玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第012話 第一村人発見

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第1章第012話 第一村人発見

・Side:ツキシマ・レイコ

 「赤竜神様の縁者の方とお見受けいたします。この度は、どういった御用向きでこの地に降臨されたのでございましょうか?」

 赤井さんが言ったとおり、人が通りかかった。キャラバンというから、もっと大勢で通りかかると思ったら、馬に乗った若い男の人一人だけだった。
 私を見つけた後、馬を歩かせて周囲を用心しながら近づいてきたと思ったら、私の頭の後のレッドさんあたりを凝視した後、慌てて馬を下りていきなり私の前で跪いた。

 「ちょ…そんな跪かないでください。立って立って!」

 「え?…は、はい」

 恐る恐るという感じで、青年は立ち上がる。

 「えっとですね。話すといろいろ長くなるのですが。わたしツキシマ・レイコといいます。赤井さん…ってドラゴンですね。その人に連れられてきまして。ここを通りがかる人に一緒に街まで連れてって貰えと言われてましてね」

 「ツキシマレイコ様…」

 青年の視線は、私の顔と頭の上のレッドさんを行き来する。

 「この子は、レッドさんと言って、赤竜から貰ったというか預かったというか。私のお供です」

 「クーッ!」

 「お供…」

 まだ呆然とした感じの青年。

 「あの…街まで連れてってはいただけないでしょうか? お金ならある程度持っているのですが」

 「いえ。そんなお金をいただくなんて畏れ多いですっ! っと、私の所属しているキャラバンが、あそこの森に入ったところで待機していまして。とりあえずご同行いただけないでしょうか?」

 知らない人に付いて行っては…という話ではないけど。ここは申し出をそのまま受け入れた方が良さそうだ。

 「はい。よろしくお願いします」

 「あっと。どうぞ馬に乗ってください。私が引きますので」

 と、青年は鞍をパンパンと叩く。
 おお、馬だ。牧場とかで馬を見たことはあると言っても、ここまで近くで見るのは初めてだ。

 「どうされました?」

 「あ、いえ。私は馬に乗ったことが無くて」

 あの森まででしょ? 歩いても全然かまわないんだけど。…でも、馬は乗ってみたいかな?

 「それは申し訳ありません。馬車の方がご入り用なら、いま待機しているのを呼んできますっ!」

 「いえ、そこまでしていただかなくても」

 結局、彼に補助して貰って鞍にまたがった。おお、結構視線が高いねこれ。
 青年が轡を引っ張ると、馬はパッカパッカと歩き出す。本当にパカパカ言うのね。



 森の入り口に近づくと、その青年より重装備の、まさに兵隊といった格好で馬に乗った人が二人ほど待ち構えていた。彼らも、私と私の頭の上のレッドさんを見て驚いている。

 「赤竜神の巫女様をお連れしました。街までの送迎をご所望のようですので。とりあえず会頭と護衛隊長のところにお連れしたいと思います」

 なんか必要以上に畏まった対応をされているような…

 「あ…ああ、了解した」


 キャラバンは、森を入ってすぐのところで停まっていた。馬車やら荷車が計10両ほど、人員は20人くらい?結構多いね。
 キャラバンの手前で馬からは下ろしてもらい、青年はキャラバンの中でも偉い人っぽいところに駆けていった。

 青年が偉い人に説明している間、キャラバンの様子を観察してみる。
 一緒に戻ってきた兵隊さんは、仲間と話している。たぶん私のことだろうな。
 キャラバンには、人を乗せる専用の豪華っぽい馬車と、ホロ付きの馬車が5両ほど、残りは荷馬車っぽい。それぞれに馬が二頭ずつ、すぐに動けるようにと言うことだろう馬車に繋がれたままだ。その側に、なんか茶色い?鳥?

 「チョコ○ー」

 思わず駆け寄ってしまった。

 ダチョウより一回りデカいし、頭は二周りくらいデカいし、足も太い。ドードー鳥って絶命した鳥がいたよね、顔はこっちのほうがずっと可愛いけど、あのバランスのまま全体を大きくした感じ。羽根は退化したのか、ダチョウ程度。鞍が付いているから、この鳥も騎乗用なのだろう。

 「え?どこの子この子? あっと、あまり慌てて近づくと咬まれるわよっ」

 鳥の世話をしていたのか、女性に止められた。ワンピースの上から、胸当てとエプロンっぽい革鎧を着けたような格好をしている。ライトブラウンの長い髪は、後ろに三つ編み一本にしている。けっこうな美人さんだね。

 「あっとごめんなさい。えー、この子、鳥ですよね?」

 急に近づいた私にちょっと驚いている鳥さん。

 「あら、トゥックルを見るのは初めてなの? まぁ馬ほどたくさんいないし、使っているところは少ないのかもね。…ってこの子は何?」

 私の頭の上のレッドさんに気がついたようだ。

 レッドさんを頭の後ろから降ろして、前に抱える。

 「この子はレッドさんです。赤竜の…あー、子供みたいなものでいいのかな? 私のお供です」

 「え? ドラゴンの子? え?」

 この人もまた、唖然とした顔になった。
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