今は、クロとゆっくりお話出来るこの時間が、とっても貴重で大事なんだ。
「わわっ、コレ! コレだよ!」
手紙を開けた途端、こぼれ出たお花のカラーコピーを見て、歓声を上げる。
奏君、わたしのあの拙い説明文で、バッチリもののけ妖花の種類が特定出来たなんて、すごいねー!
もののけ妖花は現実にある“松葉菊”という種類を模したモノみたいだ。
ふーん、密生した多肉質の細長い葉が松みたいで、菊のようなお花を咲かせることから、この名が付いたのか~。
すごく納得できるネーミングセンスだよ。
あの光沢ある花びらもバッチリ同じ。
でも、お花の色は色々あるみたいだね。
奏君は、丁寧にお花のカラーコピーも添えてくれていた。
それには、何と、花言葉まで――んん?
「クロ、この紫色の花は、怠惰とか怠け者の意があるんだってー!!」
『なるほど、ピッタリだね!』
うん、悪いけど、今までの富澤先生の言動を振り返るとそう思うよ。
「赤色は、忍耐の意で、ピンク色はゆったりとした気分とか可憐を意味するのか~。あ、オレンジ色は無邪気? 色によって、だいぶ意味が変わるんだね……花言葉って、不思議」
わたしがしみじみと感じ入っていると、そこでクロは元気よく訴えた。
『主、コレで突破口がみえたね! アレの本質か願いは怠惰。ソレが脅かされそうになると、あの紫色の種子を吐き出し、周りの環境をソレに合わせようとする。つまり、洗脳やら干渉やらをして、周りに自分達を許容させようと働きかけるってわけだ。だから、のんびりダラダラと思い通りに時間が過ぎている時は、機嫌も良く大人しい。だって、そうやって時間をやり過ごせば、賃金を得てアレと宿主は生きていけるからね。と、いうことは、ソレさえ許容すれば、コチラを煩わせることはなくなるよ!』
……あの雑談や長話はそういうわけだったのか~。
ぶっちゃけ、コチラに害がなければ、もうこの1年は見て見ぬふりをするのも手かなー。
要は反面教師にして、自分達のことは自分でして、ついでに勉強も各自取り組んでいけば、良いということか。
幸い、中学受験組も多いクラスだから、ねー。
あーあ、これは富澤先生の評判が分かった上でのクラス分けだったのか、と疑りたくなるような状況だよ。
わたしはふぅ~とため息をついて、嘆く。
「わたしの最終学年としての楽しい学校生活が…………1年過ぎるのが、まだまだ長い。ああ、早く卒業したい」
『主、落ち込まないで。物事には、必ず良い面と悪い面があるから』
慰めてくれるクロに、わたしはやさぐれて聞く。
「この場合の良い面って、何?」
『……コレを乗りこえた面々は、怪異に対して強烈な耐性がつくと思う』
テンション、だだ下がりだよー!
帰宅してすぐに、ニコニコしながらお母さんが、奏君からのお手紙を渡してくれた。
「ホント? ありがとうー!」
手紙を受け取り、お部屋で開ける。
もちろん、おやつも一緒にね!
最近は塾の宿題を言い訳に、帰宅してすぐ、ほとんど毎日お部屋にこもっちゃう。
お母さんは少し寂しそうだけど、少なくとももののけ妖花が何とかなるまでは、このままかな。
お母さん、ゴメンね。
今は、クロとゆっくりお話出来るこの時間が、とっても貴重で大事なんだ。
「わわっ、コレ! コレだよ!」
手紙を開けた途端、こぼれ出たお花のカラーコピーを見て、歓声を上げる。
奏君、わたしのあの拙い説明文で、バッチリもののけ妖花の種類が特定出来たなんて、すごいねー!
もののけ妖花は現実にある“松葉菊”という種類を模したモノみたいだ。
ふーん、密生した多肉質の細長い葉が松みたいで、菊のようなお花を咲かせることから、この名が付いたのか~。
すごく納得できるネーミングセンスだよ。
あの光沢ある花びらもバッチリ同じ。
でも、お花の色は色々あるみたいだね。
奏君は、丁寧にお花のカラーコピーも添えてくれていた。
それには、何と、花言葉まで――んん?
「クロ、この紫色の花は、怠惰とか怠け者の意があるんだってー!!」
『なるほど、ピッタリだね!』
うん、悪いけど、今までの富澤先生の言動を振り返るとそう思うよ。
「赤色は、忍耐の意で、ピンク色はゆったりとした気分とか可憐を意味するのか~。あ、オレンジ色は無邪気? 色によって、だいぶ意味が変わるんだね……花言葉って、不思議」
わたしがしみじみと感じ入っていると、そこでクロは元気よく訴えた。
『主、コレで突破口がみえたね! アレの本質か願いは怠惰。ソレが脅かされそうになると、あの紫色の種子を吐き出し、周りの環境をソレに合わせようとする。つまり、洗脳やら干渉やらをして、周りに自分達を許容させようと働きかけるってわけだ。だから、のんびりダラダラと思い通りに時間が過ぎている時は、機嫌も良く大人しい。だって、そうやって時間をやり過ごせば、賃金を得てアレと宿主は生きていけるからね。と、いうことは、ソレさえ許容すれば、コチラを煩わせることはなくなるよ!』
……あの雑談や長話はそういうわけだったのか~。
ぶっちゃけ、コチラに害がなければ、もうこの1年は見て見ぬふりをするのも手かなー。
要は反面教師にして、自分達のことは自分でして、ついでに勉強も各自取り組んでいけば、良いということか。
幸い、中学受験組も多いクラスだから、ねー。
あーあ、これは富澤先生の評判が分かった上でのクラス分けだったのか、と疑りたくなるような状況だよ。
わたしはふぅ~とため息をついて、嘆く。
「わたしの最終学年としての楽しい学校生活が…………1年過ぎるのが、まだまだ長い。ああ、早く卒業したい」
『主、落ち込まないで。物事には、必ず良い面と悪い面があるから』
慰めてくれるクロに、わたしはやさぐれて聞く。
「この場合の良い面って、何?」
『……コレを乗りこえた面々は、怪異に対して強烈な耐性がつくと思う』
テンション、だだ下がりだよー!
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