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異世界での危機

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俺たちは一週間かけて、今の自らの体の調整や、能力上昇で得た能力を確認していた。
「いやぁ、マジでビビったわ。」
「モール殿が、急に天啓を発動したのが悪いですよ。」
「そんなことわかってるよグラフィオ。」
「でもぉ、天啓まで強化されるなんてぇ、驚きですねぇ。」
「はぁ、俺はモールよりもお前に驚きだよ。メジェド。」
「え、そうですかぁ?」
「そうですかぁ?じゃねぇよ。なんでお前だけちゃっかり天啓持ってるんだよ!」
「そんなのぉ、知りませんよぉ。」
「これこれ、カミヨ殿もそんなにカリカリしないでくだされ。しかし、どう言う経緯でその天啓を、獲得したかは気になりますね。」
「それぐらいなら別に良いけどさ。」
「それじゃあ、どういうことだ?」
「えっとぉ、ルカーノさんに二つ名をもらったその日の夜なんですけど。えっとぉ。寝てたらぁ、いつのまにか真っ白い空間にいてぇ、何も見えないのにぃ、何かいる気配があるようなぁ、ないようなぁ。それにぃ、自分の気配もどんどん薄くなってきていてぇ、どこかに消えてしまいそうなもの でしたぁ。どうしようかなぁってぇ、考えてるとぉ、何処からともなくぅ、声がきこえたんですよぅ。そしてぇ、目覚めたらぁ、天啓を得ていたぁ?ってぇ、感じですぅ。」
「恐らくそれは、神メジェドだな。」
「ルカっちゃんに激しく同意。そんなやり方するのは神メジェドしかおらんと思うわ。」
「なぁ、その2人が言っている神メジェドって誰のこと?」
「神メジェドは俺たちの世界にいた神の一柱。異名【打倒者】を持ちし、謎の神だよ。」
「ルカっちゃんはその神名から、メジェっちゃんの名前を取ったんだろうね。」
「嗚呼、そういうことだ。だから、神メジェドとメジェドの親和性が高くなって神メジェドが干渉してきたって事じゃない?」
「なるほどのう、これは面白いわい。」
「しかしそれにしても、メジェドの天啓は馬鹿だねぇ。」
「確かに、攻撃に全振りしてるのかと思いきや、ステルス能力に目からビーム?やり過ぎやろ。」
「しかし、そうでもないんだな。メジェドがもらった天啓【打倒者】はメジェドの能力を擬似的に使えるみたいなものだろうな。この天啓についている能力は全て神メジェドの能力だしな。」
「ま、戦力増強にはなったんだし、よかったじゃん。」
「それにしても、ここには長居し過ぎたかな。明日でちょうど一週間だし、此処ももう、離れるか。」
「すこしぃ、名残惜しいですけどぉ、仕方ないですねぇ。」
「蟲魔人の姿でも普通に喋れるようになったし、もう長居はいいだろう。」
「それでは、出発ですか?」
「嗚呼、みんな問題ないなら、また何処かに出発だ。」
「俺たちは問題ないぜ。」
モーちゃんの言葉にみんなが頷いた。
「よし、それじゃあ、出発だ!!」
こうして俺たちは何処へ行くともなくただ、道なき道を歩いていくのだった。
出発してから、二日が経ったある日のこと。俺たちの前に奴が現れた。
「おいおいおい、こりゃあ無いぜ。」
「こんな所におるとは、主らが居るのは、もっと南。カウカガン火山じゃろうに。」
『我は龍王様の使い。不自然な蟲魔王誕生に何者かの策略があるのではと、思い馳せ参じた訳だが、成程蟲魔王には【全知者】お前がいたとはな。調停者が居た場合我は龍王様の命により、お前らを殺す。』
ちょっと、いきなりな展開過ぎない!?
「仕方ない、俺たちもただで死ぬとは思わない事だな!行くぞみんな!」
「ルカっちゃんに任せて俺たちは傍観?あり得ないね。あいつの首を切れるとしたらこの俺しかいねぇ!どうにかして彼奴の隙を作ってくれ!」
「俺は援護をする。グラフィオは俺の補佐に着いてくれ!メジェドは相手の隙を見つけては攻撃を、あとは各自判断だ!」
「了解!」
「分かりましたぁ、やりましょう!」
しかし、制空権を相手に取られてるのは厄介すぎる。どうにかして、彼奴を下ろせないか。
すると、突然奴の体が数メートル下に下がった。なぜだ?攻めてきたのか?
よくみると、体の上に輪郭だけの何かが居た。考えてる暇は無い。
「今が好機!攻め立てるぞ!」
「「応!!」」
カミヨが飛び込んだモールの事を補佐する。モールが狙うは首……ではなく両翼だった。彼奴はモールが飛び込んできたのは自らの首狙いだと思ったのか……急いで首を守ろうと翼を前に出しより高く羽ばたこうとする。しかし、モールにとってこれは好機であった。モールは天啓【断絶】を使用し、普通では切れない翼を根本から切り落とした。
当たり一帯の空気が破裂した。ように聞こえた。翼を切り落とされた【赤知蛇種】(レッドドラゴン種)は暴れ狂い、殺意をモールのみに注ぐ。その結果起こるのは、メジェドから来る、強烈な一撃。カミヨから放たれる高密度の土弾。グラフィオからは、ただならぬ観察を………
その時【赤知蛇種】は思い出した、偉大なる龍王の言葉を……
『【全知者】がもし相手に居たのなら一つ忠告だ。【全知者】が本気を出せば一目見ただけで情報の8割は読み取られる。それはこの我でも例外では無い。さらに、我が知る【全知者】よりも強く厄介になっておるであろう。気を付けて相手をせよ。』
そうだ、我は1人では無い!龍王様のお顔に泥を塗れるものか!
『我が同胞よ、集い集い我前の敵を葬り去れ!!【知蛇の集落】!!』
その時、空から、川から土壌から夥しい数の知蛇が現れた。
「これは、やばいな。」
「【赤知蛇種】【青知蛇種】(ブルードラゴン種)【土石知蛇種】(アースドラゴン種)その眷属の【土無知蛇種】(アースワーム種)、計5000以上か………」
「これってぇ、勝てますかねぇ?」
「勝てる勝てないじゃのうくて、勝たなきゃならんじゃろうなぁ。」
「嗚呼、その通りだ。この戦いではどちらかが全滅するまで終わらねぇ。」
「さぁ、始めようか!喧嘩を売った事後悔させてやれ!!」
「「オォォォォォォォォォォォ!」」
『ほざけ!我等が一同、奴等完膚なきまでに叩き潰せ!!』
「「GAAAAAAAAAAAAAAAAA!」」
両方の雄叫びがぶつかり合い、衝撃が生まれる。それはまさに、その戦いに入れるかどうかの選定のようであった。知蛇種の数匹が飛ばされたが、何ら戦闘に変わりない。
最初に飛び出したのは、知蛇種最高峰の肉体をもつ、アースドラゴンであった。
アースドラゴンはその肉体を惜しみなく発揮した面での突進。破壊力については他の攻撃よりも弱いが吹き飛ばしの効果がついてあるスキルなので、当たったら最後、上空に飛ばされて他のドラゴンの格好の的になる。
しかし、生半可な攻撃ではアースドラゴンの蛇鱗にすら、傷をつけることは出来ない。だから、こっちが出すのは当然、グラフィオである。なに、急いで倒す必要は無い。そいつを行動不能に出来るのならば、そちらの方が利己的だ。
続いて、こちらに飛びかかってきたのはアースドラゴンと一緒にきたアースワームであった。アースワームは地面を泳ぐように移動し、敵の周辺に現れ、薙ぎ払いや突進、土系統を使い攻撃してくる。まぁ、ドランゴンの眷属と言っても、ただの雑魚。なので、行ってもらうのはメジェドである。最速で勝ってくれることを信じてる。
最後の相手は俺らが想像以上に強かったことから、残りのレッドドラゴン、ブルードラゴンの二種混合で俺たち3人に襲いかかった。
結果的に言えば俺たちの勝利で終わった。
まぁ、完勝、圧勝と言うには傷を負いすぎたけどな。流石は【知蛇種】、ひと時でも気を抜けば負けていたのは俺たちだろう。
しかし、このレッドドラゴン。最後になんとも不安な言葉を吐きやがった。
~『我らを殺したとて、我らは最下位。これからは我らよりも上位の存在が……』~
この後はモールが首を切り落としたため、聴けなかったが……【知蛇種】よりも上位の存在か………おそらくは【竜種】(ドラグーン種)もしかして、【龍王】が側近。【龍種】(リュウ種)かもな。
【龍種】がきたのなら、俺たちは全滅だろうなぁ。グラフィオ説明だと【龍種】とは、この世界の【観測者】。【調停者・龍王】に仕える、調停者を除く世界最古の生物にして、最強の一角。
生物としての存在。根本から俺たちとは別次元の生物らしいからな。
よし、ようやく進めるな。
「治療もある程度のところまで終わった事だし行きまっ「GAAGYAAA!!」なっ!?」
「おいおい、もうおかわりは勘弁だぜ。」
「まさか、【竜種】が来るとは………龍王めこれではまるで破壊そのものでは無いか……皆の者!かの【竜種】先までの【知蛇種】とは次元が違い過ぎる!心してかかるのじゃ!」
こうして、本当の危機が俺たちを襲った。
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