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第2章 ユルガルム領へ
第2章第010話 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?
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第2章第010話 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?
・Side:ツキシマ・レイコ
レッドさんは道の右側を常に警戒中。蛇のいるだろう洞窟の方向を警戒しつつ、キャラバンは進みます。
急いだので、まだ結構日が高いうちに宿営地に着きました。開けた場所の端に丸太小屋が立っていますが。これでは全員が籠城できるような広さでも強度もなさそうですね。
防御を確保…と言っても。何を用意するかと思ったら竹槍です。近くに竹林があるので、そこから切り出して、竹槍を並べて柵を作っています。…あの白蛇相手では、無いよりマシと言えるかもちょっと妖しいけど。
タルタス隊長やダンテ隊長、それに伯爵家の面々と、丸太小屋で作戦会議です。
ご婦人方とクラウヤート様は、不安そうにしていますが、それでも取り乱さないよう振舞ってます。レッドさん貸して上げますね。
「最悪を考えるのなら。動けるようになったあの蛇が夜のうちに襲撃してくる、夜通しで逃げたとしても、ユルガルムの村まで追ってくる、向こうにも被害甚大…ってところでしょうな」
「それって、村に逃げ込んで、村が襲われているうちに逃げるってことですか?」
「…それは絶対に避けたいです。討伐軍をユルガルム領に依頼して籠城というのならともかく。エイゼル領の貴族として、ユルガルム領に被害を招くような事態は選択できません。道義的にも政治的にもです」
護衛対象である伯爵夫人のマーディア様が仰ります。魔獣を引き連れて他の領地に入るのは、できるだけ避けたいと。
「魔獣が来るとは限らないし、追って来るとは知らなかった…では済まないんでしょうね」
と、タロウさん。
貴族とは軍人でもあります。危機を看過して被害を出すなんてのは、自ら無能と喧伝するような物だ…という理屈だそうです。
「引き返すか? ただ、前の野営地は、ここより条件悪いぞ。夜通しで進むにしても、タシニまで戻るのは無理があるだろう」
とダンテ隊長。月と神の玉座の明かりだけで、平原や森の中を馬車を飛ばすのは難しいでしょう。
「あの。別にあの蛇を倒してしまっても良いんですよね?」
皆が私を見て固まった。
ふふふふふ。言ってみたいセリフの上位に来るこの文言。まぁ、この状況で私がやらないという選択肢もないよね。
タルタス隊長が我に返る。
「あの。倒せるんなら、どうして先ほど倒さなかったんですか?」
もっともな疑問です。
「使いたいマナ術はものすごく強力なのですが、実戦で使うのは初めてな上に、周囲を巻き込む可能性があるんですよ。威力だけではなく、毒もばらまくような効果を想像していだければ。私もまだ試し打ちした程度で、威力は把握しているのですが。どこまで悪影響あるのかが測りようがなかったので」
マナの急激な崩壊による大量の放射が生物に危険なのは分ってる。ただ、どの程度影響するのかが分らない。
あれを倒す程度なら無問題かもしれないが。私とレッドさん以外、放射線障害で死亡…なんて事まではならないとは思うけど。長期的な障害も含めて、危険は冒さない方が良いでしょう。
「毒…は蛇に有効だと思うけど。毒を使うわけではないんですね?」
「毒は攻撃の副産物ですね。どの程度周囲に悪影響が出るか分らないってことです」
「つまり、レイコ殿だけなら問題ないと。しかし、レイコ殿も当キャラバンの重要人物です。一人で行かせるのはちょっと…」
「撃つときにある程度離れていてくれるのなら、付いてきても大丈夫だと思いますが…」
幸い、まだ日が高いです。今からなら、行って帰ってくるくらいは出来そうです。
・Side:ツキシマ・レイコ
レッドさんは道の右側を常に警戒中。蛇のいるだろう洞窟の方向を警戒しつつ、キャラバンは進みます。
急いだので、まだ結構日が高いうちに宿営地に着きました。開けた場所の端に丸太小屋が立っていますが。これでは全員が籠城できるような広さでも強度もなさそうですね。
防御を確保…と言っても。何を用意するかと思ったら竹槍です。近くに竹林があるので、そこから切り出して、竹槍を並べて柵を作っています。…あの白蛇相手では、無いよりマシと言えるかもちょっと妖しいけど。
タルタス隊長やダンテ隊長、それに伯爵家の面々と、丸太小屋で作戦会議です。
ご婦人方とクラウヤート様は、不安そうにしていますが、それでも取り乱さないよう振舞ってます。レッドさん貸して上げますね。
「最悪を考えるのなら。動けるようになったあの蛇が夜のうちに襲撃してくる、夜通しで逃げたとしても、ユルガルムの村まで追ってくる、向こうにも被害甚大…ってところでしょうな」
「それって、村に逃げ込んで、村が襲われているうちに逃げるってことですか?」
「…それは絶対に避けたいです。討伐軍をユルガルム領に依頼して籠城というのならともかく。エイゼル領の貴族として、ユルガルム領に被害を招くような事態は選択できません。道義的にも政治的にもです」
護衛対象である伯爵夫人のマーディア様が仰ります。魔獣を引き連れて他の領地に入るのは、できるだけ避けたいと。
「魔獣が来るとは限らないし、追って来るとは知らなかった…では済まないんでしょうね」
と、タロウさん。
貴族とは軍人でもあります。危機を看過して被害を出すなんてのは、自ら無能と喧伝するような物だ…という理屈だそうです。
「引き返すか? ただ、前の野営地は、ここより条件悪いぞ。夜通しで進むにしても、タシニまで戻るのは無理があるだろう」
とダンテ隊長。月と神の玉座の明かりだけで、平原や森の中を馬車を飛ばすのは難しいでしょう。
「あの。別にあの蛇を倒してしまっても良いんですよね?」
皆が私を見て固まった。
ふふふふふ。言ってみたいセリフの上位に来るこの文言。まぁ、この状況で私がやらないという選択肢もないよね。
タルタス隊長が我に返る。
「あの。倒せるんなら、どうして先ほど倒さなかったんですか?」
もっともな疑問です。
「使いたいマナ術はものすごく強力なのですが、実戦で使うのは初めてな上に、周囲を巻き込む可能性があるんですよ。威力だけではなく、毒もばらまくような効果を想像していだければ。私もまだ試し打ちした程度で、威力は把握しているのですが。どこまで悪影響あるのかが測りようがなかったので」
マナの急激な崩壊による大量の放射が生物に危険なのは分ってる。ただ、どの程度影響するのかが分らない。
あれを倒す程度なら無問題かもしれないが。私とレッドさん以外、放射線障害で死亡…なんて事まではならないとは思うけど。長期的な障害も含めて、危険は冒さない方が良いでしょう。
「毒…は蛇に有効だと思うけど。毒を使うわけではないんですね?」
「毒は攻撃の副産物ですね。どの程度周囲に悪影響が出るか分らないってことです」
「つまり、レイコ殿だけなら問題ないと。しかし、レイコ殿も当キャラバンの重要人物です。一人で行かせるのはちょっと…」
「撃つときにある程度離れていてくれるのなら、付いてきても大丈夫だと思いますが…」
幸い、まだ日が高いです。今からなら、行って帰ってくるくらいは出来そうです。
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