145 / 339
第5章 クラーレスカ正教国の聖女
第5章第002話 トラーリ・バッセンベル・ガランツ女伯爵
しおりを挟む
第5章第002話 トラーリ・バッセンベル・ガランツ女伯爵
・Side:ツキシマ・レイコ
バッセンベル領ジートミル・バッセンベル・ガランツ元辺境候の娘、トラーリ・バッセンベル・ガランツ様。アトラコムの叛逆未遂の仕置きで家は伯爵に降格となりましたが。ガランツ元辺境候が亡くなったあと、無事爵位を引き継ぐことは出来ました。
条件はいろいろありますが、ネイルコード国では女性でも爵位を引き継ぐことは可能だそうです。
トラーリ様は、春からエイゼル市での研修が待っています。バッセンベル領の代官となる人の家族がエイゼル市に残っているそうで、その奥さんがいろいろとお世話をしているそうです。
彼女とは、アイズン伯爵の屋敷でお会いすることがありました。
「国境での顛末は伺っております。巫女様、ご心労おかけして申し訳ありませんでした」
「悪いのはアトラコム一味だというのは理解しています。トラーリ様が謝られる必要は無いですよ」
「…それでも、父が伏せっていた以上、バッセンベル領貴族のしでかしたことは私にも責任があります」
いきなり謝罪されましたよ。人一倍責任感強い方のようですね。領主の娘として、アトラコムの専横には忸怩たる物があったのでしょう。
「分りました。謝罪は受け入れますので」
切り上げないと話が進まないみたいですからね。
「ありがとうございます… あのアイズン伯爵、ザッコの家族らの墓を参りたいのですが…」
「墓?」
アイズン伯爵とダンテ隊長が、マズイ!って顔をしました。
「あー。アトラコムがですな。ザッコの不始末の処理したという証拠と称して、…ああ…遺体を送りつけてきたんですよ、あの馬鹿は」
ダンテ隊長が若干しどろもどろで説明してくれます。
「…レイコ殿が嫌がるのを分ってやったのか、それとも嫌がらせをしたいのはわし相手なのか。…まぁそれが分ったところで今更何が変わるわけでもあるまいがな。ともかくレイコ殿が不快になることだけは確かじゃからの。母子の方は貴族墓地に丁重に葬ってある」
「あ…あの…申し訳ありません!アイズン伯爵!」
ザッコの件が私に知らされていないことを理解したトラーリ様が、平身低頭です。
「お気遣いありがとうございます、アイズン伯爵。…バッセンベル領で処分されても碌な扱いでは無かったでしょうから。こちらで葬られたのなら、まだずっとマシでしょう」
…向こうでなら打ち捨てられて終わりそうですからね。
「…そう言って貰えると助かる」
私達がダーコラ国に出張っている間に、王都でアトラコム・メペック・モレーロス元伯爵の裁判が実施され、もろもろの証拠によって処刑が決定。私が帰ってくる前に執行されていたそうです。
処刑はだいたい罪人用の墓地で行なわれるそうです。掘られた縦穴の上に絞首刑の台が組まれて執行。死んだらそのまま墓穴に落されて埋められて終わり…だそうです。 死後に遺体を引き取る家があるのならまた違うそうですが、今回はお家断絶ですからね。引取りを申し出た親族もいなかったそうです。
処刑を見世物にするようなことは、ネイルコード国ではほとんどしないそうです。公開処刑は、民に多大な損害を与えたような場合に行なわれるだけだとか。例えば、大量殺人とか放火で街を燃やしたとかがそれにあたりますね。
今回も、処刑の許可を出したクライスファー陛下にカステラード軍相、バッセンベル領新領主のトラーリ様、司法関係者、この程度が見届け人として参列します。
アトラコムは最後まで命乞いしていたそうですが。
「いろいろ言いたいことはありますが、あなたが病床の父に代わりバッセンベル領を切り盛りしていたのは確かでしょうね」
「なっ! ならばっ!」
「…もしあなたがザッコの妻と幼い子供を見逃していれば、私も助命嘆願したかもしれませんね。彼女らの処刑にあなたは立ち会ったと聞きます。彼女はあなたに命乞いをしなかったのですか? せめて子供だけはとは言わなかったのですか?」
こうトラーリ様が言うと、アトラコムは観念したのか何も言わなくなったそうです。
「…今度はあなたの番です」
アトラコムの嫡子であるモンテスは、結局ダーコラ国から戻って来られませんでした。
モンテスに同行していた貴族子弟も骨折で歩けなくなっている者が多いため、奴隷としての価値も無く。彼らの略奪に対する補償金がネイルコード国から支払われたこともあって身代金を取る必要も無くなり。全員が賊として処刑されたそうです。
補償金が支払われたことでそれを身代金と見なして返還という話も、ダーコラ国側から持ちかけられていたそうですが、この件に対するクライスファー陛下の怒りは収まらず「ご配慮に感謝するも、無用に願いたい」という返事がなされたとか。
本来は、この叛逆はバッセンベル領の罪と言うことで、トラーリ様の父親であるジートミル前辺境候が処罰されるところでしたが判決前に病没、代わりに次期領主のトラーリ様が代わりに処刑…ってのはいくら何でも不憫ですので、カステラード殿下が私の恩赦ということで手を回しました。前領主の喪が明けたら、エイゼル市で領主としての勉学予定です。
「ジートミル様は残念でしたね」
「ありがとうございます。巫女様にそう言っていただければ父も喜んでいるかと…父ももっと素直になっていれば、生きている内にアイズン伯爵やレイコ様ともいろいろ話せたと思うのですが…」
「武威で領主にまでなった彼奴からすれば、わしは姑息な手を使って街を大きくしているように見えたんじゃろうな」
「…いえ。父が読んでいたエイゼル市についての報告は結構詳細なものでしたよ。それを読んで一度、自分には出来ないなと洩らしたことがありましたが…」
「ジートミル卿がか?」
「はい。おそらく内政という枠では伯爵に敵わないことは認めていたようです」
「ふむ…彼奴がの…」
「案外、互いの得手不得手を認めて話をしていたら、意気投合していたかもしれませんね」
「そう言われると。亡くなられる前に一度話をしてみたかったの…」
「…多分、父もそう思っていたかと」
伯爵への毒殺未遂は、毒の仕入れをしていた商会までは判明したそうですが、誰が指示して実行したのかまだ不明だそうです。
その商会から毒を買っていた貴族がそこそこの数おりまして、そのことも事件をややこしくしているのですが。
ただ、こうなってくると先代辺境候が指示したとも思えず。一番妖しいアトラコムはすでに墓の下。調査は今後も続行されるそうですが、容疑者が多すぎて迷宮入りしそうですね。難儀な話です。
「トラーリ嬢。ともかくあなたが次の領主じゃ。この街でしっかり学んで、バッセンベルをより豊かに盛り立てて欲しい。それがジートミル卿への供養にもなるじゃろう」
「はい。ご指導よろしくお願いいたします」
「ふふふ。任せておきなさい。なに三年もあれば王国の政にも口が出せるくらいにはして差し上げよう」
あの恐い笑顔でニヤッと笑うアイズン伯爵でした。ほら、トラーリ様ちょっと引いてますよ?
…その後トラーリ様は、いきなり領庁に放り込まれてブライン様の下に付けられ。午前が文官による領経営に関する講義、午後が実際の書類仕事と外回りというスパルタスケジュールで涙目になるのでした。
・Side:ツキシマ・レイコ
バッセンベル領ジートミル・バッセンベル・ガランツ元辺境候の娘、トラーリ・バッセンベル・ガランツ様。アトラコムの叛逆未遂の仕置きで家は伯爵に降格となりましたが。ガランツ元辺境候が亡くなったあと、無事爵位を引き継ぐことは出来ました。
条件はいろいろありますが、ネイルコード国では女性でも爵位を引き継ぐことは可能だそうです。
トラーリ様は、春からエイゼル市での研修が待っています。バッセンベル領の代官となる人の家族がエイゼル市に残っているそうで、その奥さんがいろいろとお世話をしているそうです。
彼女とは、アイズン伯爵の屋敷でお会いすることがありました。
「国境での顛末は伺っております。巫女様、ご心労おかけして申し訳ありませんでした」
「悪いのはアトラコム一味だというのは理解しています。トラーリ様が謝られる必要は無いですよ」
「…それでも、父が伏せっていた以上、バッセンベル領貴族のしでかしたことは私にも責任があります」
いきなり謝罪されましたよ。人一倍責任感強い方のようですね。領主の娘として、アトラコムの専横には忸怩たる物があったのでしょう。
「分りました。謝罪は受け入れますので」
切り上げないと話が進まないみたいですからね。
「ありがとうございます… あのアイズン伯爵、ザッコの家族らの墓を参りたいのですが…」
「墓?」
アイズン伯爵とダンテ隊長が、マズイ!って顔をしました。
「あー。アトラコムがですな。ザッコの不始末の処理したという証拠と称して、…ああ…遺体を送りつけてきたんですよ、あの馬鹿は」
ダンテ隊長が若干しどろもどろで説明してくれます。
「…レイコ殿が嫌がるのを分ってやったのか、それとも嫌がらせをしたいのはわし相手なのか。…まぁそれが分ったところで今更何が変わるわけでもあるまいがな。ともかくレイコ殿が不快になることだけは確かじゃからの。母子の方は貴族墓地に丁重に葬ってある」
「あ…あの…申し訳ありません!アイズン伯爵!」
ザッコの件が私に知らされていないことを理解したトラーリ様が、平身低頭です。
「お気遣いありがとうございます、アイズン伯爵。…バッセンベル領で処分されても碌な扱いでは無かったでしょうから。こちらで葬られたのなら、まだずっとマシでしょう」
…向こうでなら打ち捨てられて終わりそうですからね。
「…そう言って貰えると助かる」
私達がダーコラ国に出張っている間に、王都でアトラコム・メペック・モレーロス元伯爵の裁判が実施され、もろもろの証拠によって処刑が決定。私が帰ってくる前に執行されていたそうです。
処刑はだいたい罪人用の墓地で行なわれるそうです。掘られた縦穴の上に絞首刑の台が組まれて執行。死んだらそのまま墓穴に落されて埋められて終わり…だそうです。 死後に遺体を引き取る家があるのならまた違うそうですが、今回はお家断絶ですからね。引取りを申し出た親族もいなかったそうです。
処刑を見世物にするようなことは、ネイルコード国ではほとんどしないそうです。公開処刑は、民に多大な損害を与えたような場合に行なわれるだけだとか。例えば、大量殺人とか放火で街を燃やしたとかがそれにあたりますね。
今回も、処刑の許可を出したクライスファー陛下にカステラード軍相、バッセンベル領新領主のトラーリ様、司法関係者、この程度が見届け人として参列します。
アトラコムは最後まで命乞いしていたそうですが。
「いろいろ言いたいことはありますが、あなたが病床の父に代わりバッセンベル領を切り盛りしていたのは確かでしょうね」
「なっ! ならばっ!」
「…もしあなたがザッコの妻と幼い子供を見逃していれば、私も助命嘆願したかもしれませんね。彼女らの処刑にあなたは立ち会ったと聞きます。彼女はあなたに命乞いをしなかったのですか? せめて子供だけはとは言わなかったのですか?」
こうトラーリ様が言うと、アトラコムは観念したのか何も言わなくなったそうです。
「…今度はあなたの番です」
アトラコムの嫡子であるモンテスは、結局ダーコラ国から戻って来られませんでした。
モンテスに同行していた貴族子弟も骨折で歩けなくなっている者が多いため、奴隷としての価値も無く。彼らの略奪に対する補償金がネイルコード国から支払われたこともあって身代金を取る必要も無くなり。全員が賊として処刑されたそうです。
補償金が支払われたことでそれを身代金と見なして返還という話も、ダーコラ国側から持ちかけられていたそうですが、この件に対するクライスファー陛下の怒りは収まらず「ご配慮に感謝するも、無用に願いたい」という返事がなされたとか。
本来は、この叛逆はバッセンベル領の罪と言うことで、トラーリ様の父親であるジートミル前辺境候が処罰されるところでしたが判決前に病没、代わりに次期領主のトラーリ様が代わりに処刑…ってのはいくら何でも不憫ですので、カステラード殿下が私の恩赦ということで手を回しました。前領主の喪が明けたら、エイゼル市で領主としての勉学予定です。
「ジートミル様は残念でしたね」
「ありがとうございます。巫女様にそう言っていただければ父も喜んでいるかと…父ももっと素直になっていれば、生きている内にアイズン伯爵やレイコ様ともいろいろ話せたと思うのですが…」
「武威で領主にまでなった彼奴からすれば、わしは姑息な手を使って街を大きくしているように見えたんじゃろうな」
「…いえ。父が読んでいたエイゼル市についての報告は結構詳細なものでしたよ。それを読んで一度、自分には出来ないなと洩らしたことがありましたが…」
「ジートミル卿がか?」
「はい。おそらく内政という枠では伯爵に敵わないことは認めていたようです」
「ふむ…彼奴がの…」
「案外、互いの得手不得手を認めて話をしていたら、意気投合していたかもしれませんね」
「そう言われると。亡くなられる前に一度話をしてみたかったの…」
「…多分、父もそう思っていたかと」
伯爵への毒殺未遂は、毒の仕入れをしていた商会までは判明したそうですが、誰が指示して実行したのかまだ不明だそうです。
その商会から毒を買っていた貴族がそこそこの数おりまして、そのことも事件をややこしくしているのですが。
ただ、こうなってくると先代辺境候が指示したとも思えず。一番妖しいアトラコムはすでに墓の下。調査は今後も続行されるそうですが、容疑者が多すぎて迷宮入りしそうですね。難儀な話です。
「トラーリ嬢。ともかくあなたが次の領主じゃ。この街でしっかり学んで、バッセンベルをより豊かに盛り立てて欲しい。それがジートミル卿への供養にもなるじゃろう」
「はい。ご指導よろしくお願いいたします」
「ふふふ。任せておきなさい。なに三年もあれば王国の政にも口が出せるくらいにはして差し上げよう」
あの恐い笑顔でニヤッと笑うアイズン伯爵でした。ほら、トラーリ様ちょっと引いてますよ?
…その後トラーリ様は、いきなり領庁に放り込まれてブライン様の下に付けられ。午前が文官による領経営に関する講義、午後が実際の書類仕事と外回りというスパルタスケジュールで涙目になるのでした。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?
四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。
もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。
◆
十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。
彼女が向かったのは神社。
その鳥居をくぐると――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる