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第一部:番外編

ヘルト視点6:ギルド、皮肉、自慢

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 翌日、ギルドへ訪れれば予想していた飲んだくれ達から口汚い言葉を投げつけられる。

 だが、それも一睨みするだけで沈黙に変わった。

 一睨みされて、黙るのなら最初からなにも言わなければいい。

 毎日の飲み代を稼ぐためだけにダンジョンに潜り、日々を暮らす生き方を悪いとは言わんが、自らの品性すら落とす怠惰な生き方は気にくわない。

 中級から上がれなくても、日々自己研磨するヤツらだっているのだ。ここで飲んだくれているヤツらを相手にするだけ時間の無駄だろう。

 最初は、エルツの事をこんなヤツらの視線に晒さなければならないのが嫌だったが、俺が受付の職員と話している間にエルツの装備を見てただの奴隷ではない事を理解したらしい。

 あの程度のヤツらには、やはり効果的だったな。

 そんな事を思いながら職員から差し出された依頼書に目を通すが、しばらくは潜りそうもない階層の依頼ばかりだったので断る。

 急ぎのものもなかったし、それくらいなら俺以外の冒険者でもなんとかなると思ったのも理由だった。

 今この町で、特級なのは俺だけだが、上級冒険者は何人かいる。

 特級ソロの俺よりは、上級パーティーに任せた方がそいつらに実績的も積ませられるから全体的な質を上げるのなら、俺ばかりが依頼書を受けてちゃ持ったいねぇんだよ。

「たぶん、依頼書に書かれてる所に潜れるのは一ヶ月くらいは先だな」
「それだけの期間でその子を連れて潜るつもりですか?」

 とりあえず次に中層以降に潜れるようになる予定を告げれば、職員が目を見開く。

「俺の育てた弟子は優秀だからな」

 そう言って笑えば、職員は信じられないものを見たような目で俺を見つめた。

 ギルド職員は、基本的に奴隷に関しては肯定派から中立寄りだから、否定派の俺が奴隷を持っているだけでも驚きなのに、さらに弟子扱いするから信じられないのだろう。

 シャマにも、話が行きそうだがしばらくは呼ばれても顔出すのは控えよう。絶対に煩い。

 今の屋敷を押し売られた時を思い出し、少し渋い顔をしながらも、辺りのようすを伺うエルツへと声をかける。

「行くぞ」
「わかりました」

 踵を返した俺に大人しくついてくるエルツ。

 そんな俺達を茶化すような言葉はもう飛んでこなかった。
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