玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

文字の大きさ
上 下
14 / 339
第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第012話 第一村人発見

しおりを挟む
第1章第012話 第一村人発見

・Side:ツキシマ・レイコ

 「赤竜神様の縁者の方とお見受けいたします。この度は、どういった御用向きでこの地に降臨されたのでございましょうか?」

 赤井さんが言ったとおり、人が通りかかった。キャラバンというから、もっと大勢で通りかかると思ったら、馬に乗った若い男の人一人だけだった。
 私を見つけた後、馬を歩かせて周囲を用心しながら近づいてきたと思ったら、私の頭の後のレッドさんあたりを凝視した後、慌てて馬を下りていきなり私の前で跪いた。

 「ちょ…そんな跪かないでください。立って立って!」

 「え?…は、はい」

 恐る恐るという感じで、青年は立ち上がる。

 「えっとですね。話すといろいろ長くなるのですが。わたしツキシマ・レイコといいます。赤井さん…ってドラゴンですね。その人に連れられてきまして。ここを通りがかる人に一緒に街まで連れてって貰えと言われてましてね」

 「ツキシマレイコ様…」

 青年の視線は、私の顔と頭の上のレッドさんを行き来する。

 「この子は、レッドさんと言って、赤竜から貰ったというか預かったというか。私のお供です」

 「クーッ!」

 「お供…」

 まだ呆然とした感じの青年。

 「あの…街まで連れてってはいただけないでしょうか? お金ならある程度持っているのですが」

 「いえ。そんなお金をいただくなんて畏れ多いですっ! っと、私の所属しているキャラバンが、あそこの森に入ったところで待機していまして。とりあえずご同行いただけないでしょうか?」

 知らない人に付いて行っては…という話ではないけど。ここは申し出をそのまま受け入れた方が良さそうだ。

 「はい。よろしくお願いします」

 「あっと。どうぞ馬に乗ってください。私が引きますので」

 と、青年は鞍をパンパンと叩く。
 おお、馬だ。牧場とかで馬を見たことはあると言っても、ここまで近くで見るのは初めてだ。

 「どうされました?」

 「あ、いえ。私は馬に乗ったことが無くて」

 あの森まででしょ? 歩いても全然かまわないんだけど。…でも、馬は乗ってみたいかな?

 「それは申し訳ありません。馬車の方がご入り用なら、いま待機しているのを呼んできますっ!」

 「いえ、そこまでしていただかなくても」

 結局、彼に補助して貰って鞍にまたがった。おお、結構視線が高いねこれ。
 青年が轡を引っ張ると、馬はパッカパッカと歩き出す。本当にパカパカ言うのね。



 森の入り口に近づくと、その青年より重装備の、まさに兵隊といった格好で馬に乗った人が二人ほど待ち構えていた。彼らも、私と私の頭の上のレッドさんを見て驚いている。

 「赤竜神の巫女様をお連れしました。街までの送迎をご所望のようですので。とりあえず会頭と護衛隊長のところにお連れしたいと思います」

 なんか必要以上に畏まった対応をされているような…

 「あ…ああ、了解した」


 キャラバンは、森を入ってすぐのところで停まっていた。馬車やら荷車が計10両ほど、人員は20人くらい?結構多いね。
 キャラバンの手前で馬からは下ろしてもらい、青年はキャラバンの中でも偉い人っぽいところに駆けていった。

 青年が偉い人に説明している間、キャラバンの様子を観察してみる。
 一緒に戻ってきた兵隊さんは、仲間と話している。たぶん私のことだろうな。
 キャラバンには、人を乗せる専用の豪華っぽい馬車と、ホロ付きの馬車が5両ほど、残りは荷馬車っぽい。それぞれに馬が二頭ずつ、すぐに動けるようにと言うことだろう馬車に繋がれたままだ。その側に、なんか茶色い?鳥?

 「チョコ○ー」

 思わず駆け寄ってしまった。

 ダチョウより一回りデカいし、頭は二周りくらいデカいし、足も太い。ドードー鳥って絶命した鳥がいたよね、顔はこっちのほうがずっと可愛いけど、あのバランスのまま全体を大きくした感じ。羽根は退化したのか、ダチョウ程度。鞍が付いているから、この鳥も騎乗用なのだろう。

 「え?どこの子この子? あっと、あまり慌てて近づくと咬まれるわよっ」

 鳥の世話をしていたのか、女性に止められた。ワンピースの上から、胸当てとエプロンっぽい革鎧を着けたような格好をしている。ライトブラウンの長い髪は、後ろに三つ編み一本にしている。けっこうな美人さんだね。

 「あっとごめんなさい。えー、この子、鳥ですよね?」

 急に近づいた私にちょっと驚いている鳥さん。

 「あら、トゥックルを見るのは初めてなの? まぁ馬ほどたくさんいないし、使っているところは少ないのかもね。…ってこの子は何?」

 私の頭の上のレッドさんに気がついたようだ。

 レッドさんを頭の後ろから降ろして、前に抱える。

 「この子はレッドさんです。赤竜の…あー、子供みたいなものでいいのかな? 私のお供です」

 「え? ドラゴンの子? え?」

 この人もまた、唖然とした顔になった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?

四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。 もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。  ◆ 十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。 彼女が向かったのは神社。 その鳥居をくぐると――?

『伯爵令嬢 爆死する』

三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。 その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。 カクヨムでも公開しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...