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第8章 東方諸島セイホウ王国
第8章第002話 ・閑話 ユルガルム再訪
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第8章第002話 ・閑話 ユルガルム再訪
・Side:ツキシマ・レイコ
そろそろ朝夕には涼しい秋の気配が漂う頃。アイズン伯爵の護衛で、ユルガルムに出発します。
ユルガルムに嫁いだアイズン伯爵の娘であるターナンシュ様が女児を出産されたのが夏。…春前には蟻騒動がありまして、そのとき以来のユルガルムですね。
アイズン伯爵の奥さんであるマーディア様が、蟻騒動の時にユルガルムを訪れたまま、ターナンシュ様の付き添いとしてユルガルムに滞在を続けてましたので。名目としては、冬が来る前にそのお迎えとなります。
残念ですが、クラウヤート様は今回お留守番。まだ中学生くらいの年齢ではありますが、父親のブライン様について領の業務をいろいろ任されるようになって。特に収穫の秋を前にしていろいろ忙しいんだそうです。…この時期にアイズン伯爵が出かけるしわ寄せとも言います。
ちなみに今回はマーリアちゃんも同行です。
名目上は、エルセニム王女として、対魔獣対策の一環としてムラード砦の視察ですが。…まぁ秋のユルガルムに一緒に旅行でもと誘ったわけです。
セレブロさんに、フェンちゃん、オルト君も同行です。さすがに三頭が同じ馬車に載るのはスペース的に無理がありますので。セレブロさんは馬車に併走して歩きで、仔供達も基本は歩きですが、疲れたときに馬車に乗せています。
マーリアちゃんはだいたい、騎士よろしくセレブロさんに乗せてもらっています。ときどき隊列から外れて、街道脇の草原や森の中を駆け回ってきています。仔供達も出かけるのは初めてで、はしゃいでいますね。
最初は銀狼達に少しびびっていた馬たちも、二日目には駆け回っているセレブロさん達に慣れたようで。隣で水を飲んでいても気にしなくなりました。…元が猫だからかな?
セレブロさんたちは、護衛や騎士たちにも人気で、食事時に干し肉などを与えようとするのに注意するほど。猫にしょっぱいものはだめですから。
逆に、汗をかける馬には塩は必須と言っていいくらいで。馬に関わる人は、岩塩や塩を固めたものをポケットに常備しているくらいですが。その感覚でしょっぱいものをあげようとしてしまうんですよね。
今回はまず王都に寄り、マーリアちゃんとセレブロさんも一緒に王宮に一泊。同じく夏に生まれたカステラード殿下とアーメリア様の長女トゥヴァレーヌ様、そしてクリステーナ様が里親になったケルちゃんにも会って。そこからユルガルムに向かいます。
馬車の中にて。アイズン伯爵、なんかそわそわ…というより焦ってますか?
「ナインケルのじじいが孫姫を洗脳しているかと思うと、いてもたってもおられん!」
洗脳はどうかと思います。もちろんユルガルムで新しく生まれた子も、アイズン伯爵の孫でもありますので、かわいがる権利は同等で間違いではありませんが。
ちなみに。アイズン伯爵の嫡男ブライン様の奥さんメディナール様もご懐妊中。年明けくらいに男子を出産予定ですので、孫がまた増えるわけですが。…女の子の孫は今回が最初、じじいとしてはやはり構いたくて仕方ないようです。
シュバール様も分も合わせて、お土産もいっぱいありますよ。
「くっくっくっ」
「ぐぬぬぬぬっ…」
…ユルガルム城、門をくぐって屋敷前まで通されて。馬車を降りた所に待っていたのは、赤ちゃんをだっこしたナインケル・ユルガムル・マッケンハイバー辺境候…
ぷにぷにの赤ちゃんが、フリフリのベビー服を着ています。帽子も嫌がらずに被っていますね。…見せびらかすために着飾らせたのが見え見えです。この子が、パリトゥエール・ユルガムル・マッケンハイバー姫、通称でパティーと呼ばれているそうです。
そんな赤ちゃんのほっぺにおひげこしょこしょする辺境候に、きゃっきゃっと喜ぶ赤ちゃん。
…ものすごいどや顔の辺境候。漫画のようなぐぬぬぬな伯爵。
一歩下がって、苦笑しているターナンシュ様とマーディア様。
「レッとしゃま~ ひさしぶり~ …あれ?バール? おっきくなった? ふえた?」
と寄ってきたのは、もうすぐ四歳になるシュバール様。…なんかたくさん喋るようになってますね。
前回マーリアちゃんがセレブロさん連れてユルガルムに来たときのことは覚えていないようですが。クラウヤート様が年始めに連れてきていた白狼のバール君のことは覚えているようです。
普通なら大きな銀狼を見て怖がりそうなものですが。バール君の時のようにセレブロさんの脚に躊躇無く飛びつくシュバール様。それを見てビクビクしている若い侍女さんは新人でしょうか? 以前にセレブロさんを見たことのある侍女さんは、コロコロもふもふのフェイにオルトを見て目を潤ませています。はい、後で撫でる機会はあると思いますよ。
「シュバール様お久しぶりです。この仔達は、私の家族のセレブロ、その仔供達のファンリルとオルトロスです」
もちろんそばにはマーリアちゃんがついています。赤ちゃんと言っても、もう結構でかいですからね、じゃれた拍子に怪我でもさせたら大変です。まぁ小さい"人の子"の扱いは、セレブロさんは慣れていますけど。
「赤ちゃん! パティーといっしょっ!」
寄ってきたフェンとオルトが、シュバール様をクンカクンカしています。それをきゃっきゃっと喜ぶシュバール様、物怖じしませんね。うん、もう仲良くなったみたいです。
「ほらバール、エイゼルのおじいさまにもご挨拶を」
「おじいさま! ひさしぶり~」
「ひさしぶり」を普通に挨拶として覚えちゃっているみたいですね。アイズン伯爵に会うのは半年ちょっとぶりとは言え、三歳の半年は長いですよ。
「おーおーバール、年始めよりまた大きくなって」
フリーな状態のシュバール様をだっこしてスリスリするアイズン伯爵。
…はいはい、そろそろお屋敷に入りましょうね。
晩餐のお時間です。イストラ・スコエ料理長、また腕を上げていますね。
今回、馬車に積めるサイズの冷凍庫に、エイゼルで水揚げされた魚を冷凍して持ってきています。釣ってからすぐに絞めたマグロっぽい魚、こちらでは捕れないようですからね。ただ、解凍と料理の模索にしばらくかかりそうなので、後日こちらの方々で楽しんでください。なんか新しいレシピが出来たら是非そちらを。
もちろん帰りには、ユルガルムの海産物を積んでいきます。ホタテ貝とかはエイゼル市では取れないですから。
魚介の冷凍輸送は、すでに富裕層向けにぼちぼち行われていますが。冷凍庫自体が重たいですからね、どうしても少量輸送で高額になってしまいます。冷凍庫自体をコンテナみたいに規格化して、開けることなくぴったり馬車に積んで輸送と、コスト削減案もいろいろ出ています。鉄道が開通する頃には、潤沢に運べるようになっていると思います。
エビやカニにイカ等やホタテ貝の上物は、こちらの海でないと捕れませんので。当然帰りには積んでいきますよ。
個人的には、カニは茹でたものを自分で割りつつ、ポン酢でいただきたいところですが。高級料理は手間をかけるものという風潮こちらにもあって。素材の味を素朴に楽しむ方向性の料理は少ないです。
カニをたっぷり使ったピザなんて、贅沢品というかもったいないというか。…もちろん美味しかったですけどね。カニミソを使った海鮮スープは絶品でした。
イカは細切りにしてエビと一緒にシーフードサラダに。魚介の出汁がドレッシングと合わさって良いお味です。
来る途中でテオーガルでいただいた蒸留酒を、アイズン伯爵がナインケル辺境候と試しています。…仲が悪いんだかよいんだか分かりませんが。なんかお酒についての蘊蓄を静かに威圧を込めながら語っています。へんな緊張感がそこだけ漂っていますね。
「ほらほら、パティーのために新しく作った文字積み木だぞ! エイゼル市の名物で文字を表しているんだ。これでおじいちゃんの街ことも勉強しておくれ」
「お父様…パティーはまだ半年ですよ。乳飲み子に積み木はまだ早いですわ」
パリトゥエール様、シュバール様を中心にした居間での団らん。…ニコニコと孫達を構いつつも、視線で火花を散らす爺いたち。達観したようなしせんのギャラリー。手の空いた侍女さん達に部屋の隅でお世話されるセレブロさん親娘。
前回、蟻の騒動で来たときとは違って平和な光景ですね。
「むぅ…致し方あるまい。バールには、こちらじゃな。高級積み木、城塞セットじゃ。胸壁に跳ね橋にほら、このバリスタなんか実際に矢が撃てるぞっ」
もちろん、危なくないようにしてあるおもちゃですけど。城門に城壁と精緻なパーツを混ぜた積み木…というよりジオラマセットですか。日本で見たブロック玩具を思い出しました、あれで作れないものなんて無い感じでしたからね。
子供に危なくないように形に気を配りつつ、彫刻と塗装は精緻で… 木製なのに本物の石積みのように見えます。職人さん頑張っていますね。
「すごいすごいっ! おじいさまありがとうっ!」
ぴょんとバネ仕掛けで発射されるバリスタに、シュバール様も大喜びです。居間の端にはシュバール様の遊び場スペースがあるらしく。早速そこで積み始めました。
昔の積み木は土台に、その上に当たらし積み木を。パーツも増えたので、高くなりそうですね。
一日休んで旅の疲れを取り。今日、マーリアちゃんはムラード砦の視察にウードゥル様と出かけます。蟻の詳細な情報と、ユルガルムでの魔獣対策は、エルセニム王女として是非見ておきたい…んだそうです。
再度、蟻の侵攻があるかは未知数ですが。女王を中心にひたすら数を増やすあの魔獣が、最後の一匹だったとは思えません。警戒してしかるべきですね。
視察にはセレブロさん達も当然同行ですが。なぜかアイズン伯爵にシュバール様まで同行することになりました。
「バールは跡取りだからな。領内を見て回るのは大切なことだ。それにレイコ殿にマーリア殿もおられるのだ。護衛としてはこれ以上望みようがあるまい」
…むしろ、シュバール様が行かれるのでアイズン伯爵も同行したという順番ですかね。ここだけピクニック気分です。
・Side:ツキシマ・レイコ
そろそろ朝夕には涼しい秋の気配が漂う頃。アイズン伯爵の護衛で、ユルガルムに出発します。
ユルガルムに嫁いだアイズン伯爵の娘であるターナンシュ様が女児を出産されたのが夏。…春前には蟻騒動がありまして、そのとき以来のユルガルムですね。
アイズン伯爵の奥さんであるマーディア様が、蟻騒動の時にユルガルムを訪れたまま、ターナンシュ様の付き添いとしてユルガルムに滞在を続けてましたので。名目としては、冬が来る前にそのお迎えとなります。
残念ですが、クラウヤート様は今回お留守番。まだ中学生くらいの年齢ではありますが、父親のブライン様について領の業務をいろいろ任されるようになって。特に収穫の秋を前にしていろいろ忙しいんだそうです。…この時期にアイズン伯爵が出かけるしわ寄せとも言います。
ちなみに今回はマーリアちゃんも同行です。
名目上は、エルセニム王女として、対魔獣対策の一環としてムラード砦の視察ですが。…まぁ秋のユルガルムに一緒に旅行でもと誘ったわけです。
セレブロさんに、フェンちゃん、オルト君も同行です。さすがに三頭が同じ馬車に載るのはスペース的に無理がありますので。セレブロさんは馬車に併走して歩きで、仔供達も基本は歩きですが、疲れたときに馬車に乗せています。
マーリアちゃんはだいたい、騎士よろしくセレブロさんに乗せてもらっています。ときどき隊列から外れて、街道脇の草原や森の中を駆け回ってきています。仔供達も出かけるのは初めてで、はしゃいでいますね。
最初は銀狼達に少しびびっていた馬たちも、二日目には駆け回っているセレブロさん達に慣れたようで。隣で水を飲んでいても気にしなくなりました。…元が猫だからかな?
セレブロさんたちは、護衛や騎士たちにも人気で、食事時に干し肉などを与えようとするのに注意するほど。猫にしょっぱいものはだめですから。
逆に、汗をかける馬には塩は必須と言っていいくらいで。馬に関わる人は、岩塩や塩を固めたものをポケットに常備しているくらいですが。その感覚でしょっぱいものをあげようとしてしまうんですよね。
今回はまず王都に寄り、マーリアちゃんとセレブロさんも一緒に王宮に一泊。同じく夏に生まれたカステラード殿下とアーメリア様の長女トゥヴァレーヌ様、そしてクリステーナ様が里親になったケルちゃんにも会って。そこからユルガルムに向かいます。
馬車の中にて。アイズン伯爵、なんかそわそわ…というより焦ってますか?
「ナインケルのじじいが孫姫を洗脳しているかと思うと、いてもたってもおられん!」
洗脳はどうかと思います。もちろんユルガルムで新しく生まれた子も、アイズン伯爵の孫でもありますので、かわいがる権利は同等で間違いではありませんが。
ちなみに。アイズン伯爵の嫡男ブライン様の奥さんメディナール様もご懐妊中。年明けくらいに男子を出産予定ですので、孫がまた増えるわけですが。…女の子の孫は今回が最初、じじいとしてはやはり構いたくて仕方ないようです。
シュバール様も分も合わせて、お土産もいっぱいありますよ。
「くっくっくっ」
「ぐぬぬぬぬっ…」
…ユルガルム城、門をくぐって屋敷前まで通されて。馬車を降りた所に待っていたのは、赤ちゃんをだっこしたナインケル・ユルガムル・マッケンハイバー辺境候…
ぷにぷにの赤ちゃんが、フリフリのベビー服を着ています。帽子も嫌がらずに被っていますね。…見せびらかすために着飾らせたのが見え見えです。この子が、パリトゥエール・ユルガムル・マッケンハイバー姫、通称でパティーと呼ばれているそうです。
そんな赤ちゃんのほっぺにおひげこしょこしょする辺境候に、きゃっきゃっと喜ぶ赤ちゃん。
…ものすごいどや顔の辺境候。漫画のようなぐぬぬぬな伯爵。
一歩下がって、苦笑しているターナンシュ様とマーディア様。
「レッとしゃま~ ひさしぶり~ …あれ?バール? おっきくなった? ふえた?」
と寄ってきたのは、もうすぐ四歳になるシュバール様。…なんかたくさん喋るようになってますね。
前回マーリアちゃんがセレブロさん連れてユルガルムに来たときのことは覚えていないようですが。クラウヤート様が年始めに連れてきていた白狼のバール君のことは覚えているようです。
普通なら大きな銀狼を見て怖がりそうなものですが。バール君の時のようにセレブロさんの脚に躊躇無く飛びつくシュバール様。それを見てビクビクしている若い侍女さんは新人でしょうか? 以前にセレブロさんを見たことのある侍女さんは、コロコロもふもふのフェイにオルトを見て目を潤ませています。はい、後で撫でる機会はあると思いますよ。
「シュバール様お久しぶりです。この仔達は、私の家族のセレブロ、その仔供達のファンリルとオルトロスです」
もちろんそばにはマーリアちゃんがついています。赤ちゃんと言っても、もう結構でかいですからね、じゃれた拍子に怪我でもさせたら大変です。まぁ小さい"人の子"の扱いは、セレブロさんは慣れていますけど。
「赤ちゃん! パティーといっしょっ!」
寄ってきたフェンとオルトが、シュバール様をクンカクンカしています。それをきゃっきゃっと喜ぶシュバール様、物怖じしませんね。うん、もう仲良くなったみたいです。
「ほらバール、エイゼルのおじいさまにもご挨拶を」
「おじいさま! ひさしぶり~」
「ひさしぶり」を普通に挨拶として覚えちゃっているみたいですね。アイズン伯爵に会うのは半年ちょっとぶりとは言え、三歳の半年は長いですよ。
「おーおーバール、年始めよりまた大きくなって」
フリーな状態のシュバール様をだっこしてスリスリするアイズン伯爵。
…はいはい、そろそろお屋敷に入りましょうね。
晩餐のお時間です。イストラ・スコエ料理長、また腕を上げていますね。
今回、馬車に積めるサイズの冷凍庫に、エイゼルで水揚げされた魚を冷凍して持ってきています。釣ってからすぐに絞めたマグロっぽい魚、こちらでは捕れないようですからね。ただ、解凍と料理の模索にしばらくかかりそうなので、後日こちらの方々で楽しんでください。なんか新しいレシピが出来たら是非そちらを。
もちろん帰りには、ユルガルムの海産物を積んでいきます。ホタテ貝とかはエイゼル市では取れないですから。
魚介の冷凍輸送は、すでに富裕層向けにぼちぼち行われていますが。冷凍庫自体が重たいですからね、どうしても少量輸送で高額になってしまいます。冷凍庫自体をコンテナみたいに規格化して、開けることなくぴったり馬車に積んで輸送と、コスト削減案もいろいろ出ています。鉄道が開通する頃には、潤沢に運べるようになっていると思います。
エビやカニにイカ等やホタテ貝の上物は、こちらの海でないと捕れませんので。当然帰りには積んでいきますよ。
個人的には、カニは茹でたものを自分で割りつつ、ポン酢でいただきたいところですが。高級料理は手間をかけるものという風潮こちらにもあって。素材の味を素朴に楽しむ方向性の料理は少ないです。
カニをたっぷり使ったピザなんて、贅沢品というかもったいないというか。…もちろん美味しかったですけどね。カニミソを使った海鮮スープは絶品でした。
イカは細切りにしてエビと一緒にシーフードサラダに。魚介の出汁がドレッシングと合わさって良いお味です。
来る途中でテオーガルでいただいた蒸留酒を、アイズン伯爵がナインケル辺境候と試しています。…仲が悪いんだかよいんだか分かりませんが。なんかお酒についての蘊蓄を静かに威圧を込めながら語っています。へんな緊張感がそこだけ漂っていますね。
「ほらほら、パティーのために新しく作った文字積み木だぞ! エイゼル市の名物で文字を表しているんだ。これでおじいちゃんの街ことも勉強しておくれ」
「お父様…パティーはまだ半年ですよ。乳飲み子に積み木はまだ早いですわ」
パリトゥエール様、シュバール様を中心にした居間での団らん。…ニコニコと孫達を構いつつも、視線で火花を散らす爺いたち。達観したようなしせんのギャラリー。手の空いた侍女さん達に部屋の隅でお世話されるセレブロさん親娘。
前回、蟻の騒動で来たときとは違って平和な光景ですね。
「むぅ…致し方あるまい。バールには、こちらじゃな。高級積み木、城塞セットじゃ。胸壁に跳ね橋にほら、このバリスタなんか実際に矢が撃てるぞっ」
もちろん、危なくないようにしてあるおもちゃですけど。城門に城壁と精緻なパーツを混ぜた積み木…というよりジオラマセットですか。日本で見たブロック玩具を思い出しました、あれで作れないものなんて無い感じでしたからね。
子供に危なくないように形に気を配りつつ、彫刻と塗装は精緻で… 木製なのに本物の石積みのように見えます。職人さん頑張っていますね。
「すごいすごいっ! おじいさまありがとうっ!」
ぴょんとバネ仕掛けで発射されるバリスタに、シュバール様も大喜びです。居間の端にはシュバール様の遊び場スペースがあるらしく。早速そこで積み始めました。
昔の積み木は土台に、その上に当たらし積み木を。パーツも増えたので、高くなりそうですね。
一日休んで旅の疲れを取り。今日、マーリアちゃんはムラード砦の視察にウードゥル様と出かけます。蟻の詳細な情報と、ユルガルムでの魔獣対策は、エルセニム王女として是非見ておきたい…んだそうです。
再度、蟻の侵攻があるかは未知数ですが。女王を中心にひたすら数を増やすあの魔獣が、最後の一匹だったとは思えません。警戒してしかるべきですね。
視察にはセレブロさん達も当然同行ですが。なぜかアイズン伯爵にシュバール様まで同行することになりました。
「バールは跡取りだからな。領内を見て回るのは大切なことだ。それにレイコ殿にマーリア殿もおられるのだ。護衛としてはこれ以上望みようがあるまい」
…むしろ、シュバール様が行かれるのでアイズン伯爵も同行したという順番ですかね。ここだけピクニック気分です。
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