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第6章 エイゼル市に響くウェディングベル
第6章第025話 レッドさん観察日記
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第6章第025話 レッドさん観察日記
・Side:ツキシマ・レイコ
新居へ引っ越しも終わりました。
引っ越しと言っても、持っていた荷物より新規に購入した物の方が多いですが。
カヤンさんらファルリード亭の人達は宿の方で仕事がありますからね。荷物の方はすでに運ばれていていますが、部屋作りは折を見て追々となるそうです。私も手伝わないと。
マーリアちゃんは今、部屋で荷物整理しています。こちらもほとんど旅の荷物と大差はありませんし、新たに買った家具とかもほとんど私と同じです。まぁ荷物が増えるのはこれからでしょう。
今日一日、引っ越しの翌日と言うことでお休みにしている私ですが、早々に部屋の片付けも終わってしまい。やることもなく共同リビングに入れた結構上等なソファーでゴロゴロしています。
天井が高く、ガラス窓からの採光で部屋は明るく。非常に居心地のよいリビングなのですが。…広い部屋に一人というのはちょっと寂しいですね。アライさんもファルリード亭の方に行ってしまっていますので、ここに居るのはレッドさんだけです。
護衛騎士の人達はファルリード亭の方へ。…もしかしたら"影"の人は呼んだら出てくるかも? マナ探知したら見つかりそうではありますが、野暮なことはしません。
…マーリアちゃん、早く来ないかな?
レッドさんをお腹の上に乗せてマッサージしてあげます。猫にするように、頭の左右から首回り背中という感じでムニムニと撫でていきます。
…なんかお父さんの肩もみしていたのを思い出しますね。
「レッドさん、気持ちいいですか?」
「クー…」
目を細めてクルルル言ってます。
…
哺乳類の場合は手足合計四本、いわゆる四肢ですが。レッドさんは、両腕両脚に加えて翼がありますので六肢です。ここでまず地球の脊椎動物の類縁では無いことになりますね。
両腕の肩関節が繋がっている肩甲骨は、肋骨の左右にあります。動物では左右についているのが普通ですが、人間は肩甲骨が背中までずれています。これのおかげで人間は肩関節の可動範囲が広くなって、投擲なんかも出来るわけです。レッドさんは、大きく振りかぶって投げるのは無理かな? アンダースローでも結構な球が投げられそうですが。
ちなみに、アライさんは万歳は出来ますが投擲は出来ないようです。
レッドさんには、肩甲骨がもう一セットあり。両腕の肩甲骨の斜め後ろあたりにの背中に位置します。胸骨が鳥のそれみたいに大きくなっていて、両腕の脇の下を通って翼を駆動する筋肉を大きく纏っています。シルエット的に、仔犬のようにお腹のあたりがぽっこりとして見えるレッドさんの体型ですが、実は胸筋だったりします。
両手は、四本指。三本の指に、一本の短めの指が対峙しています。人間のというよりは、鳥の足が近いイメージですか。結構器用で、お箸も持てますよ。
足の指は、三本が前と一本が後ろ向きに。止まり木に止まれそうですね。
尻尾は太いですね。胴体からそのまま繋がっている感じは、犬猫の尻尾というよりは、ワニぽい感じです。
後頭部には、三角コーンみたいな感じの角が大中小と縦に二列並んで、計六本。実は多少可動するようです。
レッドさんから送られてくるイメージからすると、どうもこれら角はアンテナとして機能するようですね。この角があるからこそドラゴンというイメージの頭になっています。
角がある動物は肉食ではない、お父さんが言ってました。
映画やアニメでは角のある怪獣やモンスターは珍しくも無く。肉食で角を持つ動物がいるのでは?とムキになって調べたことがありました。…見つかったのはせいぜいイッカク、イルカに角が生えているみたいなやつですね、これくらいでした。…よくよく調べたら、それも角じゃなくて歯でしたけど。
基本的に哺乳類の角は、防御装備かハンディーキャップ理論的なディスプレーです。肉食動物は、牙や爪の方を発達させますから。
…レッドさん、お肉も好きですけどね。野菜や果物も食べますよ。
眼は…猫が一番近いですか。瞳孔が縦長なのは、爬虫類にもいますが。両方の眼は正面を向いていますし。白目部分とかも見るにやはり猫っぽいですね。紫外線、赤外線も見えるようですよ。電波は角でキャッチ、X線やガンマ線は目と目の間の中にセンサーがあるそうです。
レッドさんの鼻は、犬猫というより兎っぽいです。犬猫のあのマッシュルームみたいなのが無いのです。でも、匂いを嗅ぐときヒクヒクするのは可愛いですよ?
口周りは哺乳類の構造です。ちょっと嘴っぽい形をしていますが、堅くはありません。むにむに。
哺乳類では、お乳を吸うという動作をするために"頬"が発達しました。それ以外の動物の口は基本的に裂けていますから、吸うという動作が出来ません。
よく誤解されていますが、頬の筋肉は口の開閉に使うものではありません。咬む力を生み出す筋肉は、もっと後ろの顎関節の近くからこめかみの内側を通って側頭部に続いています。
この頬の筋肉は柔軟に動き、表情を生み出す元にもなっていますし、発声の役にも立っています。本当なら、爬虫類はニヤっとは笑ったり人間のような滑舌で喋ったりは出来ないんですよね。…赤井さんは、ほんと漫画のように笑ってましたけど。
ムニーっ。
歯の形も哺乳類ですね。前歯、犬歯、奥歯と歯の形が別れています。
用途によって歯の形が違うことを異歯性といいまして。哺乳類と爬虫類の大きな違いの一つです。哺乳類なら、草を食べる動物なら前歯は草を噛み切ったり葉を刮ぎ落したり、奥歯はすり潰したりと、役割分担されています。人間も、前歯、犬歯、奥歯と三種類ありますね。
爬虫類は基本一種類の歯しか持ちません。草食恐竜も、葉を刮いで丸呑みするタイプか、奥歯しか無くてすり潰すだけか。ただ、前歯の代わりに嘴が発達しているタイプもいますね。この辺、骨格標本を観察すると面白いのです。
また。咀嚼するという行為をする動物も意外と少ないです。哺乳類含めて、ほとんどの動物は飲み込めるサイズに食べ物を引き裂きかじり取り丸呑みする種が多いです。消化の助けのために咀嚼をする草食獣はいますが、味わうために咀嚼するのはほんと一部の生物のみとなります。
爬虫類は、一部の草食恐竜以外咀嚼はしません。そもそも純粋な草食爬虫類が現在はいませんしね。
レッドさんは、猫食いはしません。一口をかじりとって、モグモグと食べれますし、きちんと味わって食べています。この辺の行動様式から言うと、レッドさんは哺乳類というより霊長類になるんですよね。
レッドさんの翼。羽毛では無く薄皮がはっているコウモリタイプです。
コウモリの翼の骨は指のそれで、関節も指が元になっているわけですが。レッドさんの翼も元は指の関節を利用して三回ほど折りたためます。ばっと広げればかなりの幅ですが、畳めば折りたたみ傘が付いてるように見えるコンパクトさです。
革が張っている骨は、太さは菜箸程度と非常に細いですが。カーボンの釣り竿を想像させる強度としなやかさを持っています。人にはまず折れないでしょう。
尻尾に羽はありません。飛んでいるときには、羽を前後に動かすことで揚力と重心の位置を調節し、エレベーターの役目をさせています。翼を前に出せば機首上げとかですね。
同様にラダーやエルロンの役目も羽だけでこなしていますが。急激に姿勢を変えるようなときには、尻尾を振って、その反動を利用しています。尾翼というよりカウンターマスかスタビライザーってところでしょうか。
ああ、泳ぐときにも尻尾使っています。上から見るとまんまワニです。
飛び立つときは羽ばたきも使いますが。飛翔時の推進力は、赤井さんと同じくプラズマアクチュエーターの類いのようです。羽の前縁からマイクロ波を出して空気をプラズマ化し電子を吸収、帯電した空気を翼面に形成した電場で後ろに加速、後縁で電子を返却。翼がボーと光って見えるのは、この辺の電子のやり取りのせいですね。そこまで推力が出るのか?という効率の良さですので、なにか別の仕組みもあるのかもしれません。
表皮には毛が生えています。短毛の猫ってところでしょうか。ただ、足首や手のひらには生えていなく、脚は鳥のようにうろこ状ですね。翼の皮膜にも短い毛が生えています。ベルベットみたいですね。撫で心地はなかなかなものです。
「…うーん。こんなところで生物学しているのも何ですね。そろそろファルリード亭の方も混み始める頃合いですので、マーリアちゃんに声かけしてからお手伝いにでも行きますか?」
「クーククックッ」
「うん。今晩の夕飯とお風呂も向こうで良いかな?」
「クッククーッ!」
「レッドさん、賑やかなところ好きよね」
レッドさんとの間の会話は、以心伝心が可能ですが、その辺は臨機応変。お話しできるのならしたいですからね。
新ファルリード亭でも、レッドさんは宿のフロントを任されているカーラさんのところにいるか、その前で寝そべっているセレブロさんの上が定位置です。
旧ファルリード亭に通っていた猫もだいたいが新ファルリード亭の方にも寄ってくれるようになったようで、カヤンさんのところにはいつも猫が居るのですが。レッドさんは猫とも仲良しですね。いっしょに丸まっていることが多いです。今年からは暖房も入るので、さらに猫が集まることでしょう。
気がついたお客さんが、しょっちゅうびっくりしていますが。撫でてもらうくらいなら構いませんよ。
「マーリアちゃんっ、そろそろファルリード亭の方に行こうと思うんだけど?」
「はーい。私も行くわ。ちょっと待ってて」
部屋の扉が開いて、セレブロさんが先に出てきました。新しい部屋の居心地はどうですか?
「夕飯は向こうで食べましょう。あとお風呂も向こうではいるから、着替え用意しておいてね」
銭湯の広い風呂が気に入っているマーリアちゃんが、グッと親指を立てます。なんなしにこれがヨシッ!というジェスチャーとして定着しています。
「片付けは進んだ?」
「私も荷物少ないからね。セレブロさんの寝床をどうするか考えてた」
「床にベタ寝じゃ可哀想だしね。何か考えようか」
馬並サイズの猫ちぐら? いくら何でもでかいです。むしろアライさん用とか? なにか寝心地の良い寝床をつくってあげたいですね。
さて。フードのついたベストを羽織ります。アイリさんは、暑くないのかと言いますが、私にはさほど苦には感じません。ありがたい体ですね。
レッドさんを前に抱っこしていると両手が使えませんし。リュックやゲージに入れて連れ歩くのも違いますしね。このフードのところに収まって肩に掴まってもらうのが一番収まりが良いのです。
「おまたせっ!」
マーリアちゃんたちも準備が出来たので、一緒に家を出ます。
うん。澄んだ青い空に高い雲、気持ちいいですね。昼間はまだちょっと暑いですが、雲が高いのはこの世界の秋も似たような感じです。
セレブロさんがなにか匂いを嗅いでいます。どこかから良い匂いでもしますか?
去年のこの頃は、ユルガルム領で蟻退治していましたが。今年はエイゼル市で秋の幸にもありつけそうです。
木の実なんか結構豊富だそうで。後で市場に寄ってみましょう。栗あるかな?栗。マローンっ!見つかったらお菓子が捗るぜっ!
天高くアイリさん肥ゆる秋っ!
新居の門へ続く庭。まだ芝を植えた程度でがらんとした感じです。来年の春には花壇なんかも作りたいですね。
-------------------------------------------------------------------------------
…レッドさんや赤井さん。
ゼノギアスというRPGの設定で、モンスターの骨格までデザインされていまして。確かに生き物デザインするのなら、骨格から生態までデザインしないと…と思いました。
私の頭の中でのドラゴンのビジュアルイメージの大元はとあるコミックです。「Dragon bredder 竜騎兵」で検索してみて下さい。
・Side:ツキシマ・レイコ
新居へ引っ越しも終わりました。
引っ越しと言っても、持っていた荷物より新規に購入した物の方が多いですが。
カヤンさんらファルリード亭の人達は宿の方で仕事がありますからね。荷物の方はすでに運ばれていていますが、部屋作りは折を見て追々となるそうです。私も手伝わないと。
マーリアちゃんは今、部屋で荷物整理しています。こちらもほとんど旅の荷物と大差はありませんし、新たに買った家具とかもほとんど私と同じです。まぁ荷物が増えるのはこれからでしょう。
今日一日、引っ越しの翌日と言うことでお休みにしている私ですが、早々に部屋の片付けも終わってしまい。やることもなく共同リビングに入れた結構上等なソファーでゴロゴロしています。
天井が高く、ガラス窓からの採光で部屋は明るく。非常に居心地のよいリビングなのですが。…広い部屋に一人というのはちょっと寂しいですね。アライさんもファルリード亭の方に行ってしまっていますので、ここに居るのはレッドさんだけです。
護衛騎士の人達はファルリード亭の方へ。…もしかしたら"影"の人は呼んだら出てくるかも? マナ探知したら見つかりそうではありますが、野暮なことはしません。
…マーリアちゃん、早く来ないかな?
レッドさんをお腹の上に乗せてマッサージしてあげます。猫にするように、頭の左右から首回り背中という感じでムニムニと撫でていきます。
…なんかお父さんの肩もみしていたのを思い出しますね。
「レッドさん、気持ちいいですか?」
「クー…」
目を細めてクルルル言ってます。
…
哺乳類の場合は手足合計四本、いわゆる四肢ですが。レッドさんは、両腕両脚に加えて翼がありますので六肢です。ここでまず地球の脊椎動物の類縁では無いことになりますね。
両腕の肩関節が繋がっている肩甲骨は、肋骨の左右にあります。動物では左右についているのが普通ですが、人間は肩甲骨が背中までずれています。これのおかげで人間は肩関節の可動範囲が広くなって、投擲なんかも出来るわけです。レッドさんは、大きく振りかぶって投げるのは無理かな? アンダースローでも結構な球が投げられそうですが。
ちなみに、アライさんは万歳は出来ますが投擲は出来ないようです。
レッドさんには、肩甲骨がもう一セットあり。両腕の肩甲骨の斜め後ろあたりにの背中に位置します。胸骨が鳥のそれみたいに大きくなっていて、両腕の脇の下を通って翼を駆動する筋肉を大きく纏っています。シルエット的に、仔犬のようにお腹のあたりがぽっこりとして見えるレッドさんの体型ですが、実は胸筋だったりします。
両手は、四本指。三本の指に、一本の短めの指が対峙しています。人間のというよりは、鳥の足が近いイメージですか。結構器用で、お箸も持てますよ。
足の指は、三本が前と一本が後ろ向きに。止まり木に止まれそうですね。
尻尾は太いですね。胴体からそのまま繋がっている感じは、犬猫の尻尾というよりは、ワニぽい感じです。
後頭部には、三角コーンみたいな感じの角が大中小と縦に二列並んで、計六本。実は多少可動するようです。
レッドさんから送られてくるイメージからすると、どうもこれら角はアンテナとして機能するようですね。この角があるからこそドラゴンというイメージの頭になっています。
角がある動物は肉食ではない、お父さんが言ってました。
映画やアニメでは角のある怪獣やモンスターは珍しくも無く。肉食で角を持つ動物がいるのでは?とムキになって調べたことがありました。…見つかったのはせいぜいイッカク、イルカに角が生えているみたいなやつですね、これくらいでした。…よくよく調べたら、それも角じゃなくて歯でしたけど。
基本的に哺乳類の角は、防御装備かハンディーキャップ理論的なディスプレーです。肉食動物は、牙や爪の方を発達させますから。
…レッドさん、お肉も好きですけどね。野菜や果物も食べますよ。
眼は…猫が一番近いですか。瞳孔が縦長なのは、爬虫類にもいますが。両方の眼は正面を向いていますし。白目部分とかも見るにやはり猫っぽいですね。紫外線、赤外線も見えるようですよ。電波は角でキャッチ、X線やガンマ線は目と目の間の中にセンサーがあるそうです。
レッドさんの鼻は、犬猫というより兎っぽいです。犬猫のあのマッシュルームみたいなのが無いのです。でも、匂いを嗅ぐときヒクヒクするのは可愛いですよ?
口周りは哺乳類の構造です。ちょっと嘴っぽい形をしていますが、堅くはありません。むにむに。
哺乳類では、お乳を吸うという動作をするために"頬"が発達しました。それ以外の動物の口は基本的に裂けていますから、吸うという動作が出来ません。
よく誤解されていますが、頬の筋肉は口の開閉に使うものではありません。咬む力を生み出す筋肉は、もっと後ろの顎関節の近くからこめかみの内側を通って側頭部に続いています。
この頬の筋肉は柔軟に動き、表情を生み出す元にもなっていますし、発声の役にも立っています。本当なら、爬虫類はニヤっとは笑ったり人間のような滑舌で喋ったりは出来ないんですよね。…赤井さんは、ほんと漫画のように笑ってましたけど。
ムニーっ。
歯の形も哺乳類ですね。前歯、犬歯、奥歯と歯の形が別れています。
用途によって歯の形が違うことを異歯性といいまして。哺乳類と爬虫類の大きな違いの一つです。哺乳類なら、草を食べる動物なら前歯は草を噛み切ったり葉を刮ぎ落したり、奥歯はすり潰したりと、役割分担されています。人間も、前歯、犬歯、奥歯と三種類ありますね。
爬虫類は基本一種類の歯しか持ちません。草食恐竜も、葉を刮いで丸呑みするタイプか、奥歯しか無くてすり潰すだけか。ただ、前歯の代わりに嘴が発達しているタイプもいますね。この辺、骨格標本を観察すると面白いのです。
また。咀嚼するという行為をする動物も意外と少ないです。哺乳類含めて、ほとんどの動物は飲み込めるサイズに食べ物を引き裂きかじり取り丸呑みする種が多いです。消化の助けのために咀嚼をする草食獣はいますが、味わうために咀嚼するのはほんと一部の生物のみとなります。
爬虫類は、一部の草食恐竜以外咀嚼はしません。そもそも純粋な草食爬虫類が現在はいませんしね。
レッドさんは、猫食いはしません。一口をかじりとって、モグモグと食べれますし、きちんと味わって食べています。この辺の行動様式から言うと、レッドさんは哺乳類というより霊長類になるんですよね。
レッドさんの翼。羽毛では無く薄皮がはっているコウモリタイプです。
コウモリの翼の骨は指のそれで、関節も指が元になっているわけですが。レッドさんの翼も元は指の関節を利用して三回ほど折りたためます。ばっと広げればかなりの幅ですが、畳めば折りたたみ傘が付いてるように見えるコンパクトさです。
革が張っている骨は、太さは菜箸程度と非常に細いですが。カーボンの釣り竿を想像させる強度としなやかさを持っています。人にはまず折れないでしょう。
尻尾に羽はありません。飛んでいるときには、羽を前後に動かすことで揚力と重心の位置を調節し、エレベーターの役目をさせています。翼を前に出せば機首上げとかですね。
同様にラダーやエルロンの役目も羽だけでこなしていますが。急激に姿勢を変えるようなときには、尻尾を振って、その反動を利用しています。尾翼というよりカウンターマスかスタビライザーってところでしょうか。
ああ、泳ぐときにも尻尾使っています。上から見るとまんまワニです。
飛び立つときは羽ばたきも使いますが。飛翔時の推進力は、赤井さんと同じくプラズマアクチュエーターの類いのようです。羽の前縁からマイクロ波を出して空気をプラズマ化し電子を吸収、帯電した空気を翼面に形成した電場で後ろに加速、後縁で電子を返却。翼がボーと光って見えるのは、この辺の電子のやり取りのせいですね。そこまで推力が出るのか?という効率の良さですので、なにか別の仕組みもあるのかもしれません。
表皮には毛が生えています。短毛の猫ってところでしょうか。ただ、足首や手のひらには生えていなく、脚は鳥のようにうろこ状ですね。翼の皮膜にも短い毛が生えています。ベルベットみたいですね。撫で心地はなかなかなものです。
「…うーん。こんなところで生物学しているのも何ですね。そろそろファルリード亭の方も混み始める頃合いですので、マーリアちゃんに声かけしてからお手伝いにでも行きますか?」
「クーククックッ」
「うん。今晩の夕飯とお風呂も向こうで良いかな?」
「クッククーッ!」
「レッドさん、賑やかなところ好きよね」
レッドさんとの間の会話は、以心伝心が可能ですが、その辺は臨機応変。お話しできるのならしたいですからね。
新ファルリード亭でも、レッドさんは宿のフロントを任されているカーラさんのところにいるか、その前で寝そべっているセレブロさんの上が定位置です。
旧ファルリード亭に通っていた猫もだいたいが新ファルリード亭の方にも寄ってくれるようになったようで、カヤンさんのところにはいつも猫が居るのですが。レッドさんは猫とも仲良しですね。いっしょに丸まっていることが多いです。今年からは暖房も入るので、さらに猫が集まることでしょう。
気がついたお客さんが、しょっちゅうびっくりしていますが。撫でてもらうくらいなら構いませんよ。
「マーリアちゃんっ、そろそろファルリード亭の方に行こうと思うんだけど?」
「はーい。私も行くわ。ちょっと待ってて」
部屋の扉が開いて、セレブロさんが先に出てきました。新しい部屋の居心地はどうですか?
「夕飯は向こうで食べましょう。あとお風呂も向こうではいるから、着替え用意しておいてね」
銭湯の広い風呂が気に入っているマーリアちゃんが、グッと親指を立てます。なんなしにこれがヨシッ!というジェスチャーとして定着しています。
「片付けは進んだ?」
「私も荷物少ないからね。セレブロさんの寝床をどうするか考えてた」
「床にベタ寝じゃ可哀想だしね。何か考えようか」
馬並サイズの猫ちぐら? いくら何でもでかいです。むしろアライさん用とか? なにか寝心地の良い寝床をつくってあげたいですね。
さて。フードのついたベストを羽織ります。アイリさんは、暑くないのかと言いますが、私にはさほど苦には感じません。ありがたい体ですね。
レッドさんを前に抱っこしていると両手が使えませんし。リュックやゲージに入れて連れ歩くのも違いますしね。このフードのところに収まって肩に掴まってもらうのが一番収まりが良いのです。
「おまたせっ!」
マーリアちゃんたちも準備が出来たので、一緒に家を出ます。
うん。澄んだ青い空に高い雲、気持ちいいですね。昼間はまだちょっと暑いですが、雲が高いのはこの世界の秋も似たような感じです。
セレブロさんがなにか匂いを嗅いでいます。どこかから良い匂いでもしますか?
去年のこの頃は、ユルガルム領で蟻退治していましたが。今年はエイゼル市で秋の幸にもありつけそうです。
木の実なんか結構豊富だそうで。後で市場に寄ってみましょう。栗あるかな?栗。マローンっ!見つかったらお菓子が捗るぜっ!
天高くアイリさん肥ゆる秋っ!
新居の門へ続く庭。まだ芝を植えた程度でがらんとした感じです。来年の春には花壇なんかも作りたいですね。
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…レッドさんや赤井さん。
ゼノギアスというRPGの設定で、モンスターの骨格までデザインされていまして。確かに生き物デザインするのなら、骨格から生態までデザインしないと…と思いました。
私の頭の中でのドラゴンのビジュアルイメージの大元はとあるコミックです。「Dragon bredder 竜騎兵」で検索してみて下さい。
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