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第一部:番外編

ヘルト視点16:作戦、見送り、攻勢

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 エルツの提案を受け入れ、障壁を安定して張るためにどうやって中に送り込むか考えていると、ルナが共に行く事を申し出てきた。

 ルナがエルツについてくれるなら、村にエルツを送り込む心配も軽減されるし、ソルとの通信で内部とのやり取りも可能だ。

 ありがたい提案に、ルナの同行も作戦へと組み込む。

 出来上がった作戦としては、エルツの作った障壁の道でエルツとルナが村へ潜入。

 俺達は、二人が空から魔物に襲撃されるのを魔法や弓矢で防ぎつつ、内部状況を把握次第、攻勢にうって出る事になった。

「ヘルトさん行ってきます」
「おう、行ってこい!」

 ルナに抱えられたエルツに笑みを浮かべて見送る。

 障壁を展開して、ルナと共に村へと向かうエルツが心配じゃない訳ではない。

 だが、ここで俺が不安を見せる訳にはいかない。師匠として、作戦を託す仲間として、見送ってやるのが覚悟を決めたエルツへと向けるはなむけだった。

「さて、俺らもやるぞぉ!」
「「「おおっ!」」」

 俺の言葉に気合いの入った声が上がる。

 障壁の道を駆けるルナをめがけて襲いかかる飛行型モンスターを魔法や斬撃で撃ち落としていく。

 外部からの攻撃に徐々にこちらへと気づいた地上のモンスター達もこちらへと方向を変え、迫ってくる。

「前衛は前に出るぞ! 後衛は、今まで通り上空優先で頼む!」

 こちらへと向かってきたモンスターに対応するべく、他の前衛と前に出る。

 ソルを連れてモンスターを撃ち取っていると、無事村へと突入できたエルツ達から連絡が届いた。

「ヘルト様、マスター達は村へと到着したようです。到着とともにマスターが障壁を展開。ルナは、現在被害状況を確認中です」
「そうか、わかった。お前ら、エルツ達が無事村に到着した! 現状は調査中だが、これでひとまずあちらの安全は確保できる! ここからは、死なねぇ程度に攻めに転ずるぞ!」

 ソルからの報告を拡声魔法で周りへと伝え、指示を飛ばす。

「前衛は、疲れたと思ったら一度後退する事を考えろ! 後衛は、こちらを狙う飛行型モンスターにだけ注意! 前衛が薄くなった時は、補助を頼む!」

 返事らしい返事は返って来ないが、周りの動きが変わった。

 攻めながらも、自分達の限界を見極めるようにモンスターを切り伏せて行く。

 俺もそれに続きながら、隣で剣を振るうソルから第二報を待つ。

「被害状況確認終了。死者は、冒険者、村人共に少数。負傷者は、冒険者と重傷者を中心に治療を開始。治療完了と共に中からも攻勢に移るそうです」
「死者もいるのか……だが、あっちからも攻めてくれるならありがたい」

 スタンピードが起これば犠牲者がいるのは免れない。

 だが、あの状況で犠牲者が少数っていうのは不幸中の幸いだろう。

 中にスタンピード中の指揮に慣れたヤツが居るに違いない。これは、心強いぞ……!

「お前らぁ! 中のヤツらも回復次第打って出る! この戦い必ず勝つぞ!」

 迫ってきたモンスターを一閃しながら声を張り上げる。

 返事はない。だが、中のヤツらがまだ戦う気力がある事が士気を高めたのか、切り飛ばされていくモンスターの数が僅かに増えていった。
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