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君が恋しい7

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「こっ、こんばんはクロード」
マリアの声にクロードの鼓動が『とくん』と震える。

そう、この声を聞きたかった。

マリアの声はクロードの荒れた心に染み渡る。
今まで黒一色のクロードの世界がマリアの声で色がつき始める。

「マリア・・・」
クロードの口から溢れる名前は愛しい妻の名前だった。

マリアでないと何も感じない。
マリアしかいらない。
色の付いた世界を取り戻す。
マリアの声を聞いて再度確信する。

手放す事なんて出来ない。

マリアとの離婚が成立した事を聞かされてから、クロードの心から色が抜け落ちた。

クロードを抜きで離婚を教会に申し出た父親、そして自分の思い通りにならないと、自分は不幸だと訴える母。

共に嫌悪しか湧かない両親。

更に追い討ちをかけるように、家令はクロードの為と言いながら妻であるマリアを見下していた態度に猛烈な怒りが湧いて殴り倒し、そのままマリアを探しに向かった。

その後はマリアを探し回った後、シュタール伯爵家に赴きマリアが実家にいる事に一部の望みをかけたが、マリアは居ないどころかシュタール伯爵にもマリアを諦める様に言われる始末。

クロードの望みは呆気なく砕け散った。

一番考えたくない場所に来た。
カルバンが贔屓にしている宿の『仔羊亭』。

気持ちを落ち着かせてから宿に入ろうとしたところ、ドアが勝手に開いたと思ったらマリアが出てきた。

・・・言葉が出てこない。
聞きたいことは沢山あった。

マリアの顔を見て、マリアの声を聞いて、やっと息が出来た様な気がした。

今までど言う風に息をしていたかわからないくらい苦しかった。

マリアを連れて帰ろう。
全てはマリアを家に連れ帰ってからだ。

決意と同時に言葉をマリアにかけた。
「マリア帰るぞ」

マリアの腕を取ろうとして、クロードの目がまず行ったのはマリアの胸元だった。

ボタンが外れた胸元にはマリアの膨よかな胸の谷間があり手を伸ばせばマリアの柔らかな胸に触れる事が出来る。

頭がうまく働かない。クロードは手を伸ばせないでいる。

マリアの陶磁器の様な白い胸元には小さな赤い痣が2箇所付いていた。

赤い痣にクロードの胸の奥が嫉妬でカッと熱くなる。

誰に付けられた?
カルバンにその白い肌を触れさせた?マリア。

マリアとカルバンは血が繋がっていない。

シュタール伯爵のマリアは養子だった。

クロードはマリアとの離婚理由を思い出した。

離婚が成立した途端にカルバンに会いに行ったのは偶然だったのだろうか?

やはり机にあったカードに書いてあった様にマリアとカルバンは深い関係なのか?

もしかして俺との結婚自体がマリアにとってただの茶番で最初っからこの結婚が隠れてみのだったのではないだろうか?

好きだと言ってくれたのも茶番。
もしそれが本当なら・・・。

許さない!
許せるわけがない!
どうしてくれようか。

クロードはマリアの腰に手を伸ばし、マリアの唇を貪った。

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