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第3章 ダーコラ国国境紛争
第3章第003話 タルタルソースの完成形
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第3章第003話 タルタルソースの完成形
・Side:ツキシマ・レイコ
六六の学校の子供達の研修遠足も恙なく終わり、日が暮れる前には私達もファルリード亭に戻ってこれました。
醤油の瓶は、ザフロ祭司にも一つお渡ししました。ここでは魚食べる機会は多いですからね。赤竜神が人間だった頃の最もメジャーな調味料…と言ったら、そんな希少な物をとえらく感謝されました。…元は雑草なんですけどね。
なぜか、クラウヤート様もファルリード亭に来ました。将来の伯爵様の来訪に、カヤンさん達がなんか恐縮しています。
自動的に、ダンテ隊長にエカテリンさん、料理騎士さんも一緒です。今日仕入れた材料がどんな料理になるか興味あるようですね。
まずはエビです。いただいた魚篭にはけっこうな大物も入っているですが。これ一本丸ごと揚げると中まで火が通らないかも。ここは四分割くらいに細くしますかね? 尻尾も四分割です。一人一匹と言うほど数がないので、丁度良いですね。
モーラちゃんが、エビの見た目に引いています。虫と言わないでくださいって。ちゃんとレッドさんに確認して貰ってますので、毒の心配はありませんよ。
今のファルリード亭には、油と卵とパン粉は常備されています。カヤンさん、コランさん、マヨネーズからのタルタルソースお願いします。シャカシャカシャカ…
マヨを生産している間に。イカは、輪切りからの醤油バター炒めにして柑橘類を一絞り。ゲソは、醤油を塗りながらあぶり焼きで、マヨネーズを添えます。…うん、これは完全に酒のつまみですね。この体の見た目なので、私が飲むのは控えてますけど。こちらのお酒は、まだ舐める程度しかしていないのです。
タルタルの準備が出来たところで。
水気を取ったエビに、溶いた卵、パン粉、これをもう一回漬けして、油に投入。丸まらないように隠し包丁も完璧ですよ。
…良い感じに色付いたところで、エビフライのできあがり!
「これが、タルタルソースの完成形か…」
…べつにこれがタルタルソースの完成形ではありませんが。エビフライのためにタルタルがあると言っても過言ではないので、間違いではないでしょう。はい有効です。
エビの数が少ないので、一人一本なのは我慢してくださいね。
アイリさん、これからも漁師の方々にエビも残すよう言っておいてください。エビは高級食材なんですよ!
さて。私も早速いただきます。
サクッ!
カヤンさんが他のフライで習得した完璧なあげ具合の衣、その中のとろけるような柔らかいエビの肉と、旨みたっぷりに染み出る肉汁。これは凄いですよ! そこに、コクのあるタルタルソース! カヤンさん、初めての食材の調理でこの美味さ!素晴らしいです。
他の人も、恍惚として噛み締めています。一人一本ですので、大切に食べています。
「これは…もっと食べたいかも。ブール卿、これ邸でも作れるよね? 皆にも召し上がってもらいたい…」
クラウヤート様も気に入ったようです。
料理騎士ブールさん。伯爵邸でのマヨネーズ作り頑張ってください。え?それは領邸の料理人に任せる?
さて。こんどはイカの方の試食です。
「醤油だっけ。凄く良い匂いだな」
ユルガルム組はイカを食べた経験ありますが。カヤンさんはイカは初めてのようですね。ただ、ユルガルム組も醤油バターの威力は未体験です。
モーラちゃんは、やはり見た目で警戒しています。美味い不味い以前に食べ物に見えない? 食わず嫌いは良くないですよ。
…まさかですが、猫にイカの如く、山の民はイカを食べちゃ駄目って事はないですよね? レッドさん~っ!あ、大丈夫ですか良かった。
モーラちゃんがおそるおそるイカを食べます。噛み応えありますからね、ムグムグと…。咀嚼する速度が上がってゴックン。ほら美味しいでしょ?
「これはお酒の飲む人に受けそうだね!」
…この歳でお酒のおつまみ前提で考えてます、末恐ろしい子ですね。
えっ? 厨房から漂う匂いを嗅いだお客さんから、食べてみたいとリクエストが?
…イカと言うより醤油の匂いでしょうが。夕食にはちょっと早い時間ですが、厨房から漏れた匂いに、たまたま来ていたお客さんが反応したようです。
「…お客さんに、まだ残っているイカを見せてあげて下さい。それでなお食べてみたいという勇者になら、供しましょう」
出してから文句を言われては、勿体ないです。とくにゲソ。
…勇者だったお客さんは、半分くらいでした。でも、食べてみれば納得、明るい内から酒の注文も入ります。
まぁ食べたら分るその美味しさ。そのうち市場にもイカやエビが並ぶでしょう。
アイリさんとタロウさんは、醤油の奉納と量産について、いまから悩んでいるようです。収穫というか、栽培しないと追いつかないだろうというのが、当面の課題ですね。
うーん。醤油の実があるのなら、どっかにカレーの実もあるかもしれない。夢広がりんぐ。
…そのまえに米を見つけなければ。今のところ、この国にはなさそうですし。
私の勘が、この世界にもお米があると言ってます。絶対、赤井さんがどこかに用意しているはずです。彼も日本人なのですから!
…赤井さんのところで食べたご飯、この世界産でしょうかね? お米への執着は、異世界物の小説とかではあるあるネタではあるのですが。実際食べたくても食べられないとなると、ホント辛抱たまらんです。日本人にはゲノムに米が刻まれているのです。途中データだけになったはずの私でも、お米を愛する心は受継がれているのです。
アイズン伯爵に、海外と取引のある商会、紹介してもらおうかしら?
・Side:ツキシマ・レイコ
六六の学校の子供達の研修遠足も恙なく終わり、日が暮れる前には私達もファルリード亭に戻ってこれました。
醤油の瓶は、ザフロ祭司にも一つお渡ししました。ここでは魚食べる機会は多いですからね。赤竜神が人間だった頃の最もメジャーな調味料…と言ったら、そんな希少な物をとえらく感謝されました。…元は雑草なんですけどね。
なぜか、クラウヤート様もファルリード亭に来ました。将来の伯爵様の来訪に、カヤンさん達がなんか恐縮しています。
自動的に、ダンテ隊長にエカテリンさん、料理騎士さんも一緒です。今日仕入れた材料がどんな料理になるか興味あるようですね。
まずはエビです。いただいた魚篭にはけっこうな大物も入っているですが。これ一本丸ごと揚げると中まで火が通らないかも。ここは四分割くらいに細くしますかね? 尻尾も四分割です。一人一匹と言うほど数がないので、丁度良いですね。
モーラちゃんが、エビの見た目に引いています。虫と言わないでくださいって。ちゃんとレッドさんに確認して貰ってますので、毒の心配はありませんよ。
今のファルリード亭には、油と卵とパン粉は常備されています。カヤンさん、コランさん、マヨネーズからのタルタルソースお願いします。シャカシャカシャカ…
マヨを生産している間に。イカは、輪切りからの醤油バター炒めにして柑橘類を一絞り。ゲソは、醤油を塗りながらあぶり焼きで、マヨネーズを添えます。…うん、これは完全に酒のつまみですね。この体の見た目なので、私が飲むのは控えてますけど。こちらのお酒は、まだ舐める程度しかしていないのです。
タルタルの準備が出来たところで。
水気を取ったエビに、溶いた卵、パン粉、これをもう一回漬けして、油に投入。丸まらないように隠し包丁も完璧ですよ。
…良い感じに色付いたところで、エビフライのできあがり!
「これが、タルタルソースの完成形か…」
…べつにこれがタルタルソースの完成形ではありませんが。エビフライのためにタルタルがあると言っても過言ではないので、間違いではないでしょう。はい有効です。
エビの数が少ないので、一人一本なのは我慢してくださいね。
アイリさん、これからも漁師の方々にエビも残すよう言っておいてください。エビは高級食材なんですよ!
さて。私も早速いただきます。
サクッ!
カヤンさんが他のフライで習得した完璧なあげ具合の衣、その中のとろけるような柔らかいエビの肉と、旨みたっぷりに染み出る肉汁。これは凄いですよ! そこに、コクのあるタルタルソース! カヤンさん、初めての食材の調理でこの美味さ!素晴らしいです。
他の人も、恍惚として噛み締めています。一人一本ですので、大切に食べています。
「これは…もっと食べたいかも。ブール卿、これ邸でも作れるよね? 皆にも召し上がってもらいたい…」
クラウヤート様も気に入ったようです。
料理騎士ブールさん。伯爵邸でのマヨネーズ作り頑張ってください。え?それは領邸の料理人に任せる?
さて。こんどはイカの方の試食です。
「醤油だっけ。凄く良い匂いだな」
ユルガルム組はイカを食べた経験ありますが。カヤンさんはイカは初めてのようですね。ただ、ユルガルム組も醤油バターの威力は未体験です。
モーラちゃんは、やはり見た目で警戒しています。美味い不味い以前に食べ物に見えない? 食わず嫌いは良くないですよ。
…まさかですが、猫にイカの如く、山の民はイカを食べちゃ駄目って事はないですよね? レッドさん~っ!あ、大丈夫ですか良かった。
モーラちゃんがおそるおそるイカを食べます。噛み応えありますからね、ムグムグと…。咀嚼する速度が上がってゴックン。ほら美味しいでしょ?
「これはお酒の飲む人に受けそうだね!」
…この歳でお酒のおつまみ前提で考えてます、末恐ろしい子ですね。
えっ? 厨房から漂う匂いを嗅いだお客さんから、食べてみたいとリクエストが?
…イカと言うより醤油の匂いでしょうが。夕食にはちょっと早い時間ですが、厨房から漏れた匂いに、たまたま来ていたお客さんが反応したようです。
「…お客さんに、まだ残っているイカを見せてあげて下さい。それでなお食べてみたいという勇者になら、供しましょう」
出してから文句を言われては、勿体ないです。とくにゲソ。
…勇者だったお客さんは、半分くらいでした。でも、食べてみれば納得、明るい内から酒の注文も入ります。
まぁ食べたら分るその美味しさ。そのうち市場にもイカやエビが並ぶでしょう。
アイリさんとタロウさんは、醤油の奉納と量産について、いまから悩んでいるようです。収穫というか、栽培しないと追いつかないだろうというのが、当面の課題ですね。
うーん。醤油の実があるのなら、どっかにカレーの実もあるかもしれない。夢広がりんぐ。
…そのまえに米を見つけなければ。今のところ、この国にはなさそうですし。
私の勘が、この世界にもお米があると言ってます。絶対、赤井さんがどこかに用意しているはずです。彼も日本人なのですから!
…赤井さんのところで食べたご飯、この世界産でしょうかね? お米への執着は、異世界物の小説とかではあるあるネタではあるのですが。実際食べたくても食べられないとなると、ホント辛抱たまらんです。日本人にはゲノムに米が刻まれているのです。途中データだけになったはずの私でも、お米を愛する心は受継がれているのです。
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