玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第6章 エイゼル市に響くウェディングベル

第6章第038話 そして、お鍋!

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第6章第038話 そして、お鍋!

・Side:ツキシマ・レイコ

 本日は、新築の我らが家にアイズン伯爵とクラウヤート様をお招きしております。
 今夜の夕餉は、おこたでお鍋ですよっ!

 長方形の炬燵ってのも変則的ですが、大人数だと便利なんですよね。
 野営用マナコンロをちょっと装飾してもらった卓上コンロを炬燵に置いて。伯爵らとマーリアちゃんと私とレッドさんで一鍋。あとアイリさんらでもう一鍋。
 鍋を分けたのは身分差とかでは無く、単純に席から鍋までの距離の都合です。護衛の方々も、テーブル席で同じ物をご用意しています。交代で召し上がってください。鍋奉行はそれぞれで任命してくださいね。
 いきなり食卓に生の食材を展開されて戸惑っている護衛の方々ですが。まぁ鍋は難しいことはないので大丈夫だと思います。


 土鍋に昆布(っぽい海藻)を敷いて湯に張ります。今日はいわゆる水炊きです。
 私がシンプルな水炊きが好きだったというのもありますが。前々から思っていたのですが、味を付けたスープで鍋したらそれって単なるスープだと思うんですよね。ですから、取り分けてからお好みのタレで食べるというのが、鍋の神髄だと思うのです。うんうん。
 調理…と言っても、具材を並べるだけですが。伯爵卓のは私が。アイリさんのところはアイリさん。騎士の方々は料理騎士さんが担当します。

 毒味はレッドさんがしますけど… まぁ誰も心配していないようですね。
 珍しい料理の提供方式に、護衛の方々も興味津々のようです。騎士の方々にはお酒が出せないのはご勘弁を。一応護衛の仕事中ですからね。

 タレは、ポン酢醤油と、ごまダレもどきです。 酸っぱいのがダメという人は一定でいますからね。定番のタレということで二種用意しました。
 ごまというより小さめの豆でしたが、油を探す段階でいくつか香りが良い種類のものをキープしていました。これを擦って甘めのタレを作りましたよ。あと、魚なら醤油で食べるのも悪くないです。

 「こんな近くで目の前で料理されているのを見るのは、久方ぶりじゃな」

 貴族だと流石に機会が少ないですか。一番近くていつぞやの焼き肉大会の時ですが、切り分けられた物をよそられて出されていましたからね。
 くつくつと煮えてきた鍋を眺めつつ、お酒をチビチビしている伯爵です。クラウヤート様はお茶をどうぞ。流石にジュースという雰囲気ではないので。

 「寒い日に炬燵に入って家族で鍋をつつく。私がいた国ではこれも贅沢の一つでした」

 「はいっ! なんかワクワクしますね」

 クラウヤート様も、料理しているところを見る機会はそう無いようです。

 さて。食べる前に炬燵に潜り込み、マナの発熱機のスイッチを切っておきます。

 「レイコ殿、炬燵を止めてしまうのか?」

 「これから熱いものを食べますからね。また寒くなったら付けますから言ってください」

 そのままだと汗掻くくらい暖まりますから。日本にいたときにはこのタイミングで切っていました。

 鍋の具材に一通り火が通ったあたりで。まずはレッドさんと伯爵に取り分けます。
 鶏もも肉。ぶりっぽい白身魚。白菜っぽい葉物。正教国から少し入ってくるようになった茸。
 それに今日のちょっとした目玉食材、お豆腐です。にがりはボルト島の向こう側にある製塩所から取り寄せました。塩水を煮るときに、底に残る液体ですね。何に使うんだ?と訝しがられましたけど。
 豆を茹でて人力ミキサーで砕いて搾って豆乳を作り、温めた豆乳ににがりをさらっと。固まり始めたら目の細かい布を敷いた木枠に流し込んで、重しをしてしばらく待って、水の中に落します。
 豆腐は慣れていない人には柔らかすぎて食べ辛いかと思いましたので。重しは多めにして水を抜き、木綿越し豆腐よりちょっと堅めにしました。
 試作品を試食しましたが、日本で食べていた豆腐より豆の味が濃いですね。いや、地球の安い豆腐の味が薄かったのでしょうか? ともかくなかなかのお味です。

 レッドさんは、伯爵とクラウヤート様の間に座布団を重ねて座っています。お毒味お願いいたします、レッドさん。
 小さい手で器用に箸を使いつつ、ポン酢にちょんと漬けた鶏肉をハフハフと食べました。熱さは苦にならないはずですが、美味しそうに食べますね。
 毒味の結果はもちろん無問題。

 「伯爵もどうぞ。熱いですから気をつけてくださいね」

 「はい。豆腐は特に危険です」

 前日の試食で火傷しそうになったアイリさんです。つるっと食べられるだけに油断大敵です。
 私が箸を使っているのを見たのか、箸を使える人が周囲にそこそこ増えてきましたが。びっくりしたことにアイズン伯爵も箸が使えるようです。

 「伯爵もお箸が使えるんですね?」

 「ふふふ。レイコ殿をびっくりさせようと練習しておいたのじゃ。魚を骨を避けつつ食べるには、フォークよりこちらの方が便利じゃな」

 はい。びっくりしましたよ。何でも、伯爵邸の厨房で料理騎士さんが持ち込んだのが最初のようで。便利と言うことで広まったようですね。
 クラウヤート様もお箸使えるようです。ちょっと覚束無いかも?
 取り分けた具材を説明すると、まず豆腐から行くようです。未経験の食材からトライするチャレンジャーですね。
 豆腐を器用に掬い上げ、ポン酢醤油に潜らせ、ハフハフしながら食べます。
 熱くなった口を冷ますように、お酒を一口。

 「これはなかなか美味いな。ここまで熱いものは、小竜神様がおられる時くらいしか食べられんしな。妻も王都での用事がなければ誘っていたのじゃが…」

 毒味で冷めた物…とまでは行きませんが。貴族邸の調理場から食堂までの距離はいかんともし難いです。
 そう言えばお父さんが、フランス料理には温かい物はあっても熱いものは無いって言ってましたね。

 「マナー的には粗野ではありますが。レイコ殿がアイズン伯爵に会食で饗されたともなれば、結構流行るのでは無いですか? この火傷しそうなほど熱いものを食べると言うのも、新鮮な経験ですし」

 料理騎士のブールさん。なんかメモっていますね。
 伯爵邸の料理長から、伯爵が外で召し上がられた物は報告するように頼まれているそうです。

 「はっはっは。この魚もまたうまいな! 酒で口を冷やしつつ熱いものをほおばる、これは癖になりそうじゃ」

 伯爵が召し上がったということで、同席している私達とテーブル席の護衛の方も食べ始めます。しばらくハフハフという声が響きます。

 「こ…これで酒が飲めないのは辛い」

 護衛騎士の一人がぼやいて、上司に睨まれています。
 それを聞いていたアイズン伯爵。

 「やはりファルリード亭の方でもこれを出のかね? 目の前で料理が出来上がるというのも、目新しさがうけそうじゃが」

 「はい。ただ、鍋をひっくり返すと火傷とかが危ないですからね。店では酔っ払う人も多いですから、その辺はコンロの形とかいろいろ見直しているところです。今年の冬中には店でも出せると思います」

 アイリさんが代わって説明します。
 材料を切って盛って出すだけなので。店としてもお鍋は楽なメニューです。

 「レイコ、焼き肉とかお好み焼きはやらないの?」

 「焼き肉焼くのは簡単だけどね。お好み焼きはどうだろ? ほら、アイリさんも失敗していたし。普通に焼いてから出した方がいいんじゃないかな?」

 「うーん。それもそうだね。でも目の前で作るってのも捨てがたいかな。あれは楽しいし」

 マーリアちゃんも箸はだいぶ使うようになりましたが。豆腐を箸で食べるのは諦めてスプーンで食べています。

 「なんじゃ。まだ他にも炬燵料理があるのか?」

 炬燵料理。新ジャンル命名です。別に冬限定というわけでも無いのですが。

 「炬燵でなくても良いんですけど。こういう簡単な料理は各家庭にも広めたいです」

 マナコンロは普通に各家庭に普及していますし。土鍋の方は別に普通の鍋でもいいですしね。ポン酢醤油だって作るのは簡単です。目の前で作った鍋を自宅で家族で囲む。そんな風になると良いですね。

 「なるほど。家族で食べる料理か。よい光景になりそうじゃの」

 はい。お鍋は幸せの光景です。

 「おいっ!。その鶏肉は俺が育ててるんだっ」

 「お前こそ、俺の大事な魚を食ったじゃないかっ!」

 「騎士様方、材料ならまだありますから、喧嘩しないで下さいね」

 …幸せの光景です。鍋あるあるですがアイリさんがそっと窘めます。鍋奉行様、仕事してください。

 「この豆腐っての、うまいな… 熱いのが胃袋に落ちていく新食感…」

 「くそ…ファルリード亭で始めたら、絶対エールと一緒に注文してやるっ。両親連れて食いに行ってやるっ」

 「いや、この料理なら宿舎でも出来るんじゃないか? ブールさんを呼んでくれば確実だろ?」

 テーブル席はなんか悲喜交々ですね。立って警備してある人の分も具材はキープしてありますから。交代をもうちょっと待って下さい。
 とはいえ、見ているだけは可哀想なので。鍋だけでは物足りないかもと作っておいた焼きおにぎりを先に振る舞います。これなら立ったまま食べられるでしょ?



 「なるほど。炬燵は止めておいて正解じゃな。冬に汗掻くくらい暑くなるというのも初体験じゃな」

 掛け布団をずらす伯爵様。ちょっと襟元をパタパタしています。

 「では。最後にシメということで…」

 「レイコ、シメってなあに?」

 「終わる、終わらせるって意味かな」

 たまに綺麗に翻訳されませんね。
 一通りお腹がくちくなったけど、もうちょっと食べたいなと言う時の"シメ"にして、本日の目玉食材パート2、うどんです。

 うどんの材料は小麦粉と塩水だけですからね、作るのは比較的簡単です。試作と称したお鍋を既に食べているアイリさんは、こちらも奉納だと言ってましたけど。小麦を塩水で捏ねただけのものに権利を主張するのはどうかとは思いますが、まぁこれも見ず知らずの人に権利を取られないための予防ですね。
 捏ねるとき、さすがに足で踏むのもどうかと思いましたが、私では力はともかく体重が足りませんので。竹の棒を用意して片方を机に縛り付け、もう片方に体重かけて、テコの原理でタネを捏ねる…というのをやってみました。まぁ良い感じに腰が出たと思います。
 後は伸ばして細切りにして小麦粉振って。冷蔵庫で寝かせておきました。

 鍋の残り汁には出汁が出て良い感じです。そこにうどんを入れて、醤油とお塩で味を調えて、お椀に取り分け。七味…はまだですが、唐辛子っぽいものは手に入っているので、それをパラパラ。ちょっと山椒風味。

 あ。伯爵啜れるかな? フォークの方が良いかも。

 「ちょっと行儀悪いのですが…」

 と、私が試しに啜ってみます。

 「うどんやラーメンは、こうやって食べるものでした。音を立てるので行儀悪いとされていたところもありますけどね。食べやすい方で召し上がって下さい」

 お? 護衛騎士の一人がなかなか豪快に啜っていますね。

 「ふふふ。非番の日には市場のラーメン次男に通ってますんで、"啜る"もマスターしましたよ」

 自慢げな騎士さん。あの量に何度も挑戦したというのには驚きですが。私はお子様サイズが精一杯です。
 伯爵とクラウヤート様には"啜る"はちょっと難しかったらしく。つるつると上品に食べていました。

 「鍋に残った汁も無駄にしないか。なかなか便利な料理じゃの」

 護衛騎士卓では、うどんだけでは足りなかったらしく。さらに残った汁にご飯をいれて卵とじまでしています。また凶悪なシメですね。
 交代の人の空腹がそろそろ我慢の限界です。料理騎士のブールさんが厨房で次弾の仕込みに入りました。

 「とまぁこんな感じで。今日のは本当に庶民のメニューでした」

 「ふむ。ピザとかパスタとかとは雰囲気からして違うの。年寄りにはむしろこういうものの方が合っているが」

 「僕もこれは楽しいと思いましたよ。たぶん父上に母上も好きになるんじゃないかと」

 「私の父も鍋は好きでしたし。赤井…赤竜神も人間のころは、どちらかというとこういう物の方が好きでしたね」

 「…そうか。レイコ殿のお父上と赤竜神様のお気に入りとは、畏れ多いの」

 二人とも肉より魚派でしたね。私は、お鍋は鳥肉派でしたけど。


 伯爵には満足していただけたようで。給仕の終わったアイリさんやタロウさんも炬燵に入りつつ、イカ系のおつまみを追加しつつお酒をちびちび飲み。護衛騎士の方々も交代して、鍋第二弾を展開中です。

 「アイリさん、伯爵との会食はどうでした?」

 アイリさんは伯爵信者ですからね。凄く緊張していましたよ。

 「まさか伯爵とご一緒のテーブルで会食できるとは思ってませんでした」

 「そんなに畏まられても困るのだがな。まぁアイリ殿はランドゥーク商会の若奥様になったのじゃから、今後機会はいくらでもあるじゃろう。…これらの縁はレイコ殿のおかげかの?」

 レッドさんにゲソを一本取って上げます。バール君は、イカはだめですよ。セレブロさん用の鳥ささみ干し肉をあげましょう。

 「アイリさんはもともと優秀っぽいですし。タロウさんとは私と会う前からの縁でしょ? 二人が結婚したり商会としてアイズン伯爵と関わるってのは、私がいなくても同じだったと思いますけど」

 伯爵、アイリさん、タロウさん。最初に会ったのはユルガルムからの帰りのキャラバンでしたね。

 「ん~だけど、やっぱレイコちゃんが居なかったら、こうして炬燵で会食なんてことにはならなかったと思うわよ? やっぱいろいろレイコちゃんのおかげっ!」

 炬燵は流石に私のせいですが…

 「レイコがいなかったら、そもそも私はここに居なかっただろうし。…下手したらネイルコード国への侵攻の手伝いさせられていたかもしれないし。エルセニム国のこともだけど、私はレイコがいてくれて感謝しているわよ」

 ダーコラからの防衛戦が、マーリアちゃんが殴り込みに来た切っ掛けでしたね。さして昔でも無いですが、なんか懐かしいですね。

 「まぁ。そのつもりでないことで感謝されるのはこっぱずかしいものよの。わしも我欲でここまで来た故に、ことある毎に感謝されるのにはまだ馴れん」

 「わっ私は感謝しています!伯爵! 伯爵でなかったら、孤児院出てもどうなっていたことやら」

 「私も、この世界に来て最初に出合った貴族が伯爵で良かったです。ダーコラや正教国…バッセンベルもだけど、最初がそちらだったらどうなっていたことやら…」

 ちょっと照れたようにクイッとお酒を飲む伯爵。

 「多分、街…はなくても、城や屋敷がいくつか吹き飛んでいたのでは?」

 クラウヤート様、私は災厄かなんかですか? …まぁ否定は出来ないですけど。中の人達が逃げる時間くらいは与えますよ?
 私を取り込もうとしたり利用しようとしたり…そんなことをする王侯貴族に商人聖職者は普段から悪さしていそうですし。衝突するのは時間の問題でしょうかね?
 まともな人間が出てくるまでそいつら叩き続ける? っても、ダーコラも正教国もあれでしたから、天辺まで潰してまともな人が国動かせるようにする…

 「…あれ? ダーコラと正教国の顛末って、今と代わらないような」

 「レイコ殿が西に行っていたとしても、そのうち会っていたと思うがな。ネイルコードに来て貰えるかは分からんが」

 大陸と言っても、狭いですね… まぁ今ここに居るのは赤井さんの目論見通りなんでしょうけど。良い国に来られました。


 伯爵とは、昨今のいろいろについて雑談をし。明日も朝から領庁で執務があると言うことで、馬車で帰っていきました。
 寛いでいただくことは出来たようで、炬燵と座椅子と土鍋はセットで是非欲しいと言われました。マルタリクの方には連絡入れておきましょう。



 後日。
 アイズン伯爵から新築祝いと称して、絵やら花瓶やら燭台の様なインテリア類がごっそり送られてきました。
 なんでも、アイズン伯爵宛にいろいろ送られてきた物の一部だそうで。倉庫の肥やしになっていた物なので遠慮するな、との事です。
 私もちょっと、家の中が広さのわりに飾り気が少なくて寂しいかなぁ…と思っていたので、ありがたく使わせていただきますが。アイリさんとタロウさんが、なんか顔青くなっていますね。

 「え? これって、あのサビーナの風景画?」

 「こっちは…もしかしてカッシノの壺か? おい、ここにある物だけで幾らになるんだよ…」

 流石にびびるほど高価な物はその二点だそうですが。うわぁ…お返しが大変そうですね。

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