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第1章 エイゼル領の伯爵
第1章第023話 タシニから出発
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第1章第023話 タシニから出発
・Side:ツキシマ・レイコ
さて、朝です。朝食と支度をちゃちゃっと済ませると、屋敷の前で集合です。
キャラバンには、このタシニの街でアイズン伯爵とその護衛騎士が合流。あと、現地調達で私用の4人乗りくらいの小さめの馬車が追加されました。一応、巫女の乗る馬車には女性だけにした方が無難という話だそうで。ちと申し訳ないですね。
ただ。伯爵の馬車は馬車で、ジャック会頭が道中は伯爵と会議の状態になるとぼやいてました。件の崖崩れの対応が急務で。再整備するか、私たちが通ってきた遠回りルートを整備するか、早く対応を固めないと流通の動線に影響が出るのだとか。…多分私のこともいろいろ話されるのでしょうね。
出発前に、伯爵のところに街の人が集まってます。
近くの食べ物屋の人たちが、道中に食べてくれと、焼き菓子やらお弁当やらを差し入れてくれているようで。
「アイズン伯爵、人気者ですね」
「ふん。こんなに食べきれるわけ無かろうて」
と、相変わらず恐い顔でふてくされたような顔をしているが。満更でもないようだ。なるほどツンデレ属性の人?
「毒味がしやすい物を伯爵には召し上がっていただくとして。あとは皆で分けるしかないですよね。昼は豪華になりそうだ」
タルタス隊長初めとする護衛組は、もう昼食の物色をしていた。
ちなみにここから先は、町や村が点在するので、もう野営の必要は無いそうです。
ともあれ。キャラバンは出発し、街道をエイゼル市に向けて南下します。
伯爵の馬車は、前から2番目。私たちの馬車は後ろから2番目。先頭と最後尾の馬車には、馬に乗っていない護衛が詰めてます。私たちの馬車には、毎度アイリさんとエカテリンさんも同乗です。レッドさんはエカテリンさんの膝の上。
今までと同じく河なりの街道だですが。平坦な場所が増えて、畑が目立つようになり、集落も点在してます。
この辺は、柵に囲まれた集落ばかりなので気になって、同乗しているアイリさんに聞いてみた。
「普通に獣が出ることも多いけど。この辺は北東の方から魔獣が来ることがあるのよ」
「魔獣とな?」
「クー?」
鬼門の方角から魔獣が来る。ここにきていきなりファンタジーの世界ですか? そんなものまで用意したのですか?赤井さん。
「魔獣と言っても、見た目はでかいだけの獣なんだけどね」
と、うなじ当たりを指さして
「こう、首の後ろのあたりにね。首の骨にマナの瘤ができて。それができると、動物は凶暴化して、他の動物を襲うようになるのよ。一説だと、他の動物のマナを集めるためとも言われているけど」
この世界の人は、そういう魔獣を狩ってマナの瘤を採取して、それを焼いてマナを抽出し、マナを使ったいろんな道具のエネルギー源になる…ということらしい。他にもマナ鉱山もあるそうですが。マナの純度が魔獣の方が高いんだそうです。
自然界に偏在するマナの生物濃縮みたいな物なのだろうか。これがファンタジー系小説なら、魔物を狩って魔石を得るみたいな話になるんだろうけど。
そういう狩りをする人の専門の街もあるそうです。冒険者の街みたいだね。
ちなみに、護衛隊は対魔物戦、護衛騎士達は対人戦が専門だそうで。このキャラバンでなんで護衛と護衛騎士が別れているかと思ったら、そういうことなのね。
対人と対獣、全く戦い方が違うそうで。低いところから首やら手首足首に噛み付いてきて引き倒して、あとは集団で食い殺すというパターンだそうです。
「もちろん、騎士でも対魔獣の戦い方も訓練しているぜ。ただまぁ、やっは経験も装備も専門職のほうが効率いいからなな」
「そのマナで、人とかも凶暴化します?」
「人だと、マナ術の威力が高くなるって。精神に異常をきするまでマナが溜まったって話は聞かないわね。誰でもある程度マナが溜まるそうだけど。触って分るほどの瘤ができれば、才能だと喜ぶ人もいるわね」
瘤を大きくしたいからとマナを直接食べても、普通はほとんど体には溜まらないのだそうな。魔獣とこのへんがどう違うのかは、いろんな人が研究している。
そう言えば、騎士隊長のダンテさんも、わたしがマナの体だと聞いて驚いていたな。
「獣がマナで凶暴化すると、食べ物が代わるせいか体もかなり大きくなってね。元が草食獣でも、大きいところが魔獣化すると手が付けられなくなるから。やっかいなのが出たときには軍の出番ってこともあるわよ」
得手不得手を乗り越えて数と火力で倒すんだそうです。
うーん。なんかフラグが立ったような気がしないでも無いです。こういうのは、レッドさんが最初に検知しそうですね。よろしくお願いします、レッドさん。はい。
ちなみに。アイリさんご執心のトゥックルと呼ばれる鳥馬とは、この街でお別れです。
件の西に抜ける街道が通れない今、臨時の山道には機敏な鳥馬の方が向いているんだそうで、伝令やら斥候に重宝されるとのこと。
来るときには、不慣れな回り道で斥候が必要だろうということで、ジャック会頭のキャラバンに貸し出されていましたが。元々ここで使われる予定だったそうです。
アイリさんが、露店で買ってきた木の実をトゥックルにあげています。名残惜しそうですね。
・Side:ツキシマ・レイコ
さて、朝です。朝食と支度をちゃちゃっと済ませると、屋敷の前で集合です。
キャラバンには、このタシニの街でアイズン伯爵とその護衛騎士が合流。あと、現地調達で私用の4人乗りくらいの小さめの馬車が追加されました。一応、巫女の乗る馬車には女性だけにした方が無難という話だそうで。ちと申し訳ないですね。
ただ。伯爵の馬車は馬車で、ジャック会頭が道中は伯爵と会議の状態になるとぼやいてました。件の崖崩れの対応が急務で。再整備するか、私たちが通ってきた遠回りルートを整備するか、早く対応を固めないと流通の動線に影響が出るのだとか。…多分私のこともいろいろ話されるのでしょうね。
出発前に、伯爵のところに街の人が集まってます。
近くの食べ物屋の人たちが、道中に食べてくれと、焼き菓子やらお弁当やらを差し入れてくれているようで。
「アイズン伯爵、人気者ですね」
「ふん。こんなに食べきれるわけ無かろうて」
と、相変わらず恐い顔でふてくされたような顔をしているが。満更でもないようだ。なるほどツンデレ属性の人?
「毒味がしやすい物を伯爵には召し上がっていただくとして。あとは皆で分けるしかないですよね。昼は豪華になりそうだ」
タルタス隊長初めとする護衛組は、もう昼食の物色をしていた。
ちなみにここから先は、町や村が点在するので、もう野営の必要は無いそうです。
ともあれ。キャラバンは出発し、街道をエイゼル市に向けて南下します。
伯爵の馬車は、前から2番目。私たちの馬車は後ろから2番目。先頭と最後尾の馬車には、馬に乗っていない護衛が詰めてます。私たちの馬車には、毎度アイリさんとエカテリンさんも同乗です。レッドさんはエカテリンさんの膝の上。
今までと同じく河なりの街道だですが。平坦な場所が増えて、畑が目立つようになり、集落も点在してます。
この辺は、柵に囲まれた集落ばかりなので気になって、同乗しているアイリさんに聞いてみた。
「普通に獣が出ることも多いけど。この辺は北東の方から魔獣が来ることがあるのよ」
「魔獣とな?」
「クー?」
鬼門の方角から魔獣が来る。ここにきていきなりファンタジーの世界ですか? そんなものまで用意したのですか?赤井さん。
「魔獣と言っても、見た目はでかいだけの獣なんだけどね」
と、うなじ当たりを指さして
「こう、首の後ろのあたりにね。首の骨にマナの瘤ができて。それができると、動物は凶暴化して、他の動物を襲うようになるのよ。一説だと、他の動物のマナを集めるためとも言われているけど」
この世界の人は、そういう魔獣を狩ってマナの瘤を採取して、それを焼いてマナを抽出し、マナを使ったいろんな道具のエネルギー源になる…ということらしい。他にもマナ鉱山もあるそうですが。マナの純度が魔獣の方が高いんだそうです。
自然界に偏在するマナの生物濃縮みたいな物なのだろうか。これがファンタジー系小説なら、魔物を狩って魔石を得るみたいな話になるんだろうけど。
そういう狩りをする人の専門の街もあるそうです。冒険者の街みたいだね。
ちなみに、護衛隊は対魔物戦、護衛騎士達は対人戦が専門だそうで。このキャラバンでなんで護衛と護衛騎士が別れているかと思ったら、そういうことなのね。
対人と対獣、全く戦い方が違うそうで。低いところから首やら手首足首に噛み付いてきて引き倒して、あとは集団で食い殺すというパターンだそうです。
「もちろん、騎士でも対魔獣の戦い方も訓練しているぜ。ただまぁ、やっは経験も装備も専門職のほうが効率いいからなな」
「そのマナで、人とかも凶暴化します?」
「人だと、マナ術の威力が高くなるって。精神に異常をきするまでマナが溜まったって話は聞かないわね。誰でもある程度マナが溜まるそうだけど。触って分るほどの瘤ができれば、才能だと喜ぶ人もいるわね」
瘤を大きくしたいからとマナを直接食べても、普通はほとんど体には溜まらないのだそうな。魔獣とこのへんがどう違うのかは、いろんな人が研究している。
そう言えば、騎士隊長のダンテさんも、わたしがマナの体だと聞いて驚いていたな。
「獣がマナで凶暴化すると、食べ物が代わるせいか体もかなり大きくなってね。元が草食獣でも、大きいところが魔獣化すると手が付けられなくなるから。やっかいなのが出たときには軍の出番ってこともあるわよ」
得手不得手を乗り越えて数と火力で倒すんだそうです。
うーん。なんかフラグが立ったような気がしないでも無いです。こういうのは、レッドさんが最初に検知しそうですね。よろしくお願いします、レッドさん。はい。
ちなみに。アイリさんご執心のトゥックルと呼ばれる鳥馬とは、この街でお別れです。
件の西に抜ける街道が通れない今、臨時の山道には機敏な鳥馬の方が向いているんだそうで、伝令やら斥候に重宝されるとのこと。
来るときには、不慣れな回り道で斥候が必要だろうということで、ジャック会頭のキャラバンに貸し出されていましたが。元々ここで使われる予定だったそうです。
アイリさんが、露店で買ってきた木の実をトゥックルにあげています。名残惜しそうですね。
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