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約束の朝
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「すみませんでした。」
僕はいま、自分の犯した罪を償っていた。
お風呂から上がった彼女は洗面所から出てくるなり、僕を正座させた。
「あなたは自分がなにをしたのか、わかってるのかしら。」
冷ややかな目で僕を見ながら、僕のことを追い詰める。
一方の僕は、彼女の方を見ることができず、ただただ下を向いている。だから、冷ややかな目かどうかはわからないのだが、確認するまでもないだろう。
「はい。すみませんでした。」
「あなたは、あれほど言っておいたのに、人がお風呂に入っているところを堂々と覗き込んだわね。」
「はい。」
「あれほど堂々と覗きをする確固たる理由をきかせてくれるんでしょうね。」
「いや、、、」
「聞かせてくれるのよね。」
「はい。」
「えっとですね。君がお風呂に入ってる間に、寝落ちしてしまいまして。気がついたら、1時間くらい経ってて、君がまだ、お風呂から出てきてないのが変だなーっておもったら、確認せずにはいられなくて。」
顔を上げ、ちらっと、彼女の様子を伺ってみる。彼女は相変わらずの形相だった。
「それで?声をかければ済んだのに?わざわざ?お風呂まで押しかけてきて?のぞきなんて真似までしたと。」
「いや、だからそれは、、、」
「それは?、文句ですか?」
「すみませんでした。」
「はぁ。もういいや。しょうがないから、許してあげる。」
「ありがとうございます。」
こうして、長い正座の時間はようやく終わった。
「ん、なんかお腹空いたわね。」
「ちょっこっとなら作っといたよ。」
「なかなか気がきくじゃない。」
「じゃあ、軽く夜ご飯にしようか。」
僕は少し痺れる足でなんとか立ち、気づけば何時間も経ってしまっているおにぎりと卵焼きをレンジで温めなおそうとした。
「あっ、いいわよ。そのままで。」
叱りタイムは本当に終わったようで、彼女は幾分か気さくになっている。
「いいの?別にあっためるくらいなんでもないけど。」
「いいのよ。私、お弁当とかの冷えたご飯好きなのよ。」
「それなら、これで。」
レンジから温めずに取り出して、お皿を机の上に置き、ラップを外す。
「それじゃあ、いただきます。」
「どうぞ。じゃあ僕も。」
結局あっためなかったおにぎりを頬張る。ちなみに具は冷蔵庫の中に唯一あったおかか。
なんだかんだ色々あったものの、そんなに長い間一緒にいるわけじゃない彼女とこうして僕の家でご飯を食べているのは不思議な気持ちだ。
そんなことを考えることができるほどには、会話がなく、物悲しい気がしたので、いつのまにか切れていたテレビをつけた。
そして、気づけば、12時を超えていた。
時計だってあったのに、気がつかななかった。地獄の1日はあっさりと、終わっていたのだ。
僕は彼女を殺さずに済んだという安堵から、涙が溢れていた。
「ねぇ、なんで泣いてるのよ」
彼女に言われるまでわからなかった。自分が泣いていることに。確認のために人差し指で目をこすると本当に涙が流れていた。
「いや、なんでもないよ。」
「なんでもないことないでしょ」
「シンデレラの魔法が解けたんだ。それが嬉しくて。」
彼女もまた時計を確認し、12時が過ぎていることを知った。
「そう、だったのね。ありがとう。守ってくれて。よく頑張ってくれたわね。本当にありがとう。」
そのねぎらいの言葉が何よりも嬉しかった。自分のしてきたことが意味のあることだったのだと思えたから。
「、、、ぅ、、ぅぅ、、、、」
「よく頑張ったね。」
そう言って彼女はそっと近づき、僕の頭を撫でた。
「ぅ、、、、、」
本当に、本当に助かって良かったと心から思った。
僕はいま、自分の犯した罪を償っていた。
お風呂から上がった彼女は洗面所から出てくるなり、僕を正座させた。
「あなたは自分がなにをしたのか、わかってるのかしら。」
冷ややかな目で僕を見ながら、僕のことを追い詰める。
一方の僕は、彼女の方を見ることができず、ただただ下を向いている。だから、冷ややかな目かどうかはわからないのだが、確認するまでもないだろう。
「はい。すみませんでした。」
「あなたは、あれほど言っておいたのに、人がお風呂に入っているところを堂々と覗き込んだわね。」
「はい。」
「あれほど堂々と覗きをする確固たる理由をきかせてくれるんでしょうね。」
「いや、、、」
「聞かせてくれるのよね。」
「はい。」
「えっとですね。君がお風呂に入ってる間に、寝落ちしてしまいまして。気がついたら、1時間くらい経ってて、君がまだ、お風呂から出てきてないのが変だなーっておもったら、確認せずにはいられなくて。」
顔を上げ、ちらっと、彼女の様子を伺ってみる。彼女は相変わらずの形相だった。
「それで?声をかければ済んだのに?わざわざ?お風呂まで押しかけてきて?のぞきなんて真似までしたと。」
「いや、だからそれは、、、」
「それは?、文句ですか?」
「すみませんでした。」
「はぁ。もういいや。しょうがないから、許してあげる。」
「ありがとうございます。」
こうして、長い正座の時間はようやく終わった。
「ん、なんかお腹空いたわね。」
「ちょっこっとなら作っといたよ。」
「なかなか気がきくじゃない。」
「じゃあ、軽く夜ご飯にしようか。」
僕は少し痺れる足でなんとか立ち、気づけば何時間も経ってしまっているおにぎりと卵焼きをレンジで温めなおそうとした。
「あっ、いいわよ。そのままで。」
叱りタイムは本当に終わったようで、彼女は幾分か気さくになっている。
「いいの?別にあっためるくらいなんでもないけど。」
「いいのよ。私、お弁当とかの冷えたご飯好きなのよ。」
「それなら、これで。」
レンジから温めずに取り出して、お皿を机の上に置き、ラップを外す。
「それじゃあ、いただきます。」
「どうぞ。じゃあ僕も。」
結局あっためなかったおにぎりを頬張る。ちなみに具は冷蔵庫の中に唯一あったおかか。
なんだかんだ色々あったものの、そんなに長い間一緒にいるわけじゃない彼女とこうして僕の家でご飯を食べているのは不思議な気持ちだ。
そんなことを考えることができるほどには、会話がなく、物悲しい気がしたので、いつのまにか切れていたテレビをつけた。
そして、気づけば、12時を超えていた。
時計だってあったのに、気がつかななかった。地獄の1日はあっさりと、終わっていたのだ。
僕は彼女を殺さずに済んだという安堵から、涙が溢れていた。
「ねぇ、なんで泣いてるのよ」
彼女に言われるまでわからなかった。自分が泣いていることに。確認のために人差し指で目をこすると本当に涙が流れていた。
「いや、なんでもないよ。」
「なんでもないことないでしょ」
「シンデレラの魔法が解けたんだ。それが嬉しくて。」
彼女もまた時計を確認し、12時が過ぎていることを知った。
「そう、だったのね。ありがとう。守ってくれて。よく頑張ってくれたわね。本当にありがとう。」
そのねぎらいの言葉が何よりも嬉しかった。自分のしてきたことが意味のあることだったのだと思えたから。
「、、、ぅ、、ぅぅ、、、、」
「よく頑張ったね。」
そう言って彼女はそっと近づき、僕の頭を撫でた。
「ぅ、、、、、」
本当に、本当に助かって良かったと心から思った。
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