狼騎士と赤ずきん

ホタル

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プロローグ

ハウス

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夕食が終わって結衣がトイレに行ってから大分経つ・・・!

食後のコーヒーが冷たくなっても結衣は戻って来る気配がなかった。

流石に遅いと思った俺は、トイレに行くともぬけの殻だった。

・・・結衣が居ない・・・・。

結衣が居ないと分かった瞬間、不安が恐怖にガラリと変わった。


まさか、誘拐されたか?

俺はこの世界での人の歴史を思い出した。

まだ、この国が1つの国になる前、獣人の部族達が領土拡大にいそしんでいた時代。
この時代を今の学者達は、暗黒の時代と呼んだ。
この頃は、まだ沢山の人が世界各地に住んでいが人の生命力は他の獣人達より弱い上に、獣人達の人狩りによって数は減っていった。

人狩りで捕まると!ほとんどの者は、獣人に食べられてしまう。人の肉は薬と言われていた。特に人の子は獣人にとって、寿命が延びる薬と、まことしやかに噂されている。
更に女の人の子は何時でも子を孕む事が出来て、食べても柔らかく美味いし薬になると言われていた。
闇の奴隷市場では、女の人の子は高額な値段で取引されている。
殆どは食べられる運命だった。
運が良ければ性奴隷で、それでも環境の変化に弱い人は寿命が極端に短かった。
そのせいで、この世界の人は数を減らしていった。

だいぶ昔の話だが、今でも人は森の奥深くに身を潜めていると噂で聞いたことがある。



結衣の姿が見えないだけで、こんなにも不安で堪らなくなる。

結衣が生きていくには厳しすぎる世界!
俺が守らなくて、誰が結衣を守れる。

帰ってきたら怒鳴りつけてやる。結衣は俺を、こんなにも心配をさせるのだから。

この世界で、人がどれ程生き辛い環境かを、一度じっくりと教えてやらないと。


手当たりしだいに獣人を捕まえて結衣の居場を問い詰めようとしたが・・・ここに人の子が居ると宣伝するようなもので・・・非常にマズイ!結衣を危険な目に合わせる事は出来ない。

仕方が無い、結衣の部屋に行って、結衣の強く匂う服を嗅いで、結衣を探すか。

そうと決まれば、すぐに結衣の部屋に入ると結衣の持ち物1つ1つに鼻を擦り付けて匂いを嗅ぐ、赤い頭巾は匂いが弱い!もっと匂いの強い物を、結衣のシャツの匂いを嗅ぐ、まだ足りない、もっと結衣を感じる物を、もっともっと俺の心を満たしてくれ俺の結衣。

手当たり次第に結衣の洋服に鼻を擦り付ける、そして最も結衣の匂いが強い服を見つけた!これだ、この芳醇な香りに深呼吸する。
これは結衣のパジャマ!今朝まで着ていたモスグリーン色のパジャマだ。
その服には少しだが、結衣の血の匂いも混じっている。

俺の脳髄が一瞬でざわめき始め、全身の毛が逆なでする様な香りに目眩さえする。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ、グゥルギゥルグゥルル・ルルル・・ハァッ、ハァッ」
呼吸が浅く乱れて行き、喉が鳴リ犬歯が伸びていくのが分かる。金色の目が輝きを増して結衣のパジャマ、一点に集中して行く。自分でも分かるくらいに俺は興奮している。結衣の香りと、血の匂いに!

結衣・・・・俺の結衣・・・。

「・・・グリフィス?何をしているの?」

結衣の声にビクンと反応するとユックリと声のする方へ顔を向ける。

結衣はそんな俺と右手に持っているパジャマと左手に持っているパンツを交互に見て「この!ど変態!!」と叫んで、俺の両手からパジャマとパンツを奪う様に取った。

「・・・結衣・・違うんだ・・・俺はただ・・・」

「何が違うのよ!変態!バカ!アホ!クズ!!」
涙目に叫ぶ結衣の気迫に負けて謝った。
「すまん!俺は結衣を探そうと・・・」

「私を探すのに何で!私の、私の、洋服を持っているのよ!」
結衣は顔を真っ赤にしてグリフィスに抗議した。

「当たり前だろう?匂いを嗅がないと結衣の居場所が探せないだろう?」当然という風に俺は胸を張った。

俺の言葉を聞いて、さっきまで真っ赤だった顔が今では真っ青で小刻みに震えていた。

「まさか、まさかだとは思うけど、グリフィス、コレの匂いも嗅いだの?」

結衣は握り締めていたパンツを俺の眼の前に突き出して言った。

「それは、次に嗅ごうとしていた・・グヘェ!」
言った瞬間!

俺は結衣に殴られていた。

「グリフィスなんて大嫌い!あっちへ行って!グリフィス!ハウス!!!!」

すぐに隣の自分の部屋に戻った。

前世の記憶が恨めしい。


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