【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:番外編

ヘルト視点14:依頼受領、特急馬車、焦り

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 正直、故郷に行きたくはない。ないが、スタンピードを防ぐにも、解決するにも人手はあった方がいいだろう。

 個人的な思いを飲み込み承諾し、エルツは残していこうと思ったらエルツ自身から同行したいと言い出した。

 出来る事なら残していきたかったのだが、本人が覚悟を決めているのならそれもエルツの成長に繋がるだろうという考えも浮かぶ。

 故郷でまた心に傷を負う可能性もあるが、それでも家族との確執を解消する事が出来れば……エルツの心に救う闇を払える切欠になると思った。

 荒治療になる事を覚悟しながらも、エルツ達を連れて依頼を受ける事にした。

 その日は家に帰って準備を整えて、翌日ギルドが手配してくれた特急馬車に乗る。モンスターの血を引いた魔獣馬は、モンスターを使役する魔物使いでなくても扱える疲れしらずの馬だ。

 他の依頼を受けたヤツらと朝から晩まで走らせて、夜は野営で過ごす。落ち着いている様で不安を滲ませるエルツを安心させるように宥めながら故郷への道を急ぐ。

 この旅で助かったのはやはりソルとルナの存在だろう。二人がエルツと一緒に過ごしてもらうだけでも気晴らしになるし、物覚えも早いお陰で操縦難易度の高い特急馬車も問題なく走らせる事が出来る。

 操縦を変わってもらえれば、俺の休憩にもなるし、エルツについてやる事もできたからだ。

 野営中の見張りは、他の奴らも信頼できるヤツらだから問題はなかったが、それでも俺の代わりに見張りに立ってくれるだけありがたかった。

 特急馬車で五日の旅程を進み、ようやく村の近くにある大きな町へと通りかかった時。あまりにも平穏な町の様子に驚く。

 普通であれば、大きな町はスタンピードの際の避難先になるにもかかわらず、故郷の人間が避難している様子がなかった。

「まだ、この町は無事そうだな。うちの村からの避難民もいなさそうだ」

 だが、嫌な予感がする。

「ということは、スタンピードはまだ起こってないんでしょうか?」
「どうだろうなぁ……だが、頭の古い連中ばかりだ。村を離れたくない……って奴らの方が多いのかもしれないぜ」
「ありえますね」

 エルツと話しながらも、あの故郷の人間達の性格を思い出して頭が痛くなった。

 まだここに被害が及んでいないと言う事は、まだスタンピードが起きていないと考えたいところだが……自分達の開拓した土地を維持する事ばかりに尽力するヤツらばかりだ。

 避難を渋り、すでにスタンピードが起きてしまっていたら……。

 そんな考えが頭を過り、特急馬車の速度を上げた。
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