20 / 33
一学期
境内にて(1)
しおりを挟む
周りの木々のざわめきを五感全てで感じ取り、今のわたしは、元の氏神様を祀る神社に在ることが分かった。
一呼吸おいてから、目を開く。
そして、本殿を見、深々と一礼した。
先ほどの体験は、わたしの人生――まだ11年と少ししか経っていないけれど――が一変するようなものだったのに違いない。
だって、わたしの右肩には、まだクロがのっているんだもの。
従って、あの白い霧の中の出来事は、自然とわたしの中でも現実のモノと認識されている。
「り、莉子ちゃん、ソレは……?!!」
その時、梨香子伯母さんが真っ青な顔でクロを指差した。
う~ん、やっぱり視えているのかな? コレは。
だけど、お母さんがニコニコしながら、
「あら、莉子ちゃん、葉っぱがついている。フフ、お義姉さん、そんな大げさにしなくても」と言い、やさしくわたしの頭から葉っぱをつまみ上げた。
え、そっち?! 何だ、葉っぱのことだったの?
そう思っていると、智也さんから声がかかる。
「ンン、……そうそう、氏神様への参拝の後は、お神札だねー! 梨香子、ちょっと先に弟夫妻と一緒に見ておいで? 色々と、お勧めもあるだろうしね。――良い? しっかりじっくりと、特別なお神札を選ぶんだよ? 何せ本当に久方ぶりのお参りだったのだから」
智也さん、まるでお神札選びに時間をたくさんかけろと言わんばかりだなぁ~。
そんな風に思って見ていると、伯母さんは智也さんの言葉にコクコクと頷き、力強くお父さんの腕を引っ張りつつもお母さんにやさしく話しかけ、あっという間にその場から立ち去った。
その後、智也さんはわたしに向き直り、
「さて、莉子ちゃん、何があったのかな?」と真剣に聞いてくる。
だけど、そんな風に聞かれても、わたしにはどう答えてよいのかが分からない。
何となく先ほどの氏神様の件かな? とは思うけど、正直に話せるような内容じゃないよね。
というか、普通、いきなりあの体験を話しだしたら、頭のおかしい子だと思われちゃうからー!
智也さんは警戒しているわたしに気がついたのか、「話せないのなら、仕方がないね」と呟くと、おもむろにわたしの右肩へ手を伸ばす。
伸ばされた、智也さんの左手は、うっすらと青く光っている。
驚いて固まるわたしを他所に、クロは『何をする~!』とわめきながら、パタパタとちびっこい翼で飛び上がった。
そのため、智也さんの左手は空を切り、ハッと我に返ったわたしは用心深くそこから一歩後ずさったけれど、今度は非常に驚いた顔のまま、智也さんが固まっていた。
しばらく固まっていた智也さんだけど、やがてギギーっと音が出るような鈍さでノロノロと動き出し、わたしを凝視し問い質し始めた。
一呼吸おいてから、目を開く。
そして、本殿を見、深々と一礼した。
先ほどの体験は、わたしの人生――まだ11年と少ししか経っていないけれど――が一変するようなものだったのに違いない。
だって、わたしの右肩には、まだクロがのっているんだもの。
従って、あの白い霧の中の出来事は、自然とわたしの中でも現実のモノと認識されている。
「り、莉子ちゃん、ソレは……?!!」
その時、梨香子伯母さんが真っ青な顔でクロを指差した。
う~ん、やっぱり視えているのかな? コレは。
だけど、お母さんがニコニコしながら、
「あら、莉子ちゃん、葉っぱがついている。フフ、お義姉さん、そんな大げさにしなくても」と言い、やさしくわたしの頭から葉っぱをつまみ上げた。
え、そっち?! 何だ、葉っぱのことだったの?
そう思っていると、智也さんから声がかかる。
「ンン、……そうそう、氏神様への参拝の後は、お神札だねー! 梨香子、ちょっと先に弟夫妻と一緒に見ておいで? 色々と、お勧めもあるだろうしね。――良い? しっかりじっくりと、特別なお神札を選ぶんだよ? 何せ本当に久方ぶりのお参りだったのだから」
智也さん、まるでお神札選びに時間をたくさんかけろと言わんばかりだなぁ~。
そんな風に思って見ていると、伯母さんは智也さんの言葉にコクコクと頷き、力強くお父さんの腕を引っ張りつつもお母さんにやさしく話しかけ、あっという間にその場から立ち去った。
その後、智也さんはわたしに向き直り、
「さて、莉子ちゃん、何があったのかな?」と真剣に聞いてくる。
だけど、そんな風に聞かれても、わたしにはどう答えてよいのかが分からない。
何となく先ほどの氏神様の件かな? とは思うけど、正直に話せるような内容じゃないよね。
というか、普通、いきなりあの体験を話しだしたら、頭のおかしい子だと思われちゃうからー!
智也さんは警戒しているわたしに気がついたのか、「話せないのなら、仕方がないね」と呟くと、おもむろにわたしの右肩へ手を伸ばす。
伸ばされた、智也さんの左手は、うっすらと青く光っている。
驚いて固まるわたしを他所に、クロは『何をする~!』とわめきながら、パタパタとちびっこい翼で飛び上がった。
そのため、智也さんの左手は空を切り、ハッと我に返ったわたしは用心深くそこから一歩後ずさったけれど、今度は非常に驚いた顔のまま、智也さんが固まっていた。
しばらく固まっていた智也さんだけど、やがてギギーっと音が出るような鈍さでノロノロと動き出し、わたしを凝視し問い質し始めた。
11
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
R:メルヘンなおばけやしき
stardom64
児童書・童話
ある大雨の日、キャンプに訪れた一人の女の子。
雨宿りのため、近くにあった洋館で一休みすることに。
ちょっぴり不思議なおばけやしきの探検のおはなし☆
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
台風ヤンマ
関谷俊博
児童書・童話
台風にのって新種のヤンマたちが水びたしの町にやってきた!
ぼくらは旅をつづける。
戦闘集団を見失ってしまった長距離ランナーのように……。
あの日のリンドバーグのように……。
ターシャと落ちこぼれのお星さま
黒星★チーコ
児童書・童話
流れ星がなぜ落ちるのか知っていますか?
これはどこか遠くの、寒い国の流れ星のお話です。
※全4話。1話につき1~2枚の挿絵付きです。
※小説家になろうにも投稿しています。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる