148 / 339
第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第005話 オーガル領 バルドラ・オーガル・ニプール伯爵
しおりを挟む
第5章第005話 オーガル領 バルドラ・オーガル・ニプール伯爵
・Side:ツキシマ・レイコ
さて。アイズン伯爵を護衛してユルガルム領へ向かう道中、トクマクの街からタシニの街へ旅は続き、件の崖崩れ現場を通過します。
崖の工事の時に、道造りのために連続して開けたクレーターは、埋め戻されたり縁が削られたりして片車線分だけは整備が済んでいる状態です。今も人足の方が、もう半分の整備の作業を頑張っておられますね。
コッパーさんとナガルさんがアイズン伯爵の馬車に乗り込んできて、道中私に色々聞いてきます。ちょっと窮屈なので、ダンテ隊長にエカテリンさんが御者席に移ってしまいました。レッドさんも一緒に連れて行かれましたよ。
数学を使うような知識を出しても、そもそも測定技術が未熟ですので、厳密な説明以外に今のところ使い道がありませんが。「とりあえずこういう物だ」というメタ情報でよければ、いくらでも答えてあげますよ。
アイズン伯爵も、コッパーさんの剣幕にちょっあきれ顔ですが。興味はあるようで聴き摘まんでいます。
崖の谷間を越えると、そこはオーガル領となります、なにげに初めてこの谷を越えますね。なんか新鮮です。
谷から途中一泊して、オーガル領都に付きます。前の旅と違い、魔獣が出る場所からは離れるルートなので。以前よりはのんびりとした雰囲気の旅程となっております。とはいえ、要人警護の人達は気を張ってますけどね。
この領を治めているのがバルドラ・オーガル・ニプール伯爵。アイズン伯爵とは三十年ほどの付き合いになるそうです。
そもそもこのオーガル領の奥の男爵領がアイズン伯爵の出身地だそうで。アイズン伯爵がまだ男爵だった頃、街道から外れた領地を任されたアイズン伯爵が隣領だった当時はニプール男爵と協力して領地の開発に産業振興を進め、その功績で陞爵を続け今に至る…だそうです。
今でもその領地では、木材の産出から木工製品の生産、件の六六のパーツの量産から始まり。麦に向かない畑を果物畑にして、それを使ったお酒が領の特産品。木材を伐採して所は牧場として牧畜も盛んだそうです。
麦畑を潰すなんて!と当時は反対が大きかったようですが。麦は麦が作りやすいところで、酒は酒が造りやすいところでと、領を跨いで分業した結果、麦の合計収穫量はむしろ増えて、さらにお酒の収益でも大儲け…というのが、アイズン伯爵流領経営のはじまり。
あと、この領には温泉があるそうです。 件の雪をかぶった山脈の一部がこの領にかかっているのですが。その麓で温泉が湧いているとか。まぁここまでお湯を引っ張っては来れないので、領都では入れないのが残念です。
…遠くに見えている山々。スキー場に温泉街…夢は膨らみますね。
「王都での新年の宴ぶりだな、バッシュ。クラウヤート殿もお会いする都度、背が伸びておるな」
「ニプール様、お久しぶりです」
バッシュはアイズン伯爵のファーストネームですね。
領都の迎賓館的なところでニプール伯爵が出迎えてくれました。
アイズン伯爵よりはがっしりした体格ですか。白髪の交じったブラウンヘアーに、カイゼル髭ですが。全体的にいい人っぽい雰囲気ですね。
「ふん、元気そうで何よりじゃ。またなんか騙されそうになったとか聞いたぞ?」
お人好しっぽい雰囲気で、嘆願と称した詐欺まがいの取引がけっこう持ちかけられるそうですが。そこは、エイゼル市で鍛えられた息子さんががっちりガードしているようです。
「ははは。バッセンベル領がああなってしまったからな。質の悪い商人が、どうもあちこちに流れているようだ」
「…まだその辺をうろうろしているのか」
「こちらに、息子やエイゼルから派遣されている役人がいなかったら、どうなっていたことやらだな、はっはっは。それでこちらが噂の赤竜神の巫女様に…小竜様ですかな」
おお、ニプール伯爵が私の前に来て膝をつきます。
「新年の宴では碌にご挨拶できずに失礼しました、赤竜神の巫女様、小竜様。改めまして、私オーガル領主バルドラ・オーガル・ニプール伯爵と申します。お二方のご来訪、まことオーガル領にとって慶事にて。本来なら領を上げてご歓迎するところ、そこのアイズン卿に止められまして。領館のみでの歓迎となることをお許しいただきたく」
思わず、やーめーてーと叫びたくなりますが。
「あ、はい。初めまして。ツキシマ・レイコと申します。こちらはレッドさん。えっと、あまり畏まっていただかない方が私としては…」
「承知いたしました。ではレイコ殿と呼ばせていただきますな」
立ち上がったニプール伯爵は、相好を崩します。
一応私に最敬礼はしておかないと行けない…という、教会経由の決りがあるようで。もっとも、最初だけにしてもらっています。もちろん、街挙げての歓迎とかはご勘弁していただいておりますです。はい。
「ははは、バッシュから伺っていた通りのお人柄のようですな。木材と酒と牧畜が産業の要の土地で、それなりに旨い物が あると自負しております。レイコ殿はいろいろとレシピの奉納をされているようだが。なにか新しいレシピの参考になるような食材があれば良いのだが…」
エイゼル市や王都へは、馬車で四~五日ほど。この領地では卵やお肉も結構あるようですが、生鮮品として他領で売るにはちょっと距離がありますね。鉄道でも引ければ、王都やエイゼル市へ酪農で商売できるのですが…。現状で生鮮食品のほとんどは地産地消するしかありません。
ちょうどユルガルム領に持っていく予定の押し出し式パスタマシンや挽肉の押し出し式ミンサー等が、商品としてキャラバンに積んでありますので。この地の産物を利用したメニューでも検討してみましょうか。
「レイコちゃん、新メニュー?」
「今までのレシピで、この地にあるもので何か試してみようかと思いまして」
「あたしも手伝うわよ!」
マーリアちゃんも料理参戦です。
とはいえ。ファルリード亭のように勝手知ったるカヤンさんがいるわけでもないので。領館の料理長さんにご協力いただいて、簡単なところでハンバーグと。乳製品が多いそうなのでカルボナーラあたりで行きましょうか。胡椒あるかな?
まずは挽肉作りです。
実は手回しタイプのミンサーもアイデアだけはハンマ親方に出してはいたのですが。アイリさんやジャック会頭と相談して、試作の段階で保留中です。
アメリカでホットドックがブームになった十九世紀末。当然ソーセージも大量生産と相成ったわけですが。材料は細切れにしたお肉な訳ですから、古い肉程度ならまだしも、内臓やら肺やら、さらに牛以外の廃棄肉でもともかく骨以外を片っ端に混ぜ込んで…という粗悪品も大量に生産されたんだそうで。まぁ挽肉にしてしまえば分らないですし、調味料やらでごまかせば何とでもなったってことでしょうか。
もしこちらの世界でミンサーを使った挽肉の大量生産ともなれば、いったいどうなるやら… そこまで民度低くないようには思いますが、少量ずつ作れる押し出し式挽肉機の方が安全でしょうということで、しばらく様子見です。
…マーリアちゃん、そこらの大人より怪力です。ジャコンジャコンと挽肉を量産しております。
あ、脂身も適度に。重要ですよ。
まずはハンバーグです。
作れば大人気間違いなしな料理なのですが、上記の理由でまだ積極的にはエイゼル市には広めておりませんし。実際細切れ肉は、古くなった肉の処分方法というイメージもあります。
まぁ美味しいことは変わりはないので、管理体勢こみで広め初めても良いかも…ということで、ここでご披露です。
プリンを広める際にも、卵と牛乳の鮮度を保証するための法整備までエイゼル市ではやってましたからね。この辺の食品もきっちり管理していただきたいところです。
ちなみに。月島家では牛肉百パーセントなんてハンバーグは認めません。百パーセントってのが語呂的に豪華っぽいですけど、牛豚合い挽きで、玉ねぎとパン粉と卵が入った方が絶対美味しいのです。よく肉汁が~なんて言いますけど、あれほとんどが脂身から出てきた溶けた脂です。パン粉と卵がそれを受け止めて中に閉じ込めてくれるから美味しいのです。あと火が通った玉ねぎの香り、いかにも今日はご馳走だ!ってなりますよね。偉大です玉ねぎ。…こちらの玉ねぎ、結構ニンニク臭もしますが、今回はそれも良し!
ついでに言えば、焼く直前に全体にパン粉をまぶして焼くと、さらに肉汁を閉じ込めてくれますが、やり過ぎると脂で胸焼けしますので、混ぜる豚挽肉の割合で調節したいところですね。牛の脂の方が胃に重たい…とお父さんが言ってました。
ちなみにソースですが。港ソースもいいですが、今回は醤油も試していただきましょう。大根おろし!…にはちょっと届きませんが、カブっぽい野菜が辛くていい風味です。
次にカルボナーラです。
まぁ牛乳に卵に、ベーコン代わりのボア肉の燻製があるのなら簡単です。ファルリード亭でも試作していましたか、原価が~ということで、伯爵邸に料理騎士さんがレシピ持ち帰っただけで保留中です。エイゼル市近くで酪農養鶏の拡充がされるそうですので、ファルリード亭のメニューに加わる日は遠くないでしょう。
ちなみにカルボは炭素のカーボンの意味で、元々は炭焼職人風という意味になります。振りかけてある胡椒が、炭の粉に見えたって感じですね。実は卵とミルクは名前に何の関係も無いという、ちょっとあれなネーミングでした。
あとまぁ好みもあるかもしれませんし、せっかく挽肉もありますので。ミートソースも作っておきましょう。
…ネーミングと言えば。第二次世界大戦中、ドイツに占領されたフランスでの抵抗組織がパルチザンですが。資金も輜重も十分とは言えず、堅くなったチーズなんかも粉にしてスープにかけて食べていたそうです。この粉チーズがイタリアに伝わり、パルチザンがイタリア語でパルメザンになった…とお父さんが言ってました…エイプリルフールに。
このオーガル領でも、ユルガルム領とおなじくチーズを作っているそうですが。フレッシュチーズですからね。日持ちの関係で他領にはなかなか持っていくことが出来ません。
完全に水抜きして濃い塩水につけて雑菌の繁殖を抑え。冷暗所で数年寝かせるとハードチーズとなり、保存が効くようになります、是非トライしてみて欲しい…と、バルトら伯爵邸の料理長さんに伝えておきました。 …チーズインハンバーグも良い物ですよ?
ただ、ミートソースにフレッシュチーズはちと合わないので、ソースの方に混ぜてコクを出します。チーズとトマトの旨みは正義です。
代わりに、ビザとかグラタンとかラザニアとか、オーブンで焼くタイプの料理にチーズをたっぷり載せましょう。チーズがトロトロに溶け、表面は炙られてカリカリと、絶妙のバランスです。
…うーん、見事にジャンクフードが揃いました!。いや、これをジャンクと言ってはイタリアに失礼な気がしますが。
それでも…作っておいて何ですけど、秘めたカロリーに背徳感すらあります。…私は太らないですけど。
「なにこれおいしい! こんなの食べたこと無い!」
ハンバーグにカルボナーラパスタをがっつくマーリア様ですが。
おおっとタロウさん…禁断の食べ方にトライしています。パンにハンバーグを挟む! まさにハンバーガー!! それを自力で発明しちゃいましたか! …別に禁断でも何でも無いですね、はい失礼しました。
ハンマ親方も同席していますが。お酒をがぶ飲みしたいのを我慢しつつ、なるべく静かに食事しているのが分ります。まわり貴族とかばかりですからね。
…オーガル領名産のけっこう良いお酒が出ているようですが、私には供してもらえません。中の人は成人しているのに…無念です。 毒も効かないし飲んでも良いんだけど…マーリアちゃんやクラウヤート様の教育によろしくなさそうなので致し方なし。
レッドさんも、底上げしたイスを用意してもらって列席しています。件のカトラリーを使いつつ、行儀良く食べています。
なんか周りの人が微笑ましく見ておりますね。
今回のメニューは、ニプール伯爵とご家族方にも好評なようです。
「おじいさま、これなら毎日でも食べたいです」
お孫さんのロメオ様。まぁ、子供が好きなメニューの上位が揃っているわけですからイチコロですよね。でも、サラダも出ているのですから、野菜もきちんと食べましょう。
「レイコちゃん…すっごく美味しいんだけど…これってやっぱ体重の敵よね?」
「はい。美味しいものは太るのです。美食は自制心との戦いです」
アイリさんが見えない何かと戦っています。
ニプール伯爵の娘でロメオ様の母親のアルベルカ様、太るって言葉が聞こえたのか、ビクッとして切り分けたハンバーグが宙で止っています。
っても元々この地方なら、もともと肉とか乳製品が食卓に上ることは多そうですけどね。
「アルベルカ様、美味しいものは食べすぎるから太るというだけで。食べる量が増えないように気をつければ、今までと同じ程度で大丈夫ですよ」
もともと太っているわけではないのですからとお声がけすると、安心したように続きを楽しまれていました。
…旦那様もイケメンですし。女性はやっぱ美しくあり続けたいというところでしょうか?
ここでピザがやって来ましたよ!。焼きたてを出して欲しいと料理長に頼んでおいたのです。
既に切れ目の入れられた丸いピザ、給仕さんが取り分けてくれます。伸びるチーズが食欲をかき立てますね。
こちらでは、食事の場にナイフはタブーなので、その場で切り分けて貰うことが出来ませんでした。丸い刃を転がすタイプのビザカッターの制作も依頼しなければ。ああいう演出も楽しさなのですよ。
「ちょっとお行儀悪いですけど。この縁の処を手で持って食べるのが通です」
かみ切るとツーと伸びるチーズ。香草の効いたボアベーコン。トマトと玉ねぎのソースも好相性ですねっ!様子を皆に来ている料理長に親指立てます。こちらには無いジェスチャーですが、同じように親指立てで返してくれました。まぁ。みんなの表情見れば一目瞭然というものです。
アルベルカ様がちょっと引きつっておられます。食べる量が増えないように気をつけろと言われても、美味しいものを続けて出されては計画のしようがありません。これは孔明の罠だ!
…それでも。これまた乙女の常套である「明日から気をつける」を発動して、ピザを召し上がってました。
「…レイコ様の嘘つき」
アルベルカ様が小声でぼやきます。アイリさんも頷いてます。私のせいかっ?!
食後のデザートはプリンです。流石に領主の館、砂糖もちゃんとありました。牛乳と卵はここでも手に入りますから、あとは作るだけです。
「これが王家公認のお菓子なのね…確かに美味しいですわ。…お父様はすでに王都の新年の宴で召し上がったそうですが」
ニプール伯爵、娘に嫌み言われてちょっと冷や汗です。あの場所にいたんですね、そう言えばアイズン伯爵と会話していた人のような…。
「お菓子用の香料がまだ足りないのと、あともう少し冷やして食べたいところですので。完成度8割ってところですか」
「これで完成では無いのか…。原料はうちでも良いのが手に入るのだから、こういった菓子も他の領にも売れれば良いのだが…」
「日持ちしませんからね。別のところで食べたいのなら、牛乳のための牛と卵を産む鳥は近くで育てないとだめでしょう」
食べ物美味しいってだけでこの地の名物ポイントは高いのですが。輸送に難があるこの時代、食品を特産品とするには限界があります。
ただ。チーズは水分減らして熟成させれば、他の領に売ることは出来るでしょう。今回使ったボア肉の燻製も十分行けますし、ハムという方向性もあります。この辺を研究してブランド化を狙うべきかなと思います。
「お前の所は、酒ですでに名声を得ておるでは無いか」
アイズン伯爵曰く、ここで生産されるお酒は王室御用達でもあるそうで。一部の銘柄は結構なお値段が付いているそうです。
他国との交易品にもなっているとか。
「なるほど。それと同じように名前で売れる産物にしろってことですな。そう言えば、ちょっと前にエイゼルの方から安酒ばかり大量に注文があったけど、あれは何だ? 安い酒は酒であちこちから注文があるからな、エイゼルだけに回すわけにはいかないぞ」
あ。蒸留酒の原料だそれ。
ハンマ親方を見ると、アイズン伯爵を切実そうに見てますね。アイズン伯爵、いかがですか?
「まぁ原料を生産しているところを無視はできないし。いっそここであれを作らせるのも手ではないか?」
アイズン伯爵から許可が出たので、ハンマ親方が蒸留酒と消毒用アルコールの話をニプール伯爵にします。
試飲できるほど熟成できた現物が無いのは残念ですが、サンプルは持ってきている用ですね。…自分用ですか?
ニプール伯爵が小さいカップで試飲します。
「うっふっ! これはキツいな。正教国より西の方から入ってくるあの強い酒が作れるようになったのか?。しかも怪我の悪化を防ぐ薬にもなると」
ハンマ親方が工程やら必要な機材やらの説明をします。
…消毒薬よりも、やはり飲むための話に偏りがちですね。木材が豊富なここなら、樽に向いた樹もあるかも。良い樽も大切です。
「まぁマルタリクは職人街だからな、あそこで作って呑兵衛に占拠されては仕事が滞って困る」
とアイズン伯爵がチクリ。呑兵衛代表のハンマ親方が苦笑しています。
「消毒薬の方は、医療に関わっているところにはできるだけ早く普及させたいですね。じつは軍省の方からせつかれてまして…」
「なるほどな。用があるのは酒精だけだから、原料は安い酒でも良いわけか。バッシュ、だったら備蓄の種麦を切り崩すときには、なるだけ多くこちらに寄越してくれ。エールの増産で対処しよう。あとその蒸留器だな、なるだけはやく設置したい」
「うむ。ハンマ殿、手配を頼んでも良いか?」
「承知いたしました。マルタリクの方には、すぐにでも連絡を入れて検討を開始させます。今回がユルガルム行きで丁度良かった、向こうで銅を大量に融通してもらわないとな」
備蓄の期限が切れた麦は、入れ替え時に割安で市場に放出されます。発酵の前段階として糖化させるには、一度発芽させる必要があるので、種麦が必要なのです。この辺、研いだ米に麹で発酵させる日本酒とはだいぶ違いますね。
うん。領間での商売の話になってきました。チーズとかよりこちらの方が話が大きくなりそうです。酒は偉大です。
・Side:ツキシマ・レイコ
さて。アイズン伯爵を護衛してユルガルム領へ向かう道中、トクマクの街からタシニの街へ旅は続き、件の崖崩れ現場を通過します。
崖の工事の時に、道造りのために連続して開けたクレーターは、埋め戻されたり縁が削られたりして片車線分だけは整備が済んでいる状態です。今も人足の方が、もう半分の整備の作業を頑張っておられますね。
コッパーさんとナガルさんがアイズン伯爵の馬車に乗り込んできて、道中私に色々聞いてきます。ちょっと窮屈なので、ダンテ隊長にエカテリンさんが御者席に移ってしまいました。レッドさんも一緒に連れて行かれましたよ。
数学を使うような知識を出しても、そもそも測定技術が未熟ですので、厳密な説明以外に今のところ使い道がありませんが。「とりあえずこういう物だ」というメタ情報でよければ、いくらでも答えてあげますよ。
アイズン伯爵も、コッパーさんの剣幕にちょっあきれ顔ですが。興味はあるようで聴き摘まんでいます。
崖の谷間を越えると、そこはオーガル領となります、なにげに初めてこの谷を越えますね。なんか新鮮です。
谷から途中一泊して、オーガル領都に付きます。前の旅と違い、魔獣が出る場所からは離れるルートなので。以前よりはのんびりとした雰囲気の旅程となっております。とはいえ、要人警護の人達は気を張ってますけどね。
この領を治めているのがバルドラ・オーガル・ニプール伯爵。アイズン伯爵とは三十年ほどの付き合いになるそうです。
そもそもこのオーガル領の奥の男爵領がアイズン伯爵の出身地だそうで。アイズン伯爵がまだ男爵だった頃、街道から外れた領地を任されたアイズン伯爵が隣領だった当時はニプール男爵と協力して領地の開発に産業振興を進め、その功績で陞爵を続け今に至る…だそうです。
今でもその領地では、木材の産出から木工製品の生産、件の六六のパーツの量産から始まり。麦に向かない畑を果物畑にして、それを使ったお酒が領の特産品。木材を伐採して所は牧場として牧畜も盛んだそうです。
麦畑を潰すなんて!と当時は反対が大きかったようですが。麦は麦が作りやすいところで、酒は酒が造りやすいところでと、領を跨いで分業した結果、麦の合計収穫量はむしろ増えて、さらにお酒の収益でも大儲け…というのが、アイズン伯爵流領経営のはじまり。
あと、この領には温泉があるそうです。 件の雪をかぶった山脈の一部がこの領にかかっているのですが。その麓で温泉が湧いているとか。まぁここまでお湯を引っ張っては来れないので、領都では入れないのが残念です。
…遠くに見えている山々。スキー場に温泉街…夢は膨らみますね。
「王都での新年の宴ぶりだな、バッシュ。クラウヤート殿もお会いする都度、背が伸びておるな」
「ニプール様、お久しぶりです」
バッシュはアイズン伯爵のファーストネームですね。
領都の迎賓館的なところでニプール伯爵が出迎えてくれました。
アイズン伯爵よりはがっしりした体格ですか。白髪の交じったブラウンヘアーに、カイゼル髭ですが。全体的にいい人っぽい雰囲気ですね。
「ふん、元気そうで何よりじゃ。またなんか騙されそうになったとか聞いたぞ?」
お人好しっぽい雰囲気で、嘆願と称した詐欺まがいの取引がけっこう持ちかけられるそうですが。そこは、エイゼル市で鍛えられた息子さんががっちりガードしているようです。
「ははは。バッセンベル領がああなってしまったからな。質の悪い商人が、どうもあちこちに流れているようだ」
「…まだその辺をうろうろしているのか」
「こちらに、息子やエイゼルから派遣されている役人がいなかったら、どうなっていたことやらだな、はっはっは。それでこちらが噂の赤竜神の巫女様に…小竜様ですかな」
おお、ニプール伯爵が私の前に来て膝をつきます。
「新年の宴では碌にご挨拶できずに失礼しました、赤竜神の巫女様、小竜様。改めまして、私オーガル領主バルドラ・オーガル・ニプール伯爵と申します。お二方のご来訪、まことオーガル領にとって慶事にて。本来なら領を上げてご歓迎するところ、そこのアイズン卿に止められまして。領館のみでの歓迎となることをお許しいただきたく」
思わず、やーめーてーと叫びたくなりますが。
「あ、はい。初めまして。ツキシマ・レイコと申します。こちらはレッドさん。えっと、あまり畏まっていただかない方が私としては…」
「承知いたしました。ではレイコ殿と呼ばせていただきますな」
立ち上がったニプール伯爵は、相好を崩します。
一応私に最敬礼はしておかないと行けない…という、教会経由の決りがあるようで。もっとも、最初だけにしてもらっています。もちろん、街挙げての歓迎とかはご勘弁していただいておりますです。はい。
「ははは、バッシュから伺っていた通りのお人柄のようですな。木材と酒と牧畜が産業の要の土地で、それなりに旨い物が あると自負しております。レイコ殿はいろいろとレシピの奉納をされているようだが。なにか新しいレシピの参考になるような食材があれば良いのだが…」
エイゼル市や王都へは、馬車で四~五日ほど。この領地では卵やお肉も結構あるようですが、生鮮品として他領で売るにはちょっと距離がありますね。鉄道でも引ければ、王都やエイゼル市へ酪農で商売できるのですが…。現状で生鮮食品のほとんどは地産地消するしかありません。
ちょうどユルガルム領に持っていく予定の押し出し式パスタマシンや挽肉の押し出し式ミンサー等が、商品としてキャラバンに積んでありますので。この地の産物を利用したメニューでも検討してみましょうか。
「レイコちゃん、新メニュー?」
「今までのレシピで、この地にあるもので何か試してみようかと思いまして」
「あたしも手伝うわよ!」
マーリアちゃんも料理参戦です。
とはいえ。ファルリード亭のように勝手知ったるカヤンさんがいるわけでもないので。領館の料理長さんにご協力いただいて、簡単なところでハンバーグと。乳製品が多いそうなのでカルボナーラあたりで行きましょうか。胡椒あるかな?
まずは挽肉作りです。
実は手回しタイプのミンサーもアイデアだけはハンマ親方に出してはいたのですが。アイリさんやジャック会頭と相談して、試作の段階で保留中です。
アメリカでホットドックがブームになった十九世紀末。当然ソーセージも大量生産と相成ったわけですが。材料は細切れにしたお肉な訳ですから、古い肉程度ならまだしも、内臓やら肺やら、さらに牛以外の廃棄肉でもともかく骨以外を片っ端に混ぜ込んで…という粗悪品も大量に生産されたんだそうで。まぁ挽肉にしてしまえば分らないですし、調味料やらでごまかせば何とでもなったってことでしょうか。
もしこちらの世界でミンサーを使った挽肉の大量生産ともなれば、いったいどうなるやら… そこまで民度低くないようには思いますが、少量ずつ作れる押し出し式挽肉機の方が安全でしょうということで、しばらく様子見です。
…マーリアちゃん、そこらの大人より怪力です。ジャコンジャコンと挽肉を量産しております。
あ、脂身も適度に。重要ですよ。
まずはハンバーグです。
作れば大人気間違いなしな料理なのですが、上記の理由でまだ積極的にはエイゼル市には広めておりませんし。実際細切れ肉は、古くなった肉の処分方法というイメージもあります。
まぁ美味しいことは変わりはないので、管理体勢こみで広め初めても良いかも…ということで、ここでご披露です。
プリンを広める際にも、卵と牛乳の鮮度を保証するための法整備までエイゼル市ではやってましたからね。この辺の食品もきっちり管理していただきたいところです。
ちなみに。月島家では牛肉百パーセントなんてハンバーグは認めません。百パーセントってのが語呂的に豪華っぽいですけど、牛豚合い挽きで、玉ねぎとパン粉と卵が入った方が絶対美味しいのです。よく肉汁が~なんて言いますけど、あれほとんどが脂身から出てきた溶けた脂です。パン粉と卵がそれを受け止めて中に閉じ込めてくれるから美味しいのです。あと火が通った玉ねぎの香り、いかにも今日はご馳走だ!ってなりますよね。偉大です玉ねぎ。…こちらの玉ねぎ、結構ニンニク臭もしますが、今回はそれも良し!
ついでに言えば、焼く直前に全体にパン粉をまぶして焼くと、さらに肉汁を閉じ込めてくれますが、やり過ぎると脂で胸焼けしますので、混ぜる豚挽肉の割合で調節したいところですね。牛の脂の方が胃に重たい…とお父さんが言ってました。
ちなみにソースですが。港ソースもいいですが、今回は醤油も試していただきましょう。大根おろし!…にはちょっと届きませんが、カブっぽい野菜が辛くていい風味です。
次にカルボナーラです。
まぁ牛乳に卵に、ベーコン代わりのボア肉の燻製があるのなら簡単です。ファルリード亭でも試作していましたか、原価が~ということで、伯爵邸に料理騎士さんがレシピ持ち帰っただけで保留中です。エイゼル市近くで酪農養鶏の拡充がされるそうですので、ファルリード亭のメニューに加わる日は遠くないでしょう。
ちなみにカルボは炭素のカーボンの意味で、元々は炭焼職人風という意味になります。振りかけてある胡椒が、炭の粉に見えたって感じですね。実は卵とミルクは名前に何の関係も無いという、ちょっとあれなネーミングでした。
あとまぁ好みもあるかもしれませんし、せっかく挽肉もありますので。ミートソースも作っておきましょう。
…ネーミングと言えば。第二次世界大戦中、ドイツに占領されたフランスでの抵抗組織がパルチザンですが。資金も輜重も十分とは言えず、堅くなったチーズなんかも粉にしてスープにかけて食べていたそうです。この粉チーズがイタリアに伝わり、パルチザンがイタリア語でパルメザンになった…とお父さんが言ってました…エイプリルフールに。
このオーガル領でも、ユルガルム領とおなじくチーズを作っているそうですが。フレッシュチーズですからね。日持ちの関係で他領にはなかなか持っていくことが出来ません。
完全に水抜きして濃い塩水につけて雑菌の繁殖を抑え。冷暗所で数年寝かせるとハードチーズとなり、保存が効くようになります、是非トライしてみて欲しい…と、バルトら伯爵邸の料理長さんに伝えておきました。 …チーズインハンバーグも良い物ですよ?
ただ、ミートソースにフレッシュチーズはちと合わないので、ソースの方に混ぜてコクを出します。チーズとトマトの旨みは正義です。
代わりに、ビザとかグラタンとかラザニアとか、オーブンで焼くタイプの料理にチーズをたっぷり載せましょう。チーズがトロトロに溶け、表面は炙られてカリカリと、絶妙のバランスです。
…うーん、見事にジャンクフードが揃いました!。いや、これをジャンクと言ってはイタリアに失礼な気がしますが。
それでも…作っておいて何ですけど、秘めたカロリーに背徳感すらあります。…私は太らないですけど。
「なにこれおいしい! こんなの食べたこと無い!」
ハンバーグにカルボナーラパスタをがっつくマーリア様ですが。
おおっとタロウさん…禁断の食べ方にトライしています。パンにハンバーグを挟む! まさにハンバーガー!! それを自力で発明しちゃいましたか! …別に禁断でも何でも無いですね、はい失礼しました。
ハンマ親方も同席していますが。お酒をがぶ飲みしたいのを我慢しつつ、なるべく静かに食事しているのが分ります。まわり貴族とかばかりですからね。
…オーガル領名産のけっこう良いお酒が出ているようですが、私には供してもらえません。中の人は成人しているのに…無念です。 毒も効かないし飲んでも良いんだけど…マーリアちゃんやクラウヤート様の教育によろしくなさそうなので致し方なし。
レッドさんも、底上げしたイスを用意してもらって列席しています。件のカトラリーを使いつつ、行儀良く食べています。
なんか周りの人が微笑ましく見ておりますね。
今回のメニューは、ニプール伯爵とご家族方にも好評なようです。
「おじいさま、これなら毎日でも食べたいです」
お孫さんのロメオ様。まぁ、子供が好きなメニューの上位が揃っているわけですからイチコロですよね。でも、サラダも出ているのですから、野菜もきちんと食べましょう。
「レイコちゃん…すっごく美味しいんだけど…これってやっぱ体重の敵よね?」
「はい。美味しいものは太るのです。美食は自制心との戦いです」
アイリさんが見えない何かと戦っています。
ニプール伯爵の娘でロメオ様の母親のアルベルカ様、太るって言葉が聞こえたのか、ビクッとして切り分けたハンバーグが宙で止っています。
っても元々この地方なら、もともと肉とか乳製品が食卓に上ることは多そうですけどね。
「アルベルカ様、美味しいものは食べすぎるから太るというだけで。食べる量が増えないように気をつければ、今までと同じ程度で大丈夫ですよ」
もともと太っているわけではないのですからとお声がけすると、安心したように続きを楽しまれていました。
…旦那様もイケメンですし。女性はやっぱ美しくあり続けたいというところでしょうか?
ここでピザがやって来ましたよ!。焼きたてを出して欲しいと料理長に頼んでおいたのです。
既に切れ目の入れられた丸いピザ、給仕さんが取り分けてくれます。伸びるチーズが食欲をかき立てますね。
こちらでは、食事の場にナイフはタブーなので、その場で切り分けて貰うことが出来ませんでした。丸い刃を転がすタイプのビザカッターの制作も依頼しなければ。ああいう演出も楽しさなのですよ。
「ちょっとお行儀悪いですけど。この縁の処を手で持って食べるのが通です」
かみ切るとツーと伸びるチーズ。香草の効いたボアベーコン。トマトと玉ねぎのソースも好相性ですねっ!様子を皆に来ている料理長に親指立てます。こちらには無いジェスチャーですが、同じように親指立てで返してくれました。まぁ。みんなの表情見れば一目瞭然というものです。
アルベルカ様がちょっと引きつっておられます。食べる量が増えないように気をつけろと言われても、美味しいものを続けて出されては計画のしようがありません。これは孔明の罠だ!
…それでも。これまた乙女の常套である「明日から気をつける」を発動して、ピザを召し上がってました。
「…レイコ様の嘘つき」
アルベルカ様が小声でぼやきます。アイリさんも頷いてます。私のせいかっ?!
食後のデザートはプリンです。流石に領主の館、砂糖もちゃんとありました。牛乳と卵はここでも手に入りますから、あとは作るだけです。
「これが王家公認のお菓子なのね…確かに美味しいですわ。…お父様はすでに王都の新年の宴で召し上がったそうですが」
ニプール伯爵、娘に嫌み言われてちょっと冷や汗です。あの場所にいたんですね、そう言えばアイズン伯爵と会話していた人のような…。
「お菓子用の香料がまだ足りないのと、あともう少し冷やして食べたいところですので。完成度8割ってところですか」
「これで完成では無いのか…。原料はうちでも良いのが手に入るのだから、こういった菓子も他の領にも売れれば良いのだが…」
「日持ちしませんからね。別のところで食べたいのなら、牛乳のための牛と卵を産む鳥は近くで育てないとだめでしょう」
食べ物美味しいってだけでこの地の名物ポイントは高いのですが。輸送に難があるこの時代、食品を特産品とするには限界があります。
ただ。チーズは水分減らして熟成させれば、他の領に売ることは出来るでしょう。今回使ったボア肉の燻製も十分行けますし、ハムという方向性もあります。この辺を研究してブランド化を狙うべきかなと思います。
「お前の所は、酒ですでに名声を得ておるでは無いか」
アイズン伯爵曰く、ここで生産されるお酒は王室御用達でもあるそうで。一部の銘柄は結構なお値段が付いているそうです。
他国との交易品にもなっているとか。
「なるほど。それと同じように名前で売れる産物にしろってことですな。そう言えば、ちょっと前にエイゼルの方から安酒ばかり大量に注文があったけど、あれは何だ? 安い酒は酒であちこちから注文があるからな、エイゼルだけに回すわけにはいかないぞ」
あ。蒸留酒の原料だそれ。
ハンマ親方を見ると、アイズン伯爵を切実そうに見てますね。アイズン伯爵、いかがですか?
「まぁ原料を生産しているところを無視はできないし。いっそここであれを作らせるのも手ではないか?」
アイズン伯爵から許可が出たので、ハンマ親方が蒸留酒と消毒用アルコールの話をニプール伯爵にします。
試飲できるほど熟成できた現物が無いのは残念ですが、サンプルは持ってきている用ですね。…自分用ですか?
ニプール伯爵が小さいカップで試飲します。
「うっふっ! これはキツいな。正教国より西の方から入ってくるあの強い酒が作れるようになったのか?。しかも怪我の悪化を防ぐ薬にもなると」
ハンマ親方が工程やら必要な機材やらの説明をします。
…消毒薬よりも、やはり飲むための話に偏りがちですね。木材が豊富なここなら、樽に向いた樹もあるかも。良い樽も大切です。
「まぁマルタリクは職人街だからな、あそこで作って呑兵衛に占拠されては仕事が滞って困る」
とアイズン伯爵がチクリ。呑兵衛代表のハンマ親方が苦笑しています。
「消毒薬の方は、医療に関わっているところにはできるだけ早く普及させたいですね。じつは軍省の方からせつかれてまして…」
「なるほどな。用があるのは酒精だけだから、原料は安い酒でも良いわけか。バッシュ、だったら備蓄の種麦を切り崩すときには、なるだけ多くこちらに寄越してくれ。エールの増産で対処しよう。あとその蒸留器だな、なるだけはやく設置したい」
「うむ。ハンマ殿、手配を頼んでも良いか?」
「承知いたしました。マルタリクの方には、すぐにでも連絡を入れて検討を開始させます。今回がユルガルム行きで丁度良かった、向こうで銅を大量に融通してもらわないとな」
備蓄の期限が切れた麦は、入れ替え時に割安で市場に放出されます。発酵の前段階として糖化させるには、一度発芽させる必要があるので、種麦が必要なのです。この辺、研いだ米に麹で発酵させる日本酒とはだいぶ違いますね。
うん。領間での商売の話になってきました。チーズとかよりこちらの方が話が大きくなりそうです。酒は偉大です。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?
四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。
もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。
◆
十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。
彼女が向かったのは神社。
その鳥居をくぐると――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる