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第一部:番外編
ヘルト視点20:目覚め、食事、心の変化
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エルツの隣で物思いにふけていると、隣から身動ぐ音が聞こえてくる。
視線を向ければ、エルツが目を覚ましたようでぼんやりと視線をさ迷わせていた。
「起きたか」
「はい……眠っちゃってすみません」
「いいさ。色々あったからな」
起きたエルツと話しつつ、少しは食べれそうだと言うエルツの為に、シチューを外に取りに行く。
一言二言、ソルとルナと話して、シチューの入った器を手にテントへ戻り、エルツへと渡した。
シチューを受け取ったエルツは、少しずつ食べながら、ポツリポツリと言葉を溢す。
そして、俺が故郷へと帰らなくなった理由を問われ、俺は正直に過去に何があったかを話した。
冒険者として活躍しても、認められなかった事。それなのに、その名誉だけは誇らしく語る大人達に嫌気がさしたことを。
俺のような跡継ぎ以外の子供が外に出る切欠になればと思って帰るようにしていたが……それすら嫌になるほど、故郷が嫌いになった。
そしたら、エルツのような人間が出てしまった。
冒険者をするなかで度々聞いた悪習が故郷で行われたという事実は……どこかやりきれなさが生まれた。
そんな事がない場所であってほしかったと思うのは、嫌いになったとしても故郷は故郷であったということだろう。
結局、生まれた場所というのは、心奥底に根付いているのかもしれない。
そんな事を思いながら俺は言葉を続け、話を続けるうちにエルツの持っていた器が空になっていた。
「よし、ちゃんと食えたな」
話の切りがいいところでエルツの器を覗き込み、食べきれた事を褒める。
小さく笑ったエルツに器と交換で水筒を渡し、空になった器を外にいるソルへと渡す。
飯も食わせたし、とりあえずは安心か……と、後ろを振り向けばエルツは水筒を持ったままぼんやりとしていた。
「少しは、落ち着いたか?」
「……はい」
エルツの隣に座り、その細い体を魔導義手で抱き寄せれば、甘えるように俺の肩へと寄りかかってくる。
それは、子供のような仕草でもあったが、恋人に甘えるようにも見えた。
いや、以前までは、子供が甘えているようにしか見えなかっただろう。
エルツが魅力的であっても、想いを交わしあっても、どこかで……それこそ理性や罪悪感で一線を引いていた為に。
だが、今日。エルツは誰よりも活躍したと思っている。
モンスターと戦う事はなかったが、村人や負傷した冒険者を守り通したという功績は何よりも大きい。
そして、自らの意思で……傷つきながらも家族との別離を選んだエルツはもう守られるだけの子供ではない。
一人前の冒険者で、一人の大人だった。
視線を向ければ、エルツが目を覚ましたようでぼんやりと視線をさ迷わせていた。
「起きたか」
「はい……眠っちゃってすみません」
「いいさ。色々あったからな」
起きたエルツと話しつつ、少しは食べれそうだと言うエルツの為に、シチューを外に取りに行く。
一言二言、ソルとルナと話して、シチューの入った器を手にテントへ戻り、エルツへと渡した。
シチューを受け取ったエルツは、少しずつ食べながら、ポツリポツリと言葉を溢す。
そして、俺が故郷へと帰らなくなった理由を問われ、俺は正直に過去に何があったかを話した。
冒険者として活躍しても、認められなかった事。それなのに、その名誉だけは誇らしく語る大人達に嫌気がさしたことを。
俺のような跡継ぎ以外の子供が外に出る切欠になればと思って帰るようにしていたが……それすら嫌になるほど、故郷が嫌いになった。
そしたら、エルツのような人間が出てしまった。
冒険者をするなかで度々聞いた悪習が故郷で行われたという事実は……どこかやりきれなさが生まれた。
そんな事がない場所であってほしかったと思うのは、嫌いになったとしても故郷は故郷であったということだろう。
結局、生まれた場所というのは、心奥底に根付いているのかもしれない。
そんな事を思いながら俺は言葉を続け、話を続けるうちにエルツの持っていた器が空になっていた。
「よし、ちゃんと食えたな」
話の切りがいいところでエルツの器を覗き込み、食べきれた事を褒める。
小さく笑ったエルツに器と交換で水筒を渡し、空になった器を外にいるソルへと渡す。
飯も食わせたし、とりあえずは安心か……と、後ろを振り向けばエルツは水筒を持ったままぼんやりとしていた。
「少しは、落ち着いたか?」
「……はい」
エルツの隣に座り、その細い体を魔導義手で抱き寄せれば、甘えるように俺の肩へと寄りかかってくる。
それは、子供のような仕草でもあったが、恋人に甘えるようにも見えた。
いや、以前までは、子供が甘えているようにしか見えなかっただろう。
エルツが魅力的であっても、想いを交わしあっても、どこかで……それこそ理性や罪悪感で一線を引いていた為に。
だが、今日。エルツは誰よりも活躍したと思っている。
モンスターと戦う事はなかったが、村人や負傷した冒険者を守り通したという功績は何よりも大きい。
そして、自らの意思で……傷つきながらも家族との別離を選んだエルツはもう守られるだけの子供ではない。
一人前の冒険者で、一人の大人だった。
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