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しおりを挟む……頭が痛い。
モヤモヤする。何故。どうして。
……貴方が、私を裏切ったから。
◇
「……沙良……!」
目を覚ました私の前に居たのは、恋人の拓人。大学で出逢いすぐに好きになった人。就職して一年、結婚も決まっていた。
その拓人が、心配そうに私の顔を覗き込みその手を私に伸ばした。
パシ……ッ!
「沙良……!?」
私は、思わずその手を払っていた。
自分の手を拒否された事に拓人は驚いている。
が、私は湧き上がる不信感と吐き気でどうにかなりそうだった。
真っ青な顔で震える私に拓人は労るように言う。
「大丈夫かい? 混乱しているんだね。……階段から落ちて頭を打ってるんだ。先生を呼んで来るから待ってて」
……階段から落ちて?
私はその言葉に疑問を覚えた。だって、私は車の事故に遭って……。
ズキリ、と頭が痛む。
……そう、私は婚約者である拓人の浮気現場を見た後に事故に遭ったのだから。
◇
私と拓人は大学時代のサークルで出逢った。一つ年上の、皆んなから頼られる先輩だった拓人。
初めて会った時からいいなと思っていたけれど、話をしていく内にどんどん彼に惹かれていった。
サークルみんなでの集まりからだんだん2人で出掛ける事が増え、半年が過ぎた頃拓人から付き合って欲しいと告げられた。
……嬉しかった。楽しくて愛しくて……。喧嘩もしたけれどずっとこんな風に2人で過ごしていけるのだと思っていた。
それなのに。
また、頭が痛む。
働き出した拓人は忙しそうだった。2週に一度くらいしか会えなくなり、最近その頻度が大きくなっていた。『仕事だから』と言われ、最初はそう思っていたけれど……。
『……そんなに、会えないっておかしくない? 彼氏の会社ってホワイトで有名じゃない? そりゃ、他の人との付き合いもあるだろうけど……』
高校時代の友人から言われて、確かにと思った。
そしてある日拓人の財布からチラリと見えた、最近出来たばかりの話題のカフェのレシート。拓人が1人わざわざ行くには違和感のある店だ。
……会社や仲間たちとの、付き合いで行ったのかもしれないと思いたかった。けれど、何故か友人の言葉が脳裏を掠める。
そして拓人が会えないと言った週末。私はいつもとは違う格好をしてそのカフェの辺りに行ってみた。
拓人が同じ場所に何度も来るとは限らない。そもそもそんなおかしな事があるのかさえ分からないのに。
……しかし、彼はそこに居た。見覚えのある女性を連れて。
大学時代、同じサークルだった未来だった。……そして、私の友人でもある。いや、もう過去形でいいだろう。
何故なら、拓人と未来は恋人繋ぎをしてピッタリと体を寄せ合って歩いていた。決して『友人』ではあり得ない距離だった。
そして思い出す。この近くに未来の住むマンションがあったと。おそらく彼らは昨晩から2人で過ごしていたのだ。
「……嘘……」
私は思わず彼らから身を隠す。
私はショックで……。彼らの前に出て責めるよりも何よりも、自分の恋人と友人というあり得ない組み合わせに気が動転し……、暫くあちこちを歩いた後フラフラと横断歩道を歩いている時、急に左折して来た車にはねられた。
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