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異世界最強の肉食蟲

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魔王宣言をしたその次の早朝、俺はスピリット・ロークストの里を出た。
「おまちくだされ!!この老いぼれの知識をお使いください。」
そう言いでてきたのは、里長のスローだった。
「しかし、里長。貴方はこの里の長でしょう?」
「そのことなら、心配は入れませんぞ。我が息子にこの里の命運は授けましたから。」
「そういうことなら、よろしくお願いします。スロー」
『スローが居れば、知識面ではもう心配は要らないな。』
「よかったぁ、やっとぉ、まともな仲間がぁ、できたぁ。」
「この老いぼれ、この身尽き果てるまで、どこまでもお付き合いしましょう。」
これで、3人目?3蟲目?の仲間ができた。
里を離れてから、数日。俺はみんなに魔王の条件を話した。
『なるほど、四徨王か………』
「四徨王………全く聞き覚えの無い言葉ですね。」
「うーむ、ということは、自分達は四徨王の一人として考えた方がいい感じですかのう?」
『そうだな、確かに四徨王の中に俺たちの特徴が入っている。俺が四徨王だと仮定すると、【地徨王】だな。」
「そうなると、わしは【贒徨王】ですな。」
「だったらぁ、自分はぁ、【隱徨王】ですかぁ?」
「残るは【武徨王】か………」
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【魔王覚醒者物語/蟲魔王物語】が進みました。
【魔王覚醒者物語/蟲魔王物語/四徨王】の【地徨王/贒徨王/隱徨王】が自覚したため、残る【武徨王】が自覚すると、自動的に次の物語へと移行します。
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「ぐっ!頭の中に直接か!」
『どうした!?カン!』
「もしかして、頭の中に声が直接聞こえましたか?」
「嗚呼、聞こえた。」
「こわぁ、」
『頭の中に直接声が聞こえた?どういう事だ?』
「恐らくそれは、【案内人】の声ですね。」
「【案内人】?」
「えぇ、案内人とは物語覚醒者の物語を円滑に進めてくれる物です。簡単に言いますと、物語覚醒者のあらゆる補助をしてくれます。それで、何が聞こえましたか?」
「そうだな、ウェルにレーテー、スローは四徨王で間違いは無さそうだ。【魔王覚醒者物語/蟲魔王物語/四徨王】とやらが、進んだからな。」
「ということはぁ、後は武徨王を探せばぁ、いいってことですかぁ?」
『恐らくそうだろう、武徨王が仲間になり、自覚した時に蟲魔王物語の四徨王の章は進むんだろうな。』
「しかし、武徨王ですかぁ。どの種族なんでしょうね?」
「うーん、肉食蟲じゃないのぉ?」
『肉食蟲だとすると、ふと思い出すのは、【蜘蛛種】(シュピンネ種)【蟷螂種】(マンティス種)【針蜂種】(アベイユ種)の三種くらいか?』
「そういえば、ウェルは【蚯蚓種】(ウェルミス種)でレーテー【隠翅種】(プテロン種)でスローは【飛蝗種】(ロークスト種)?」
「それは違いますね。わしは一応【精霊種】(スピリット種)に分類しますね。」
「ということは、蟲魔獣では無い?」
「いや、蟲魔獣ではあります。一応カンタロスは【悪魔種】(トイフェル種)ですよ?」
「「???」」
『スロー、無事にカンもレーテーも混乱したところだ。そんな回りくどい言い方しないで、簡潔に言ってやれ。』
「ふふっ、そうですね。蟲魔獣には例外がおりまして、精霊種でありながら、蟲魔獣の者、即ち私達ですね。この場合、蟲魔獣というには、精霊種の特徴が強く、精霊種というには、蟲魔獣の特徴が強い。しかし、世界樹から生まれ出でる者は精霊種として分類されるため、分類上は精霊種と、なっています。」
「それでどっちなんだよ!?」
「そうですねぇ、どちらでも無いが正解ですかね。我々はどちらにも似ていて、どちらにも似ていない。でも、確か人間種が言っていた言葉で私達を【聖蟲種】(ホーリーベスティヨル種)と呼んでいましたね。」
『そうだな、昔人間種の国を襲った時に俺たちは【蟲魔獣】と呼ばれていたのに、カンタロスだけ【魔蟲種】(デモンベスティヨル種)と呼んでいたから、聖蟲種と魔蟲種は、蟲魔獣とは別の存在として知られていたのだろう。』
「と言う事はぁ、一応蟲魔獣に限りなく近く遠い新たなる存在をという事でぇ、いいんですかぁ?」
『その通りだ。まぁ、もっと大きく分類したら、俺たちは【昆虫種】(インセクト種)だから問題はないだろう。』
「ハハッ!それは大きすぎるんじゃないか?まぁ、良いけど。しかし、それにしても生物一匹もいねぇな、ここ。」
『そうだな、何か変だ。』
「えぇ、ここ一帯は【獣魔】が多く分布しているはずですけども。」
「まさか、ここ一帯に獣魔が逃げ出すほどの強敵が来たのか?」
『嗚呼、カン。どうやらそうみたいだ。」
ウェルがそういうと、目の前の草むらから、大型の蟲魔獣が出て来た。
「ようよう、お前達が蟲魔王御一行様か?」
「なんだかぁ、面白くなってきましたねぇ。」
「そうだと言ったら、どうするつもりだ!【蟷螂種】」
スローがそう言うと、群れの奥から、全身が純白、瞳は血を求めるかのような紅の他よりも数段でかい蟷螂種が出てきた。
「そんなの、どうもしないですよ。強ければ。」
「なるほどな、アルビノ種か。」
『カン、そのアルビノ種ってなんだ?聞いたことが無いぞ。それに、あの蟷螂種は俺の記憶の中でも見たことが無い。』
「アルビノ種とは、生物の中から出て来る、突然変異個体の一種だ。」
「なるほど。あやつのような者はアルビノ種と言うのですか。」
『スローは何か知っているのか?』
「えぇ、およそ3000年前に一度だけ見たことがありまして、その時はカンタロスとスピリット・ロークストが同盟を結ぶきっかけとなった戦争でして。」
『なに!?カンタロスとスピリット・ロークストの同盟のきっかけ!と言う事は、初代蟲魔王の進撃の時か!?』
「えぇ、そうです。初代蟲魔王・ゼクトの直属の配下。【白影】のアラクネー。名前までは知りませんが種族は【蜘蛛種】の頂点の一つ【アラクネー】それに奴の姿は、紅の瞳に体色は白。周りのアラクネーとは違い異質な存在だった。」
『それで、そいつはどの位強かったんだ?』
「こういえば、わかりやすいだろう。全盛期の私とその頃に最強と称されていたカンタロス、の二人組でやっと撃退出来た。しかしそれは、私達は瀕死、アラクネーは体の半分が消し飛んだだけ。その傷はアラクネーの肉体にすればかすり傷と同等。後数分で傷が塞がるものだった。しかし、アラクネーの上司であるゼクトが撤退を命じ、私達は生き残った。」
『なるほどな、即ちアルビノ種と言うのは、全てにおいて規格外の生物か。』
「それで、お話は終わりましたか?終わりましたのなら、蟲魔王と蟷螂種最強の俺での、一騎討ちを希望しますよ。」
そう言いながらも、ずっと俺のことを観察していた。しかし俺も奴のことをずっと観察していた。
「嗚呼、良いだろう。受けて立つ。」
『ちょっと待て。相手は蟷螂種だ、鋭利な鎌を巧みに使いこなす、カンタロス、スピリット・ロークストを抜いての蟲魔獣の中では最強の種だぞ?それも、相手はアルビノ種だ。どんな能力を使うかも分からん。』
「大丈夫、相手が最強の矛だとしたら、俺は最強の盾。矛如きが盾を打ち破ることなんて出来るはずは無いんだよ。それに、相手の立ち振る舞いから大体の強さは分かる。彼奴の力じゃ俺の防御力には届かねぇよ。」
『それなら、良いんだが。』
「よし、始めようか!俺こそが蟲魔王だ!お前の一騎討ち、受けてやる。」
「へへ、そう来なくっちゃ!」
こうして俺はアルビノ種である蟷螂種と一騎討ちをすることとなった。
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