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一学期

対策会議(2)

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 何ていうか、見た目が、というか、存在そのものがダメなことってあるよね?
 ゲジゲジとか、ヘビとかミミズとか、苦手な人は苦手だよね?

 全く想定外の状況からきた衝撃のせいで、わたしにとって、あのもののけ妖花はそんな存在になってしまっていたんだ。
 
 だから、GW前にはもう、あの紫色のヤツが既にわたしの中に入り込んでいた、なんてことをきいて、かなり取り乱しちゃったよ。

『主、落ち着いてー! 大丈夫だよ、今はもうない。主の中にアレはないから!』

 だけど、そんなわたしに、クロは慌ててキチンと今は大丈夫だ、と太鼓判を押してくれた。ホッ。

 アレはなかなか厄介で危ないモノなんだけど、わたし達6年1組のみんなは、不幸中の幸いで、今は成長期真っ只中。
 生き物として最も生命力に満ちあふれ、抵抗力や回復力も増している時期だから、少しの異物が体内に入ったとしても、成長する力によって弾き飛ばされたり、分解されたりしやすいんだって。

 だから、ひとまずもののけ妖花と接することがなかったGW中に、わたしを含めたクラスメイトのみんなも、各自の持つ力でいったん、ほぼもののけ妖花の影響から抜け出せたそうなんだ。まずは、良かったよ~!

 それで、あの紫色の何かは、もののけ妖花の種子だったらしい。
 ただ普通の妖花の種子と違って、もののけ妖花の膜――性質とか指令とか洗脳じみた影響もあり得るモノを帯びているから、アレに接しすぎると、すごくアレの干渉を受けちゃうようになるんだって。

「何ソレ、怖い、ヤだヤだー! あり得ない!?」

 ソレって、わたしがわたしでなくなっちゃうってことだよね?!
 わたしの意思が歪められちゃうってことは、すごく怖いことだ……。

『主は我が身が損なわれることに対して、すごく敏感! 生き物として、すごく正しい本能だよ。だから、アレに対して、敵愾心を持つんだろうね』

 クロ曰く、GW前にわたしがもののけ妖花の種子に触れてしまった時、全ての加護と自分の力を使って最速で浄化しようとしていたらしい。
 あの訳の分からないイライラ期は、そのバランスの配分がつかめていなかったのもあるんだって。

 う~ん。先生のせいってところは、当たらずも遠からずだったわけだよね。

「クロ、色々教えてくれてありがとう! ……でも、アレに対してどうすれば良いと思う?」

 色んなことが分かってきたけど、アレの対策をクロだけに頼るのは危険だよね。
 加速度的に成長してるってことは、もっともっと大きく危険になるかもしれないし……。
 クロの守備範囲を超えて、通り抜けたモノにあまり当たりすぎると、アレに操られるとかいうリスクも増大するわけだし……。

『主はまず、氏神様の御守りを肌身はなさず、身につけてくれる? ……そうしたら、ぼく、もう少し守る範囲を広げられるかも。一度、やってみないと、分からないけど……。あとね、アレ、もののけ妖花の花について、調べてみると、アレの本質や願いが分かるかもしれない』

「あの妙に光沢のある、紫色の花のことだよね? ……アレって、実在する花なの?!」

『その可能性は高いよ』

「分かった。調べてみる」

 こんなに早く、怪異現象にぶち当たるとは思わなかったなぁ~。
 こうなったら、時間のある時にでも、従兄弟経由で伯母さんにもお話を聞いてみよう。
 色々試して、一刻も早く楽しい学校生活を取り戻さないと――!
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