132 / 146
第一部:番外編
ヘルト視点14:依頼受領、特急馬車、焦り
しおりを挟む
正直、故郷に行きたくはない。ないが、スタンピードを防ぐにも、解決するにも人手はあった方がいいだろう。
個人的な思いを飲み込み承諾し、エルツは残していこうと思ったらエルツ自身から同行したいと言い出した。
出来る事なら残していきたかったのだが、本人が覚悟を決めているのならそれもエルツの成長に繋がるだろうという考えも浮かぶ。
故郷でまた心に傷を負う可能性もあるが、それでも家族との確執を解消する事が出来れば……エルツの心に救う闇を払える切欠になると思った。
荒治療になる事を覚悟しながらも、エルツ達を連れて依頼を受ける事にした。
その日は家に帰って準備を整えて、翌日ギルドが手配してくれた特急馬車に乗る。モンスターの血を引いた魔獣馬は、モンスターを使役する魔物使いでなくても扱える疲れしらずの馬だ。
他の依頼を受けたヤツらと朝から晩まで走らせて、夜は野営で過ごす。落ち着いている様で不安を滲ませるエルツを安心させるように宥めながら故郷への道を急ぐ。
この旅で助かったのはやはりソルとルナの存在だろう。二人がエルツと一緒に過ごしてもらうだけでも気晴らしになるし、物覚えも早いお陰で操縦難易度の高い特急馬車も問題なく走らせる事が出来る。
操縦を変わってもらえれば、俺の休憩にもなるし、エルツについてやる事もできたからだ。
野営中の見張りは、他の奴らも信頼できるヤツらだから問題はなかったが、それでも俺の代わりに見張りに立ってくれるだけありがたかった。
特急馬車で五日の旅程を進み、ようやく村の近くにある大きな町へと通りかかった時。あまりにも平穏な町の様子に驚く。
普通であれば、大きな町はスタンピードの際の避難先になるにもかかわらず、故郷の人間が避難している様子がなかった。
「まだ、この町は無事そうだな。うちの村からの避難民もいなさそうだ」
だが、嫌な予感がする。
「ということは、スタンピードはまだ起こってないんでしょうか?」
「どうだろうなぁ……だが、頭の古い連中ばかりだ。村を離れたくない……って奴らの方が多いのかもしれないぜ」
「ありえますね」
エルツと話しながらも、あの故郷の人間達の性格を思い出して頭が痛くなった。
まだここに被害が及んでいないと言う事は、まだスタンピードが起きていないと考えたいところだが……自分達の開拓した土地を維持する事ばかりに尽力するヤツらばかりだ。
避難を渋り、すでにスタンピードが起きてしまっていたら……。
そんな考えが頭を過り、特急馬車の速度を上げた。
個人的な思いを飲み込み承諾し、エルツは残していこうと思ったらエルツ自身から同行したいと言い出した。
出来る事なら残していきたかったのだが、本人が覚悟を決めているのならそれもエルツの成長に繋がるだろうという考えも浮かぶ。
故郷でまた心に傷を負う可能性もあるが、それでも家族との確執を解消する事が出来れば……エルツの心に救う闇を払える切欠になると思った。
荒治療になる事を覚悟しながらも、エルツ達を連れて依頼を受ける事にした。
その日は家に帰って準備を整えて、翌日ギルドが手配してくれた特急馬車に乗る。モンスターの血を引いた魔獣馬は、モンスターを使役する魔物使いでなくても扱える疲れしらずの馬だ。
他の依頼を受けたヤツらと朝から晩まで走らせて、夜は野営で過ごす。落ち着いている様で不安を滲ませるエルツを安心させるように宥めながら故郷への道を急ぐ。
この旅で助かったのはやはりソルとルナの存在だろう。二人がエルツと一緒に過ごしてもらうだけでも気晴らしになるし、物覚えも早いお陰で操縦難易度の高い特急馬車も問題なく走らせる事が出来る。
操縦を変わってもらえれば、俺の休憩にもなるし、エルツについてやる事もできたからだ。
野営中の見張りは、他の奴らも信頼できるヤツらだから問題はなかったが、それでも俺の代わりに見張りに立ってくれるだけありがたかった。
特急馬車で五日の旅程を進み、ようやく村の近くにある大きな町へと通りかかった時。あまりにも平穏な町の様子に驚く。
普通であれば、大きな町はスタンピードの際の避難先になるにもかかわらず、故郷の人間が避難している様子がなかった。
「まだ、この町は無事そうだな。うちの村からの避難民もいなさそうだ」
だが、嫌な予感がする。
「ということは、スタンピードはまだ起こってないんでしょうか?」
「どうだろうなぁ……だが、頭の古い連中ばかりだ。村を離れたくない……って奴らの方が多いのかもしれないぜ」
「ありえますね」
エルツと話しながらも、あの故郷の人間達の性格を思い出して頭が痛くなった。
まだここに被害が及んでいないと言う事は、まだスタンピードが起きていないと考えたいところだが……自分達の開拓した土地を維持する事ばかりに尽力するヤツらばかりだ。
避難を渋り、すでにスタンピードが起きてしまっていたら……。
そんな考えが頭を過り、特急馬車の速度を上げた。
14
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説



アンドロイドは愛を得る
天霧 ロウ
BL
アンドロイドを持つのが当たり前になった時代。
ある名家は八歳になったらアンドロイドを与えるというしきたりがあった。創造主であるライラからコヨリという名を与えられたアンドロイドの私は助手として彼女とともにその家に訪れた。しかし、理想のアンドロイドを頼めるにもかかわらず、その家の子供――史人は私がほしいと言った。
一悶着あった末、私は彼のものになり十年。すっかり青年に育った彼を見るたびに私の胸のコアや頭の回路はときおり熱を帯びてエラーを吐くようになった。
ムーンライトノベルズにも掲載しております
史人(ふみと)×コヨリ
(SF/主従/俺様一途×天然健気/主×従者/人間×アンドロイド/年下攻め/甘々/溺愛/じれじれ/ハッピーエンド/受視点)


オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる