【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:番外編

ヘルト視点11:探索、隠し部屋、魔導人形

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 エルツを連れてのダンジョン攻略も順調で、ダンジョンでの野営も問題なく行えた。

 その際、新調した道具類にエルツからの一声があったが……スキンシップが増えたからといって、与えられる機会があるなら与えたいと思うから仕方がない。

 最近では、困惑するよりちょっと膨れっ面になる事が多くて、それはそれで可愛い。

 貢がれる困惑と不服さと嬉しさが混じる表情は、ころころ変わって面白いのもあるしな。

 膨れるエルツをそれとなく言いくるめて、日々ダンジョンに潜る。

 高い装備を身につけたエルツを狙う目もあるが、野営中も俺が付かず離れずにいるからか今のところ問題はない。

 欲を言えば、あと一人二人くらい人手が欲しいところだが……。

 奴隷をこれ以上増やすつもりもないし、冒険者を新しく加えるにしても問題がある。

 エルツの事を普通に扱ってくれるようなランクの冒険者は、上位以上ばかりだから既にパーティーを組んでいるし、中級以下は玉石混淆だから正直パーティーに加えたくない。

 奴隷反対派の人間だとしても、奴隷身分のエルツが俺に贔屓されていると恨めしくなるものだ。

 出来るなら俺よりもエルツを優先するようなヤツの方が良いんだが……そんな都合の良い人間がいるわけもない。

 ダンジョンで過ごす度に普段以上に気を使いながら過ごしていた。

 だが、そんな俺の悩みを解決する物と出会う。

 転移罠を避け、遠回りしたルートの先で見つけた隠し部屋。

 俺でも見落としそうなくらい巧妙に隠されたそれに期待したのは言うまでもない。

 念の為にエルツを離して開けたその先にあった宝箱に入っていたのは、二体の魔導人形。

 滅多に発見される事のないそれに、ただただ驚き……これをエルツに与えれば、万が一があっても俺の変わりにエルツを守れると思った。

「エルツ。お前、こいつらの主になれ」

 俺の言葉に悲鳴を上げて、断ろうとするエルツの逃げ道を塞いで、魔力を注がせる。

 それも、全力で注げるように高位の魔力回復速度上昇のポーションも使わせてだ。

 正直、エルツの魔力でこんな事をしたら俺でも予想のつかないことが起きるんじゃないかと年甲斐もなくワクワクした。

 そして、エルツが魔力を限界まで注いだ二体の魔導人形は、俺の想像以上の物になる。

 完全に人に擬態した魔導人形なんて聞いたこともねぇ。

 前例はあるかも知れねぇが……あったとしても口外されることは、ないだろう。

 それほどまでに異常な個体達だ。

 俺に対しては、やや当たりの強い反応をするが、それくらいの方が安心できる。

 俺がいつまでもエルツを守れるとは限らねぇ。だからこそ、魔導人形ゆえにエルツに忠誠を誓う絶対的な守護者は、ありがたかった。
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