上 下
28 / 33
一学期

富澤先生の正体(3)

しおりを挟む
 それからの富澤先生の態度はやっぱり前と同じで、1日中、ずっと雑談やお説教のような道徳のような微妙なお話ばかりして終わった。
 お隣のクラスからはもう、小笠原先生のテキパキした授業する声が響いていたけど、わたしはもう富澤先生の頭上が気になって、気になって仕方がない。
 もはや、隣のクラスを羨む余裕すらなかったんだ。
 だから、学校が終わると、すぐにクロと一緒に飛ぶようにしてお家へ帰った。



 息せき切って帰宅したわたしを見て、お母さんはちょっとビックリしたみたいだったけど、「塾の宿題が~」というと、納得したみたいだった。
 何せGW中、遊びまくっていたのを知ってるからね。
 そのまま「お部屋で集中して宿題をする!」と言って、おやつと共にひきこもるのに成功!
 まずは机の上に、ダミーの塾の宿題と今日のおやつをセッティングして、と。
 それから、小さな声でクロにたずねる。

「……そういえば、クロ。今日は、何か食べる? このおやつ、一緒に食べてみる? 美味しいよ?」

『ぼく、しばらくは何もいらない。主になじむまでは、主のをもらってる』

 昨日と同じ答えだ。

「気――? よく分からないけど、何かいる物ができたら、教えてね。あと忘れないうちに、増やした方が良いと思った、ハンドサインを伝えておくね!」

 クロは小さな見た目に反して、とても賢いみたいだ。
 あっという間にわたしの意をくんで、新しいハンドサインを理解する。

 落ち着いたところで、わたしは改めてクロに向きなおった。

「クロ、今日は本当にありがとう! クロがいてくれて、本当に良かった~! 一緒にいてくれて、心強かったよー!!」

 心を込めて、お礼を述べる。
 最初は何が何だか分からないままに、一緒にいることになったクロだけど、こんな身近にも怪異現象が起こり得ると分かった今は、ホントにありがたい味方だー!

『うん! ぼく、これからも頑張る』と機嫌良さげに左右に揺れながらも、キリッと返事をするクロ。頼もしい。

「……それでね、富澤先生の事なんだけど、アレッて何? 何で頭に花が咲いてるの?! しかも、途中で何か怪しい紫のが飛んでくるし――!」

 あの異様な光景を思い出して、ブルッと身を震わせながらクロに聞くと、クロはケロッとした様子で『妖花だよ』と答えた。

「ようか……い?」

『ちがう、ちがう。怪しい花、で妖花。アレは妖花に憑かれてるの』

 憑かれてるって、大変なことなのでは?! 

「妖花って、何? 憑かれるとどうなっちゃうの?!」

『う~ん、妖花自体はわりとよくあるモノだよ。種子が内に入ると、その宿主の心や願い、本質を反映した花を咲かせるの』

 アレ? それだけなら、あまり危険ではないのかな?
 そうすると、あの妙に花びらに光沢のある、紫色の菊のようなお花が、富澤先生の心や願い、本質を表している、ということ?

 わたしがそう考えこんでいると、クロは言葉を続けた。

『アレだけ大きく成長なるのは、稀だけどね。そうなると、アレはもう立派な物の怪、あやかし並。当然、宿主だけでなく周囲の心、特に精神に影響を与え、干渉するよ』

 ソレ、ダメな奴だよねー?!
 やっぱり、危険だよー!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

家路を飾るは竜胆の花

石河 翠
恋愛
フランシスカの夫は、幼馴染の女性と愛人関係にある。しかも姑もまたふたりの関係を公認しているありさまだ。 夫は浮気をやめるどころか、たびたびフランシスカに暴力を振るう。愛人である幼馴染もまた、それを楽しんでいるようだ。 ある日夜会に出かけたフランシスカは、ひとけのない道でひとり置き去りにされてしまう。仕方なく徒歩で屋敷に帰ろうとしたフランシスカは、送り犬と呼ばれる怪異に出会って……。 作者的にはハッピーエンドです。 表紙絵は写真ACよりchoco❁⃘*.゚さまの作品(写真のID:22301734)をお借りしております。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 (小説家になろうではホラージャンルに投稿しておりますが、アルファポリスではカテゴリーエラーを避けるために恋愛ジャンルでの投稿となっております。ご了承ください)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...