2 / 339
プロローグ
プロローグ第002話 チュートリアルへようこそ
しおりを挟む
プロローグ第002話 チュートリアルへようこそ
・Side:ツキシマ・レイコ
視界が赤い。
まぶたを通して、日の光が赤い。椅子に座って寝ていたのか、体が硬いな。
仕事中の仮眠を椅子で取ることはよくあったけど、そういう寝方をしているときにつきものの体の痛みはないことに、不自然さを感じる。すこぶる快適だ。
目を開けようとしたが、陽射しが目に入ってまぶしい。どっか日向のベンチで昼寝でもしてしまったのか? あれ?
手を目の上にかざして、日を遮り、うっすらと目を開けていく。光になれてきて、前が見えるようになってきた。
眼前で見下ろすは、広大な森林地帯。幅の広い谷なのか、その向こうには、雪を携えた岩山も見える。信州?アルプス?
しかし見える範囲には、ここが日本なら何かしらはあるだろう人工物の類いは、一切ない。自分が今いるところも、岩山の中腹といった感じだ。
どっかに道路とか高圧電線くらい見えているのが当たり前でしょ?と思って、景色を見渡すが。
ここで、自分が入院していたことを思い出した。
癌で…最後は眠らせて貰って…母さん…赤井さん…
あれ?
ここはあの世?
気温からすると春?山なら夏なのか?
空気は澄んでいる。雲もまばらで、空は好天。目の前には壮大な自然の風景。
これが観光や登山なら、さぞ素晴らしい気分なのだが。
死んでここに飛ばされて一人、これからどうすればいいんだろう?という不安がよぎった。あの世で楽園に飛ばされて森林サバイバルしなくちゃなんて、あまり面白くないぞ。
椅子から立ち上がる。癌の転移で麻痺していたはずの手足が自由に動く。本当に死後の世界?
と。かざしていた自分の手が、いつもより小さいことに気がついた。立った視点も、地面までの高さが心持ち低い気がする。
下を見る。…無い? 元々そんなにでかかったわけじゃないけど、下を見ればそれなりにあるはずの胸がない。
両手でぺたぺたする。まったくないっ。なんじゃこりゃ? 何が起こった?
半場パニックになりながら、キョロキョロと周りを見渡すと。視界の隅、私の後ろに何か赤いものがあることに気がつく。凸凹の赤い石。 自然界には不自然なほどの赤い石。最初に連想したのは、朱色に塗った狛犬の像を飾っているお寺?そもそも真っ赤な狛犬って?
私が後ろをふり向くと、そこに立っていたモノと目が合った。
「チュートリアルへようこそ」
上から声がした。見上げると、そこには、眼鏡をしたドラゴンがニタっと笑っていた。
龍ではなくドラゴン。まさに西洋のドラゴン。
恐竜…というより、二足歩行している鰐か。角は六本。頭までの高さは三メートルくらい。全長だと六メートルくらい?
背中には、翼を畳んでいるのが見える。
ここは地獄か? 地獄の入り口から天国の風景を見せつけられているのか? これは地獄の獄卒か?
完璧な善人として生きてきたと言い張るつもりはないけど。私、そんなに悪いことをした? むしろ三途の川を先に渡りたい。
赤いドラゴンは眼鏡をかけている。耳にかけているのではなく、顔にくっついている感じなのだが。 あれ?
頭から血が下がる感覚。死んでいるのに血が下がるのか? パニックで気が遠くなる…
「玲子君、顔を見ていきなり失神とは、ちょっと失礼だぞ」
慌てるように私を支えてくれたドラゴンが、聞き覚えのある声で不貞腐れていた。
・Side:アカイ・タカフミ
モニタリングは正常。意識野は正常にシミュレーションされている。処理能力のリソース消費も想定内。今度も無事"再生"できたようだ。
久しぶりに君と会話できるのはうれしいよ、玲子くん。前に話してから結構経っているからね。
目の前の景色に感動しているね。いいでしょう?、僕の自信作だよ。
彼女はしばらくキョロキョロしていたけど。幼い頃を推測して作った体で、こちらを見上げて驚いている。
あ…子供に真剣に怯えられると、ちょっと来る物があるな。罪悪感が湧いてくる。このパターンは始めてだ。
おいおい、失神しなくても良いだろ
しかたないな。ベースに運び込むか。すぐにでも目を覚ますだろう。
-----------------------------------------------------------------------------
プロローグ終了です。
ただ、アカイさんのチュートリアルは、10話ほど続く予定です。
…まぁ設定解説ですね。
・Side:ツキシマ・レイコ
視界が赤い。
まぶたを通して、日の光が赤い。椅子に座って寝ていたのか、体が硬いな。
仕事中の仮眠を椅子で取ることはよくあったけど、そういう寝方をしているときにつきものの体の痛みはないことに、不自然さを感じる。すこぶる快適だ。
目を開けようとしたが、陽射しが目に入ってまぶしい。どっか日向のベンチで昼寝でもしてしまったのか? あれ?
手を目の上にかざして、日を遮り、うっすらと目を開けていく。光になれてきて、前が見えるようになってきた。
眼前で見下ろすは、広大な森林地帯。幅の広い谷なのか、その向こうには、雪を携えた岩山も見える。信州?アルプス?
しかし見える範囲には、ここが日本なら何かしらはあるだろう人工物の類いは、一切ない。自分が今いるところも、岩山の中腹といった感じだ。
どっかに道路とか高圧電線くらい見えているのが当たり前でしょ?と思って、景色を見渡すが。
ここで、自分が入院していたことを思い出した。
癌で…最後は眠らせて貰って…母さん…赤井さん…
あれ?
ここはあの世?
気温からすると春?山なら夏なのか?
空気は澄んでいる。雲もまばらで、空は好天。目の前には壮大な自然の風景。
これが観光や登山なら、さぞ素晴らしい気分なのだが。
死んでここに飛ばされて一人、これからどうすればいいんだろう?という不安がよぎった。あの世で楽園に飛ばされて森林サバイバルしなくちゃなんて、あまり面白くないぞ。
椅子から立ち上がる。癌の転移で麻痺していたはずの手足が自由に動く。本当に死後の世界?
と。かざしていた自分の手が、いつもより小さいことに気がついた。立った視点も、地面までの高さが心持ち低い気がする。
下を見る。…無い? 元々そんなにでかかったわけじゃないけど、下を見ればそれなりにあるはずの胸がない。
両手でぺたぺたする。まったくないっ。なんじゃこりゃ? 何が起こった?
半場パニックになりながら、キョロキョロと周りを見渡すと。視界の隅、私の後ろに何か赤いものがあることに気がつく。凸凹の赤い石。 自然界には不自然なほどの赤い石。最初に連想したのは、朱色に塗った狛犬の像を飾っているお寺?そもそも真っ赤な狛犬って?
私が後ろをふり向くと、そこに立っていたモノと目が合った。
「チュートリアルへようこそ」
上から声がした。見上げると、そこには、眼鏡をしたドラゴンがニタっと笑っていた。
龍ではなくドラゴン。まさに西洋のドラゴン。
恐竜…というより、二足歩行している鰐か。角は六本。頭までの高さは三メートルくらい。全長だと六メートルくらい?
背中には、翼を畳んでいるのが見える。
ここは地獄か? 地獄の入り口から天国の風景を見せつけられているのか? これは地獄の獄卒か?
完璧な善人として生きてきたと言い張るつもりはないけど。私、そんなに悪いことをした? むしろ三途の川を先に渡りたい。
赤いドラゴンは眼鏡をかけている。耳にかけているのではなく、顔にくっついている感じなのだが。 あれ?
頭から血が下がる感覚。死んでいるのに血が下がるのか? パニックで気が遠くなる…
「玲子君、顔を見ていきなり失神とは、ちょっと失礼だぞ」
慌てるように私を支えてくれたドラゴンが、聞き覚えのある声で不貞腐れていた。
・Side:アカイ・タカフミ
モニタリングは正常。意識野は正常にシミュレーションされている。処理能力のリソース消費も想定内。今度も無事"再生"できたようだ。
久しぶりに君と会話できるのはうれしいよ、玲子くん。前に話してから結構経っているからね。
目の前の景色に感動しているね。いいでしょう?、僕の自信作だよ。
彼女はしばらくキョロキョロしていたけど。幼い頃を推測して作った体で、こちらを見上げて驚いている。
あ…子供に真剣に怯えられると、ちょっと来る物があるな。罪悪感が湧いてくる。このパターンは始めてだ。
おいおい、失神しなくても良いだろ
しかたないな。ベースに運び込むか。すぐにでも目を覚ますだろう。
-----------------------------------------------------------------------------
プロローグ終了です。
ただ、アカイさんのチュートリアルは、10話ほど続く予定です。
…まぁ設定解説ですね。
16
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
母に理不尽に当たり散らされたことで家出した私は――見知らぬ世界に転移しました!?
四季
恋愛
幼い頃、同居していた祖母から言われたことがあった。
もしも嫌なことがあったなら、電話の下の棚から髪飾りを取り出して持っていって、近所の神社の鳥居を両足でくぐりなさい――。
◆
十七歳になった真琴は、ある日母に理不尽に当たり散らされたことで家出した。
彼女が向かったのは神社。
その鳥居をくぐると――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」にも掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる