異世界へようこそ

ホタル

文字の大きさ
上 下
47 / 83
2章

疑問

しおりを挟む
「思い出せ!少しでもいい俺の事を思い出せ!ミズキ!!」

去り際に言ったジェリドの言葉が心を刺します。

『覚えていますよ。ジェリドさん・・・私は、あなたをこれ以上巻き込まない事が、この世界で私を助けてくれた貴方への恩返しです。だから・・・・・さよならです』

歩きながらジェリドの言葉を反復する。

でも何故、ジェリドはこうも私に関わろうとするのだろう?親切?いいえ親切なんて言葉では言い表せない。

それとも執着?なのかしら?又は嫌がらせ?な訳無いか?ジェリドさんに限って!

初めて会った時から、ジェリドはミズキに絡んできた。本気で泣かされた事もある。口だけは悪い男だ。よくダリル兄さんは、ジェリドと友達でいられるんだと思った事もあった。私が異世界から来たと分かってからは、物凄く親切にしてくれた。
最初はいこごちが悪かったが・・・・。
あれが、本当のジェリドさんなのだろう。

それにダリル兄さんに聞いたけどジェリドは二刀流だとか?
なぜだとかと疑問符が付くのは一度もジェリドの剣技を見た事が無かったから、それにあのモジャモジャ髭、私が何度言っても剃ってくれなかった・・・かっこいいと思っているのかしら?

それに、ダリル兄さんの妹のアイシャちゃんにデレデレと腕を組んで、鼻の下伸ばして歩いちゃって・・・女たらし!!のバカ!


なんか段々腹が立ってきたわ。胸がムカムカする。

「ジェリドさんのバカ!」

「誰がバカだって?ミズキ」

「女たらしのジェリドさんにきま・・・・って・・ます・・よ・・・ジェリドさん・・・どうして・・・まだ・・・ここに」
ジェリドの姿を確認すると 、ミズキの顔が見る見る青くなってきた。
反対にジェリドの方は、イタズラが成功した子供のように人の悪い笑顔になっている。

「いるのかって?・・・やっぱり、覚えていたなミズキ!危うくまた騙されるところだったよ」

なぜこうもタイミング良く現れるかな?

「俺がここに居るのがそんなに不思議か?ミズキ!」

ジェリドに腕を掴まれそのまま、王宮の奥まった一角の、さらに奥の薬師のイオルの実験室&部屋のこじんまりとした家に着いた。

「部屋を借りるぞ」
「どの部屋でも使え!」イオルが答えた。

温室にいるイオルに声をかけたジェリドはそのまま家の中に入って行った。

いつの間にこいつらは仲良くなったにだろうか?などと考えていたら、「今度こそ、話して貰うぞミズキ」と言ってテーブルにミズキを座らせて、ジェリドはミズキの隣に座った。

腕を引っ張られていたせいか?背中が痛い。


「・・・話すまで、ここから出ていけると思うなよミズキ」

唸るようなジェリドの声に、掴んだままのジェリドの手に、もう逃げ道がない事をミズキは理解した。

少しの沈黙に、やっとミズキは話し始めた。

「・・・・何が知りたいのですか?ジェリドさん」
「全部に決まっているだろう?」
「全部ですか」
ミズキはため息をついた。

「お金と権力が欲しかった私は、ダリル兄さんとジェリドさんを捨てて、ランスロットの愛人になり、今や、蝶よ、花よの生活を送っています。めでたし、めでたし!これが全てです。いい加減にしないと、衛士を呼んで!投獄しますよ、ジェリドさん」
ミズキは目を伏せる。

ミズキはジェリドを見る事が出来なかった。
ジェリドの目を見たら全て話して楽になりたくなる。

そう言えば、いつもジェリドに感情をぶつけてきた。心の奥底にある気持!元の世界に帰りたい気持をいつも受けてめてくれた。
ダリルではなく、ジェリドに!



「・・・どうしてもお前は、本当の事を話してくれないんだな?よく分かったよ、ミズキ・・・」

ジェリドはミズキの腕を掴んでいた手を離した。


「コレは、俺が仕入れた情報だ・・・・お前がおかしい行動をし始めたのは、お前の目が見えるようになってからだ。その頃は、ランスロット陛下が、即位してばかりの時だったな!
お前もギルドのミルディンと一緒になって俺をはめたよな!頭に血が上った俺はまともな判断ができなかった。
ここまでは合ってるよな?」

「・・・・・」

ジェリドは、ミズキの反応を見て、フッと笑った。
ミズキの顔が真っ青で、ハイと言っているようなものだった。
更に、ジェリドは話を続けた。

「だがどうしてお前は、そんな事までして俺やダリルから離れなければいけなかったかという事!それは、ここからは俺の考えだが、お前は、ランスロット陛下に俺とダリルの命を盾に脅された。違うか?」

ミズキは俺の言葉に震えるように左右に首を振った。無意識に首を振っているのだろう。
俺は確信した。この推理は正解だと。

「・・・バカな事を言わないで・・・どうして私がそんな事のために脅されなくちゃいけないのよ・・・話にならないわ」
立ちあがろうとするミズキを俺は無理やり腕を掴んで座らせた。
「ミズキ、まだ、話は終わっていない、それに今、立ちあがって俺から離れる事は、俺の推理は正しかったと言っている様なものだぞ!」

「そんなことない!」
ミズキは叫んだ。そして部屋を走って逃げて行った。


俺は、今のミズキで確信した。だってそうだろ?ミズキ!5年だぞ5年、とうとう突き止めた。どうしてお前が突然変わってしまった理由を!



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
恋愛
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

処理中です...