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一学期
氏神様へのお参り(2)
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目を開いているのか、そうでないのか。
分からない位の白い霧の中、わたしは何かの声を聴く。
『ヤット……ヤット……!』
「やっと……?」
思わず声に出してしまうと、ソレが勢いよく飛びこんできた。
黒いモノだ! この気配、感覚は間違いない!
何でここに?!
この白い空間の中で、黒いモノはとても目立つ。
疑問に思いつつもソレを目で追っていると、いきなりソレと思いっきり目が合った。
「黒っ……?!」
驚きのあまり、途中で声が途切れてしまった。
本当は、黒いモノがー!? と叫びたかったんだよ?
すると、その時、ソレが淡く金色に輝き姿が変わる。
そして、ソレはきゃらきゃらと嬉しそうに笑った。
『ぼく、クロ! 主に名付けてもらった!』
しゃ、しゃべったー!?
主様って、何? 名付けってー?!
混乱するわたしをよそに、身体いっぱいに喜びを表し飛び回る、クロと名のったソレ。
ソレは今、羽が生えそろったばかりの、小さなカラスの子どもの姿をしていた。
そして、クロはちんまりとした羽をパタパタさせて、わたしの右肩へのってくる。
その瞬間、その場に低く大きな声が鳴り響いた。
『無断で我が神域へ入ってきたモノは、何か?!』
その声と共に、いつの間にか大きな影がわたしの目の前に来ていたんだ。
畏れ、というモノは、こういうモノをいうんじゃないだろうか。
わたしの身体は勝手にフルフルと震えていた。
まるで大きな自然現象――暴風雨や落雷に対峙した時のように、ソレに対してなすすべもない小さな自分を認識し、心身共に畏れ敬う気持ちが湧いてくる。
わたしは小さく縮こまり、両手をギュッと握りしめた。
だけど、それに対して、右肩にのった子カラスは恐れ気もなく言い放つ。
『この地の氏神様ー! ぼくの主が怖がっていますー! どうか神気を抑えてくださーい』
『ムム、おぬしは……? ウウム、何やら面妖なことになっておるのう。して、主とな。それは、この者か――――ほう』
そこで、わたしの身体はフッと楽になった。
『ほうほう。そちは、我の守護する天童家の血筋の者よな。なるほど、なるほど。こちらも稀に見る面白……ンン、興味深い、イヤイヤ……大変な事態となっておるのう。いやはや、何がどうなってこんな事態になったやら――』
何事なのー?!
不安をかき立てられるその語句に、思わずパッと顔を上げる。
《その本質は、中庸とな》
「ちゅうよう……?」
聴こえた小さな声の意味が分からず、音を繰り返すと、
『何と?! 我の心の内まで、暴くとは?!』とまたしても大音声が鳴り響いた。
分からない位の白い霧の中、わたしは何かの声を聴く。
『ヤット……ヤット……!』
「やっと……?」
思わず声に出してしまうと、ソレが勢いよく飛びこんできた。
黒いモノだ! この気配、感覚は間違いない!
何でここに?!
この白い空間の中で、黒いモノはとても目立つ。
疑問に思いつつもソレを目で追っていると、いきなりソレと思いっきり目が合った。
「黒っ……?!」
驚きのあまり、途中で声が途切れてしまった。
本当は、黒いモノがー!? と叫びたかったんだよ?
すると、その時、ソレが淡く金色に輝き姿が変わる。
そして、ソレはきゃらきゃらと嬉しそうに笑った。
『ぼく、クロ! 主に名付けてもらった!』
しゃ、しゃべったー!?
主様って、何? 名付けってー?!
混乱するわたしをよそに、身体いっぱいに喜びを表し飛び回る、クロと名のったソレ。
ソレは今、羽が生えそろったばかりの、小さなカラスの子どもの姿をしていた。
そして、クロはちんまりとした羽をパタパタさせて、わたしの右肩へのってくる。
その瞬間、その場に低く大きな声が鳴り響いた。
『無断で我が神域へ入ってきたモノは、何か?!』
その声と共に、いつの間にか大きな影がわたしの目の前に来ていたんだ。
畏れ、というモノは、こういうモノをいうんじゃないだろうか。
わたしの身体は勝手にフルフルと震えていた。
まるで大きな自然現象――暴風雨や落雷に対峙した時のように、ソレに対してなすすべもない小さな自分を認識し、心身共に畏れ敬う気持ちが湧いてくる。
わたしは小さく縮こまり、両手をギュッと握りしめた。
だけど、それに対して、右肩にのった子カラスは恐れ気もなく言い放つ。
『この地の氏神様ー! ぼくの主が怖がっていますー! どうか神気を抑えてくださーい』
『ムム、おぬしは……? ウウム、何やら面妖なことになっておるのう。して、主とな。それは、この者か――――ほう』
そこで、わたしの身体はフッと楽になった。
『ほうほう。そちは、我の守護する天童家の血筋の者よな。なるほど、なるほど。こちらも稀に見る面白……ンン、興味深い、イヤイヤ……大変な事態となっておるのう。いやはや、何がどうなってこんな事態になったやら――』
何事なのー?!
不安をかき立てられるその語句に、思わずパッと顔を上げる。
《その本質は、中庸とな》
「ちゅうよう……?」
聴こえた小さな声の意味が分からず、音を繰り返すと、
『何と?! 我の心の内まで、暴くとは?!』とまたしても大音声が鳴り響いた。
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