玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第5章 クラーレスカ正教国の聖女

第5章第026話 エルセニム国への里帰り?

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第5章第026話 エルセニム国への里帰り?

・Side:ツキシマ・レイコ

 キャラバン用野営地で、魚食べたりお風呂遣ったり。これが正教国行きの途中で無ければ、キャンプで楽しーだったんですけどね。
 昨晩は、キャラバンの夫妻の娘さんメルケちゃんがセレブロさんと一緒に寝るの~とやって来まして。私もマーリアちゃんの間で寝てました。
 ヤーダーさんが申し訳なさそうでしたが。すぐ寝付いてしまいましたので、良い子でしたよ?

 翌朝、朝食までご馳走になってしまいました。
 スライスして炙ったパンに、刻んだ野菜とほぐした昨晩の魚を炒めてソースで味付けした物を載せて、港サンド風ですね。
 カップにはスープです。朝食としては上等々々。

 さて。出発の時間です。キャラバンには誘われたのですが、私達は国境を越えますし、先を急ぐ旅です。
 メルケちゃんには泣かれてしまいましたね。主にセレブロさんと別れがたいようです。

 「正教国での用事が終わったら、またエイゼル市に戻るから。エイゼル市のファルリード亭に来れば、セレブロさんともまた会えるから」

 「うん…わかった絶対に行く。いいよね?おかーさんっ?!」

 最後に名残惜しいハグをして、メルケちゃんは離れてくれました。
 みんなして手を振ってくれています。はい、エイゼル市でまた会いましょう。



 今日中には三角州を越えてダーコラ国に入る予定ですが。私達は、馬に合わせた速度で移動します。
 馬の速度と言っても、馬の体力にも限界がありますからね。実は馬は全速力だと10キロメートルも走れないんだとか。一日で一番距離が稼げる速度は、鍛えられた馬でも人が歩く速度の倍程度の速度だそうです。私とマーリアちゃんはランニング状態ですね。


 サルハラ街で越境の手続きです。三角州にはまだ関は無く、事務的なことは街で行なっています。
 ここはネタリア外相の用意してくださった書簡で一発でした。
 現在、ダーコラ国側にも関はないそうです。ダーコラ国は親ネイルコード国となりましたが、この三角州はまだキャラバンでは越えられないですからね。ダーコラ国側分の処理もここでやってもらえます。

 将来的にはここに橋を架けてダーコラ国と陸路で交易と計画はされていますが。そう言えば、この三角州の河を整えるための土木工事について打診されていましたね。
 当然ながら、三角州のほとんどの河には橋はありませんので。一番太い河は、浅いところを徒歩での渡河となります。念のためロープで皆を繋ぎますよ。私もマーリアちゃんも流されるときには流されるのです。体重が足りない、摩擦が足りない。

 無事河を越えたら、後はひたすら西進です。これでも普通のキャラバンの倍くらいの速度は出せていますので、寄る宿場町も一つ置きですね。

 普通の旅ならは、寄ったところで名物料理のグルメツアー…と言いたいところですが。街の食堂の食べ物に関しては、やはりネイルコード国の方が上ですね。水に堅いパーンに、野菜と干し肉や干し魚の入ったスープが出れば十二分…という感じです。まぁ贅沢は言いません。もそもそといただきます。

 ダーコラ国側の街道には、キャラバン用の野営地が整備されているところはほとんどありませんが。途中に良い感じの河が見つかったら、休息兼ねて軽く魚とか取ります。
 セレブロさんは雑食でもいける感じですが、やっぱタンパク質は多めの方が良いでしょうし。捌いて塩振った焼きたての魚は、けっこうご馳走ですしね。お醤油もありますし。

 たまにトゥーラさんが、河辺で休んでいるカモだかガン見たいな鳥を小型の弓で取ってきてくれます。…貴族の令嬢とか言っていませんでしたっけ? けっこうワイルドですね。 そういうときにはシチューですが、シチューの元が切れたので、獣脂や小麦粉あたりで代用です。実際の料理は、タルーサさんがお上手で助かります。

 河辺で一泊の夜営の時には、河辺では風呂も供しますので。もう宿屋より野営の方が良いのでは?なんて話も出てきています。小キャンプ繰り返しながらの遊楽旅行って雰囲気も多少出てきました。
 タルーサさんの手料理ですが。鳥は、腿とはシチュー、手羽はソース塗ってあぶり焼き。胸肉は途中の街で買っておいた香草を使った包み焼き。下処理した肉や魚と香草をでかい葉っぱに包んで、焚木の下に入れておきます。タルーサさんの家での定番料理だそうです。さすがお母さん。

 竈と違い、焚木から取り出すタイミングが難しそうでしたが、上手に焼けました。
 肉は火を通しすぎると固くなるものですが。蒸焼きで好い加減です。

 「お風呂入って、こんな美味しいもの食べて。…なんか目的忘れるわね」

 マーリアちゃんものんびりしております。確かに気持ちいい夜ですね。

 タルーサさんがレッドさんの食事の補助をしています。まぁ食べやすいように取り分ける程度ですが。

 「ククーッ!」

 「どういたしまして、小竜神様」

 なんとなく会話が成立しております。まぁお礼くらいは伝わるものです。



 「レイコ、エルセニムに寄っていかない?」

 食事も終わり、焚木を囲んでの団らんというところで、マーリアちゃんからの提案です。

 「んっ? 里帰り?」

 「それもあるけど。ダーコラの北側国境から正教国入りするのなら、一旦エルセニムに寄っても大差ないと思うんだよね。これからレイコと一緒に正教国に殴り込みに行くのなら、お父様達に一応説明だけはしておきたいし…」

 私の立場は、表向きネイルコード国とは無関係な個人だけど。マーリアちゃんは紛う事なきエルセニム国の王族です。もしかしたらマーリアちゃんが王様らに反対されてそこでお別れ…とかちょっと考えたけど。国に殴り込みなんて事で、無理してご両親に心配かけるわけには行かないか。その場合は致し方なし。

 「リシャーフさんはどうですか? 銀髪紅眼の悪魔の国ですよ」

 「レイコ殿、意地悪言わないでください。…まぁ正教国ではそういった話があるのは確かですし、私も子供の頃にはさんざん脅かされましたけど。マーリア殿を見れば偏見だってのは分りました」

 「…ちなみにどんな風に脅かされていたの?」

 「…良い子にしていないと、夜中に攫われて血を吸われるとか…」

 「吸血鬼かい?」

 「レイコ、"キュウケツキ"って何?」

 「私の世界の空想で有名だった、人の血を糧にしている不死の魔人ね。弱点は、日の光とか、十字架…宗教シンボルね、あとニンニク…これは匂いのきつい種類の香草かな?」

 「…へんな弱点ね。不死なのに弱点あるんだ」

 マーリアちゃんは、ニンニク風味の玉ねぎ、普通に食べてましたもんね。

 「木の杭で胸を貫くと死ぬとかあったなぁ…」

 「ぷっ あはははは。そんなの、キュウケツキとかじゃなくても死ぬに決まっているじゃないのっ! あははははっ」

 なんかツボにはまったようです、マーリアちゃん。…そう言われれば、確かにそうですね。

 まぁ、リシャーフさん達の立場はエルセニム国ではちょっと微妙だけど。マーリアちゃんのお兄さんアトヤック殿下はけっこう理性的だったから、いきなり捕縛!処刑!って事もないでしょう。私がさせません。
 …なんとなくですが。今の内にエルセニム国のトップと正教国の聖女とで面通し出来るのなら、それに越したことが無い感じもします。リシャーフさんも定義によっては王女様ですからね。将来的に交流もあるかも…ってことで。



 というわけで。国境のところからエルセニム国の警備兵に連れられて、久しぶりのエルセニム国の王宮です。
 リシャーフさんの紹介をしたところ、ちょっと緊張が走りましたけど。私とマーリアちゃんが問題なさげに一緒にいると言うことで、収めてくれたようです。

 巨大な木が生え並ぶエルセニム国の王都です。道中、リシャーフさん達はずっと上向いていました。…馬捌きには気をつけてくださいね。…こういうとき、馬は自動運転だから便利ですよね。


 「…なるほど。それでそちらが正教国の聖女殿と…」

 前回と同じ、謁見室というよりは会議室ですね。まぁ私はともかく、リシャーフさん達に対しては歓迎ムードというわけでも無いので、事務的になっています。
 うーん。やはりバヤルタ陛下には、ちょっと敵愾心が見えますね。まぁ経緯を考えれば、まったく無関係の人間と見なすことは、心情的になかなか行かないのでしょうが。

 「父上。ダーコラ国にて、奴隷や連れ去りに関係ない者の責は問わないと明言しておりますし。同じ国の人間だからと迫害しては、同じ轍を踏むだけですぞ」

 同席しているアトヤック殿下がリシャーフさんを擁護します。…うーん、なかなか王太子としての見識と風格が付いてきていますね。

 「…マーリアから見て、聖女殿はいかがなのだ? レイコ殿と共にエルセニム国にまで連れてきたと言うことは、彼女自身には問題は無いと言うことなのだろうが…」

 「うーん。生来正教国育ちの方だから、それなりに信仰に傾倒はしているんでしょうけど。今の教会の悪い部分はきちんと認識出来ていて、レイコと話してからは正教国をなんとか出来ないかと思い悩んでいる年頃…ってところかな? 赤竜神の巫女と小竜様を正教国に連れて行きたいというよりは、あわよくばレイコをうまく使って教会改革したい…とか考えていると思うんだけど」

 「えっ?」

 自分の半分の歳の子供にずばしされたっ!…という雰囲気でリシャーフさんが驚いています。

 「で、侍従の方々は?」

 注目されたトゥーラさんが、おずおずと話し始めます。

 「初めまして陛下。トゥーラ・プシノと申します。…実家は正教国の隣国の小領主だったのですが。隣の領が正教国からの喜捨…税率上げのために反乱を起こし、私の父はそのときの紛争で亡くなっています。その時我が領を助けてくださったのがリシャーフ様なのですが。わざと叛乱を起こさせて正教国で制圧し完全な正教国配下にするのが教会の目的だったと後で知って。でもルシャール様はその辺は知らずに助けてくださって。…父の仇は、結局は正教国のトップということになるのですが、リシャーフ様はそのトップの一角の聖女様ですし。もうどうしたら良いのかと悩んでいたら、リシャーフ様が巫女様をお迎えに行くと聞いて。だったら巫女様がリシャーフ様に協力していただいて本当のトップになっていただければ万事解決するのではないかと…」

 一気に語るトゥーラさんです。前に少し事情は聞いていましたけど。そんな目論見で私を勧誘することにこだわっていたんでですね。

 「…レイコ、頼られているわねっ」

 マーリアちゃんがからかってきます。まぁ実際に正教国に行く途中ではあるんですけど。なんかこうすべきって枠組み作られつつありますね。

 「お初にお目もじいたします陛下。正教国聖騎士団護衛騎士、タルーサ・ザオクスと申します。私の場合は、夫が聖騎士で家族で教都に住んでいまして、子供も二人おります。…騎士としてはどうかと思いますが、夫の安全を考えると他国との大戦は望みませんし。もちろん巫女様による教都破壊も望みません。正直言えば、巫女様が正教国の召喚に応じなくてネイルコードと正教国が険悪になったとしても、その険悪な状態で安定してくれれば良いな…くらいの気持ちでして。…あの申し訳ありません、私が一番何も考えていなかったですね」

 はい、タルーサお母さんでした。
 いや。日常を守りたいというのは、大きい理由だと思いますよ。子供と旦那さんを優先順位一位にして良いのです。

 にしても、二人とも語りますね。…エルセニム国との因縁考えると、今の内にしゃべっちゃった方が良いって感じですか。

 「…巫女様の前で黙っておくことは出来ませんので告白いたします。実は、我が家にはエルセニム人の…その奴隷が三人おります。夫婦とその子供ですね。前回の連合軍のエルセニム侵攻の時に捕らえられたそうです」

 場に緊張した雰囲気が走りますが。

 「そのエルセニム人達は、今どういう扱いを?」

 「はい。我が家で家事全般と育児も手伝ってもらって…いただいています。今も、彼らが家にいるからこそ、安心してリシャーフ様の護衛として来られたわけでして…」

 「子供を預けられるってことは、まともな扱いで信頼されているってことでいいんじゃないでしょうか? 陛下」

 「ああ、はい!もちろんです。子供ら二人とも、彼らには良く懐いております」

 王様、妃様、アトヤック殿下が目配せして頷きます。…この件はクリアーかな? いつぞやのダーコラ国の奴隷と似たような話ですが。

 「ふむ…アトヤックの言うとおり、正教国の人間というだけで考えてはならぬようだ。エルセニム国国王として、エルセニム人の保護をしていただいたことに感謝せねばならぬ…のかな?」

 「いえ。私は己が手が届く範囲で掬い上げただけです。彼らを見て居たたまれなかったというのもありますが、私も当時子供が生まれたばかりで純粋に労働力として家人が欲しかったのも事実です。善意と言うにはほど遠く、感謝していただくようなことでは… この度のことが収まりましたら、すぐにでも彼らをエルセニム国に帰すことをお約束いたしましょう」

 「うむ。その辺は、レイコ殿の要件が片づいてからじゃな。それでリシャーフ殿、どうなのだ? 現在の正教国を良しとするか否か?」

 「…もともと先代聖女たる我が母は、奴隷制度や信徒以外を迫害することを良しとはしていなかったそうです。父ケルマン祭司総長も母に同意するする部分が多々あったそうですが、母が亡くなってからは、それまでの正教国のやり方を容認するようになってしまったとか。母の死に父がどう思い至ったのかは計り知れませんが。巫女様が正教国ではなくネイルコード国に顕現されたという事実をもって、父の考えを変えていただきたい…とは思っております」

 「…そうか。リシャーフ殿、この国に滞在中の御身の安全はエルセニム国の王として配意しよう。ただ、民や兵士の中には感情的になる者が居ないとも限らない。用心としてこの国に滞在中には、レイコ殿やマーリアとは常に共に行動して欲しい」

 「…ご寛恕ありがとうございます」

 「それで。マーリアも正教国に行く事にしたのか?」

 「はいお父様。まぁ私も正教国に思うところはありますし。なによりレイコを一人で行かせるのは心配だしね」

 「女性らだけでは心許ない。私も同行したいところだが…」

 アトヤック殿下、流石に王太子は一緒には無理ですよ?

 「不本意ではあるが、正教国の技術でマーリアは私よりも強くなったし。巫女様に至ってはそもそも何人も傷つけることは能わぬだろう。リシャーフ殿は当地の聖女様だし。私が着いていっては、私が一番の足手まといに成りかねん。…レイコ殿、妹をお願いいたします」

 「はい、いいえ、いや、私の方がお世話になっている気分なので…本当に連れてって良いんですか?」

 「ネイルコードからは、今回の件についてはまだ連絡は届いておらんが。話を聞くに、レイコ殿の暴走を押さえるためにマーリアとリシャーフ殿の同行が求められていると私は理解しておる。私怨で国を滅ぼしたところで、周辺に混乱が波及するだけで、あまり好ましい事態にはならないとネイルコード側でも思っているのだろう」

 そんな話は、カステラード軍相にも言われましたが。…私って、私怨で国を滅ぼすと思われているんですかね?

 「まぁ、ネイルコード国もこのまま手をこまねいている事はあるまい。あそこのトップの先見性には目を見張るものがあるからな。とくにローザリンテ妃殿下は凄まじいようだ。レイコ殿は今ここにおられる、私もその先読みを信頼しよう」

 ローザリンテ様を出されると、私もマーリアちゃんもなんか納得してしまうのです。国家間の戦略となると、アイズン伯爵よりずっと上を行く方ですからね。


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