【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

文字の大きさ
上 下
125 / 146
第一部:番外編

ヘルト視点7:ダンジョン、隠し部屋、成果なし

しおりを挟む
 エルツを連れて初めて潜ったダンジョンの成果は上々と言ったところだろう。

 家では、あまり派手な魔法は使えないから障壁魔法での攻撃を教えたのだが……やはり魔力の多さと天性の才能もあって、初めての戦闘でも問題なくゴブリンを屠る事が出来ていた。

 まあ、血や内臓に酔っちまったんだけどな。

 初心者あるあるではあるが、これを乗り越えねぇと、冒険者なんてなれねぇし……なんとか、自分で克服してもらうしかねぇ。

 気分悪くなりつつも、その後も討伐できていたから慣れるのも早いとは思うがな。

 一層を打破して、二層で少し宝探しをする事にした。

 日帰りの予定だから長くいるつもりはないが、せっかくの初ダンジョン。

 探索らしい事は全てさせてやりたい。

 まあ、二層の入り口付近で隠し部屋が見つかる可能性は少ないんだけどな。

 魔眼で壁を見ても、どこも普通の壁ばかり。

 隠し部屋自体は、斥候経験があればある程度は気づける。

 ほんの僅かに壁の模様のズレや凹凸の差とかでな。

 だが俺には、魔眼がある。

 隠し部屋の隠し扉は、普通の壁と魔力の流れ方が違うからそれで判別できるのだ。

 そのおかげで、普通の斥候より看破率は高い。

 それでも、長い間見つからなかった隠し部屋は見つけるのが難しかったりするのだが……まあ、その分予想もしないお宝が眠っているから是非とも見つけたいものではあるんだけどな。

「うーん、わからない……ご主人様はわかりますか?」

 いつ人が通りかかるかわからないからと、ダンジョンでもご主人様呼びするエルツもどかしく感じつつ口を開く。

「今のところは、なにもねぇな。魔眼でも確認してるが……粗方見つけられてるみたいだ」
「そうですか……」

 俺の言葉にエルツが落ち込んだ様子を見せる。

 低階層の隠し部屋を専門で回るヤツもいるから、ホント運が良くないと見つからねぇんだよなぁ……。

 今日は見つからねぇとは思っているが、見つけてやりたいと思うのもエルツが可愛いからか……。

 低階層の若い隠し部屋のお宝は、あまり高価なものではないのだが……それでも、エルツは喜びそうだ。

 売るほどのものでもないし、俺には必要のないものだろうから、見つける事があるのならエルツにやってもいいだろう。

 俺の隣を歩きながら、辺りをキョロキョロと見回すエルツを眺めながらそんな事を思う。

 だが、そんな俺の思いとエルツの期待を裏切るように今日の宝探しは成果を得る事は、出来なかったのだった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

アンドロイドは愛を得る

天霧 ロウ
BL
アンドロイドを持つのが当たり前になった時代。 ある名家は八歳になったらアンドロイドを与えるというしきたりがあった。創造主であるライラからコヨリという名を与えられたアンドロイドの私は助手として彼女とともにその家に訪れた。しかし、理想のアンドロイドを頼めるにもかかわらず、その家の子供――史人は私がほしいと言った。 一悶着あった末、私は彼のものになり十年。すっかり青年に育った彼を見るたびに私の胸のコアや頭の回路はときおり熱を帯びてエラーを吐くようになった。 ムーンライトノベルズにも掲載しております 史人(ふみと)×コヨリ (SF/主従/俺様一途×天然健気/主×従者/人間×アンドロイド/年下攻め/甘々/溺愛/じれじれ/ハッピーエンド/受視点)

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

地下酒場ナンバーワンの僕のお仕事

カシナシ
BL
地下にある紹介制の酒場で、僕は働いている。 お触りされ放題の給仕係の美少年と、悪戯の過ぎる残念なイケメンたち。 果たしてハルトの貞操は守られるのか?

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...