【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:番外編

ヘルト視点15:スタンピード、提案、覚悟

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 馬達を急がせ故郷へと向かう。

 だが、その距離が近くなるにつれて、村から上がったものだと思われる煙や上空を飛び回る飛行型モンスターにすでにスタンピードが発生していると気づいた。

「っ……!スタンピードだ!」

 俺の声に小窓から外を伺っていたエルツが息を飲むのが聞こえた。

 他の馬車も俺がさらに馬車の速度を上げたことに気づき、同じ様に速度をあげる。

 村の様子が把握できる距離に到着すると、故郷の周りはすでにモンスターに方位されていた。

 モンスターに気づかれない距離で馬車を止め、一度皆と話し合いをする。

 このまま、突撃しても俺達だけでは危険と判断したからだ。

 ひとまずさっき通りすぎた町の様子からスタンピードが発生した事が伝わって無さそうだと判断したので、一人は町に報告に行かせた。

 一人だけなら身体強化して走った方が早い。名乗り出てくれたヤツに報告して領軍を連れてきてもらえれば、勝てる可能性が確実に上がる。

 スタンピード阻止は、冒険者に理があるが、スタンピード制圧に関しては、平地での戦いに慣れている領軍の領分だからだ。

 だからといって、領軍が来るまでに手をこまねいて見ているだけにはいかない。

 どうやって、今も戦い続けている冒険者や守られているだろう村人を助け出すかも考える。

 だが、どれも勝算のあるものとはいえない。

 あれだけの量のモンスター。それも、未だに増え続けている気配すらあるのだ。

 生半可な作戦では、俺達もただでは済まなかった。

 せめて中の状況が把握できるだけでも……理想は中の冒険者が攻勢に出れれば、現状を打開できると思うのだが……。

 そんな事を考えていると静かに話を聞いていたエルツが口を開く。

「障壁魔法で……中の人を包んだらどうでしょう」

 それは、俺が考える理想の提案だった。だが、エルツに負担をかけるから口に出せずにいたものだった。

 周りのヤツらがエルツの言葉に無謀だと止める。

 だが、俺にはエルツならできるという確信もあった。

「……いけるかエルツ」
「やってみせます!」

 覚悟の決まった瞳に、もう守られてばかりいる子供じゃねぇな……。と、笑みが浮かんだ。
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