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一学期
作戦会議
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「あぁ~、盛りだくさんのGWで楽しかったー! ……でも、明日からまた学校かぁ~」
家に帰って落ち着いてから、わたしは久しぶりに自分の部屋のベッドにドサリ、と寝転んだ。
すると、しばらく嬉しそうに部屋の中をパタパタ飛び回っていたクロが寄ってきて、わたしの頭上のヘッドボードに止まった。
『主ー、明日からまた妖怪の箱庭に通うの?』
んん? 聞き捨てならない、言葉が聴こえたような――?
「クロ、明日から行くのは学校だよ? 小原木小学校!」
思わずそう言い返すと、キッチンの方からお母さんの声がした。
「莉子ちゃーん! 何か言ったー? どうかしたのー!」
「ううん、何でもない! ちょっとひとりごと! 明日の用意を考えてただけ!」
慌ててその場を取り繕う。
しまった。クロに対して、これからは部屋にいる時でも、大きな声を出すのはダメだよね。
ましてや、明日からは小学校が始まる。
「ねぇ、クロ。クロはわたしとずっと一緒って言ってたけど、小学校へも一緒に行くの?」
ちょっとヒソヒソ声で問いかけると、『もちろん! ぼく、主とはいつでも一緒!』と胸を張って答えてくる。
そっか~、小学校も一緒なんだ。
そういえば、黒いモノ時代からもけっこう出没してたね……。
でも、GWを満喫した後、またあの学校生活が始まるのかぁ。
ちょっと憂鬱になっちゃうな。
お友達に会えるのは、嬉しいけど。
だけど、もしまた富澤先生がお話ばっかりしてても、今度はクロがわたしの側にいてくれるんだよね!
それを思うと、わたしはちょっと嬉しくなった。
よし、それなら作戦会議だ!
「クロ、あのね。わたし、自分のお部屋の中とか他に誰もいないところなら、こうやってクロとお話出来るんだけど……」
そう言って起き上がり、頭上のクロを見上げると、クロは真ん丸で真っ黒な目でじっとわたしを見つめ、真剣に聞いてくれていた。
「誰か他の人がいる時は、クロに話しかけられないの。だって、視えて聴こえる人はほとんどいないと思うから、頭が変と思われちゃうかもしれないし。でもね、クロのこと、無視する訳じゃないからね! だから、今、ここでわたしとクロだけの簡単なハンドサイン、決めちゃおうー!」
その言葉に対し、クロは嬉しそうに羽をパタパタさせて、コクコクと頷いた。
「あのね、とりあえず、ウンとかハイとか賛成や肯定の意味の時は、こうやってグッと握りこぶしを作るね! あと不自然じゃない状況だったら、首を今のクロみたいに上下に振るとか……」
ハンドサインの話が面白かったのか、今度は踊り出しそうに左右に身体を揺らしながらも、器用に頷くクロ。
ひょっとして、ワクワクしてるのかな。
わたしは、言葉を続ける。
「それでね、違うとかイイエとか否定の時は、手をパーにするか、首を左右に振るね!」
『分かったー! さすが主』
後のことは、また追々決めていけば良いかな。
さて、明日からはクロと一緒にどうなることやら。
でも、こうやって考えているうちに、不思議とわたしも少し明日が楽しみになってきたんだ。
家に帰って落ち着いてから、わたしは久しぶりに自分の部屋のベッドにドサリ、と寝転んだ。
すると、しばらく嬉しそうに部屋の中をパタパタ飛び回っていたクロが寄ってきて、わたしの頭上のヘッドボードに止まった。
『主ー、明日からまた妖怪の箱庭に通うの?』
んん? 聞き捨てならない、言葉が聴こえたような――?
「クロ、明日から行くのは学校だよ? 小原木小学校!」
思わずそう言い返すと、キッチンの方からお母さんの声がした。
「莉子ちゃーん! 何か言ったー? どうかしたのー!」
「ううん、何でもない! ちょっとひとりごと! 明日の用意を考えてただけ!」
慌ててその場を取り繕う。
しまった。クロに対して、これからは部屋にいる時でも、大きな声を出すのはダメだよね。
ましてや、明日からは小学校が始まる。
「ねぇ、クロ。クロはわたしとずっと一緒って言ってたけど、小学校へも一緒に行くの?」
ちょっとヒソヒソ声で問いかけると、『もちろん! ぼく、主とはいつでも一緒!』と胸を張って答えてくる。
そっか~、小学校も一緒なんだ。
そういえば、黒いモノ時代からもけっこう出没してたね……。
でも、GWを満喫した後、またあの学校生活が始まるのかぁ。
ちょっと憂鬱になっちゃうな。
お友達に会えるのは、嬉しいけど。
だけど、もしまた富澤先生がお話ばっかりしてても、今度はクロがわたしの側にいてくれるんだよね!
それを思うと、わたしはちょっと嬉しくなった。
よし、それなら作戦会議だ!
「クロ、あのね。わたし、自分のお部屋の中とか他に誰もいないところなら、こうやってクロとお話出来るんだけど……」
そう言って起き上がり、頭上のクロを見上げると、クロは真ん丸で真っ黒な目でじっとわたしを見つめ、真剣に聞いてくれていた。
「誰か他の人がいる時は、クロに話しかけられないの。だって、視えて聴こえる人はほとんどいないと思うから、頭が変と思われちゃうかもしれないし。でもね、クロのこと、無視する訳じゃないからね! だから、今、ここでわたしとクロだけの簡単なハンドサイン、決めちゃおうー!」
その言葉に対し、クロは嬉しそうに羽をパタパタさせて、コクコクと頷いた。
「あのね、とりあえず、ウンとかハイとか賛成や肯定の意味の時は、こうやってグッと握りこぶしを作るね! あと不自然じゃない状況だったら、首を今のクロみたいに上下に振るとか……」
ハンドサインの話が面白かったのか、今度は踊り出しそうに左右に身体を揺らしながらも、器用に頷くクロ。
ひょっとして、ワクワクしてるのかな。
わたしは、言葉を続ける。
「それでね、違うとかイイエとか否定の時は、手をパーにするか、首を左右に振るね!」
『分かったー! さすが主』
後のことは、また追々決めていけば良いかな。
さて、明日からはクロと一緒にどうなることやら。
でも、こうやって考えているうちに、不思議とわたしも少し明日が楽しみになってきたんだ。
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