【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:番外編

ヘルト視点21:答え、口づけ、幸せ

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「エルツ」
「はい」

 甘えてくるエルツに声をかければ、エルツは嬉しそうに笑みを浮かべて、俺を見上げる。

 なんで、名前呼んだだけでそんなにも嬉しそうな顔をするのか……。

 自覚の無さそうなエルツを愛おしく思いながら、今日の出来事を改めて褒める。

 もう、誰が見ても文句のねぇ一人前だと。

「そう……でしょうか?」
「ロークさんからも皆からも褒められただろ」

 まだ自信のなさそうなエルツに、まだまだ劣等感の根は深いと思いながら笑いかける。

 今は自信がなくともいつか自信満々に笑える日が来るって信じているからな。

「で……だな。まあ、こんな日にいうのはどうかと思うんだが……お前に告白された日に俺が言った事を覚えてるか?」

 日を改めるべきとも思ったが、考えていた言葉が口から滑り落ちる。

 告白された日に言った言葉。

 それは、エルツが一人前になるまで性的な接触を控えようって言ったやつである。

 エルツの幼さに手を出す事への罪悪感から出た言葉。

 だけど、俺自身エルツの成長を認めたせいか……今まで以上に魅力的に見えるエルツに想いが抑えられなくなっていた。

 若いエルツに手を出すって事に、やっぱり罪悪感はある。

 俺みたいなおっさんじゃなくて、同じ年くらいのヤツの方が一緒に過ごせる時間は長いから幸せにしてやれんじゃねぇかって。

 だけどなぁ……エルツの隣に俺以外がいると思うと癪なんだわ。

「俺もいい加減覚悟するさ。お前が望むならなんだってしてやれる」

 エルツに任せるような情けねぇ言い方だったからかエルツの頬に涙が伝う。

「なっ、どうした!? 嫌だったか!?」
「いえ、いえ……嬉しくて……」

 もっと言い方考えるべきだったと後悔していた俺に、エルツは嬉しいと言った。

 その事に安堵していると涙に濡れたエルツの緑色の瞳と視線が交わる。

「ぼく、一人前に……なれましたか?」
「さっきから言ってるだろ。誰から見ても、俺から見ても十分一人前だ」

 エルツの涙を指で拭い、頬に手を振れたままエルツの唇に口づけた。

 振れるだけの、子供みたいなキス。

 だけど、なぜだろうな。

 たったそれだけで満ち足りた気分になった。

「ヘルトさん……好きです。大好き……」
「ああ、俺も愛してる」

 俺の首に両手を回してきたエルツを抱き締めながら、幸せってものを実感したんだ。
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