170 / 339
第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第027話 エルセニム国王宮料理長の矜持
しおりを挟む
第5章第027話 エルセニム国王宮料理長の矜持
・Side:ツキシマ・レイコ
正教国ツアーの途中、実質マーリアちゃんの里帰りでエルセニム国王宮にお呼ばれです。私達ももちろん泊まる気満々ですわよ。
「レイコ殿にはせっかくエルセニム国に寄っていただいたのだ。今夜はぜひ皆さんで饗応を受けていただきたい。…マーリアお主、城の料理長にここの料理が不味いと言ったそうだな。あやつ、泣いておったぞ」
「…あちゃー」
「ネイルコードでの食事がよほど気に入ったようだな」
え? マーリアちゃん直接言っちゃったの?あれ。
「マナ師をネイルコードに送るついでに、料理長が跡取りの息子をエイゼル市に研修に行かせてな。エルセニム国へのツケでレイコ殿のレシピをいろいろ買って来たそうだ。材料の都合で再現できない物も多いが、エルセニム料理をかなり改良できたと息巻いておったぞ。今夜はその辺、根掘り葉掘り感想を聞かれるだろうからな、覚悟しておけ」
「…はーい、お父様」
晩餐の時間。…給仕と一緒に並んでいる親子っぽい二人…この方達が料理長達ですね。コース形式で一品ずつ出てきまして。息子さんらしき方が説明してくれます。
海産物はここでは無理ですが、鳥やボアあたりの肉をカツにしているようですね。フライとかマヨネーズとか、乳製品と卵を使った料理を多く仕入れてきたようです。
「このキノコの入ったシチュー、すごく美味しいですね。お肉とよく合っています。」
息子さんの方がうれしそうに会釈します。
実は、キノコはネイルコードでは食べられていなかったんですよね。向こうではキノコは毒だというイメージが強いようです。…まぁ調べるには誰かが食べないと行けないわけですから。そこまでして食べたいものでは無いようで。
エルセニム国でどういう取捨選択のドラマがあったのかは興味があるところですが。マッシュルームとシメジを足して二で割ったようなキノコが入ったシチューは、大変美味しゅうございました。
レッドさんにも底上げした席を用意されており、いつものカトラリーでご相伴です。キノコ、美味しいですか? レッドさんからの警告はありませんが、ただ1種類、篭一杯の量を一度に食べるとまずい茸はあるそうです。…まぁ篭一杯は無理ですし、毒性が皆無って食べ物の方が珍しいですから、無問題として起きましょう。念のため、あとで教えておきますけど。
ちなみに、セレブロさんも招かれております。骨付きの大きい肉をもらって、ガジガジしていますね。
「…キノコですか。正教国でもあまり食べられていませんね。エイゼル市でエビが出てきたときにもびっくりしましたけど、地域によっる食べられているものの差は面白いですね」
タルーサさん、料理上手なだけに興味があるようです。
「私もエビにはびっくりしました。エルセニムの河にもエビがいますが、あれは泥臭くて食べたりはしないですからね。エイゼルで食べた海のエビの料理は、本当に素晴らしかったです。あのエビフライとタルタルというものは、最高の一品でした…」
料理長の息子さんが、恍惚として表情で反芻しております。
「…お前がそこまで言うか。一人で旨い物喰いあさって来おって… にしても、マーリア様が私の料理に文句を言うのは致し方なしだったか」
「あ…ごめんなさい料理長。エルセニムでの料理が美味しくないというより、エイゼル市では食べたことの無いものが多くて、夢中になっていただけなのよ」
「私も父上の料理は美味しいと思いますけど。ただ、エイゼル市で流行っている料理はなんというか、若い人を魅了するような派手さがありますね。マーリア様がハマるのも致し方ないかと思いますよ」
私自身は地味で滋味な料理も好きなんですけどね。でもまぁ、焼き魚定食よりハンバーガーの方が売れるのが世の常なんですよ…
「キノコは、干しても良いスープの具材になりますよ。栽培できれば、交易品になるんじゃないかと」
「栽培ですか… 森で取れるキノコには毒がある種類が多いですから、毎年それで犠牲になるものもそこそこおりますが。ただ、安全な種類を農場で栽培ができるのなら、確かに良い商材になるでしょうね」
「しかし父上。キノコの種というものも聞いたことがないのですが…」
「キノコって傘の裏側から粉が出るでしょ? あれが種に相当するものなんですよ」
「「なんとっ!」」
「湿気のある木にその種が付くと、そこから茸が成長して…というのが基本なんですけど。カビとか他のキノコに負けないようにするにはどうするのか…が肝ですね」
雑菌やカビをどうするかがキノコ栽培で肝要だと聞いたことがあります。キノコ自体がカビと大差ないですからね。
…綺麗な水でキノコ洗って、胞子の混じった水に消毒した木を付けて、菌糸が伸びる程度に高温高湿度の環境で培養して、その木を細かくして他の木に開けた穴に打ち込む…だっけ? シメジとかは、培養に適したおが屑の塊とか使っていたような。
一度キノコが生えたところから木を細かく切り出して、他の木に打ち込んだ方が早いかな? この辺はあとで説明することにしました。どのみち試行錯誤が必要でしょう。…料理長に説明でいいのかな? え、もともと農家出身ですか? なら適正についてはOKですね。
「ネイルコード国とは、マナ師の交流とエルセニム国内でのマナの採取と加工について、いろいろ話が出ておるのだがな。直近で必要とされているのはマナ師ばかりで、民全体に利益が出るかというと微妙なところが悩みだったが。農産物で交易が出来るのなら、ぜひ検討してみたいところだな」
「はい陛下。エルセニムの産物でマーリア様を、いやネイルコードの人達の舌も満足させて見せましょうぞ」
手応え感じて張り切っています、料理長さん。…マーリアちゃんのせいですけどね。まぁいいですけどね。
食事をしながら、アトヤック殿下がリシャーフさんにいろいろ質問しています。正教国の政治形態から、リシャーフさんの立場、リシャーフさんがどうしたいのか。
端から聞いていると、ちょっと不躾ではないか? とは思いましたけど。アトヤック殿下の質問の仕方がうまいですね、リシャーフさんの責任とか義務ではなく、あくまで正教国における聖女という役職について質問することで、リシャーフさんに負担が行かないように聞いてます。
役職と個人は、また別物です。国の要職に居ながら不本意な選択をしなければならないという気持ちがアトヤック殿下にも分るのか、いろいろ真剣に話を聞いていますね。同時に、その役職で出来ることと出来ないこともはっきりさせてます。
リシャーフさんも最初は緊張していましたが。その辺を慮ったアトヤック殿下の態度に、多少は柔らかくなったようです。
…侍従の二人、タルーサさんはなんか"あらあらまぁまぁ"という雰囲気でこの会話を見ています。トゥーラさんは、なんかアトヤック殿下を睨んでいますね。
先ほども話題に出ましたが。正教国に連れて行かれたエルセニム人にも関わる話です。
マーリアちゃんも施術されたマナ術強化ですが。リシャーフさんは、それを取り扱っている組織の実体はよく知らないそうです。ただ、その施術の導入部分はリシャーフさんも施術されたそうです。導入部分と言っても難しい話ではなく。第一段階はまず"飢えさせる"ことなんだそうです。二週間ほど水だけで過ごさせ、粉にしたマナ塊だけ与えると。酷い話ではありますが、飢え死にする前にマナが代謝を引き受けるようになれば成功です。
濃度の差はあれ、この世界ではほぼ全ての生物にマナ物質は浸透しています。有機物?タンパク質? その辺に親和性があるのか、マナの方から選択的に結合しようとしているのか。なにがトリガーになって生体がマナの代謝を利用し始めるのか、マナ側から肉体に浸透した結果マナが代謝されるようになるのか。マナ術全般についてもですが、この辺のマナ物質と生体がどのような相互作用をしているのか、未知数な所が多いですね。メンターが何かやった結果なのは確かでしょうけど。
ともかく。その辺の施術が切っ掛けで、マーリアちゃんは体内のマナのコントロールが他の人よりうまく出来るようになり、マーリアちゃんでは追加投与されたマナも扱えるようになった…というのが、施術の顛末だそうです。
リシャーフさんでは追加の施術は上手く行きませんでしたが、それでも平均よりはずっと身体強化が扱えるように成り、聖女でありながらも騎士団長にまで成れたとか。
ただ。これで正教国の騎士や兵が片っ端に強化されたという話は、リシャーフさんも侍従の護衛騎士の二人も聞いたことがないそうで。成功率が低いのか、単に衰弱死してしまったのか、他に問題があったのか…
探求院では、生きたまま連れてこられた魔獣なんかも研究しているという噂があるそうです。マナ塊が絡んでいる以上、魔獣の変質にはマナが関わっているのだろう…という話ですが。今の話を聞くに、飢えた獣ではマナの力を扱う能力が発現するということなのでしょう。
マーリアちゃんと一緒に連れて行かれたエルセニム人達については、リシャーフさんも知らないそうですが。事が済んだ暁にはその辺の調査もできうる限りすると約束してくれました。
次の日には、もう正教国へ向けて出発です。
本当はマーリアちゃんを何泊かさせてあげたいところですが。正教国でも対ネイルコード国の準備は進めているのでしょう。ネイルコード国との戦争…出来るかとか勝てるかではなく、あのような返答をした以上対峙するという気概を見せるのは国としては当然の反応です。今頃は、正教国以西の国々へ交渉の使者がばらまかれていると思います。あまり正教国に時間を与えたくありません。
アトヤック殿下と配下の部隊が、エルセニムの領内を通過する間の道案内をしてくれます。まずはエルセニム国の領内を東に進み、国境…と言ってもこちらは森が山脈に接しているところですが。ここから山沿いに南下してダーコラ領に入ると、その近くの河が正教国との国境となります。
「マーリア、無理はしないようにな。レイコ殿、リシャーフ殿。妹をよろしくお願いいたします。セレブロに小竜さまも」
「お兄様は心配しすぎよ。これでもお兄様よりも力持ちなんだから」
「まぁそれが家族の情ってもんだ。…正教国にはいろいろ思うところはあるが。目的は常に頭に置いて行動するように」
「はい、お兄様」
子煩悩というより、妹煩悩? マーリアちゃんが正教国に招喚されたときには辛かったでしょぅね…
今は、困ったような笑顔で手を振って見送ってくれています。
・Side:ツキシマ・レイコ
正教国ツアーの途中、実質マーリアちゃんの里帰りでエルセニム国王宮にお呼ばれです。私達ももちろん泊まる気満々ですわよ。
「レイコ殿にはせっかくエルセニム国に寄っていただいたのだ。今夜はぜひ皆さんで饗応を受けていただきたい。…マーリアお主、城の料理長にここの料理が不味いと言ったそうだな。あやつ、泣いておったぞ」
「…あちゃー」
「ネイルコードでの食事がよほど気に入ったようだな」
え? マーリアちゃん直接言っちゃったの?あれ。
「マナ師をネイルコードに送るついでに、料理長が跡取りの息子をエイゼル市に研修に行かせてな。エルセニム国へのツケでレイコ殿のレシピをいろいろ買って来たそうだ。材料の都合で再現できない物も多いが、エルセニム料理をかなり改良できたと息巻いておったぞ。今夜はその辺、根掘り葉掘り感想を聞かれるだろうからな、覚悟しておけ」
「…はーい、お父様」
晩餐の時間。…給仕と一緒に並んでいる親子っぽい二人…この方達が料理長達ですね。コース形式で一品ずつ出てきまして。息子さんらしき方が説明してくれます。
海産物はここでは無理ですが、鳥やボアあたりの肉をカツにしているようですね。フライとかマヨネーズとか、乳製品と卵を使った料理を多く仕入れてきたようです。
「このキノコの入ったシチュー、すごく美味しいですね。お肉とよく合っています。」
息子さんの方がうれしそうに会釈します。
実は、キノコはネイルコードでは食べられていなかったんですよね。向こうではキノコは毒だというイメージが強いようです。…まぁ調べるには誰かが食べないと行けないわけですから。そこまでして食べたいものでは無いようで。
エルセニム国でどういう取捨選択のドラマがあったのかは興味があるところですが。マッシュルームとシメジを足して二で割ったようなキノコが入ったシチューは、大変美味しゅうございました。
レッドさんにも底上げした席を用意されており、いつものカトラリーでご相伴です。キノコ、美味しいですか? レッドさんからの警告はありませんが、ただ1種類、篭一杯の量を一度に食べるとまずい茸はあるそうです。…まぁ篭一杯は無理ですし、毒性が皆無って食べ物の方が珍しいですから、無問題として起きましょう。念のため、あとで教えておきますけど。
ちなみに、セレブロさんも招かれております。骨付きの大きい肉をもらって、ガジガジしていますね。
「…キノコですか。正教国でもあまり食べられていませんね。エイゼル市でエビが出てきたときにもびっくりしましたけど、地域によっる食べられているものの差は面白いですね」
タルーサさん、料理上手なだけに興味があるようです。
「私もエビにはびっくりしました。エルセニムの河にもエビがいますが、あれは泥臭くて食べたりはしないですからね。エイゼルで食べた海のエビの料理は、本当に素晴らしかったです。あのエビフライとタルタルというものは、最高の一品でした…」
料理長の息子さんが、恍惚として表情で反芻しております。
「…お前がそこまで言うか。一人で旨い物喰いあさって来おって… にしても、マーリア様が私の料理に文句を言うのは致し方なしだったか」
「あ…ごめんなさい料理長。エルセニムでの料理が美味しくないというより、エイゼル市では食べたことの無いものが多くて、夢中になっていただけなのよ」
「私も父上の料理は美味しいと思いますけど。ただ、エイゼル市で流行っている料理はなんというか、若い人を魅了するような派手さがありますね。マーリア様がハマるのも致し方ないかと思いますよ」
私自身は地味で滋味な料理も好きなんですけどね。でもまぁ、焼き魚定食よりハンバーガーの方が売れるのが世の常なんですよ…
「キノコは、干しても良いスープの具材になりますよ。栽培できれば、交易品になるんじゃないかと」
「栽培ですか… 森で取れるキノコには毒がある種類が多いですから、毎年それで犠牲になるものもそこそこおりますが。ただ、安全な種類を農場で栽培ができるのなら、確かに良い商材になるでしょうね」
「しかし父上。キノコの種というものも聞いたことがないのですが…」
「キノコって傘の裏側から粉が出るでしょ? あれが種に相当するものなんですよ」
「「なんとっ!」」
「湿気のある木にその種が付くと、そこから茸が成長して…というのが基本なんですけど。カビとか他のキノコに負けないようにするにはどうするのか…が肝ですね」
雑菌やカビをどうするかがキノコ栽培で肝要だと聞いたことがあります。キノコ自体がカビと大差ないですからね。
…綺麗な水でキノコ洗って、胞子の混じった水に消毒した木を付けて、菌糸が伸びる程度に高温高湿度の環境で培養して、その木を細かくして他の木に開けた穴に打ち込む…だっけ? シメジとかは、培養に適したおが屑の塊とか使っていたような。
一度キノコが生えたところから木を細かく切り出して、他の木に打ち込んだ方が早いかな? この辺はあとで説明することにしました。どのみち試行錯誤が必要でしょう。…料理長に説明でいいのかな? え、もともと農家出身ですか? なら適正についてはOKですね。
「ネイルコード国とは、マナ師の交流とエルセニム国内でのマナの採取と加工について、いろいろ話が出ておるのだがな。直近で必要とされているのはマナ師ばかりで、民全体に利益が出るかというと微妙なところが悩みだったが。農産物で交易が出来るのなら、ぜひ検討してみたいところだな」
「はい陛下。エルセニムの産物でマーリア様を、いやネイルコードの人達の舌も満足させて見せましょうぞ」
手応え感じて張り切っています、料理長さん。…マーリアちゃんのせいですけどね。まぁいいですけどね。
食事をしながら、アトヤック殿下がリシャーフさんにいろいろ質問しています。正教国の政治形態から、リシャーフさんの立場、リシャーフさんがどうしたいのか。
端から聞いていると、ちょっと不躾ではないか? とは思いましたけど。アトヤック殿下の質問の仕方がうまいですね、リシャーフさんの責任とか義務ではなく、あくまで正教国における聖女という役職について質問することで、リシャーフさんに負担が行かないように聞いてます。
役職と個人は、また別物です。国の要職に居ながら不本意な選択をしなければならないという気持ちがアトヤック殿下にも分るのか、いろいろ真剣に話を聞いていますね。同時に、その役職で出来ることと出来ないこともはっきりさせてます。
リシャーフさんも最初は緊張していましたが。その辺を慮ったアトヤック殿下の態度に、多少は柔らかくなったようです。
…侍従の二人、タルーサさんはなんか"あらあらまぁまぁ"という雰囲気でこの会話を見ています。トゥーラさんは、なんかアトヤック殿下を睨んでいますね。
先ほども話題に出ましたが。正教国に連れて行かれたエルセニム人にも関わる話です。
マーリアちゃんも施術されたマナ術強化ですが。リシャーフさんは、それを取り扱っている組織の実体はよく知らないそうです。ただ、その施術の導入部分はリシャーフさんも施術されたそうです。導入部分と言っても難しい話ではなく。第一段階はまず"飢えさせる"ことなんだそうです。二週間ほど水だけで過ごさせ、粉にしたマナ塊だけ与えると。酷い話ではありますが、飢え死にする前にマナが代謝を引き受けるようになれば成功です。
濃度の差はあれ、この世界ではほぼ全ての生物にマナ物質は浸透しています。有機物?タンパク質? その辺に親和性があるのか、マナの方から選択的に結合しようとしているのか。なにがトリガーになって生体がマナの代謝を利用し始めるのか、マナ側から肉体に浸透した結果マナが代謝されるようになるのか。マナ術全般についてもですが、この辺のマナ物質と生体がどのような相互作用をしているのか、未知数な所が多いですね。メンターが何かやった結果なのは確かでしょうけど。
ともかく。その辺の施術が切っ掛けで、マーリアちゃんは体内のマナのコントロールが他の人よりうまく出来るようになり、マーリアちゃんでは追加投与されたマナも扱えるようになった…というのが、施術の顛末だそうです。
リシャーフさんでは追加の施術は上手く行きませんでしたが、それでも平均よりはずっと身体強化が扱えるように成り、聖女でありながらも騎士団長にまで成れたとか。
ただ。これで正教国の騎士や兵が片っ端に強化されたという話は、リシャーフさんも侍従の護衛騎士の二人も聞いたことがないそうで。成功率が低いのか、単に衰弱死してしまったのか、他に問題があったのか…
探求院では、生きたまま連れてこられた魔獣なんかも研究しているという噂があるそうです。マナ塊が絡んでいる以上、魔獣の変質にはマナが関わっているのだろう…という話ですが。今の話を聞くに、飢えた獣ではマナの力を扱う能力が発現するということなのでしょう。
マーリアちゃんと一緒に連れて行かれたエルセニム人達については、リシャーフさんも知らないそうですが。事が済んだ暁にはその辺の調査もできうる限りすると約束してくれました。
次の日には、もう正教国へ向けて出発です。
本当はマーリアちゃんを何泊かさせてあげたいところですが。正教国でも対ネイルコード国の準備は進めているのでしょう。ネイルコード国との戦争…出来るかとか勝てるかではなく、あのような返答をした以上対峙するという気概を見せるのは国としては当然の反応です。今頃は、正教国以西の国々へ交渉の使者がばらまかれていると思います。あまり正教国に時間を与えたくありません。
アトヤック殿下と配下の部隊が、エルセニムの領内を通過する間の道案内をしてくれます。まずはエルセニム国の領内を東に進み、国境…と言ってもこちらは森が山脈に接しているところですが。ここから山沿いに南下してダーコラ領に入ると、その近くの河が正教国との国境となります。
「マーリア、無理はしないようにな。レイコ殿、リシャーフ殿。妹をよろしくお願いいたします。セレブロに小竜さまも」
「お兄様は心配しすぎよ。これでもお兄様よりも力持ちなんだから」
「まぁそれが家族の情ってもんだ。…正教国にはいろいろ思うところはあるが。目的は常に頭に置いて行動するように」
「はい、お兄様」
子煩悩というより、妹煩悩? マーリアちゃんが正教国に招喚されたときには辛かったでしょぅね…
今は、困ったような笑顔で手を振って見送ってくれています。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?
四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。
もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。
◆
十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。
彼女が向かったのは神社。
その鳥居をくぐると――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる