玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第2章 ユルガルム領へ

第2章第012話 ユルガルム領到着

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第2章第012話 ユルガルム領到着

・Side:ツキシマ・レイコ

 夕方頃、キャラバンは無事に村に着きました。ここはユルガルム領の南東の端にあるフバーフという村です。

 今回の東のルートでは、距離的な問題と伯爵家の面々の警護の問題でキャラバンの先触れは出せていないので。村側の準備は皆無なため、村での宿泊と行っても村の外れの広場で飛び入り状態でのキャンプとなります。
 それでも、居住地での柵の内側ということで、安心感は大きいらしいですね。
 流石にエイゼル領の伯爵家ご一行と言うことで、奥様方は村長邸の客室が借りられることとなりました。

 タロウさんは、早速巨大白蛇回収のための人手の手配をしてます。タロウさんがここに残るわけにはいかないので、随伴していた商会の職員一人が残り。さらに覇王様達がここに残って、白蛇までの案内及び回収の指揮をすることになりました。
 帰りもキャラバンはここを通ることになるので、そのときまでの駐留だそうですが。覇王様と横モヒカンさん達、ボーナス確定でうれしそうです。

 村人達は、最初はそんな巨大な蛇が出たことを信じなかったのですが。覇王様が回収してきた牙やら、小さい方の蛇の皮を見せられて、騒然としてます。
 私には、退治した者の権利としての分け前が入りますが。回収に参加するこの村にも結構な金額が落ちることになりそうで。村長大歓迎です。

 動けない仔狼を見た村人が、それも獲物か?と言って、クラウヤート様を激怒させたことも、付記しておきます。



 フバーフの村を出て、途中さらに村で一泊して到着しました、ユルガルム領都ユルガルム市です。
 この国の領名の特徴でもありますが。県名と県庁所在地が同じ名前だと、覚えやすくて良いですね。

 街に入る前には、街道が通るちょっとした高台から俯瞰できるのですが。
 うーん、これはクレーター? 地図を見せてもらうと、二つのクレーターが東西で繋がっている感じ? 8の字というか雪だるまみたいな、周囲を外輪山で囲まれた形になってます。直径は、大きい方が直径十キロほど、小さい方がその三分の一くらいかな?
 大きい方の外輪山は、だいぶ浸食を受けているようで、河や谷で外部と繋がっており、北端は海かでかい湖かは分らないですけど、そこに水没してます。エカテリンさん曰く、ここから北方の探索は冬には氷で閉ざされるとかで進んでほとんどおらず、そこが海だかか湖だかも分らないらしいです。水は塩っぱいらしいですけど。
 外輪山の形が綺麗に残っている小さい方のクレーターが後に出来た感じで、二つのクレーターの境界も山地になっています。二つのクレーターは同時に出来たわけではなく、繋がっているのは偶然のようですが。そんな偶然は、月面でもそうそう無いように思いますが…

 大きい方のクレーターが領都となっていて、中央丘にはお城が建っています。
 小さい方は、中央丘と外輪山に鉱山があるそうで、この領の重要な産業だそうです。鉱石の製錬でもやっているのか、幾筋もの煙が登っているのが見えます。

 もちろん、クレーターの外にも領地は広がっており、農地が広がって村が点在してますね。



 結構栄えてる街並みを抜け、キャラバン本体はこの地の運輸組合の方に向かっていきます。領のお城に向かう伯爵家の馬車と騎士隊はここで別れます。
 私も運輸組合の方の所属ではあるのですが。アイズン伯爵からの依頼は、伯爵家の方々の護衛込みと言うことで、騎士隊の方に同行します。…というか、伯爵家の馬車に押し込まれました。

 城塞に入っていき、屋敷の前に着きました。
 屋敷の使用人が出迎えるなか、馬車から伯爵家の面々が降りていきますが。屋敷から出てきたご婦人が一人、降りてきた方々に急ぐように歩いてきます。

 「お母様っ!!」

 ターナンシュ・ユルガムル・マッケンハイバー様。アイズン伯爵の娘で、ブライン様の妹。歳は生前の私くらいかな?
 駆け寄ろうとするターナンシュ様を止めているのが、旦那様らしい。ユルガムル辺境伯嫡男、ウードゥル・ユルガムル・マッケンハイバー様。この辺の情報は、事前に教えていただいております。
 ターナンシュ様、まだ妊娠五ヶ月というところらしくて、ゆったりした服を着ていればまださほどお腹は目立ちません。

 「ターナ様、ご懐妊おめでとうございます」

 義理の姉に当たるメディナール様がご挨拶しています。
 クラウヤート様は、屋敷の人に仔狼のことを頼みに行っていますね。猟犬を扱っている猟師に、犬の治療に詳しい者がいないか探してくれるそうで。とりあえず厩舎を一つ貸して貰えることになったそうです。
 あと。仔狼の名前が決まりました。バールと言います。この国の言葉で"雹"という意味ですね。この仔にもゴルゲットを作ってあげるんだって張り切っています。

 さて。私とレッドさんも前に引き出されました。あの、私は護衛ですよ?
 対峙するは、ナインケル・ユルガムル・マッケンハイバー辺境伯。なんとじきじきに屋敷前に出迎えに出て来てました。

 懐妊中のターナ様以外の面々が、膝を突きます。

 「赤竜神の巫女様。ならびに赤竜神の御子であられる小竜様。私、ネイルコード王国にて辺境伯を賜っておりますユルガムル領主、ナインケル・ユルガムル・マッケンハイバーと申します。この地への御行幸、誠に光栄の至り。領を上げて歓迎いたしましょう。」

 「やーめーてーっ!」

 私の小市民ゲージが振り切れました。

 「ツキシマ・レイコです。勘弁してください勘弁してください勘弁してください」

 私の方が辺境伯に百二十度のお辞儀をする。

 「はっはっは。アイズン伯からの書簡にある通りですな。まぁ、赤竜神の巫女様に対する礼は、対外的に一度はしておかないと行けないことなので、御寛恕いただきたい。以後はレイコ殿でよろしいかな?」

 おっ。話が早いかも。

 「はい。それでお願いいたします。あっ、この子がレッドさんです」

 「おお、まさにドラゴンですな。レッド殿もよろしくお願いいたします」

 「クーッ!」

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