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卒業と彼女
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卒業式の日。
僕は今日3年間過ごした柳林高校を卒業する。
でもこれといって深い思い入れはない。友達も少なかったし、いろんな行事もテキトーにやり過ごしてきた。
それでも数少ない友達とは仲がよかったし、そりゃあ、まぁ気になっている子だっていた。
学校も今日で通うのは最後だという日にクラスメイトの女子と最初で最後の会話を交わした。
その子は僕が気になっていた子だった。僕と同じようによく人と話すような子ではなく、内気なタイプだった。そんな子が僕に、
「話したいことがある」
終業式が終わり、最後のホームルームも終わって帰ろうとしていた時に呼び止められた。
「話って何?」
人がいないところへと移動し彼女と2人きりになる。なぜかドキドキはしなかった。なんとなくふわっとしたような、どこか現実味のないような感じがして。
「最後に言っておこうと思って…」
沈黙の時間。彼女の言葉を待つ。この時、ようやく自分がどんな状況にいるのかがなんとなくわかった。1度状況が理解できると妙に意識してしまう。もしかしたら…と。
「ずっとあなたが好きでした。」
彼女の口から出た言葉。僕は驚かずにはいられなかった。頭がパンクしそうだ。もう何も考えられない。
「えっ?」
「いきなりごめんなさい。でも伝えておきたくて。」
少しずつ思考が戻る。気になっていた子からの突然の告白。自分の胸の内にとどめておこうと思っていたのにこんなことが起こるなんて。僕は驚きと同時にものすごく嬉しかった。
「その、僕もあなたのことが気になってました」
「本当に?」
「うん」
「もっと早く伝えてればよかった。そうすれば学校生活が楽しくなったのに…」
「名越さんはどこの大学いくんだっけ?」
「地方の大学日常いくんです。だから今日で会うのも最後です。」
「そうなんだ」
ふたたび沈黙。嬉しい告白のはずなのにこんなにも切なくなるなんて。こんなことなら聞かなければよかった。わずかにそんなことを思ってしまった。
「でも、やっぱり伝えられてよかった。」
そういうと僕の唇に優しくキスをして、駆け足で走り去っていった。彼女の唇は柔らかく、わずかに見えた顔からはなみだがこぼれ落ちたように見えた。
これが僕の最初の恋。一瞬だったその瞬間を今もなお忘れることはない。
いつかその子にまた会えることを信じて。
いつもと同じ日常へと向かうのだった。
僕は今日3年間過ごした柳林高校を卒業する。
でもこれといって深い思い入れはない。友達も少なかったし、いろんな行事もテキトーにやり過ごしてきた。
それでも数少ない友達とは仲がよかったし、そりゃあ、まぁ気になっている子だっていた。
学校も今日で通うのは最後だという日にクラスメイトの女子と最初で最後の会話を交わした。
その子は僕が気になっていた子だった。僕と同じようによく人と話すような子ではなく、内気なタイプだった。そんな子が僕に、
「話したいことがある」
終業式が終わり、最後のホームルームも終わって帰ろうとしていた時に呼び止められた。
「話って何?」
人がいないところへと移動し彼女と2人きりになる。なぜかドキドキはしなかった。なんとなくふわっとしたような、どこか現実味のないような感じがして。
「最後に言っておこうと思って…」
沈黙の時間。彼女の言葉を待つ。この時、ようやく自分がどんな状況にいるのかがなんとなくわかった。1度状況が理解できると妙に意識してしまう。もしかしたら…と。
「ずっとあなたが好きでした。」
彼女の口から出た言葉。僕は驚かずにはいられなかった。頭がパンクしそうだ。もう何も考えられない。
「えっ?」
「いきなりごめんなさい。でも伝えておきたくて。」
少しずつ思考が戻る。気になっていた子からの突然の告白。自分の胸の内にとどめておこうと思っていたのにこんなことが起こるなんて。僕は驚きと同時にものすごく嬉しかった。
「その、僕もあなたのことが気になってました」
「本当に?」
「うん」
「もっと早く伝えてればよかった。そうすれば学校生活が楽しくなったのに…」
「名越さんはどこの大学いくんだっけ?」
「地方の大学日常いくんです。だから今日で会うのも最後です。」
「そうなんだ」
ふたたび沈黙。嬉しい告白のはずなのにこんなにも切なくなるなんて。こんなことなら聞かなければよかった。わずかにそんなことを思ってしまった。
「でも、やっぱり伝えられてよかった。」
そういうと僕の唇に優しくキスをして、駆け足で走り去っていった。彼女の唇は柔らかく、わずかに見えた顔からはなみだがこぼれ落ちたように見えた。
これが僕の最初の恋。一瞬だったその瞬間を今もなお忘れることはない。
いつかその子にまた会えることを信じて。
いつもと同じ日常へと向かうのだった。
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