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ホタル

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2章

長い家出

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「お兄ちゃん?どうしたの?」
アイシャは、不思議そうに、ダリルの裾を引っ張っていた。
「ジェリド本当か?ミズキにあったのか・・・」
ダリルは、一瞬訳が分からないと言った風に惚けていた。

「あぁ、本当だ、またどこかの男を引っ掛けていたみたいだったよ」
忌々しそうに吐き棄てる。
ジェリドの脳裏には、さっきまで、ミズキと男のやり取りが、目に浮かんでいた。
ミズキは自分の手を、男に舐めさせていた。男の忠誠心を試しているのか?

ーーーーーーーーー忌々しい。

所詮、あの女はアバズレだったて事か?

「ジェリドさん?ミズキって誰?」

不意にアイシャに声をかけられたジェリドは、アイシャの頭を撫でて、なんでも無いよと優しく諭した。

ジェリドは、アイシャが見つかってから、ダリル以上にアイシャを可愛がっていた。
そのせいか、アイシャは、ジェリドによく懐き、何かあるとすぐに相談をしていた。

「ジェリド・・アイシャを少しだけ預かって貰えないか?」
「それは、構わないが、ミズキを探すというなら、俺は反対だ」
「すまんな、おまえに反対されても、ミズキの口から、自分の耳で、本当の事を知りたいんだ」
「悪い」と言って、ダリルは、ジェリドがミズキを見たという、闘技場に行って見たが、誰も居なかった。

まぁ当然か・・・ジェリドがミズキを見たと言ってから、だいぶ経つ、踵を返して闘技場を後にしようとしたら、ベールを被った、良いところのお嬢さんが、剣を持った騎士と何か揉めていた。

すぐに揉め事は終わったみたいだが、ダリルは、そのベールの女に釘づけになった!女の右耳には、ダリルが送った、真紅の炎のオーブのピアスを付けていた。

ーーーー忘れもしない。

ペンダントとして、ミズキに渡したが、ミズキは、まるで首輪みたいと言って、器用にピアスを作って右耳にかけるようになった。
正直、喜んでくれると思って、プレゼントしたペンダントだが、ミズキにとっては、気に入らなかったみたいで、ダリルは少しだけヘコんだ。

ミズキには、母親から貰った。2つのリングが付いているペンダントを大事に付けていた。
ミズキの父親の形見の結婚指輪と母親の再婚の時に必要の無くなった。結婚指輪だと言っていた。

おかげで、ダリルの送った、ペンダントは見事にミズキの手で、器用にピアスに姿を変えた。
そのピアスを付けていた女はを、目を凝らして見ると紛れもなく、ミズキ、その人だった。

ダリルは心の中で、歓喜した。

この5年間、突然消えてしまった彼女を探す事も出来ずにいた。

ミズキが消えて直ぐに、アイシャが見つかったからだ、
なんて、都合が良いんだ。あれだけ俺が探したのに、全然見つからなかったのに・・・。

アイシャは、記憶を失っていた、今もまだ記憶は戻ってい無い、小さな村の年老いた老夫婦に助けられてそのまま一緒に再会するまで暮らしていた。

小さなアイシャは、人買いから逃げ出して、増水した川に落ち、そのまま記憶を失なった様だった、何はともあれ、アイシャが見つかって本当に良かった。

それからは、アイシャの面倒を見ながら、いや、面倒を見ていたのは、ジェリドだったな。
ミズキが、消えてから、ジェリドは、必要以上に、アイシャを可愛がっていた・・・・。
ジェリドは、ミズキに対しての気持ちを、持て余していたのだろう、その反動で、アイシャを必要以上に可愛がっているふしがある。


それよりも、ミズキだ。
碧眼の男と一緒にいるのは何故だろう、あの男はミズキの何なのだろうか?

ダリルはミズキに気付かれないように、後を追った。
住んでいる所さえ見つければ、後は何とでもなる。

意外な事に、ミズキはギルドにはいっていった。

なぜ?ギルドなんだ?

ダリルは、じっとミズキが出てくるのを、物陰で待っていた。

案の定、ミズキはギルドから出てきた、さっきとは打って変わって、町娘の格好で、健康的に見える、それに、ミズキらしさが出て、ホッとする。

ミズキの隣のは、正直おどろいた、元カノのキャサリンと碧眼の男、三人で屋台を見て回って、ミズキは、楽しそうに、おいしそうに、祭りを堪能しているようだった。

キャサリンと碧眼の男に、食べすぎだと言われている様だ、ミズキにとっては、あれくらいまだ、腹八分目くらいだろう、可愛そうに、食べ物を、物欲しそうに見つめている。

俺が後で、何か買ってやるか?


思わず、笑いがこぼれた。

やっぱり、5年前と変わらない・・・・ミズキがいる。

ジェリドは、一体ミズキの何を見ていたんだか?

まぁ、あいつは、一度、女でひどい目に合っているから、しょうがないか。

それよりも、なぜミズキは、出来もしない演技をしてまで、ジェリドを騙さなければ、いけなかったかだ。

物思いにふけっていると、

ミズキたちに向かって、粘着質の視線が向いている。

ミズキたちも気づいたのだろう、三人ともバラバラに、別れた。
碧眼の男は、俺の事に気が付いてるようだった。

当然、俺はミズキについていった。
どうやら、ギルドで待ち合わせのようだ。

それにしても、ミズキは危なっかしい、いくら近道だからって、裏路地に入り込むバカはいない。

あとで、説教だ!

案の定、男にナイフを突きつけられている。

すぐに、ミズキを助けるのは簡単だが、ミズキに対してのお仕置きもかねて、少しだけ、怖い思いすれば、二度と、夜道に裏路地に入るというバかな真似はしないだろう。

なんて思っていた、俺は、ミズキの性格を忘れていた。


「そんな訳あるかーーー!」
とさけんで、ナイフを持っている男に、見事な頭突きを食らわせていた。
挙句の果てには。
「ざまぁ~~みろ!」
鼻血を噴いている男に、ミズキの百万ドルのドヤ顔を向けている。

バカ!止めろミズキ、火に油を注ぐな!
俺は頭を抱えたくなった。

ミズキに襲い掛かる、ナイフの男とミズキの間に入り、中腰のいちから、剣を抜いて、立ちあがる反動で、ナイフを持っている、腕を切り落とした。

一瞬で血の海にした。

「うちの妹に手を出すんじゃねぇ」男を見下しながら、俺は呟いた。

キョトンとした、ミズキの顔が、また、何とも可愛い。


「お帰り、ミズキ」
おれが、笑って言うと、ミズキは泣きながら、笑顔で、
「ただいま、ダリル兄さん」

長い、家出だったなミズキ。

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