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2章
失いたく無いもの2
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ミズキを抱えて意識が途切れていたのは、ほんの2~3分くらいだった・・・。
意識を取り戻してミズキのの背中を見ると傷は薄皮一枚で繋がっている。
それでも良い・・・命が繋がった事にジェリドは安堵した。
それだけで良い。
今は・・・それだけで。
俺にとってミズキがこの世界で生きている事が意味がある。
そんなジェリドにダリルは唖然として見ていた。
そして近くにいたキャサリンは何とも判断の出来ない目でジェリドを見ていた。
「ジェリド・・・さっきミズキに飲ませた物はなんだ?それにどうしてここにいるんだ?」
驚いていたダリルは、この状況を確認するために口を開いた。
「ミズキの護衛でここに来ている、ミズキが飲んだアレは・・・薬だ。」
言葉を紡ぎながら、ジェリドはいまだに蒼白なミズキに視線を向けた。
ジェリドの言葉にキャサリンは言葉を失った。
アレは薬なんて言う生易しいものでは無い。
ミズキが飲んだ『封魔の黒真珠』はジェリドの魂そのものだ。
5年前にジェリドの血を混ぜる事によって術は完成していた。
そして今、黒真珠はジェリド本人の魂を口にしたミズキの傷をふさいだ。
『封魔の黒真珠』は体内に入ると体の隅々まで浸透して、ミズキの意思とは関係なくミズキの体が傷付けばその傷を治す為に術者の魂を削って補う。
キャサリンは自分の命さえも顧みないジェリドのミズキへの執着に震えた。
確かにミズキ命がつながったが、その分ジェリドの寿命が削れていく。
『開封の白真珠』も『封魔の黒真珠』と同じ作用がある。
『開封の白真珠』をジェリドは口にするのだろうか?
本来この『封魔の黒真珠』と『開封の白真珠』は対になっていて『死が二人を分かつまで』という言葉をそのまま具現化した代物だ。
『死が二人を分かつまで』は教会で祝福の言葉として使われるが、今のジェリドを見ているとキャサリンの耳には『死んでも手放す気はない』と聞こえてくる。
それだけは阻止しないと。
ミズキ本人の意思を完全に無視した行いは、いくらジェリドが想いを寄せていても許されるわけではない。
ミズキはジェリドのことをダリル同様、兄のように思っている。
決して異性としては見ていない。
それだけは解る。
ジェリドの行動は、分かりやすい。
はたから見れば何故ミズキは気が付かないのか?疑問だが、ミズキは意識的に気が付かないように自分自身に暗示をかけている節がある。
ミズキはこれ以上深入りしないかのように・・・どうして深入りしてはいけないのか?
キャサリンはミズキのそんな理由が知りたい。
正直、キャサリンはミズキがジェリドと一緒になったほうがミズキのためだと思ってきた。
ジェリドなら、腕はそこそこに強いし、機転が利く、ここに来る前は、いくら濡れ衣を着せられていてもギアラムの聖騎士様をやっていたし。
そうそう、今ではジェリドに濡れ衣を着せたあの国の王は、もう国を維持できぬ所まで来ていた。もとから、きな臭い噂のあった男だった。そんな男が王になったのだから、あっという間に国が傾くのは目に見えていた、ミズキが策を練らなくても、ゆっくりとだが傾いていていき最後は倒れるのを待っていればよかったのだ。
だが、ミズキの腹の虫がおさまらなかったのだろう。
何せ兄のように慕っているジェリドが濡れ衣を着せられ、婚約者に殺されそうになって命からがら逃げてきたのを聞かされれば、腹もたち「目に物言わせてくれよう」と思っても何の不思議もない!
あの時は私も一緒のなって憤慨して、ミズキにけしかけのたが・・・いけなかった・・・・いいえ!いい思い出ですが・・・忘れましょう。
あの時のミズキの笑顔が怖かったなんて言えません。
ギルマスの私でさえ、背筋が寒くなったのだから。
悪魔のほほえみのミズキの仕返しは、たった二つの噂を流しただけでした。
そのうわさが、まさか、いとも簡単に一国の王を退陣まで追い込むなんて思いもよりませんでした。
ミズキがギアラムの大使に一つの噂を流した。
それは、ギアラムの貴族たちが最近患っていた病気と、近い将来地震があるという噂だった。
そしてギルドを通して、病気と地震の因果関係は、前国王にあると噂を広めた。
噂を流した後は怖いくらいミズキの思い道理に事が進んだ。
何故面白いように噂が人々の心を揺さぶったのか?私は知りたかった。
思っていることをミズキにぶつけると、簡単に種明かしされて呆然とした。
何故、『近い将来地震がある』と噂を流したのか?と聞いたら、ミズキは地震なんてあってもなくてもいいのよ!
肝心なことはねキャッサリンさん!何故、前国王が殺されなければいけないのか?誰が一番得をするのかを!全国民は知らなければいけないことなのよ!
キャサリンさん、無知と見て見ぬふりは罪だわ!
対岸の火事は眺めていることができるけど、実際炎が自分に降りかかってきたら、人は動くのよ!
だから私は、火の粉を作って、まいただけよ。
だからなのだろうか?ミズキが狙われるのは?
そして、そんなミズキを守れるのはジェリドしかいないと思ってしまった私はしぶしぶだが、それなりにジェリドに肩入れをしてきたが、今のジェリドの行動は常軌を逸している。
よく考えると5年前から、ミズキへの思いをこじらせて、ねじれて、こむら返りしている。
・・・あたし、人選誤ったかしら?
意識を取り戻してミズキのの背中を見ると傷は薄皮一枚で繋がっている。
それでも良い・・・命が繋がった事にジェリドは安堵した。
それだけで良い。
今は・・・それだけで。
俺にとってミズキがこの世界で生きている事が意味がある。
そんなジェリドにダリルは唖然として見ていた。
そして近くにいたキャサリンは何とも判断の出来ない目でジェリドを見ていた。
「ジェリド・・・さっきミズキに飲ませた物はなんだ?それにどうしてここにいるんだ?」
驚いていたダリルは、この状況を確認するために口を開いた。
「ミズキの護衛でここに来ている、ミズキが飲んだアレは・・・薬だ。」
言葉を紡ぎながら、ジェリドはいまだに蒼白なミズキに視線を向けた。
ジェリドの言葉にキャサリンは言葉を失った。
アレは薬なんて言う生易しいものでは無い。
ミズキが飲んだ『封魔の黒真珠』はジェリドの魂そのものだ。
5年前にジェリドの血を混ぜる事によって術は完成していた。
そして今、黒真珠はジェリド本人の魂を口にしたミズキの傷をふさいだ。
『封魔の黒真珠』は体内に入ると体の隅々まで浸透して、ミズキの意思とは関係なくミズキの体が傷付けばその傷を治す為に術者の魂を削って補う。
キャサリンは自分の命さえも顧みないジェリドのミズキへの執着に震えた。
確かにミズキ命がつながったが、その分ジェリドの寿命が削れていく。
『開封の白真珠』も『封魔の黒真珠』と同じ作用がある。
『開封の白真珠』をジェリドは口にするのだろうか?
本来この『封魔の黒真珠』と『開封の白真珠』は対になっていて『死が二人を分かつまで』という言葉をそのまま具現化した代物だ。
『死が二人を分かつまで』は教会で祝福の言葉として使われるが、今のジェリドを見ているとキャサリンの耳には『死んでも手放す気はない』と聞こえてくる。
それだけは阻止しないと。
ミズキ本人の意思を完全に無視した行いは、いくらジェリドが想いを寄せていても許されるわけではない。
ミズキはジェリドのことをダリル同様、兄のように思っている。
決して異性としては見ていない。
それだけは解る。
ジェリドの行動は、分かりやすい。
はたから見れば何故ミズキは気が付かないのか?疑問だが、ミズキは意識的に気が付かないように自分自身に暗示をかけている節がある。
ミズキはこれ以上深入りしないかのように・・・どうして深入りしてはいけないのか?
キャサリンはミズキのそんな理由が知りたい。
正直、キャサリンはミズキがジェリドと一緒になったほうがミズキのためだと思ってきた。
ジェリドなら、腕はそこそこに強いし、機転が利く、ここに来る前は、いくら濡れ衣を着せられていてもギアラムの聖騎士様をやっていたし。
そうそう、今ではジェリドに濡れ衣を着せたあの国の王は、もう国を維持できぬ所まで来ていた。もとから、きな臭い噂のあった男だった。そんな男が王になったのだから、あっという間に国が傾くのは目に見えていた、ミズキが策を練らなくても、ゆっくりとだが傾いていていき最後は倒れるのを待っていればよかったのだ。
だが、ミズキの腹の虫がおさまらなかったのだろう。
何せ兄のように慕っているジェリドが濡れ衣を着せられ、婚約者に殺されそうになって命からがら逃げてきたのを聞かされれば、腹もたち「目に物言わせてくれよう」と思っても何の不思議もない!
あの時は私も一緒のなって憤慨して、ミズキにけしかけのたが・・・いけなかった・・・・いいえ!いい思い出ですが・・・忘れましょう。
あの時のミズキの笑顔が怖かったなんて言えません。
ギルマスの私でさえ、背筋が寒くなったのだから。
悪魔のほほえみのミズキの仕返しは、たった二つの噂を流しただけでした。
そのうわさが、まさか、いとも簡単に一国の王を退陣まで追い込むなんて思いもよりませんでした。
ミズキがギアラムの大使に一つの噂を流した。
それは、ギアラムの貴族たちが最近患っていた病気と、近い将来地震があるという噂だった。
そしてギルドを通して、病気と地震の因果関係は、前国王にあると噂を広めた。
噂を流した後は怖いくらいミズキの思い道理に事が進んだ。
何故面白いように噂が人々の心を揺さぶったのか?私は知りたかった。
思っていることをミズキにぶつけると、簡単に種明かしされて呆然とした。
何故、『近い将来地震がある』と噂を流したのか?と聞いたら、ミズキは地震なんてあってもなくてもいいのよ!
肝心なことはねキャッサリンさん!何故、前国王が殺されなければいけないのか?誰が一番得をするのかを!全国民は知らなければいけないことなのよ!
キャサリンさん、無知と見て見ぬふりは罪だわ!
対岸の火事は眺めていることができるけど、実際炎が自分に降りかかってきたら、人は動くのよ!
だから私は、火の粉を作って、まいただけよ。
だからなのだろうか?ミズキが狙われるのは?
そして、そんなミズキを守れるのはジェリドしかいないと思ってしまった私はしぶしぶだが、それなりにジェリドに肩入れをしてきたが、今のジェリドの行動は常軌を逸している。
よく考えると5年前から、ミズキへの思いをこじらせて、ねじれて、こむら返りしている。
・・・あたし、人選誤ったかしら?
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